2019年2月27日(水)
タワーディフェンスとアパート経営シミュレーションを融合させたインディーゲーム『メゾン・ド・魔王』で大ヒットを飛ばし、インディーゲーム界隈で一目置かれている独立系ゲーム開発集団・プチデポット。そんな日本を代表する人気ゲーム開発チームが送るPS Vita『グノーシア』が、間もなく発売となる。
本作はSFの世界を舞台に、プレイヤーを含む15名の登場人物が「人狼ゲーム」を行うというアドベンチャー作品。自身の性格や場の状況に応じて行動するNPCと、人狼ゲームを行っていく。これまでにも、人狼ゲームそのものを取り扱ったゲームは存在しているが、実際にプレイヤーが人狼を行えるゲームはコンシューマーでは初となる試みだ。
あらためて人狼ゲームとは、アメリカのゲームメーカーLooney Labs.が発売したカードゲーム『汝は人狼なりや?』に端を発する、議論を中心としたパーティーゲーム。『人狼』や『人狼ゲーム』とも呼ばれ、日本でも同じルールを下敷きにしたゲームが幅広く楽しまれている。
また人狼ゲームを楽しむだけではなく、プレイヤーの育成やキャラクターとの交流といったRPGやアドベンチャー的な要素も存在。大枠となるストーリーも存在しており、キャラクターを中心とした物語を楽しむゲームとしても遊べるのが特徴だ。
今回はまもなく発売予定の『グノーシア』のシステムやストーリー、さらに登場キャラクターといったゲームの魅力をひも解いていく。プチデポットの代表を務める川勝徹氏へのインタビューも掲載しているので、コチラと合わせて発売までに予習しておこう。
本作の舞台は、漂流する宇宙船の船内。この船には15名の乗組員が存在しているが、そのなかには人類の敵・グノーシアが紛れている。だが、誰がグノーシアなのか、その見た目から判別することは不可能だ。1日につき1人ずつ人間を襲っていくグノーシアを排除するには、船員たちと議論を重ねて、最も疑わしい人物を1人ずつコールドスリープするしか方法はない。船内に紛れ込んだすべてのグノーシアが活動を停止するか、その前に人間よりもグノーシアの数が勝ってしまうのか……。すべてはプレイヤーしだいだ。
ゲームは、グノーシアを見つけだすために議論を重ねる“会議パート”と、1日の空いた時間を使って仲間との交流や怪しい人物の調査、プレイヤーのレベルアップなどを行う“移動パート”に分かれている。また、本作はいわゆる“ループもの”の構造になっており、グノーシアを見つけて勝利しても、すぐにゲームが終了するわけではない。グノーシアに勝利するか、自分がコールドスリープされたり、人間の数が減って敗北すると世界がループし、新たな配役やキャラクターの組み合わせで議論が行われる。
【会議パート】
会議パートでは、プレイヤーを除いた14名の船員たち(シチュエーションによって人数は異なる)と、1日に1人だけコールドスリープする人物を決める議論を行う。議論中は、発言する、黙っている、誰かをかばう、疑うといったスタンスを仲間に示すことで会議が進行。不用意に発言しているとウソを見抜かれたり、黙ったままだと疑われてしまったりと、周囲の発言や雰囲気に合わせた行動も重要だ。
ゲーム開始当初はあまり多くの行動をすることはできないが、物語を進めて“コマンド”を手に入れると、議論中にさまざまな行動をとれる。たとえば、自分の役割を明かしてグノーシアの偽称を暴いたり、誰かを弁護して投票されないように誘導したりと、コマンドの使い方しだいで議論の方向性を変えることも可能だ。
▲誰かの役割をハッキリさせるなど、コマンドを活用すれば推理するための手掛かりが得られる。ただし、逆にピンチを招いてしまうこともあるので使いどころを見極めよう。 |
一定回数議論を重ねると、投票に移る。ここでは、グノーシアだと思う人物を1人だけ指名して投票を行う。ただし、プレイヤー以外のキャラクターも投票を行うので、正解の人物がコールドスリープされるとは限らない。投票される人物は、それまでの議論によって決まり、流れによってはプレイヤー自身がコールドスリープさせられて敗北することも。
議論の流れを誘導して、船員たちが投票する人物をプレイヤーの思い通りに誘導することが勝利のカギだ。もちろん、プレイヤーの推理が正しいことが前提だが……。
▲コールドスリープした時点でも、グノーシアかどうかはわからない。当たっていることを祈りながら、次の日を迎えよう。 |
1日が終わると、グノーシアは人間を襲って消滅させてしまう。1日に消される人間は、必ず1人だけという決まりがあるが、誰が消されるかはグノーシアしだいだ。とくに、自分が人間の場合はグノーシアに狙われないように立ち回ることも必要。あまり目立ちすぎてグノーシアの恨みを買うと、投票で正解してもグノーシアに消滅させられてしまうかもしれない。逆に、自分がグノーシア側なら、議論のジャマになる相手を早めに消してしまいたいところだ。
