2019年2月7日(木)

『DMC5』新キャラ“V”のアクションポイントに迫る。世界に通じるように開発者が心掛けたことは!?

文:スズタク

 カプコンから3月8日に発売されるPS4/Xbox One/PC(Steam)用ソフト『デビル メイ クライ 5』。その開発者インタビューを掲載する。

『デビル メイ クライ 5』

 本作は、カプコンが贈るスタイリッシュアクション『デビル メイ クライ(以下、DMC)』シリーズの最新作。『DMC4』から数年後の世界を舞台に、ネロたち3人のデビルハンターの活躍が描かれる。

 インタビューに応じているのは伊津野英昭ディレクター、岡部眞輝プロデューサー、マシュー・ウォーカープロデューサーの3名。発売を1カ月後に控えた本作の魅力や新キャラ“V”のアクションなどについて、お話を伺った。

 なお、インタビュー中は敬称略。

『デビル メイ クライ 5』企画記事リンク

『デビル メイ クライ 5』
▲左から岡部氏、伊津野氏、マシュー氏。

今こそゲーム業界に正統派アクションを!

――発売まであと1カ月となりましたが、今の心境はいかがですか?

伊津野:現場は休暇をとっているメンバーもいて、落ち着いてきていますが、僕らはまさに最後のプロモーション活動の最中で、まだまだ気が抜けないです。

マシュー:ゲームについては発売後のアップデートも含めて、やるべきことはだいたい終えています。あとは発売までに残りの情報を出していき、ユーザーさんの評価を仰ぐだけですね。

――ナンバリングの前作『DMC4』から数えると11年ぶりとなるナンバリング最新作とあって、ファンも期待していると思います。あらためて、今回の『DMC5』を制作することになった経緯を教えていただけますか?

『デビル メイ クライ 5』

伊津野:『4』が終わってすぐに『5』に取り掛かる準備はしていたのですが、その時はいろいろな事情があって流れ、僕は『ドラゴンズドグマ』制作にかかることになりました。それはそれで作りたいゲームだったので楽しかったのですが、その後に『DMC5』の制作という話にはなりませんでした。

 それから7年ほどすぎたころ、世の中に正統派のアクションゲームが減ってきている気がしました。オンラインやCo-op、オープンワールドなどが主流になっていたので、ピュアなアクションゲームをゲームファンも求めているのではないかと感じていたのですね。あわせて自分の中でも『DMC』を作りたい気持ちが大きくなってきたので、社内で掛け合って作らせてもらえることになりました。

――『DMC5』の企画を出した時の社内の反応は?

伊津野:周囲の反応は前向きで、制作の話もスムーズに進みました。クリエイターが作りたいものを作ればいい、という上の人の寛大な精神のおかげです

マシュー:会社の戦略としても、『DMC』というIPを休眠させないでおこう、といった方針があり、動き出しましたね。

――制作が決まった時点で伊津野さんたち3人が中心メンバーに?

岡部:最初は伊津野が中心で動いていき、制作が本格的にスタートするタイミングで僕らがプロデューサーとして入った流れです。

――岡部さんとマシューさんは、『DMC5』のプロデューサーになった時はどのようなお気持ちでしたか?

『デビル メイ クライ 5』

岡部:担当するならこのタイトルをやりたいと思っていたので、うれしかったですね。今まで『バイオハザード リベレーションズ2』などでプロデューサーを務めてきましたが、ナンバリングタイトルでプロデューサーを受け持つのは今回が初めてなんですよ。

 伊津野が言っていたように、正統派のアクションがそろそろ求められている時だと思います。『DMC5』を最高のアクションとしてお届けするというチャレンジ的な意味でも、やりがいがありました。

マシュー:僕はもともと伊津野の作る作品の大ファン! 大学時代に『私立ジャスティス学園』や『CAPCOM VS. SNK』などにハマって、『DMC3』を遊んだ時には3Dアクションゲームの本気を感じました。ついに伊津野のプロジェクトに実際にかかわることができて本当にうれしかったです!

――シリーズとしては2015年に『DMC4 スペシャルエディション』が出ています。『DMC5』の制作が本格的に進んだのはその後でしょうか?

