2019年1月22日(火)
『アリスギア』は“一次元のゲーム”!? こだわり抜かれたゲーム性とデザインを語る1周年記念インタビュー【アリスギア特集5】
コロプラが配信中の、iOS/Android用アプリ『アリス・ギア・アイギス(通称:アリスギア)』。本作は、本日2019年1月22日にサービス開始から1周年を迎えました。
『アリスギア』は、数多くのプラットフォームでゲーム開発を手がけた老舗ゲーム開発会社であるピラミッドが開発・運営を行うアクションシューティングゲームです。
激動の1年を『アリスギア』のプロデューサー/開発ディレクターである柏木准一さんをはじめ、運営・開発スタッフにインタビュー。『アリスギア』のこれまでとこれからについてたっぷりとお聞きしましたので、ぜひ最後までご覧ください!
【インタビュー参加者プロフィール】※インタビュー中は敬称略
柏木准一さん:株式会社ピラミッド代表取締役社長。『アリスギア』のプロデューサー/開発ディレクター。ピラミッドは数多くのゲームを手掛けており、柏木さんも社長でありながら、現場で『アリスギア』をはじめ、さまざまなタイトルの指揮を取っています。
加賀純さん:『アリスギア』運営ディレクター。運営Dとしてこれまでもイベント等に参加し本作の魅力を伝えています。並々ならぬ文鳥愛を持ち、文島明日翔の相棒“ピッピちゃん”の監修がものすごかったことでファンにはおなじみ。
アートD:『アリスギア』のアートディレクター。Twitterの『アリスギア』軟式アカウントでたまにデザインに対する(いい意味での)変態っぷりを披露し話題に。まだ実現していないそうですが、ユーザーイベントにしれっと参加するのが夢とのことで顔出しNG。
牟田(むた)貞治さん:『アリスギア』のピラミッド企画部部長。コンシューマ、アーケード、ソーシャルとさまざまなプラットフォームでの開発を経験しており、幅広い視点を活かして開発に携わっています。
▲写真左から牟田さん、柏木さん、加賀さん。 |
“サイレント運営”と呼ばれていたサービス開始当初
──まずは、『アリスギア』のこれまでの1年を振り返って、率直にどのようなお気持ちですか。
柏木:リリース当日は、大安吉日にしましょうということでリリース日を決めたら、某タイトルとリリース日が重なってしまって、思ったより人が来なくて最初は困りました。
後は、開始してすぐに大規模なバランスの変更を何回も行いました。方針としてお客さまに寄り添った運営をしていこうと、問題点があったらなるべくすぐにそれを解消するということを頑張ってやっていたつもりだったんです。
基本的にはメンテナンス状態にならない形で、ゲーム内でお知らせを出してデータ変更していくやり方でバランスの変更などの更新作業を行っていきました。
また、開始されてすぐにイベントを開始した時も、サーバートラブルなどもなく無難に進行していましたが、あまりにも何の騒動もなく運営していたら“サイレント運営”などと揶揄されてしまいました。ゲームリリースタイミングでは何かしらトラブルなどの騒動が起きたほうが、頑張って運営をしているとかスタートしたんだなとかお客さまに伝わるのに、それがないから伝わらない。イベントも煽らないからなんか抑揚がない、マイペース。
実際はトラブルだらけを頑張って解決していたのに、それが見えない“サイレント運営”と言われてへこみました。
──サービス開始当初は、トラブルがつきものですからね。だいたい最初はメンテナンスだとか何かしらトラブルがあって、対応に追われたりだとか。それはよくも悪くも話題になるんですよね。それがなくて安定しすぎていたのは、確かにそうだったかもしれません。
柏木:プログラマーもすごい頑張って。最初はトラブルがあった時のためのお詫びイラストとかもあったんですけど、結局それも登場することなく。
──今も眠ってるということですか。
柏木:眠ってますね。どこかのタイミングで出しましょうとは言っています。
──それもおもしろいですね。でも、トラブルがないというのはそれはそれで優秀な運営であるという証なので。
加賀:リリース直後は、必死でしたよね。
アートD:表に出なかっただけでトラブルはあったじゃないですか。
──でも、表面化しないというのがすごいです。
牟田:いろいろとありすぎて、詳細を覚えていないのもあります(笑)。常に何かしら対処していましたよ。
柏木:大事故になる前にうまく修正できたのは、エンジニアがすごく頑張ったと思います。それゆえ何事もなく平常運転だったんですね。
運営とユーザーが徐々に共鳴し合っていった
──最近はユーザーの規模感が増してきている印象です。反響があったイベントや、皆さんが手ごたえを感じた瞬間などは、どのあたりになるのでしょうか?
柏木:そうですね。手ごたえがあったところってみんなそれぞれ違う気がするんですよね。
──では、運営ディレクターの加賀さんからお聞きしたいと思います。どの辺りで手ごたえを感じましたか?
加賀:私は“おにぎりイベント(おにぎり狂想曲かぷりっちょ♪)”ですかね。あそこでお客さんの反応がちょっと変わりましたね。「あれ、よくわかんないな?」と(笑)。
もちろん、「こんなにおにぎり集めるのはめんどくさい」などと怒られたところもありますが、それも含めて初めてお客さんから得た、施策に対しての反応という意味での1つの転機だったのかなと思います。
──あれが初の大きなイベントですもんね。
加賀:一応バレンタインのイベントなども仕込んではいたんですけど。
──いきなりバレンタインイベントの後、おにぎりを集めるっていったい何なんだ!? という感じですよね。
加賀:そうですね、そこでお客さんとの方向性が決まったというか。
──『アリスギア』というゲームの実態と言うか、本性が現れた瞬間な気がしますよね。そして、その報酬が小結さんを太らせる服という……。報酬がこれなのかと思って、当時は爆笑しました。
▲大関小結さんは元々ぽっちゃりした管理栄養士として登場し、その後すらりとした美人になってアクトレスに現役復帰。……したのも束の間、イベントでは事あるごとにリバウンドしてしまう。 |
加賀:そこから先は山あり谷ありでしたけど、インパクトとしては“おにぎり”が一番印象的でした。
──アートDさんはいかがでしょう。
アートD:圧倒的に“アマ女(聖アマルテア女学院)”ですね。反響を見てガッツポーズをとったのはそこが初めてです。
──アマ女のタイミングで、これまでとはまた違った客層というか、キャラクターに対して濃いファンが生まれましたもんね。
アートD:キャラクターを準備する時は「こんな人たちに届いてほしい」という想いを込めて設計するのですけど、そのコンセプトが届いてほしいところまでガッチリ届いたなと最初に感じられたのが、アマ女でした。
▲人気が高い聖アマルテア女学院の生徒会メンバー。左から紺堂 地衛理、州天頃 椎奈、仁紀藤 奏。 |
──確かに、あのキャラ設定は「いかにも」という感じですよね。牟田さんは、バトルディレクターとしてどのあたりで反響を感じましたか?
