2019年2月1日(金)

『ネルケと伝説の錬金術士たち』の発売を記念してショートストーリーを土屋暁氏らが特別寄稿!【電撃PS】

文:電撃PlayStation

 『アトリエ』シリーズ20周年記念作品として、1月31日にPS4、PS Vita、Nintendo Switchでコーエーテクモゲームスから発売された『ネルケと伝説の錬金術士たち ~新たな大地のアトリエ~』。担当管理官のネルケとなって、なつかしい顔ぶれと協力して、理想の街づくりに勤しんでいる方も多いでしょう。

『ネルケと伝説の錬金術士たち』

 そんな『アトリエ』シリーズを愛する熱心なファンに向けて、今回は本作の制作に参加している土屋暁氏(『サージュ・コンチェルト』シリーズなどを手掛けた。本作のシナリオをプロデュース)をはじめ、シナリオ制作スタッフ陣が電撃オンラインのために発売記念スペシャルショートストーリーをなんと14本も寄稿! ゲームでも見ることができない“土屋節”が全開のステキなストーリーばかりですので、ぜひ期待してご覧ください。

【Short Story01】メヌエットを聴きながら

『ネルケと伝説の錬金術士たち』

<登場キャラクター>
ネルケミスティ

ミスティ:さて、朝の食事の支度もすみましたし、そろそろネルケさまを起こしに行きますか。

~フルートの音~

ネルケ:♪~~~~

ミスティ:……おや、あの音は……。

ネルケ:ふぅ……。

ミスティ:ネルケさま?

ネルケ:あ、あらミスティ。見つかっちゃったかしら。ごめんなさい、仕事はあと少しで終わるから……。

ミスティ:いえ、そうではなく……また徹夜で仕事なされていたんですか?

ネルケ:あはは、考え過ぎてちょっと詰まっちゃってね……。

ミスティ:まあ、ネルケさまが徹夜で仕事なされるのはいつものことですが……。今は大丈夫そうですが、くれぐれも無理はしないでください。

ネルケ:はい、気をつけるわ。……あれ、今は大丈夫そうに見える? どうしてわかるの?

ミスティ:はい。フルートの音色が、とても澄んでましたから。

ネルケ:そ、そう……ありがとう。

ミスティ:ネルケさまのフルートの音色を聞けば、だいたいの体調はわかります。もちろん、お食事中の仕草でも、カフェオレのおかわりの量でも、外出なされている時の歩き方でも時折聞こえる鼻歌でも息遣いでも。

ネルケ:ちょ、ちょっと待って! それでどうしてわかるの!?

ミスティ:メイドですから。

ネルケ:……そ、そうなのかしら……。

ミスティ:それより、フルートはもう終わりでしょうか?

ネルケ:え、まだ仕事に戻らなくてもいいの?

ミスティ:今残っている書類は、今日中にあれば大丈夫ですから。それより、今はネルケさまの演奏を聞いてみたくなりまして……。

ネルケ:ミスティがそんなことを言うなんて、珍しいわね。ふふっ、それじゃ、もう1曲だけ演奏しようかしら。

ミスティ:……はい、お願いします。

【Short Story02】恋するカフェオレ

『ネルケと伝説の錬金術士たち』

<登場キャラクター>
ネルケ

ネルケ:美味しい~。やっぱり、ここのお店のカフェオレは最高ね。徹夜の合間に飲むカフェオレも美味しいけど、ここの味にはやっぱり敵わないかしら。このお店のおかげで、このあたりもだいぶお客さんが増えたし、本当に良かったわ。

ネルケ:……うん、少し冷めても……美味しい♪ ……ただ、ひとりで飲むのはちょっと寂しいわよね……。今は、まだやるべきことがあるから仕方ないけど……。

ネルケ:将来は、いつか素敵な方と一緒に、こうしたお洒落なカフェでデートできたら……。うん、お相手は、やっぱり気が合う方がいいわよね。私と一緒に手を取り合って……、そして、冒険の旅へと一緒に行ってくれるような……。

ネルケ:そうね、こんな素敵なお店に来る時は、一緒に冒険の旅に出かけた後かしら。旅の感想を語り合いながら、ふたりでお茶を飲むの。……本当は、お茶じゃなくって、もっと甘々な……きゃ~っ!