伊津野:そうですね。『DMC4 スペシャルエディション』の時はそれにかかりっきりでしたので、それから3年ぐらいで『DMC5』を作り上げた感じです。この3年間があまりに濃すぎて、一昨年の秋くらいから丸一年ほどの記憶がないくらいです(苦笑)。

――昨年のE3(Electronic Entertainment Expo)で本作と『バイオハザード RE:2』が発表され、会場がとても沸いたことが印象に残っています。

岡部:『バイオハザード』が近くにいてくれたのが、安心感にも刺激にもなりました。ジャンルは全然違いますが、同じ第一開発部のタイトル。『バイオハザード』のクオリティを間近で見ているとウチらも負けられないという気持ちになります。ユーザーからしても、カプコンの大きなタイトルが短いスパンで発売されることになったので、喜んでもらえたのではないかと感じています。

『デビル メイ クライ 5』

マシュー:あと、2作品が並行して開発しているおかげでゲームエンジン“RE ENGINE”の機能拡張がはかどって、両タイトルに活用できたのがよかったです。

伊津野:同じエンジンを使っているため、社内でもライバル意識が芽生えて、自然と切磋琢磨していきました。

――今まで私たちメディアが試遊する機会が何度かありましたが、そこで出た意見をもとにゲーム部分で変えたところはありますか?

岡部:細かい調整や難易度などはもちろん手を加えていますが、開発の当初から何かを大きく変えたということはないです。意見のフィードバックという点では、体験版を出す前の確認プレイで難易度は細かく調整しました。

伊津野:体験版という限られた枠のなかで、どれだけゲームルールを覚えてもらえるかが重要。そのため、体験版の調整については、かなり気を付けて行いました。

岡部:本編であればカスタマイズや難易度選択を行えるのですが、体験版にはそれがありませんからね。

伊津野:試遊版もかなり調整していて、最初に試遊できたドイツのgamescomでの意見をもとに、東京ゲームショウのバージョンを作りました。gamescomで現地のユーザーの意見を聞いて、ドイツから日本の現場にあれこれと調整の指示を出したことを覚えています。

苦労の末にたどり着いたVのアクション

――『DMC5』では3人目の主人公として“V(ブイ)”が登場しますが、彼のアクションについて詳しく教えてください。

『デビル メイ クライ 5』

伊津野:企画立ち上げのころからVの存在を考えていて、“魔獣を使役して戦う”や“守るべき対象と攻撃すべき対象を同じ地点に置かない”といった遊びの部分は当初から決めていました。ダンテやネロとはまったく違う系統のアクションを、同じ操作方法の中で楽しませることがそもそもの狙いでしたね。Vのアクションのコンセプトは、“違う脳みそを使ってほしい”です。

――実際にVを動かしてみましたが、ダンテともネロとも違う、まったく新しいアクションに仕上がっていると感じました。

伊津野:アクションは異なるのですが、近距離攻撃と遠距離攻撃、ジャンプや回避やデビルトリガーなど基本となるアクションはダンテやネロと同じ操作でできるので、操作で混乱することはないと思います。

 Vはダンテやネロと比べると、フィールド全体を見渡しながら戦うキャラ。同じ運動をしているんだけど使う筋肉を変える、みたいなイメージです。

――シリーズの熱烈なファンであるマシューさんから見て、Vはどうでしたか?

『デビル メイ クライ 5』

マシュー:Vは“距離の遊び”がおもしろいキャラだと思いました。伊津野が言ったように、守るべき対象と攻撃すべき対象が違う位置にいるのは今までにないこと。普段Vは敵から離れて攻撃していますが、トドメを刺す時は接近する必要があるので、距離感が大切ですね。

 あと、シャドウとグリフォンの体力ゲージがなくなった時に、Vが近くにいると復活までの時間が早くなります。さらに、シャドウとグリフォンを従えた特殊回避があって、それを使えば瞬時に魔獣をVのそばに移動させられます。例えばシャドウの体力が減っていたら特殊回避で敵からシャドウを遠ざけるといった、そういう距離の遊びをできるのが、Vの特徴です。

――使役する3体の魔獣の種類は、最初から決まっていたのでしょうか?

伊津野:3体選ぶとなると、獣、鳥、巨人かなと構想していました。3体のモチーフだけでなく、第1作の『DMC』に当てはまりそうなエネミーが登場していたので、オマージュ的な意味も含めてシャドウ、グリフォン、ナイトメアという3体にしました。

――Vを使う時は、敵から離れて戦ったほうがいいのでしょうか? それとも、なるべく魔獣のそばにいたほうがいいのでしょうか?

