2019年2月19日(火)
『シヴィライゼーション VI』拡張パック第2弾『嵐の訪れ』レビュー。自然の猛威が国家を襲う!
深い戦略性とランダム生成されるマップによる高いリプレイ性で、多くのユーザーを虜にしている人気シミュレーション『シドマイヤーズ シヴィライゼーション』シリーズ。その最新作『VI』の拡張パック第2弾『嵐の訪れ』が、2月14日に発売となりました。
『嵐の訪れ』では、洪水や火山の噴火といった自然災害が追加。また、過去作にあった世界会議が再び登場します。どちらもゲーム性に大きく関わる要素となり、これまでとは異なる戦略を考える必要がありそうです。そこで『嵐の訪れ』のプレビュー版をプレイして、これらの新要素がどのようにゲームに関わるのかを実際に体験し、その様子をお届けします。
なお、本作の基本的なゲームの流れや、拡張パック第1弾については、以前にプレビュー記事を掲載していますので、ゲームの根本的な魅力を知りたいという方は、ぜひそちらもあわせてご覧ください。
『シドマイヤーズ シヴィライゼーション VI』記事
自然災害が文明に危険と恩恵をもたらす!
『嵐の訪れ』で最も注目したいのが“災害の発生”。なかでも序盤からプレイヤーが直面するのは、火山の噴火や川の氾濫、干ばつやハリケーンといった自然災害です。基本的に災害はすでに設置した区画や建造物に被害を与えるものですが、水害や火山の噴火のあとには、被害を受けた土地の産出量が向上し、肥沃な土地として残ります。
▲災害は再び起こることもあるため、その土地に建てた建造物は常に災害の被害を受けるリスクはあるものの、災害によって増える産出量はなかなかに魅力的。なお被害は敵軍に略奪されたときと同じ扱い。プレイした感触では、修復にはそれほど手間はかからなかったので、相対的にはお得感のほうが強かった印象です。 |
一方で、ハリケーンや蝗害(イナゴによる災害)など、単純に被害をもたらすだけのものも。これらは川の氾濫や火山のように発生場所が決まっていないため、被害に合わないよう祈るしかなさそうです。
▲ハリケーンなどはターンが進むごとに移動するので、運が悪いと、どんどん被害が広がっていくことも……。 |
これらの災害は太古の時代から発生する可能性があるものですが、時代が進むと初めて表面化する問題もあります。それが海水位の上昇です。
海水位の上昇は、現実の世界と同じく、地球温暖化によって引き起こされるもの。沿岸部のタイルは海水位の上昇によって水没してしまう危険をはらんでおり、水没してしまうとそれまで建てていた建造物などが破壊されてしまいます。
この現象について説明する前に、関連した項目をいくつか紹介しておかなければなりません。
まず『嵐の訪れ』では一部の戦略資源を発電用として用いる“電力システム”が新登場します。電力が解禁されると、石炭や石油、ウランなどの戦略資源を電気へと変換し、電気を使う建造物の性能を高めることが可能となっています。
加えて、特定のユニットの作成/維持に資源が必要になりました。ひとまず覚えておきたいのは“電気とユニットに石炭、石油、ウランが使われる”ということです。
▲電力を使用する建造物などは、カーソルを合わせると、必要電力やどれくらいボーナスが付くのかなどを確認できます。 |
話を戻しましょう。海水位の上昇のメカニズムのカギとなるのが、新しく追加された“世界のCO2レベル”。CO2レベルは、石炭や石油、ウランといった戦略資源を使用すると上昇していきます。つまり、電気や産業時代以降のユニットの生産や維持でこれらの資源を使うと、CO2レベルに大きく影響が出るということです。
▲世界のCO2レベルが一定のラインを超えるごとに海面の高さが上がっていきます。海面上昇はいくつかのフェーズに分かれていて、沿岸の地形タイルの海抜の高さによって、どのフェーズで水没してしまうかが決まります。 |
▲私は初回プレイ時に「意外と海水位変化しないな~」と余裕の構えを見せていたら、石炭や石油を活用する時代に突入すると急激にCO2レベルが上昇。一気に押し寄せる水位の上昇で多くの施設が水底へ沈みました……(苦笑)。 |
とはいえ、常に海水位の上昇に注意を払いつつ都市計画を考えなければいけないのは、少し面倒ですよね。ということで、しっかりと対策も用意されています。ひとつはCO2レベルを調整して、温暖化を防ぐという手段。具体的には、石炭や石油、ウランを使うのではなく、水力や地熱、風力、太陽エネルギーといった自然環境にやさしいエネルギーを中心に使うことです。
しかし、こういったテクノロジーは技術ツリーをかなり進めないと開発できません。そこで役に立つのが“工学プロジェクト”と呼ばれるもうひとつの要素。内容はさまざまなものがありますが、その一部として川の氾濫を防ぐダムや、海水位の上昇から沿岸タイルを保護する防波堤などが存在します。
ほかにも、これまで通行不可能だった山岳タイルに道を作れるようになるトンネルなど、さまざまな工学プロジェクトが追加されており、地形をプレイヤーが整えることができるようになりました。
▲地形タイルが完全に水没してしまうと、そのタイルは修復不可能になるとのこと。もはや沿岸都市には防波堤はほぼ必須となるのでは……? |