牟田:僕も“アマ女”あたりなんですよね。キャラクター面もそうなんですけど、実は開発もスキルのように増えていくと言うか、つまりやれることが増えていくんです。最近だと敵の攻撃に対するカウンター系のアクションがあったりしますよね。これもリリース後に加えられた機能の1つなんです。キャラの個性がつけられ始めたのがあの辺りだと思っています。
──どんどんバリエーションが増えていますよね。最近だと装着系のSPスキルとか。何かに似ていたため、海老川さんに許可を取ったと噂の……。
一同:(笑)。
──ああいう技とか、すごくバリエーションが増えたなと感じます。戦いの幅が広がっていますよね。
牟田:詳しく言うと、紅花のリリース準備をしていた時に、最近のうちではよくあることなんですが、デザイナーさんたちが有志でモーションを作ってきたんです。実は、それが初めてのランスの固有モーションだったんですよ。
──最近はもう当たり前になってきてますもんね、固有モーション付きの武器。
牟田:元々、基本的にはレア度ごとでしか強さを区切ってなかったんですが……。
──前から楓さんの両手剣など固有のモーションはあったんですけど、本当にごく一部のアイデンティティでした。今では、例えば『フレームアームズ・ガール』のスティレットの片手剣とか、固有モーションの武器が当たり前にあって、すごく開発コストがかかってそうだなと思いました。
牟田:そうですね。コストはとてもかかっています。古いキャラも何とかしたいと思っているんですけど……。
──いわゆる“ゲロビ”系とか……。
▲“ゲロビ”は一定時間攻撃判定が持続するタイプのビームを発射する攻撃のことを指す用語。ゲロビームの略。 |
牟田:そうですね。ゲロビはもっと改修していきたいところですね。ただ、楓のゲロビを直していた時にわかったことなのですが、単純な方法ではうまく直らないということがわかったんです。やはりしっかりと作り起こさないとダメだと……。そうであれば、多少なりとも個性を付けていきたいと考えています。
──楽しみです! 柏木さんはいかがでしょうか?
柏木:僕は潮目が変わったのは、社員旅行のイベントなのかなと思っています。年度末でお金が余ったから社員旅行に行こうってやつですね。
──水着のやつですね。まったく季節感ないですよね(笑)。
加賀:社内でも、なんでこんなに季節感がないネタばっかりなんですか、という話がでましたね。でも、頑なにアートDだけは「こんなに季節感あるのになぁ」って……。なんでこんなに通じないんだろうって(笑)。
アートD:期末で支出調整するために、社員旅行がねじ込まれたって。ほら、とても季節感あるじゃないですか!
▲季節感ある……? |
柏木:そういう意味で、僕らはマッチしてるなと思って作っていたんですけどね。後はそこで、ユーザーには「もう水着を出してきたのか」と言われたんですけど、一方で、一部のユーザーの人たちからは「ちょっと待ってくれ、これはすぐに用意できる量じゃないぞ?」とも言われていました。
──そうですよね、予め出す予定があったのでは、と思いましたよ。
柏木:年度末だからって言う、社会人しかわからないネタを受け止めてくれて、なおかつ、準備にすごい時間がかかるやつだから場当たり的にやってるわけではないというのを感じてもらった。なので、ああ、僕らはこのお客さんたちを信じていいんだなって思いました。
──少し前に開催された商店街イベントで言うと、客層“おじさん”と“あいこうか”たちが多いということですよね。
柏木:ただ、元々ニッチ層に向けてゲームを作っていきましょうという話はしていたので、それでちゃんとその層が遊んでくれているというのがわかったのが、今、ここまで走ってこれている大きな原動力の1つになっているんだと思います。
──なるほど。その後から考えると、『フレームアームズ・ガール』とのコラボイベントが1つの転機だった気がします。また、近いタイミングだと、“リンちゃん探検隊”とかで、このゲームの濃さが爆発した感じがするんですよね。いい意味でユーザーとの接し方が共鳴し合っていったと思うんです。
▲『フレームアームズ・ガール』から轟雷やスティレット、バーゼラルドが参戦。アニメ主人公の源内あおも登場し、原作ファンも納得のクオリティで大いに盛り上がりました。 |
▲意味不明なBGM、唐突な展開、予想の斜め上をいく結末でユーザーを大混乱に陥れた問題のイベント、リンちゃん探検隊。あまりのインパクトに今でも忘れられないが、筆者はこれが一体どんな意味を持つイベントだったのかいまだに理解できていない。 |
柏木:おもしろいネタを投げた時に喜んでもらっているなっていう感覚が、その辺りからすごく強くなってきて。
社員旅行があって、シューティングゲームがあって探検隊があって、そこまで割と形というものが見えてきて。その後、王道の聖アマルティア女学園があって……。そうやって徐々に形作られていったんだと思います。
サイレント運営なんてことを言われていた僕らも、少しずつ外に発信するということがうまく回り始めて行ったのかなと思います。
──空気感が変わった気がしますね。明らかにユーザーがおもしろがっていて、そしてその中でも運営が一番おもしろがっているんじゃないかという雰囲気になっていきました。
柏木:国内の開発運営の中でも、僕らは相当楽しんでいる方じゃないかなと。苦しいけど楽しいっていうことがあるじゃないですか。
──運営側が楽しんでいるというのは、ユーザーにも伝わっていると思います。『アリスギア』をプレイしている人たちって、まるで子どもが「ぎゃはは、こいつらおもしろいな!」と笑っているような反応をするんですよね。
柏木:大人の人たちに子どもみたいな笑いを提供できるということが、何より楽しいのかなって思います。
──そんな子ども心を忘れない大人たちが喜んでいるという様子が、ネット上で各所を見ていると感じますね。
柏木:それは、“子ども心を忘れていない大人が作っているから”かもしれないですね。
──それは本当に真実な気がします。
細部までこだわり抜かれたクオリティが多くの愛好家を生んだ
──『アリスギア』は、なんでこんなに愛好家が増えたのかというと、キャラクターの表情とかモデリングとか、こんなにキャラクターが多数居るにも関わらずコンパチ感がないのもすごいなと思うんですけど、クオリティが段違いなんですよね。ホーム画面がイベントに合わせてどんどん変わるとか、ちょっと正気とは思えないくらいの作りこみだと感じます。
▲成子坂の事務所内となるホーム画面。イベントごとにさまざまな飾りつけが出現したり、中にはギミックが用意されたりするものも! |