ネルケ:ふふふ……そこにね、外で遊んでいた子どもたちが帰ってくるの。そうね、やっぱり子供は、男の子と女の子のふたりで……。もちろん、子供の名前ももう決まっていて……。

ネルケ:……はっ。そろそろ仕事に戻らなきゃ。今はまず、自分がやらなくちゃいけないことをやらないとね。……よし、気分転換もできたし、屋敷に帰りましょう!

【Short Story03】ワーキング・ガール!

『ネルケと伝説の錬金術士たち』

<登場キャラクター>
ネルケハゲル

ネルケ:わぁ……これ、すごいわ。こうして、街ができていくのね……。

ハゲル:おう、嬢ちゃんじゃねえか。

ネルケ:ハゲルさん。こんにちは。こちらの工事、もうここまでできたんですね……。思わず感動してしまいました。さすがハゲルさんです。

ハゲル:いやぁ、俺たちは言われた通りに作ってるだけだからよ。そう思うんなら、それは嬢ちゃんがすげえんだよ。

ネルケ:いえいえ、それを形にできるのは、ハゲルさんたちのお力があってこそです。こうして、皆さんの協力があるからこそ、この街がより大きく、より便利になっていっています。本当に、ありがとうございます。ですが、あまり無理はなさらないでくださいね。疲れたら休んでください。

ハゲル:がっはっは、俺たちは身体が資本だからよ。これくらい、少しも疲れてないぜ。それより、嬢ちゃんこそ気をつけてくれよ。嬢ちゃんが頑張り過ぎて倒れられちゃ、みんな心配するぜ。

ネルケ:ありがとうございます。はい、気をつけます。それより、あの部分についてなのですが、どのような形で支えているのでしょうか? もしよろしければ、説明していただけますか? テコの原理の応用に見えるのですが……。

ハゲル:はっはっは、俺たちに負けず、嬢ちゃんも元気だねえ。その調子なら大丈夫そうだ! 嬢ちゃんのように学問的なこたあわからねえけど、大工仕事のことなら任せとけ。説明してやるぜ。

ネルケ:ありがとうございます!

【Short Story04】膨らませていいものは?

『ネルケと伝説の錬金術士たち』

<登場キャラクター>
ネルケミスティ

ネルケ:……なるほどね……。……!? ちょっと、どうなってしまうの……!?

ミスティ:……ネルケさま。

ネルケ:う、うう……。まさか、こんなことに……。

ミスティ:ネルケさま。

ネルケ:ふふっ、良かった……。

ミスティ:ネルケさま!

ネルケ:……でも、まだこっちの謎が残っているのよね。……あっ! ちょっとミスティ、本を取らないで。今、すごく盛り上がっていたのに……。

ミスティ:読書もよろしいですが、もうお仕事に戻る時間です。

ネルケ:う、うう~……。

ミスティ:見聞を高めるに本を読まれる姿勢はけっこうですが、お仕事もしていただかないと。

ネルケ:それはわかっているわよ……。でも、今、本当にいいところだったのに……。

ミスティ:……いいところ、と言われても……。ただの地図ではありませんか。

ネルケ:ただの地図って、失礼ね。地図には、いろいろな情報が詰まっているのよ。そこにはどんなものがあるのか……。昔、どんな人たちが住んでいて、何が起こったのか。そういうことに想いを馳せるだけで、夢が膨らむじゃない!

ミスティ:膨らませるのは胸だけにしてください!

ネルケ:ひどい! セクハラよ!

ミスティ:はい、セクハラでございます。全てはネルケさまがお美しいのがいけないのですよ?

ネルケ:(ううっ、そんなこと言われたら怒るに怒れないじゃない……)

ミスティ:さあ、もうお腹いっぱい戴きましたから、お仕事にお戻り下さいませ、ネルケさま。

【Short Story05】きをきかせすぎてきがきじゃない!

