2019年2月19日(火)
ダウンロード用ゲームから佳作・良作を紹介する“おすすめDLゲーム”連載。今回はPS4/Nintendo Switch/iOS/Androidにて配信中のノベルアドベンチャーゲーム『最悪なる災厄人間に捧ぐ』を紹介します。
本作はKEMCOとウォーターフェニックスのコラボで制作されたノベルアドベンチャーゲーム。自分はヒロインのカワイさに一目惚れしたこと、『レイジングループ』のamphibian氏が監修として関わっていることが決め手となってプレイしました。
プレイしました……が、まさかこんなにもプレイヤーの心をえぐってくるストーリーだとは思いませんでした。内容が重すぎてプレイするのがしんどくなってくるのですが、ストーリーが気になるので先を読まないと気がすまない……。そんな衝撃的なゲームでした。では、以下であらすじを紹介しましょう。
▲とにかくエモーショナルな作品で、プレイヤーの心を揺さぶってきます。 |
本作は“とある出来事”によって生き物の姿が見えず声も聞こえなくなってしまった孤独な少年・豹馬と、そんな彼にしか認識されない少女・クロの物語になっています。
豹馬がクロにソフトクリームを買ってあげたことから、交流を始める2人。豹馬が他人にぶつからないように合図をしたり、同級生がしゃべっていることを教えてサポートをしたりするクロと、身寄りのないクロを居候させて衣食住を提供する豹馬。二人三脚で足りないものを補う2人ですが、その後は物語が急展開に。
なんと、クロが5人に増えます。
▲5人のクロがいる不思議な光景。一瞬、「画面の不具合かな?」と思いますが、そういうわけではありません(笑)。 |
なにを言っているのかわからないかもしれませんが、本当にそのまま。ヒロインのクロが5人になるんです。
これは5つのパラレルワールドがつながって、別の並行世界にいるクロたちが豹馬の前に現れるという展開のため。豹馬とクロの設定だけでも特殊な本作ですが、この並行世界も重要な要素となっています。
このクロたちは最初に買ってあげた変わり種のソフトクリームの味が異なり、それぞれ“とうふ世界”、“キナコ世界”、“みそ世界”、“納豆世界”、“豆乳世界”と呼ばれることになります。呼び方に関してもそれぞれの世界にあわせて
とうふ世界=ふー
キナコ世界=キナ
みそ世界=みー
納豆世界=なつ
豆乳世界=にゅー
となります。クロたちは5つの世界を移動でき、物語はそれぞれの世界にいる豹馬の視点で進んでいくことになります。こう書くとややこしいですが、どの世界でも豹馬の性格は変わらないですし、もとの世界のクロ以外は声を発することができないため、今、自分がどの世界にいるのかも一目瞭然。会話ウインドウのフレームも世界によって違うので、そこで区別することもできます。
また、複雑な設定は図解でも解説してくれるので、それほど混乱せずに物語を楽しめると思います。
▲クロたちは世界を移動できるので、みんなで協力しながら豹馬を支えてくれます。その姿は本当に健気! |
服も同じで最初は見分けが付かないクロですが、それぞれの世界で起きる事件と、その解決などをきっかけに性格が変化していきます。自分はマジメな性格でみんなのツッコミ役になる“キナ”がいちばん好きで、次にスポーツが大好きで活発な“みー”が好きですね。……でもやっぱりみんな好き!
▲成長したクロたちは性格や口調が異なります。 |
▲クロ同士で言い争いが起きることも!? |
ヒロインを演じる声優は小鳥遊ゆめさん。それぞれの演じ分けがすごいです。自分はこの作品に触れるまで小鳥遊さんを存じ上げなかったのですが、今後注目してきたいと思いました。
それぞれ個性的なクロですが、主人公の豹馬が大好きという部分は共通。献身的に豹馬を世話するクロたちに癒やされること間違いなし。このゲームの魅力はとにかくヒロインであるクロのカワイさに集約されているといっても過言ではないので、クロのことが気になったらぜひプレイしてもらいたいです。
▲本作をプレイしてクロのことが嫌いになる人はいないと思います。 |
ここからはストーリーの一段深い部分に踏み込みます。先入観なくプレイしたい方は、ぜひプレイ後にご覧ください。もう少し本作を理解しておきたい方は、どうぞお進みください!
本作はとてつもなく重い展開が続きます。豹馬は周囲の人間が認知できないゆえの孤独などから、ふとしたきっかけで世の中のすべてに対して疑心暗鬼になりますし、クロに身寄りがない理由が壮絶であることが判明します。
▲懸命に生きる豹馬とクロには、さまざまな試練が。 |
2人(と言っていいのかしら?)の力で障害に立ち向かっていく豹馬とクロですが、そんな2人を待っているのはさらなる絶望……。本作は発売前の情報で“ループもの”であると公開されていたため、まだプレイしていない人のなかには「失敗したらやり直せばいいじゃん」と思うかもしれませんが、それは甘い考えだと断言しておきましょう。
▲ネタバレになってしまうので大きくは語りません。スクリーンショットで察してください! |
確かに“世界をループして、よりよい結果を目指す”というフォーマット自体は、これまでにある他のループタイトルと変わらないのですが、こちらの心を折ってくるような描写が次々に現れるため、プレイしていてとてつもなくシンドイです。
ネタバレをかろうじて避けますと、“非常に陰鬱な選択肢”を選ばないと先に進めないこともあり、精神的にかなりツラくなります。ただ、一方で要所要所で驚きの伏線が回収されるため、先の展開が気になって読むのが止まりません。とてもアクの強い“劇薬”です。
▲後半はプレイヤーの疑問点が解消されていきます。「あぁ、そういうことだったのか!」と思わされること多数。 |
「こんなのツラすぎる……」と思いつつも、豹馬とクロの未来を見届けたかったり世界の謎を明らかにしたかったりという願望で突き進むこと間違いなし。クリアまでに40時間以上かかる大ボリュームのゲームですが、自分は一気にプレイしてしまいました。
自分は人が生きることの大変さとそれを乗り越える前向きな力を描くノベルアドベンチャーが好きなのですが、本作はまさにそんなゲーム。個人的には90年代に流行した美少女ゲームの雰囲気も強く感じたので、“あのころの泣きゲー”が好きな人もぜひ。
イジメや自殺などなど、精神的にツラい要素はたくさんありますが、ぜひ最後までプレイして豹馬とクロの進む結末を見届けてもらいたいです。
▲もっと『さささぐ(最悪なる災厄人間に捧ぐ)』が売れて、メディア展開とかグッズ展開がされますように! |
(C)2018-2019 KEMCO/Water Phoenix
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