柏木:基本的にはとても優秀な人たちが一生懸命に作っているので、とても細やかなものになっています。ただ、全体的に仕様が破たんしないように作られているというのは、エンジニアが常に各要素を見張っているからなんですよ。
エンジニアの見張りがないゲームは、画面遷移で読み込みが長くなってしまったり、よくできてるけどテンポが悪いよね、というものに仕上がってしまう。
優秀な人が好き勝手にものを作るんですけど、最終的にはエンジニアがしっかり見張っている。「君たちのテクスチャのサイズは常に見張られているよ」という環境で作るので、ギリギリ近くまで頑張って、でもまあ安定している。破綻がないのは見張りの成果だと思います。
加賀:その辺のプログラマーとかデザイナーのセンスは結構高く評価をいただいているんじゃないかなとは思います。このUIも何回作り直したんでしたっけ。
アートD:これはもう5回くらい作り直した気がします。リリース前に。
柏木:UIについてはコロプラさんの方針で、すごく気を使って作られています。
この前のバージョンも悪くなかったんですけど、何度もやりとりを交わしながらUIは作り直して精度は上がったと感じました。コロプラさんのユーザー層が好むようなUIと、ニッチ層が好むようなUIのうまい具合に中間になったと思います。
──カメラの操縦感とかもいいですよね。カクカク動くのではなくて、ちょっと遅れて追従するというか、ぬるっと動く感じがありますよね。これが、“自分でカメラを回している”って感覚になります。
アートD:カメラはとてもこだわったところなので、そう言ってもらえるとうれしいです! ビューアーだと、キャラクターが3Dモデルとしてある設定なので、それを360度から自由に動かして見みられて、ポーズとらせて、とやれることが多いんです。
しかし、アクトレスを部屋に呼び出していろいろな服に着替えてもらって、それをカメラを通して見ているっていう体験とそれが同じでいいかというと、違うってなりますよね。アトラクションとして、自分がカメラを通して見ている感覚を再現するには、こういう演出と操作感が必要なんじゃないのと思って、試行錯誤しました。
──自分がその場にいるのではなくて、あくまでドローンに搭載されたカメラを通して彼女たちを見ているっていう設定ですもんね。
柏木:自由にならないことによって、アクトレスの子たちがそこで生活している、そこにいるんだよっていうのを表現しているんですよね。クローゼットに行く時も、移動しているよっていう感じで、本来は暗転も入れる必要がなくて、ぱぱっと行ったほうがいいんですけど。
──暗転を挟むことで説得力が出るんですね。そういう1つ1つの行動に意味を持たせているとか、設定を破たんさせないっていう世界観の作り込みに至るまでがこだわり抜かれている。その細やかさがこのゲームの魅力といいますか、キャラクターを愛せる要因なんですよね。「この子が好きだ!」って。
加賀:その仕草や行動に対する細やかさは、開発当初から言ってましたよね。柏木もチームメンバーに事あるごとに言い聞かせていたのは、「キャラクターではなく、生きている人なんだ」ということです。
──この子はツンデレです、眼鏡っ子です、というような、属性を貼り付けただけじゃないっていうことですよね。
柏木:この子たちはその世界で生きているので、安易なことはしないでと言っています。その子の性格を言い表す時に、そういうカテゴリに属するけど、他の一面もあるよねっていう。
僕らもそうですし、デザイナーの皆さんもそういう感じで作っていますよ。「僕の描いたこの世で一番かわいい愛花ちゃんに変な属性つけやがって……。」みたいに、時々思い出したように連絡がきたりします。
アートD:「うぃーっつ」の話ですよね。あのシーンは愛花からしたら、大好きな綾香に自分のせいで迷惑をかけた、自責の念とか、いろいろなもので泣いてしまいつつも、どうしても綾香に伝えたい言葉があって、大泣きしながら伝えたいことを発言したときの言葉で。14歳の子が本気で泣きながら訴えているとすると実はそんなにおかしい、汚いというものではないんだと思うんです。
──あのシーンは、仮にフルボイスだとしたらもっと悲痛な声に聞こえるはずなんですよね。文字だけで見ると、某キャラクターの名前にしか見えないからネタになっちゃうという側面もある。
柏木:本当に『アリスギア』のイベントシーンって、頑張っていると思うんですよ。
──コンシューマゲームに匹敵するというか、もう遜色ないレベルでよくできていると思います。
柏木:僕らが紙芝居はやりたくなかったというのもあり、せっかくポリゴンのキャラクターで作られているので、それを生き生きと伝えられるような絵作りをしました。
前からのカメラで固定されたイベントはよくあるんですけど、背面越しにカメラから見たりだとか、複数の人間の絡みがあったりだとか、いろいろな手法を使っています。
アドベンチャーゲームを作りなれている今村雄一さんというスクリプトディレクターが、いろいろなゲームも作っていて、その集大成的に2Dの絵の中に3Dを入れてイベントを見せています。
──キャラクターが立体的に配置されているように見えるのがすごいです。
加賀:だまし絵なんですよね。
柏木:これはすごくコストがかかっているので(笑)。
加賀:本物は届けたいというのがありますよね。
アートD:初期の企画資料の中で、柏木が書いたやつだと思うんですけど、結構“本気”っていう単語がいっぱい入っているんです。
俺がこれまで作ってきたアクションシューティングの中でぶっちふぎりの完成度にしてやるぜ、みたいなことが書いてあって。メカ少女を本気でやるから、島田フミカネさんを呼ぶし、海老川兼武さんや柳瀬敬之さんにも声かけちゃうぜって。
それが印象に残って気に入ってて、何かやる時にそれを思い出して「本気でやらねば」「フルスロットルだ」というのは意識しています。
柏木:だから、イベントシーンはすごく頑張って作っているし、『アリスギア』の魅力の大きい部分を占めていると思います。
──アクションシューティングとしても本気だけど、キャラクターの人物としての描き方も本気なんですよ。『アリスギア』は、すごく登場人物を愛している人が多いんですけれど、そういう風に愛せるだけの深みがあるんだと思います。
『アリスギア』は“一次元のゲーム”。極限まで研ぎ澄まされたゲーム性
──次は、『アリスギア』がゲームとして重要視しているポイントですが、1つはアクションシューティングとしての作りこみですよね。
牟田:指1本でコンシューマゲームのように楽しめるというのがコンセプトになっています。コンシューマゲームは、ボタンがたくさんあって、十字キーやスティックもあるっていう、普段当たり前のように使っていますが、実は素晴らしい入力デバイスなんですよね。そこから離れて、スマートフォンやタブレットでそのような操作感を再現するというところは苦労しました。