『ネルケと伝説の錬金術士たち』

<登場キャラクター>
ネルケミスティ

ネルケ:うーん……。困ったわね。いい書き出しが思い浮かばない。頼まれて仕方なく引き受けてしまったけど、私、洒落たお祝いのメッセージって苦手なのよね。でももう時間もないし、そろそろ仕上げてしまわないと……。

ネルケ:おめでとうございます。……から入ると、次に続く言葉が難しいわ。

ネルケ:この度は、この度は……。この度は、おめでとうございます。……結局、おめでとうございますとしか言えなくなっちゃうのよね。ということは、おめでとうございます、に繋がらない言葉から入ればいいんじゃないかしら?

ネルケ:我ながらグッドアイデア! 今度こそ上手くいきそう! …………、…………、……やっぱりダメみたい。振り出しに戻ってしまうわね。ミスティに相談してみようかしら……。でも頼まれたのは私なんだから私の言葉でお祝いしなくては失礼ね。

ネルケ:そうは言うものの、一人で唸っていても浮かばないものは浮かばないし……。そうだ、ミスティにお茶の用意をお願いして少しおしゃべりすればいい会話の取っかかりが思い浮かぶかもしれないわ! ミスティ! ちょっと来てくれるかしら?

ミスティ:お呼びでございますか、ネルケさま?

ネルケ:……ど、どうしたの? やけに飛んでくるのが早いじゃない?

ミスティ:そろそろかと思っておりましたので。

ネルケ:もしかして……。

ミスティ:先ほどお引き受けになっていたお祝いのメッセージ、よろしければお手伝いいたします。

ネルケ:……いい。もう少し自分で考えるから。

ミスティ:そうですか? ではまた何かありましたらお声がけください。

ネルケ:うーん……。

【Short Story06】ワーカーホリック・ホリック?

『ネルケと伝説の錬金術士たち』

<登場キャラクター>
ネルケミスティ

ネルケ:……うん、なかなかいい感じかしら。最近は忙しくて絵を描くことも無かったけど、たまに描くのも面白いわね。そういえば今度、あのあたりにお店を建てる計画だったかしら……?

ネルケ:あの家も、今度建て替えるはずよね……。考えてみたら、この街の風景もけっこう変わったわね……。ふふ、ちょっと感慨深くなっちゃった。でも、街が賑わっていく様子をこうして描き残すのも、良い考えかもしれないわね……ふふ。

ネルケ:……あら、あのお店、ちょっと賑わってないかしら? あのあたりに商店を連ねて、人を呼ぶ必要があるかも……。それに、交通の便もよくしないとダメよね。……ふふ。気がついたら、街のことを考えてるなんて。結局仕事してるみたいね。そうね、そろそろいい時間。それじゃ……。

ミスティ:ネルケさま……もう、休憩時間はとっくに終わってますよー? どこですかー?

ネルケ:……あら? あの草のあたり……何かいる……?

ミスティ:……あ、いました。もう、ネルケさま、こんなところで……。

ネルケ:…………きゃあああああああああっ!? い、いもむしぃぃぃ~~~…………。う、うぅ~ん……。

~ネルケが倒れる(ドサッ)~

ミスティ:……ネ、ネルケさまぁぁー!?

【Short Story07】バトル・ア・ラ・モード

『ネルケと伝説の錬金術士たち』

<登場キャラクター>
ネルケミスティ

ミスティ:ネルケさま、そろそろ一休み――

ネルケ:(ZZZ……)

ミスティ:お休み……ですか?

ネルケ:(ZZZ……)

ミスティ:せっかくネルケさまのお好きないちごプリン・ア・ラ・モードをご用意しましたのに……。

ネルケ:(ゴクッ……)

ミスティ:うふふ……。ネルケさま、こんなところでお休みになってはおみ足が日に灼けてしまいますよ?

ネルケ:(ZZZ……)

ミスティ:かなりお疲れのようですね、ネルケさま。このところずっとお忙しいご様子でしたから。仕方ないですね。このいちごプリン・ア・ラ・モードは、わたくしが……。

ミスティ:(ぱくっ!)。おいしいっ! やめられませんわね……。全部いただいてしまいますね、ネルケさま。

ネルケ:待って、ミスティ! 私の負け!