ゲームを進めていくと、1日に1回だけ誰がグノーシアなのかを調べられる役職や、グノーシアに狙われそうな人間を守れる役職など、さまざまな役職が存在する。グノーシアも役職を偽称して惑わしてくるので、誰がどの役職になっているのかを推理しながら議論するのも、本作の醍醐味だ。
【移動パート】
投票を終えて1日を生き延びれば、次の投票まで自由行動できる“移動パート”に移る。移動パートでは、自室でパラメータの数値を割り振ってプレイヤーをレベルアップさせたり、気になる人物とつかの間のひと時を過ごしたりといったアドベンチャー的な交流が可能だ。
なお、本作はリアルの「人狼ゲーム」と異なり、パラメータを上げることで議論を有利に進めやすくなる利点がある。たとえば“直感”をあげると、相手がウソをついたときにわかるといった恩恵があることも。自分のスタイルに合わせてあげていこう。
移動パートでキャラクターがいる場所を訪れると、交流して好感度を上げられる。好感度を上げると特別なイベントが発生するので、気になったキャラクターがいるなら追放されないうちに交流しておくのもアリだ。
▲イベントを通してキャラクターの性格や関係性を把握すれば、議論で勝ち抜くためのヒントになるかも……? |
本作ではプレイヤーが敗北してもゲームオーバーにはならず、ループして何度も「人狼ゲーム」を行うことになる。チュートリアル終了後からは、議論を行う人物や登場する役職を自由に設定してから議論を始められるので、物語を進める目的だけではなく、好きな組み合わせで好きなように遊ぶことも可能だ。
登場するキャラクターは、プレイヤーを含めた15名。全員が宇宙船で生活する避難民であり、ループした状況によって人間かグノーシアなのかは異なる。議論を重ねながら、それぞれの性格を把握して真実を導き出すのがプレイヤーの使命だ。
主人公(プレイヤー):プレイヤーの分身にして、宇宙船で暮らす船員の1人。ある出来事により、何度もグノーシアを排除するための議論に巻き込まれることになるが、その理由はわからない。
ジナ:愛想のない言動のせいで、周囲から冷たく受け取られがちだが、心根はやさしい女性。自分は何をすべきなのか、何のために存在しているのかを、常に自分へ問いかけている。
SQ:ゲーム開始直後から会える人物の1人。おどけた態度で場をにぎわそうとするが、どこかつかめない性格の持ち主。その言動の何がウソで、どこまでが本当なのか、判別することは極めて難しい。
ラキオ:知性第一主義を掲げる宇宙船団国家の出身で、自分以外は全員バカだと思っている汎性(この時代に存在する性別を持たない性)。口は悪いが論理的な思考能力が極めて高く、情報がそろったと思った瞬間にグノーシアを告発する。ゲーム開始直後から、主人公に敵意を向けてくる人物。
ステラ:宇宙船内の管理をまかされ、全員が快適に過ごせるように気を配っているお姉さん的存在。柔らかで丁寧な態度で、仲間たちと接している。
しげみち:“しげみち”という名前以外、詳細が不明な人物。
シピ:猫を愛している青年。とにかく猫のことばかり考えているが、それを除けば誰よりもまともで公正な判断力を持っている。
レムナン:過去の出来事がきっかけで、相手の目を見て話すことが苦手になってしまった青年。内気で物静かな性格をしているが……。
コメット:自然回帰を提唱する惑星出身の女の子。少々ワイルドな感覚をもっており、野生のカンで相手の発言からウソを見抜くのが得意だ。彼女を敵に回したときは、ヘタなウソをつかないほうがいいだろう。
夕里子:エキセントリックな印象のある謎の美女。彼女との出会いによって、プレイヤーは命を賭けた本当のゲームへと誘い込まれる。
ジョナス:旧時代の服を好んで着ている中年男性。格言じみた言い回しをよく使い、意味不明な言動で船員たちから一目置かれている。彼が議論に参加したときは、その真意を見抜くのに苦労しそうだ。
セツ:ゲーム開始直後から、プレイヤーをサポートしてくれる汎性の軍人。船内に侵入したグノーシアの排除に向けて議論をリードしてくれたり、主人公をとりまく状況を教えてくれる。
オトメ:イルカのような見た目をした謎の生物。言語によるコミュニケーションを取れるので議論にも参加する。ただし、人類と同じような思考をしているのかはわからない。
沙明:見た目から男性だろうと思われるが、詳細は不明な人物。彼も、グノーシアとの長い戦いに巻き込まれた哀れな船員の1人だ。
ククルシカ:言葉をいっさい話さないが、多彩な身体言語で不便なくコミュニケーションがとれる美少女。その出自やしゃべらない理由など、謎が多い存在だ。
──『グノーシア』の世界について教えてください。またそのなかで、キャラクターたちはどういった存在なのでしょうか?