『アリスギア』は、見た目はコンシューマライクなんですが、分解していくと、ただ敵と線をつないだように向き合って戦う“一次元のゲーム”なんです。理論的にはそうですが、それを感じさせないようにゲーム性を組み立てるのが大変でした。
他に例を挙げると『ダライアス』のような横スクロールシューティングは“ゲームの性質上は完全に二次元ゲーム”です。変な言い方に聞こえるかもしれませんが、『ダライアス』の方がゲームとしては作り込みやすいんです。
──3Dなので縦軸の概念がありますが、動きとしては前後左右しかないんですよね。敵が立体的に現れるけれど、プレイヤー側のアクションとしては前後左右という行動しかできないという。
牟田:実はその左右もちょっと嘘なんです。『ダライアス』のような二次元の横スクロールシューティングでは、自機を上に移動させれば画面上部にいる敵を倒せますし、下に移動させれば同じように画面下部にいる敵が倒せます。何を当たり前のことを言っているのか? と思われるかもしれませんが、実は移動にターゲットを変えるなど大きな意味があるんです。
これが『アリスギア』だと大きく変わります。自機の前に3体の敵が真ん中(距離10m)、左(距離20m)、右(距離30m)にいるとします。まず真ん中の敵をロックしたとして、自機を左右に移動させてもロックしている敵を狙い続けるので左右移動によってターゲットが変わるわけではありません。
ロックした敵を倒した後は、基本的には距離が近い敵を次のターゲットとしてロックしまた攻撃をする……これの繰り返しです。つまり、真ん中(距離10m)を倒した後の次のターゲットは自機を左に移動しようが、右に移動しようが、左(距離20m)の敵となるんです。なので、基本的には“撃って次、撃って次”の繰り返しなんですよね。
基本のゲーム性は単純なんです。そこをロックを切り替えられるようにしたり、5WAYショットや爆風、貫通ショットなどでなるべくプレイヤーが崩していけるように工夫を重ねていく感じです。
これも言い方が難しいんですが、ブーストゲージってあるじゃないですか。あれが2Dゲームでいうところの画面の端を表しているんです。
──ああ、なるほど。その例えはとてもわかりやすいですね。
牟田:あれがないと、ずっとぐるぐる旋回できて、敵がプレイヤーに弾を当てられなくなるんです。そこで、ブーストゲージという制限を設けることで、プレイヤーが立ち止まる瞬間が生まれる。それがリスクになることで、ゲーム性に変化が生まれてくるんです。ただ爽快なだけになってしまうのか、より深いゲーム性が盛り込めるのか、と。
──実際にプレイしていると、おっしゃっている意味が理解できます。
柏木:最も身近なゲーム機でゲームを作っていきたいなと思っていて、スマートフォンがいつの間にか一番身近なゲーム機になっていたので、スマートフォンでどんなアクションシューティングにするかは考えましたね。
──確かにスマホは“誰もが持っている”という意味では、今ではコンシューマよりも身近なデバイスになっていると思います。
柏木:ええ。アクションゲームは作りたいというのもあったんですけど、僕は元々アーケードゲームがすごく好きで、アーケードゲームってときどき操作系のリセットって行われるじゃないですか。
──筐体が新しくなったりすると、これまでとはまるで違う操作系統になりますね。
柏木:そういう意味でいうと、今スマホのアクションゲームは操作がリセットされている状態で、作り手は皆さん「そこに最適なものってなんだろう?」って、手探り状態になっていると思っているんです。
だったら、僕らは1個突き抜けたものを提案してもいいんじゃないかなっていうことで、アクションシューティングという形で操作系を作って、提案してみたいと作ったのが『アリスギア』です。
やっぱりコンシューマやアーケードゲームなどでずっと作ってきたスタッフが作り続けているので、要求もしますし、作る方もすごく丁寧に作るんですよね。
ずっとゲームを作って来た開発者視点から見て、今のスマホってメチャメチャ高性能なので、もっとできるはずだし、本気で作れば本気のものが作れるハードだから、「ピラミッドは絶対にそこで手を抜かないようにしましょう」ということで、作っているんですね。
──スマホって、どうしても操作の面でまずボタンが足りないっていう絶対的な問題があるんです。でも、『アリスギア』はシンプルな操作でできることを最大限つき詰めた結果、やっていることは単純だけどもスピード感のある戦闘に仕上げている。最適化なんですよね。“単純=単調ではない”という。
柏木:それを目指して作ろうとして、バランス調整だったりもバトル班は見事に仕上げていると思います。
──この操作性で、難易度で、油断すると結構あっという間に死ぬじゃないですか。サソリ(セルケト)の回転攻撃でビシってやられたり。
柏木:死にますねえ。
──でも、ちゃんとやり込むとノーダメージで倒せるんです。調査任務では“完全回避ボーナス”というものも実装されていますし。そういう設計になっている。そのバランス調整って、本気のアクションゲームじゃないと成し得ないんですよ。
牟田:ああ、思い出しました。それも開発当初にすごい議論があったんです。僕はコンシューマ畑なんですけど、ソーシャル畑の人は定期的に避けられないダメージを与えるべきだっていう人もいるんです。だけど、それはやめようっていう方向で進みました。
柏木:プレイヤー側に無敵回避があるから、理屈上でもできなかったんだよね。
牟田:いや、やる方法はなくはなかったけど……。
加賀:避けられない攻撃があって、それを無効化できるという商材価値を付けたキャラクターを提供する……というようなのも、ソーシャルゲームの売り方の1つだと思うので、そのよし悪しの問題ではありませんけどね。
柏木:そういうデザインもあるので否定はしないんですけど、僕らは最終的にはそうではない選択肢を取ったということです。
──やろうと思えば、星3キャラだって、調査任務のそこそこの宙域をノーダメージクリアできたりしますからね。もうリリースから1年経つのに、このバランスを維持しているのがそういうことなんだなと思っています。
柏木:それはバトル班が頑張っているということです。
牟田:とはいえ、“ハイドランジア”という高難易度クエストを反属性のキャラクターのソロでノーダメージクリアしている動画がネットに上がっているのを見た時は、さすがにびっくりしましたね。
──常人にはできないような動きをしている方、ときどきいますね……。