ミスティ:やっぱりタヌキ寝入りだったのですね、ネルケさま。このとおり、いちごプリン・ア・ラ・モードは無事ですよ。

ネルケ:よかった~!

ミスティ:ですが、その分厚い資料は隅々まで目を通していただかなくては困りますからね。

ネルケ:わかってるわよ……。でも本当に大変なんだから。

ミスティ:いちごプリン・ア・ラ・モードはいったん下げて、もう少し資料を読み進めていただいたところでお持ちします。

ネルケ:そんな! ああ、頭痛が……。ごめんなさいミスティ、もう一眠り……。

ミスティ:もう、ネルケさまったら……。

【Short Story08】肉食魚の池

『ネルケと伝説の錬金術士たち』

<登場キャラクター>
ネルケミスティ

ネルケ:釣れないわね……。

ミスティ:釣れませんね……。ですがネルケさま、まだ始めて5分と経っていません。もう少し気長に待たれてみてはいかがですか?

ネルケ:でもクノスさんもハゲルさんも、ここは入れ食いだとおっしゃっていたわよ?

ミスティ:クノスさまもハゲルさまも、ネルケさまのように釣り初心者ではありませんから。

ネルケ:初心者だからって……こうして同じように釣り糸を垂れているのに。

ミスティ:何か違うのではないでしょうか? たとえば、餌とか。

ネルケ:最高級のラム肉を使ってるけど?

ミスティ:お魚は、ラム肉を食べないと思います。

ネルケ:食べないかしら……。じゃあ何がいいの?

ミスティ:そこはやっぱり、いもむしとか。

ネルケ:やめて!

ミスティ:ハゲルさまが、わたくしにいもむしを託してくださったのですけど……。

ネルケ:まさか今……持ってるの!?

ミスティ:お出ししましょうか?

ネルケ:キャアアアアアー!! いいからあっち行って!

ミスティ:わたくしが釣り針にお付けしますよ?

ネルケ:そこまでして釣りなんかしたくなーい!!

ミスティ:でもお魚は普通、いもむしが大好きです。昨日、ネルケさまがお召し上がりになったお魚も――

ネルケ:やめてー! 大好きなお魚が嫌いになっちゃう!!

ミスティ:……お帰りになりますか?

ネルケ:ううっ……もう帰る。

【Short Story09】デュエット・ライフ

『ネルケと伝説の錬金術士たち』

<登場キャラクター>
ネルケミスティ

ネルケ:こうして一緒に演奏するのもひさしぶりね。子供の頃は貴族のたしなみとして習い事をさせられて、ちょっと嫌なこともあったけど……。こうしてミスティとひさしぶりに演奏すると、ああ、あの時頑張って良かったー、って思っちゃうわね。

ミスティ:そうですね。わたくしも、ネルケさまとまた一緒にいられることが幸せです。

ネルケ:ふふ、ミスティったら大げさなんだから。でも、子供の頃はよく一緒に遊んだわよねー。

ミスティ:はい。もっとも、ネルケさまに振り回された記憶も多いですけど……。

ネルケ:あ、あら……そうだったかしら……?

ミスティ:……でも、それ以上にあの頃は、ネルケさまにいつも助けられてました。本当に感謝しております。もっとも、今は私が見ていないとダメですけどね。

ネルケ:もー。そんなことないわよ。

ミスティ:ですが、もうお仕事に戻らなければならない時間ですよ。

ネルケ:うっ。

ミスティ:今の演奏で、気分転換もできたでしょう?

ネルケ:そうね。ありがとう、ミスティ。よーし、今日のお仕事は残りあと少しだし、頑張るわよー!

ミスティ:……ああ、先ほど今日中に決済が必要な書類を追加しておきました。

ネルケ:え、ええーー!?

ミスティ:しっかり、お願いしますね。

ネルケ:はい……。

【Short Story10】野生の錬金術士

『ネルケと伝説の錬金術士たち』

<登場キャラクター>
ネルケマリー

ネルケ:マリーさん、こんにちは。

マリー:あ、ネルケさん、こんにちはー。ちょうどよかった。注文の品、もうすぐできますよ。

ネルケ:ありがとうございます。マリーさんは本当に凄いですね。私なんて、錬金術を勉強しても身につきませんでしたから……。

マリー:んー、それはそれでいいんじゃないかな? だってネルケさん、すごく街のために頑張ってるじゃないですか。なんだか難しい計算とか得意なんでしょ? あたしには絶対無理ー!