伊津野:V自身がとにかく打たれ弱いので、基本的には離れた位置から命令を出して戦ったほうがいいですね。ただ、最後はVがトドメを刺す必要があるため、戦況を見ながら敵との距離を調整してください。バトルの難易度が上がると、敵のヘイト、標的が魔獣ではなくVにも向くようになるので、そうなるとさらに工夫が必要です。

――ナイトメアはいつでも呼べるわけではないぶん、召喚した時は頼もしいですね。

『デビル メイ クライ 5』 『デビル メイ クライ 5』

伊津野:ナイトメアに関しては、従来のデビルトリガーのように“ここぞ”という場面で使うものだと思ってください。ただ、ナイトメアは自動で戦う魔獣なので、こちらの思うように動いてくれるとは限りません。そういう時は、背中に飛び乗って自分で操縦するといいです。

 あと、ナイトメアを呼び出す場所に応じて、地形を破壊して登場します。それで壊れた地形の先に行くこともできるので、ぜひいろいろな場所でナイトメアを呼んでください。

――他にVを作るうえでこだわって点や苦労した点は?

伊津野:苦労したのは全部ですね(笑)。他のゲームでも言えることですが、まったく新しい遊びを作る場合、実際に遊んで「これはおもしろい!」という結果が出るまでほとんどの人が認めてくれない。作っている僕らは、「これはおもしろくなる!」と自信を持って進めているのですが、まわりからするとどうしても「その要素っているの?」と見えてしまいます。

マシュー:制作するうえで、「『DMC5』にダンテとネロ以外の3人目のプレイアブルキャラは必要なのか?」という意見もありました。“V不要説”を覆すための日々もありましたね(笑)。

『デビル メイ クライ 5』

伊津野:魔獣を使役して戦うというスタイル上、どうしてもキャラを操作している感覚が薄れるんですよね。ダンテやネロと違って攻撃中も移動できるので、一体感を味わいにくい。そのあたりの操作している感覚や一体感を確保するのには苦労しました。

 最終的に動かしていておもしろいキャラに仕上がったと思いますが、その形にいたるまでは試行錯誤の連続でした。

――Vは最初の時点から姿が公開されていましたし、シリーズファンに与えたインパクトは強かったと思います。

伊津野:キービジュアルで後ろ姿だけを出しました。ファンの反応が心配でしたが、杞憂に終わったのでよかったです。Vはダンテやネロとは違う系統の男前キャラになっているかと。

マシュー:Vは女性人気が高いですね。ゲームを実際に遊んでもらったら、もっと人気が出ると信じています!

“平成最後にして最高峰のアクションゲーム”を自負

――プレイしていて、『DMC5』の全体的な絵作りから『DmC デビル メイ クライ』のような雰囲気を感じました。伊津野さんは日本のディレクターとしてかかわられていましたが、影響はあったのでしょうか?

『デビル メイ クライ 5』

伊津野:影響はもちろんあります。シリーズの流れとしては『DMC4』の次に『DmC デビル メイ クライ』があって、その先に『DMC5』がありますから。チームのスタッフも絵作りで両作を上回る気持ちでいて、研究したので、そのような絵面になったのかと『DmC デビル メイ クライ』を参考にしたというよりも、シリーズの流れで正統な進化を遂げた結果ですね。

――現行機ということや新エンジンであることが関係していると思うのですが、グラフィックのリアリティには驚きました!

伊津野:僕らが言うのもなんですが、かなりイケてるんじゃないでしょうか。フォトリアルなグラフィックの出来だけでも、一見の価値があると思います。

『デビル メイ クライ 5』

マシュー:できるなら4Kの大きなテレビで遊んでほしいですね!

伊津野:あと、これだけリアルなグラフィックになったことで、アフレコの流れも変わりました。今までのように口であれこれ説明するよりも、絵を見せれば一発でキャラの感情や声の出し方などが演者さんに伝わる。映画のアフレコと変わらないくらい、グラフィックの表現力は上がったと感じています。

――少し気になったのが、従来のバイタルスターにあたる回復アイテムが、本作では見当たらなかったのですが……?