柏木:『アリスギア』はちゃんと僕より上手い人がいっぱいいるから、全然平気かなと思ってます。『ダライアス』とかは僕が一番頑張っていたので、ゲームをクリアできるか、できないかのところが、自分基準になっていました。
──感覚がズレてしまうということですね。「ここまで上達したらクリアできます」というボーダーラインがわからなくなってしまうという。
柏木:それでいうと、『アリスギア』のバトル班には結構上手い人たちがいて、「これはこう使ったらいいんじゃないですか?」っていうことを話し合いながら作っているので、絶対的に弱いか、強いかではなくて、探していくと意図した強みとか、こういうところで活躍できるっていう場が必ず用意されているんです。
それは、作っているのを横で見ていて信頼ができるかなと思うんです。ただ、すごい揉めながら作っているから(笑)。
牟田:そうですね(笑)。
柏木:ソーシャルゲームって、よくWikiとか攻略サイトがあるじゃないですか。そこの人たちも、ゲームがガチすぎて、誰も評価してくれなくなってしまっていたんですよね。
──誰よりも開発側がガチなので、それを超える攻略サイトが存在しないという。
柏木:ここまで、システマチックに、評価の方向性がわかれると判断するのは厳しいと思います。対戦ゲームだとダイアグラムなどが作れるんですけど、シングルプレイのゲームでここまで評価の方向性が多くなってしまうと評価がとにかく難しいと思います。
──評価の余地がないんです。作り込まれすぎていて、語るべきことがないんです。もう、見ればわかるって感じなんですよね。
柏木:シチュエーションがすごく多いので、この時は強いけどこの時は、もうちょっとどうにかならないのかなっていうのもあるので。
──とはいえ、そういった攻略サイトのようなものを用意をしてくれと言われれば、できなくはないんでしょうけど、大変ですよね。
柏木:それが絶対ではないとか、使ってみたらそうでもない、違うからその評価を直してくれ、みたいな声は多くなりそうです。
──ガチ勢からのファンレターが多くなると思います。
アートD:アクションゲームだから人によって評価も違っちゃいますもんね。速いキャラが好きな人もいれば、重くて一発が大きいキャラが好きな人もいる。
──例えば、同じジニー(バージニア・G)でも違う。ジニーってバランスキャラじゃないですか。でも、僕の使うジニーと他の人が使うジニーでは感触が違うかもしれない。僕は両手剣でガンガン切り込むスタイルだけど、他の人はライフルで手堅くいくとか、そういう幅ができるゲームなので、評価のしようがないんですよね。
牟田:後は、究極的には「性能は別にいいよ」っていうのがあって。俺、ジニー好きだからいいじゃんって言える雰囲気もある。
▲ジニーが好きだからいいのだ。 |
──ガチ評価はナンセンスだ、俺はこの子が好きなんだし、っていうのも許容するゲームですね。
『アリスギア』で日常を彩る体験を
──加賀さんが運営ディレクターとして、『アリスギア』で重要視しているところは何でしょうか?
加賀:『アリスギア』というコンテンツを通じた“ゲーム体験”というのを私はもっとも重要視していますね。
これまでに、有名なゲームクリエイターさんたちが語り尽くしていると思うんですけど、やっぱりゲームって“体験をどういう形で提供できるか”だと思っています。そこが運営というフェーズに入っても、イベントやアップデートを通じて『アリスギア』にしかないゲーム体験だったり、日常を彩るような体験をしていただきたいなという気持ちですね。
牟田:そういう努力が実を結んで、「強くなくてもいいからこの子が欲しい」ってユーザーに言ってもらえる魅力になっていますよね。
──この子のアナザーだから欲しい、コンプリートしたいから欲しいみたいな欲はありますね。ソーシャルゲームだと、強さがモノを言うケースがどうしても多くて。キャラ愛でガチャを引かせるっていうのはなかなか少ないのかなって思います。
柏木:そうですね。無理やり星4を引くよりも、楽しみながら引いてもらいたいっていうのはあります。
──ゲーム的にも、星3で十分なんとかなっちゃうんですよね。
柏木:実際に、バトルのバランスは星3を基準に設定していますからね。
──では、アートディレクターの目線からは、どうでしょうか。
アートD:「この子はこうだよね」「わかる~」っていう風に、ユーザー同士が交流をしてくれたら。このキャラが好きなのでイラストや同人誌を描きましたってなったら、それはとてもうれしいです。
運営側が提供しなくても、そのキャラを愛して、理解して愛でてくれる輪ができて。世の中に発表してくれる人がいて、作品を知らない人もそのキャラをかわいいと言ってくれる、そういう広がりが生まれてほしいです。運営とユーザーという関係よりは、ゲームを囲んでみんなで楽しんで歩いていく仲間みたいな。
そのためにも、“『アリスギア』を楽しむ場”というのを提供できるように意識して、なるべくそういう人に楽しんで、喜んでいただけるようにと考えています。
▲クリスマスイベントのビデオレター。感慨深い内容のものが多く、推しの子が登場した日は“燃える”隊長が跡を絶たなかった。筆者もご多分に漏れず、ジニーが登場した日はあまりのショックに一日中、仕事が手につかずジニーのことしか考えられなかった。 |
──すでにその予兆というか、それは見えてきていますよね。『アリスギア』というコンテンツの盛り上がりを見て、イラストレーターさんが描いた絵を見て、気になったからゲームをプレイするとか、ゲームはプレイしていないけどキャラが魅力的だから描くとか、そういったムーブメントが起き始めているなというのは感じます。
アートD:極端に言ってしまえば、ゲームをインストールしなくていいから『アリスギア』というものを知ってもらいたいですよね。
──それが一種の布教活動というか、『アリスギア』を遊んでもらうきっかけになりますよね。例えば、他のタイトルを挙げてしまうと『Fate/Grand Order』などはまさにそうで、イラストを描いてもらうだけで宣伝になるのがとても大きいです。『アリスギア』も、そういう風にいろいろなイラストレーターの方が『アリスギア』のイラストを書いてくれるようになれば、それでどんどん広まるので、ハッピーだと思います。
柏木:全体的なゲームデザインとかもそうなんですけど、あまりユーザーに負荷をかけないような形でゲームやイベントを組み立てようと考えています。そういう意味だと、他のソーシャルゲームをやっている人におすすめのゲームって、『アリスギア』と言ってほしいところなんですよね。