ネルケ:でも、色々計算してから材料を調合しますよね?

マリー:あー、あたしの場合、けっこう感覚でやっちゃうから……。

ネルケ:そ、それはそれで凄いような……。

マリー:こんな感じだから、アカデミーでは最悪の落ちこぼれだったしねー。

ネルケ:え、そ、そうだったんですか? でも、今はマリーさんのおかげで、とても助かっています。

マリー:そう? 良かったー。ん? あ、これはヤバイかな……?

ネルケ:……え?

マリー:ネルケさん、今すぐ部屋から出てー!

ネルケ:え、えええーー!?

マリー:時間がない! 伏せてー!!

~爆発(どっかーん!)~

マリー:大丈夫? 怪我はない?

ネルケ:あはは……はい、これでも運動神経には自信があるほうで……。

マリー:良かったー……。ごめんね、こういうこと、たまーにあるのよね……。

ネルケ:そ、そうなんですか……。

マリー:でも、たまーによ、たまーにだからね……? あ! 新しいアイテムが……完成してるじゃなーい! やったー!

ネルケ:……ほ、本当に凄いです、マリーさん……。

【Short Story11】口に出てますよっ!

『ネルケと伝説の錬金術士たち』

<登場キャラクター>
ネルケ妖精さん

ネルケ:うーん……ここのデータを見ると、こっちの方が良いかしら? ……あら、もうこんな時間……!? 今日の仕事もあと少し……とは言えない書類の量ね……。でも、頑張らないとっ……。

妖精さん:ネルケさまー!

ネルケ:あら、妖精さんたち。いらっしゃい。

妖精さん:あれ、ネルケさま、疲れてるー……?

ネルケ:まあ、そう見えるかしら?

妖精さん:うん……。そうだ! 美味しいお菓子を持ってきたから、これ食べて頑張ってー!

ネルケ:ええ、頂くわ。……まあ、美味しい!

妖精さん:えへへー。やったー!

ネルケ:不思議な甘さが脳に染み渡って、疲れが消えていくみたい……。ありがとう。これ、ひょっとして錬金術で作ったのかしら?

妖精さん:そうだよ! お口に合ったみたいで良かった。ネルケさまのお役に立てて、僕たちも来たかいがあったよー。

ネルケ:(……うん、これなら頑張れそうね)。それにしても、本当に錬金術って凄い……。それに、こんな妖精さんがまさか本当にいたなんて。最初はとてもびっくりしたもの。これも、マリーさんたちが来てくれたおかげかしら。まだまだ、この世界には知らないことがたくさんあるのね……。

妖精さん:……ネルケさま? 独り言が口に出てるよー。やっぱり疲れてるんじゃない?

ネルケ:あっ、ご、ごめんなさい!

妖精さん:えへへ、面白いネルケさまが見れたー! 働きすぎには、気をつけてねー。

ネルケ:も、もう~……。

妖精さん:あははっ。じゃ、またねー。

ネルケ:うぅ、恥ずかしいところ見られちゃった……。でも、ありがとう、妖精さんたち。

【Short Story12】夜の妄想ホリック

『ネルケと伝説の錬金術士たち』

<登場キャラクター>
ミスティ

ミスティ:…………! 怪しい物音を聞いて駆けつけたのですが……あれは、近所のおじさんが散歩しているだけですね……。

ミスティ:…………。しかし、今はネルケさまが入浴中。このまま、見張りの任務をすることにしましょう。わたくしはメイドであり、ネルケさまの護衛でもあります……。こうした見張りも、重要な仕事です。

ミスティ:…………。今日も、ネルケさまのご入浴は長いですね……。入浴中に考え事をするのは悪くないと思うのですが、ネルケさまは考えすぎてしまいがちですからね……。また、のぼせていないと良いのですが……。そうなったら、また担ぎ出さなくてはいけません。ネルケさまは胸が大きいですから、運び出すのもひと苦労なんですよね……。

ミスティ:…………。……まあ、そんなネルケさまも可愛いのですが、ゆだったネルケさまの、ほんのりと上気した頬……。いつものお人形のような白い肌も、淡桃色に色づいて……。普段は真面目で凛々しいネルケさまが、わたくしだけに見せるあられもない姿……。……ああ、ネルケさま……!