このような自然環境まわりの新要素が取り入れられたことで、太古から人類がその恩恵に預かり、ときには苦しめられてきた大自然との共存、そして技術による災害の克服と、まさに現実の人類の在りかたをそのまま体験できるようになり“歴史の足跡を辿るゲーム”として、また一段階進化したと感じました。
外交勝利復活! 世界会議で自分に有利な決議を通そう
さまざまな勝利条件が存在する本作ですが、新たに“世界会議”による外交勝利が追加されました。外交勝利は過去作にも存在した勝利方法で、存在する全文明が議題に投票し、採決する世界会議において特定の条件を満たすことで達成できるもの。本作でもその基本構造は変わっていません。
本作の世界会議は、設立されてから一定のターンごと、もしくはいずれかの文明が緊急を要する議題があるときに召集され、行われます。議題に対して賛成か反対かを表明し、票が多かった解決策が採用される仕組みなので、やること自体は非常にシンプル。ですがその裏には高度な駆け引きが存在するのです。
▲議題は一度に複数出る場合も。ひとつの物事に対し、賛成/反対で答えるタイプと、特定の要素に対してボーナス/ペナルティを与えるのを選ぶタイプとあります。 |
というのも、票は“外交的支持”というポイントで増やすことができるから。つまり外交的支持を多く持っていれば、強引に自分の有利な議題を通すことが可能になるのです。外交的支持を獲得する手段はいくつか存在しますが、主な方法はほかの文明との取り引きと、都市国家の支持、世界会議で発生する“スコア型コンペ”への参加など。外交的支持というだけあり、基本的には国内のみで生み出せるものではありません。
▲近代以降になると“特定の文明が外交勝利ポイントを得る”という直球の議題が提案されたり、コンペのスコア報酬として外交勝利ポイントを得る機会が増えます。この外交勝利ポイントを稼ぐことで、外交勝利を成し遂げることが可能になります。 |
新たな勝利条件ということで実際に狙ってみた感想としては、都市国家の支持から得られる外交的支持がばかにならない印象。使節団をより多く出して都市国家の宗主国を目指すような立ち回りをしたものの、そちらに意識を割かれすぎて科学や宗教面でほかの文明に後れを取ってしまう事態に。いつも以上に他国に目を光らせつつ、世界会議をうまく使って、他国を出し抜くプレイが求められそうでした。
未来は確定していない! 21世紀の技術はひと癖アリ!
技術ツリーや社会制度ツリーに、21世紀の技術や社会制度が追加されました。これによって巨大戦闘ロボットや海上都市など、現在の人類でも実現できていないようなユニット、建造物が作成できるようになります。
それぞれのツリーの最後がさらに延長される形で新技術や社会制度が増えているのですが、これまでにない特殊な追加方法なのが最大の特徴です。それは、ゲームをプレイするたびにツリーが変化しているということ!
これは未来は未だ確定していないことを表現しているらしく、前提技術/社会制度を取るまで先の項目が隠されていて見れないようになっています。ツリーの形状も違えば、つながっている技術/社会制度も違う。直前になるまでまったくわからないドキドキ感は、これまでにはないものです。
▲別の2回のゲームの技術ツリーの最後を見比べた結果。ツリーの形や技術の配置が大きく異なるのがわかると思います。 |
とはいえ、本当にツリーの最後の部分なので、ここに至るまでに勝負がついていることが多いのは少々残念ではありますが……。しかし最後に作成できる巨大ロボットは一見の価値アリ。ぜひ自分でその力を味わってみてください。
▲どこか昆虫を思わせるシルエットの巨大ロボット。未来テクノロジーを研究することで、さらなる武装を施すことも可能です。 |
8文明9人の指導者が新たに追加! プレイを快適にする細かい改善も
『シヴィライゼーション』シリーズのアップデートで、追加文明/指導者は欠かせません。今回も通例に漏れず、新たな文明/指導者が追加されます。もちろん、それぞれの文明ごとに固有ユニットや固有建造物、固有のボーナスなども設定されているため、これまでの指導者たちとは少しちがったプレイが楽しめるでしょう。
同時に、新たな世界遺産や自然遺産も追加されていたり、生産キューを設定できるようになっていたりと、細かい追加要素もちらほら。少しのプレイですべてを網羅するのは不可能というほどに新要素が詰め込まれています。
今回の『嵐の訪れ』の感想をまとめると、これまでに築かれた基礎となるゲームデザインのうえに、災害とその対処、世界単位での外交的な駆け引きが追加され、いい意味で考える要素が多くなった印象です。いかにうまく国内を整備して安定させるかという、内政志向のプレイヤーはとくに楽しめる拡張パックかもしれません。
もちろん、新ユニットの追加やユニットの管理に関しても変更が入っているため、制覇勝利を目指すプレイヤーにとってもおもしろいものになっているのは間違いないので、安心してまた“夜のない世界”を楽しんでください。
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※本記事を制作するにあたり2KからPreviewとReviewコードの提供を受けています。