ゲーセンのシューティングって短時間の気晴らしや楽しみに遊んだじゃないですか。元々“セカンドゲーム”っていう構想があったので。メインではなく、サブとしても遊ばれるゲームであるようにと。そういう意味だと、“セカンドゲーム”という要素をもっと極端にしていってもいいのかなと考えてはいます。
──“調査目録”とかもまさにそうですよね。調査任務を“プレイしたことにする”時間短縮アイテムなので、とても便利です。
柏木:これはすごく悩ましいんですけど、オート戦闘を入れる入れないの話もあって。オートで高難易度のボスは倒せませんし、難しい話で、体験まで潰すよりは“もっと短い時間で楽しめるように”っていうところを今は目指したいです。
さまざまなジレンマなどがありますが、『アリスギア』というタイトルは、いろいろ考え何年も戦っていけるコンテンツにしていきたいと思っているんです。
──それはスマートフォンゲームというくくりだけではなく、ということですね。
柏木:そうですね。リリースして1年経つ前にプラモデルが出てるということであるとか、ゲームを作りながらなんですけれども、『アリスギア』というIPをどういう形でユーザーに見せていくのか? というのは常に意識しています。
──関連商品としてプラモデルが1年も経たずに出るというのは、異例のペースですよね。
柏木:プラモデルやフィギアに関しても、ただ出せばいいというわけでなくて、しっかりとその人たちが望んでいるものをきちんとしたクオリティで出していくことが、このコンテンツに一番プラスになるんじゃないかなと思いながら取り組んでいます。
グッズ展開も積極的にやっているのは、ゲームだけではなくて、体験としてそういうものがほしかった。自分でも心の底からほしいと言えるものを作れたらいいなと、開発当初から進めていた企画ですね。おかげさまでプラモデルに関して言えば、大ヒットと言っても間違いではないと思う反響をいただいております。
▲プラモデルキット“メガミデバイス”シリーズで登場した吾妻楓さん。今後も多数のキャラが登場予定です。 |
──発売された時に実店舗を練り歩いて様子を見たんですが、どこでも大きく扱われていて、勢いを感じました。
柏木:それは、僕らの力だけではないんですけど、そういう形で『アリスギア』というものをちゃんと皆さんの記憶の中に、「こういうコンテンツがあるんだよ」と伝えられるように作っていきたいなと思っています。
──これからも、お嬢(一条綾香)とか、愛花ちゃんとか、怜ちゃんとか、“figma”で夜露ちゃんとか出ますもんね。夜露ちゃん、一時期タイトル画面からいなくなってしまったのが笑ったんですけど。
加賀:SOLラプターとのコラボ期間中は、“メガミつながり”ということで……。
牟田:(笑)。
柏木:後は、“メカ少女”っていうと、ジャンルとしては擬人化系が多くてですね。『アリスギア』を作る時には、周りの人たちから「どうして擬人化にしないのか」って結構言われたんですよね。
──擬人化が当たり前だと思われている?
柏木:ええ。でも僕らは、最近受けているから擬人化コンテンツを作りたいのではなくて、真っ向から新しいコンテンツとして立ち上げていくつもりで作っていました。ですので、メガミデバイスだったり、figmaだったりとか、立体物の企画を最初から作ろうとしたのは、「新しい物を立ち上げて行く意志を示す」ということの証明という意味もありました。『アリスギア』というこのコンテンツを皆さんと作っていきたいと。
牟田:それはお客さまも含めてということですね。
柏木:そうです。
──お客さまを育てていくという意味も含めて、『アリスギア』というIPを育てていくと。
柏木:そうですね。むしろ、お客さまに育てられているという感じです。
衣装にもストーリーが用意されているこだわりのデザイン
──よく“殴り合い”と表現される開発スタッフ同士のやりとりとは、具体的にどんなことをされているんでしょうか。
アートD:キャラ班はみんな若い女性で、本当に拳で殴り合うっていうのはありませんが(笑)。大抵、みんな愛が深くなりすぎていて、デザイン画とかがあがってくると「なんでこの人がこれを着ると思っているんですか?」とか、そういう衝突があったり。
あるいは、デザイン画をあげたよって誰かがいうと、「ちょっとあれ違うと思う」って横から別のデザイン画が来て選択を迫られたりとか。「話し合いましょうか」って……。
──まるで修羅場みたいですね。
アートD:「どういう理屈でその衣装なの?」っていうプレゼンが始まったりとか、「私のほうがこの子のことを理解(わか)ってますけど?」っていう、そういうバトルが繰り広げられます。
一同:(笑)。
加賀:衣装1着にもストーリーがちゃんとありますよね。これはどこで買ったやつで、どう手に入れたとか。本人がどうやってその衣装と出会ったのかという。
アートD:話し合っている時はまだちゃんと話し合いの体なんですけど、社内のチャットツールだと、もうちょっと“フランクな感じ”で言い合いがあったりします(笑)。
加賀:牽制し合ったりとかね。
アートD:そうそう。最終的な判断は僕がさせてもらっているんですけど、キャラ性とユーザー層への訴えといろいろなバランスを鑑みて「確かにこの子が着るのはこれだと思いますけど、そこは調整をさせてください、すみません」と言って、手を入れさせてもらうことはあります。
そうすると、「あいつ、勝手にダサくしやがって……」って言われたりとかしますけど。
一同:(笑)。
──最近の衣装は、とくにストーリー性がありますね。シタラちゃんのコスチュームとか、「通販で買ったが着用モデルと体型が違いすぎて、思ったよりセクシーが牙を向いた」っていう、説明文通りの衣装とか。
アートD:あれはプランナーさんも協力してくれてますね。デザイナーから「あの衣装はそうじゃねぇでございますけど!?」ってツッコミがきたりすることもありますが(笑)。
初期のころは僕ともう1人のデザイナーで衣装デザインをしていたんですけど、最近は割とおまかせになってきました。キャラもつかめてきて、愛が信頼できるので。今では下着のチェックとか僕のところに回ってこなくて、「実装をもって発表に代えさせていただいます」みたいなこともあります(笑)。
──最近はズボンのクオリティ、上がってますよね。ニーナちゃんのメイド服とかすごくて、やたら歓喜の声が上がっているんです。
柏木:いや、ノイズが入るやつは基本パンツなので。
アートD:健全なゲームなので、パンツが見える機能はゲームには入っていないですね。
──でも、この角度だと見えちゃうんですよね?(ゲーム画面を見せながら)
柏木:それはバグっているんじゃないですかね(笑)。