ミスティ:…………!? あの音は、お風呂でネルケさまがゆだって浴槽に沈む音! 今すぐ助けに参ります、ネルケさま!

【Short Story13】昼の妄想ホリック

『ネルケと伝説の錬金術士たち』

<登場キャラクター>
ミスティ

ミスティ:……さて、ネルケさまが出かけている間に、部屋の掃除を済ませましょう。おや、こんなところにボタンが……。ネルケさまの服の左袖のボタンですね。今日は朝から慌ただしかったですからね。どこかでひっかけてしまったのでしょうか。戻られたら、すぐに付け直さないといけませんね。

ミスティ:それにしても、最近のネルケさまは本当に頑張っていますね……。お疲れな時もありますが、すごく輝いてらっしゃる。出来上がった施設を見てお喜びになるネルケさま……。仕事あがりに、笑顔で散歩に出かけられるネルケさま……。苦手なグリーンピースを避けて召し上がるネルケさま……。

ミスティ:仕事に苦戦しながらも、前向きに必ずやり遂げるネルケさま……。お風呂上がりにキュウリとオリーブオイルでしっかりと真剣にパックをされて美容に気をつけている可愛いネルケさま……。ああ、ネルケさま……素敵です……。

ミスティ:……はっ、そろそろお食事の準備をしなければ。今日は大きな仕事が一段落して、さぞお疲れでしょう。……そうですね。今晩は、ネルケさまの好きなラム肉のシチューにしましょう。美味しそうに食べるネルケさまの顔を思い浮かべただけで……。うふふ……。

ミスティ:……はっ、戻ってこられるネルケさまの足音が。掃除も終わりましたし、急いでお食事の準備にかかりましょう……。

【Short Story14】そこにあなたがいるからです

『ネルケと伝説の錬金術士たち』

<登場キャラクター>
ネルケミスティ

ミスティ:…………。

ネルケ:…………。

ミスティ:何かご用でございますか? ネルケさま。

ネルケ:いいえ、別に。

ミスティ:では、どうしてそこにいらっしゃるのですか?

ネルケ:あら、私が近くにいては邪魔かしら?

ミスティ:邪魔とまでは申しませんけど……。ハッキリ申し上げれば、背後にネルケさまの視線を感じてしまって、窓ふきに集中できないのです。

ネルケ:……そうなの? とっても手際良く進めているように見えるけど。私はその手際の良さに見とれていたのよ?

ミスティ:それは光栄ですが……。やはり、こういうお仕事はネルケさまの目につかないところで集中してこそ手際よく進むというものです。

ネルケ:ミスティがそこまで言うのなら私は部屋から出ているけど……(陰からコッソリ見るのならミスティの邪魔にならないわよね?)。

ミスティ:陰からコッソリご覧になっても同じことですから、完全にお部屋から退出していただけると助かります。

ネルケ:……そ、そうね(そこまで言われると、私に内緒で何かしているのか気になっちゃうじゃないの……!)。

ミスティ:別にわたくしは、ネルケさまに隠れて何かしようというわけではありませんので、どうかご理解ください。

ネルケ:……も、もちろんよ!(ミスティったら、背中に目がついているのかしら……?)

ミスティ:それで、ネルケさま、いつになったら退出していただけるのですか?

ネルケ:え、ええっ? えっと……。でもやっぱり、ここで見ていたらダメかしら……?

ミスティ:………はぁ。もちろんダメなわけありません。ここはネルケさまのお屋敷なんですから。

ネルケ:ふふふ、よかった。

ミスティ:(ネルケさま、こんなに喜んで。でも困りましたわね。ネルケさまに見られていたら、ドキドキしちゃって仕事にならないというのに……)。

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