伊津野:回復アイテムは今回はありません! 攻撃用のアイテム・ホーリーウォーターも廃止しています。

――なかなか思い切った仕様だと感じるのですが、それはアクションの流れを追求したためでしょうか?

伊津野:そういうわけではなくて、今回はシェアードシングルプレイの関係で通信が発生するからです。他のプレイヤーとネットワークをつないだ状態でプレイする可能性があるので、ポーズ画面を開いてゲームを止めてしまう行為を極力なくす必要がありました。その影響でアイテムの種類がシンプルになったというのが理由です。

――ステージ中には体力を回復するグリーンオーブがほどよく配置されていたので、そこまで苦戦することはありませんでした。ただ、回復アイテムがないとなると、難易度調整は大変だったのでは?

『デビル メイ クライ 5』

伊津野:とても苦労しました。今回もシリーズ恒例の高難易度を用意しているので、心して挑んでほしいです。

――開発者ならではのちょっとした攻略アドバイスをお願いできますか?

岡部:オンラインに接続してプレイすると、ログインボーナスとして力尽きた時にコンティニューできるアイテム・ゴールドオーブを1つ手に入るので、毎日遊んでいただければそれだけで有利になります。

伊津野:ゴールドオーブは、シェアードシングルプレイで相手から“いいね!”を贈られた時にももらえます。今回はゴールドオーブを従来より多く持てるようにしたので、回復アイテムがなくてもゴールドオーブがたくさんがあれば攻略しやすくなります。

――ショップで購入できるスキルに“EX挑発”がありましたが、あれはなんでしょうか?

伊津野:いわゆる“見栄え用のスキル”です。それがないとバトルに勝てないようなものではありませんが、手に入れればインスタ栄えはするかなと(笑)。あと、シェアードシングルプレイで他のユーザーにアピールすれば、ちょっとした自慢にもなります!

――『DMC5』は全世界同時発売となりますが、ゲーム内の設定や描写で心掛けた部分はありますか?

『デビル メイ クライ 5』

伊津野:『DMC』シリーズをずっと作り続けるうえで、“特定の国や地域だけでしかウケないことはやらない”ということはすごく意識しています。

岡部:例えるならば、“日本人じゃないとわからないような描写”です。そちらは基本的に避けていますね。

伊津野:どの国でもわかるシーン、通用するシーンを作ることは、僕のなかで強く心掛けていることです。

――4月にブラッディパレスの配信が発表されていますが、これ以外にDLC展開は考えているのでしょうか?

岡部:未発表のものはありますが、それについては今後の情報をお待ちください。僕らとしてはゲーム本編にすべての力を注いでいるので、まずは製品版をじっくり楽しんでほしいですね。DLCはあくまで本編のあとに、ユーザーさんがお好みで選べるようなものを用意しています。

――最後に、発売を待つファンに向けて、メッセージをお願いします。

『デビル メイ クライ 5』

伊津野:本日より体験版第2弾が配信されています。ネロの“デビルブレイカー”の感触を体験できるので、ぜひ遊んでみてください。あと、角川スニーカー文庫さんから3月1日に『DMC5 -Before the Nightmare-』という小説が発売されます。ちょうど『DMC5』の前日譚になっているので、それを読めばより本編がおもしろくなりますよ。

マシュー:ナンバリングでは11年ぶりということで、今回はファンに向けたかなり濃いサービスを幅広く行っています。小説や設定資料集、サウンドトラックに舞台など、何があればファンが喜ぶメディアミックスになるか、真剣に考えてきました。どれもファンが満足する内容ですので、ゲームと合わせて楽しんでください!

 もちろん、『DMC5』からシリーズにデビューしても楽しめる仕上がりです!

岡部:ゲーム発表時に言わせていただいたキャッチフレーズなのですが、『DMC5』は“平成最後にして最高峰のアクションゲーム”に仕上がったと自負しています。主人公3人はどれも魅力的なキャラで、きっと気に入ってもらえるはずです。発売までもうしばらくありますが、手元に届く瞬間を心待ちにしていてください。

データ

▼『デビル メイ クライ 5(ダウンロード版)』
■メーカー:カプコン
■対応機種:PC
■ジャンル:アクション
■発売日:2019年3月8日
■価格:6,480円+税

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