アートD:これは伝わってないことかもしれませんが、3Dモデルのカスタマイズ画面って、あれは本人が浮いているわけではなくて、「出撃する時はこんなセットアップで出る予定ですよ」ってアサインを3Dとして出力しているという設定なんです。だから、あの映像は本人ではないんですよね。
──仮想のデータという設定なんですね。
柏木:だから、ノイズがかかるのは、登録情報からシステム的に行われているんです。
──でもこれ、読み込みの瞬間に激写すると、撮れちゃうんですよね。
柏木:それもバグです。
アートD:そんな1フレームは存在しないのでございます。
加賀:一部なんですけど、カスタマイズ画面に入った瞬間にノイズが入るっていう場合もあって。短すぎて……。
アートD:ギアを装着するときは長いスカートが短くなるっていう仕様なんですけど、短くなった時がすごいことになってしまう子がいて。
加賀:油断ならないですね。
執念の『ストライクウィッチーズ』コラボイベント
──下着の話題でヒートアップしたところでアレなんですが、『ストライクウィッチーズ』コラボについてもお聞かせください。
柏木:基本的には、KADOKAWAさんと島田フミカネさんとご相談してやりましょうってことになりました。
『ストライクウィッチーズ』が10周年で、僕らも島田さんとずっとお仕事をさせていただいているのでお祝いしたいよねという話で、とにかく年内に10周年お祝いコラボをやったらおもしろそうだよねってところで企画が進みました。
もう一番最初の企画のところから島田さんと話して、提案書みたいなものを島田さんが会社に来て一緒に作ってたんですよね。それで、コラボの原案を島田さんに作っていただきました。あとキャラクターに関してですが、僕らにも作り切れるキャラの物量があるので……。
──これだけのクオリティだと、第501統合戦闘航空団から全員は難しいですよね。
柏木:本当に断腸の思いも交じりつつ、キャラクターを選びました。
──コラボイベントのストーリーなどは、どのように決められたのでしょうか?
柏木:世界観については、僕らはやたら世界観が混じっちゃうのがそんなにいいことだとは思っていなくて、『FAガール』も『メガミデバイス』も、明言する尺がなかったので明言していませんが、パラレルワールドの話になっているんです。
今回の『ストライクウィッチーズ』に関しては尺も長めにとっているので、ちゃんとパラレルワールドだということも説明しています。
──なるほど。そういえば、確かにこれまでのイベントではそういった説明はありませんでした。
柏木:いっそのこと、ゲームの入り口から分けてあげたほうがいいんじゃないかなと思うくらい。『アリスギア』への入り口と、コラボイベントモードへの入り口と分けてしまうのも考えていました。
──そこまで徹底しようとするのもすごいですね。
柏木:『ダライアス』の時は実際に入り口を分けたんですよ。ノーマルのモードと、コラボモードがあって、コラボモードのほうに入るとコラボ機体を使えますと。入り口を分けて、これはパラレルワールドですよっていう宣言をしている。
やっぱり、『アリスギア』が好きな人たち全員が他のタイトルを好きというわけじゃなくて、混じるのを好きな人もいれば嫌いな人もいると思うので。
──それぞれの作品の世界観を大切にしているんですね。
柏木:そういう意味だと、僕らは『ストライクウィッチーズ』も好きなので、そのファンにも喜んでもらえるようなものと、『アリスギア』で喜んでいるような人たちがそのまま「こういうのもありだよね」って喜んでもらえるようなものを提案したいと思っています。
──『ストライクウィッチーズ』が好きな人が『アリスギア』に入るための入り口としては、完璧に近いコラボだと思うんです。島田フミカネさんといえば『ストライクウィッチーズ』なので。
柏木:『アリスギア』はすでに知っていて、それでもやらないっていう人たちもいるので、その人たちがおもしろそうだからやってみようかなって思うきっかけになってくれればうれしいですね。
このコラボイベントはシナリオにもすごく力が入っていて、アドベンチャーパートにちゃんとストライカーユニットを履いて飛んでいるシーンが入っています。正直、頑張りすぎだよねって思うくらいによくできています。
▲まるで『ストライクウィッチーズ』の新作ゲームなのでは? と思うほどのクオリティに仕上がっているコラボイベントのアドベンチャーパート。これが止め絵ではなく、表情がついたり、アニメーションするのだから驚き。 |
アートD:あれはデザイナーの激怒案件ですね。
柏木:見せちゃいけないところとかガンガン見えたりとか。
アートD:「芳佳をいくつ作らせる気ですか?」みたいな(笑)。
── 一条綾香ちゃんの盾の模様でプログラマーが怒ったという、例の激怒案件に続いて、開発スタッフの激怒案件第2弾というわけですね。
柏木:そもそもギアをつけて、アドベンチャーパートに出すというのが想定外のシステムです。システム的に許容されてないんですよ。今回のコラボのために無理やりやったんです。専用のモデルを特別に作って、力技で実現しました。
アートD:ハイクオリティな“ホームモデル”っていうのと、戦闘時に表示するための軽量版“バトルモデル”っていうの必ず作っているんですけど、今回のコラボイベントでは“バトルモデル風ホームモデル”を作らないといけなくなって……。
──でも、そのおかげであのクオリティのイベントシーンに仕上がったということなんですね。
アートD:やろうって言い出したのもデザイナーなんですけどね……。
『アリスギア』を長く、ずっとおもしろがってもらえる環境作りをしていく
──最後に、『アリスギア』の今後の運営方針や抱負などをお願いいたします。
加賀:新しいゲーム体験、そしてゲームにとらわれず『アリスギア』というコンテンツでお客さんの生活の一部になっていくべく、今年も頑張りますので、よろしくお願いします。
──大丈夫ですか、文鳥への愛とかそういうのは。
一同:(笑)。
柏木:文鳥の話、今回は一度もしてないじゃん。
加賀:あんまり文鳥の出番がなかったので、文鳥の新キャラも増やしたいですね。今はピッピちゃんだけで寂しいかなと思うので、ピッピちゃんのお友だちとかも増やしたいんですが、協力してくれる人があまりいなくてですね。
柏木:「文鳥で新キャラを作れ」とかよくわからないことを言っているので、文鳥が好きなデザイナーとか、プログラマーはぜひピラミッドに来て手伝ってあげてほしいですね。
加賀:鳥イベントとかにも出展したいですね。鳥のオンリーイベントっていうのがあるんですよ。社内で言うと、「何それ……」って言われます(笑)。
柏木:文鳥とコラボしたいってこと?
牟田:キャラモデルとかを作ってくれれば、ビジョンぐらいは見えてくるのでは(笑)。
加賀:そこは本当に、社内のデザイナーさんだとかプログラマーさんが、気を使ってくれたのか、優しさで「そんなに好きならやってあげますよ」って……。
──同情されてるんですか(笑)。
アートD:それでちょっと手を差し伸べたら、「なってねー!!」ってダメ出しをするんですよ(笑)。
加賀:これは別に文鳥に限った話ではないですけど、やっぱりやるからにはファンが納得してくれるクオリティで作りたいじゃないですか。文鳥ファンに見せて恥ずかしくないように、細部までこだわりを出さないといけないと思いまして……。
──熱い文鳥愛をありがとうございます。
アートD:僕は、“調査任務”だけではなく、違うコンテンツをいくつか模索して進めているのがありまして。どれか1つでもいいから早く入れたいです。
加賀:結果として、1年間コンテンツは足していないですからね。
──“今日のコーディネート”みたいな、キャラクターのコーデを楽しめるものなどがあると楽しいかもしれません。
アートD:推しと、推したちと楽しく過ごせるところがほしいんですよ。できれば、ただその体験だけじゃなくて、ちょっとくらいアニマをもらえたりとかも。それで、撮影会というか、スクショが捗る感じにしたいです。
現状だと、気に入っている服を着せているとずっとその状態になっちゃうので、着替えさせてあげるっていうのが楽しめるようなコンテンツは入れたいですね。
──ドレッサー画面を趣味以外でも使う要素がもっとあるといいと思いますね。
アートD:ええ。例えば、後ろに背景を変えられるパネルを用意するとか、モーションを足したいとか、そういうのですね。
そういったことを考えているので、まったりとお付き合いいただけるとご期待にお応えできるチャンスが来るかもしれないです。
──ありがとうございます。では、バトルの牟田さんも。
牟田:ええと、これはちゃんと言っておきたいんですが、決して重装とか、片手剣を見捨てたわけではないので……。
一同:(苦笑)。
牟田:調整的にも古くなってしまった内容も出てきているので、もう少し待ってもらえると、という感じです。さっきの話でいうと、紅花の実装前の子たちも見捨てたわけじゃないので。ゲロビだったりとかも。
加賀:社内でも結構いろいろな人にも言われるんですよね。ダダダっと走ってきて、「牟田さん、これどうなっているんですか?」と聞かれ続けるという(笑)。
牟田:強いか弱いかというよりも、初期のキャラが好きな人が「最近は固有で新しいスキルやモーションが多いよね」っていう、ユーザーさんの声を、新しい内容がリリースされるたびに見るんですよね。ここは何とかしていきたいと思うので、単純に強くするというよりは、その子を新鮮な気持ちで使ってあげられるようにしたいですね。
──現状は使用率が低いアクトレスやギアもいずれは脚光を浴びると。
牟田:ええ。よろしくお願いいたします。
──ありがとうございます。最後に、柏木さんもお願いします。
柏木:僕は、『アリスギア』という存在自体が、まだまだ皆さんに知られていないと思っているので、とにかくそれを知ってもらうということをやっていきたいと思っています。
ゲームの中身っていうのは、真面目にしっかりと作っているつもりで、僕もやっていますし、周りも全員そのつもりでやっているので、ゲームに関しては、すごく頑張っています。
それを、「こういうものがあるんだよ」と外に広めて行く努力を僕らはしていかないと、今はゲームの世界で完結してしまっているので。
──よくも悪くも内輪ノリになってしまいますね。
柏木:はい。そのところを、もう少し『アリスギア』というものを広げていきたいと思っています。
本当に、『アリスギア』をちゃんとみんなが知っている、言葉を変えると、アニメファン、ゲームファンの人たちなら遊んだことがある、知っているという“たしなみ”レベルまでもっていきたいと思っているんですよね。「あー、知ってる知ってる!」と言われるくらい、「あれ、本当にバカなんだよね、おもしろいんだよね」って言ってもらえるように。
アニメとかは、並列で何本も見たりできるんですが、ゲームはなかなか、それができないので。
──コンシューマゲームだったら、この期間はこれってなっちゃいますよね。スマホゲームもイベントの期間がかぶったりすると、あまり浮気できないんです。同時並行でやるのは2つか3つが限界だと思います。
柏木:『アリスギア』が必ずしもメインのゲームになる必要はないと思っています。ただ、長く、ずっと『アリスギア』をおもしろがってもらえるという環境を作っていければなと思います。
それを実現したいというのは2年目というよりは、新しい出発をしていかなくてはならないと思うので、そういう意味では、まだまだスタートラインから本当に出ているのか? というのも、僕らの中では怪しいと思っています。
──それは、『アリスギア』という存在そのものを知ってもらうというスタートラインに立っているがどうかっていう認識ですよね。
柏木:そうです。この1年、開発運営一同、すごく頑張って、走って、暴れて作ってきたと思うんですけど、やっぱり『アリスギア』のことを一部の人たちしか知らないので、もっと多くの方に、『アリスギア』って短時間で遊べるし、おもしろいよねって共感をしていただけるところまでもっていきたいと思います。
──もっと『アリスギア』、そしてメカ少女というジャンルが広がってほしいですよね。まだ触っていないだけで、『アリスギア』愛好家になる候補者が、いらっしゃると思います。今後のさらなる飛躍を願って……本日はありがとうございました。
一同:ありがとうございました。
【アリスギア特集】連載記事一覧
『アリスギア』公式設定画集が本日発売!
サービス開始1周年となる本日2019年1月22日に、『アリス・ギア・アイギス』の公式設定画集が電撃より発売されました。
本書では、サービス開始から2018年10月までの間に実装された、30名のアクトレスのビジュアルや設定画などを収録。島田フミカネさん、海老川兼武さん、柳瀬敬之さん、かこいかずひこさん、くーろくろさん、フヂロウさんらが手がけたアクトレスやギアのデザインをじっくり見たい人のための本ということで、本のサイズはもちろんA4判!
1周年の記念にふさわしい本となっているので、ファンはぜひ手に取ってみてください。
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(C)KOTOBUKIYA・RAMPAGE (C)Masaki Apsy
(C)2020 島田フミカネ・KADOKAWA/第501統合戦闘航空団
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