川勝:今からおよそ千年後の未来。空間転移技術を手に入れた人類は宇宙に進出して、多くの星に入植しています。人類がどれほど拡大しても異星人との遭遇はなく、知的生命体は人類しか存在しないと考えられていました。
ある時、複数の星系で住人全員が失踪するという事件が起きます。これは未知の存在による人類への攻撃だと見なされ、この敵は“異星体グノース”と呼ばれることになります。異星体グノース”は人間を汚染し、その尖兵“グノーシア”に変えてしまう。そして“グノーシア”は、周囲の人間を消失させる。
調査によってこれらのことが判明しますが有効な対策はなく、1つ、また1つと星々から人が消えていきます。本作の登場人物は、グノーシアによって壊滅した星からの避難者たちです。かろうじて宇宙船で脱出したものの、避難者の中には汚染されたグノーシアも紛れ込んでいる、という状況から物語が始まります。
──『グノーシア』にはパラメータとスキルが存在していますが、これらは人狼ゲーム部分にどう影響してくるのでしょうか?
川勝:パラメータには“カリスマ”“直感”“ロジック”“かわいげ”“演技力”“ステルス”の6種類があります。“直感”が高ければウソに気付きやすく、“ロジック”で説得力が増し、“ステルス”で場になじんで目立ちにくくするといった具合に、パラメータを上げることで人狼ゲームでの話し合いを有利に進めることができます。また、パラメータ設定によってはいろいろなロールプレイができます。“直感”だけを上げて「勘は鋭いけど、何を言っても信じてもらえないプレイ」とか、“かわいげ”を上げずに「嫌われ者が人狼ゲームに参加すると、こんな哀しい思いをするプレイ」とか。かなり、リアルにイヤな経験ができます。
ゲーム開始直後は、人狼ゲームの話し合いでできることは少ないですが、物語が進んで“スキル”を入手することで、選択肢が増えていきます。たとえば、誰かの意見について皆の同意を求めたり、疑いをかけられた時にいい加減なことを言ってごまかしたり、誰かに投票するように誘導したり……と、さまざまなスキルがあります。
──最終的にストーリーを全部楽しんだうえで、プレイ時間がどれくらいかかるのか教えてください。
川勝:およそ15時間から20時間くらいです。ただ、あまりストーリーを追わずにゆっくり人狼ゲームを楽しみたい場合は、いくらでも遊べるようになっている……といいなあ、と思っています。
──20時間ほどでクリアできるとのことですが、ゲーム全体の進行としては、どのように進んでいくのでしょうか?
川勝:1回1分~15分ほどの人狼ゲームを繰り返すうちに、徐々に物語が進んでいく形になっています。最初の十数回はゲームシステムを知ってもらうためのチュートリアル回ですが、チュートリアルでも誰がグノーシアかなどといった配役は変わるので、何度かチュートリアルをやり直しても、予想を裏切る熱い展開になることもあります。
──ちなみに、チュートリアル部分を終えたあと、ストーリー部分はどのように進行していくのですか?
川勝:チュートリアルが終わると、参加人数や役割の有無、自分の役割を選べるようになります。また、自分と登場人物の関係や役割によってイベントが発生し、イベントをクリアしていくことで物語が進んでいきます。
──本作には能力値を上げたりキャラクターと交流したりするパートもありますが、それらはゲーム上でどういった影響があるのでしょうか?
川勝:話し合いで誰をコールドスリープさせるかを選んだ後、好きな登場人物に会いにいったり、自室でレベルを上げたりできる時間があります。ここでイベントが起きることが多いです。また、誰がウソをついているかを教えてもらうことや、協力を求められることもあります。イベントなどがなくても会いにいけば相手は好感を持ってくれるので、自分を疑っている人と話して関係を改善する、仲のよい人を増やして自分の意見を通しやすくする、といった効果も期待できます。
──人狼ゲームにはさまざまなセオリーがありますが、本作における「AIとのだまし合い」では、どのような考え方をするべきか教えてください。
川勝:一般的な人狼ゲームはチーム戦で、「自分がやられてもチームが勝てば勝利」なのですが、本作では「自分がやられた時点で敗北」する個人戦です。なので、やや異なりますが……基本的には、普通に人間同士で人狼ゲームをする時のように行動すればよいと思います。
誰かを疑えば、同じことを考えていた人や仲のよい人が乗ってきてくれるでしょうし、黙り込んだり発言し過ぎたりすれば皆の反感を買うでしょう。自分がグノーシアとしてプレイしている時、ヘタなウソをついて論理的に破綻した場合などは、賢いキャラからそのことを指摘されて一発退場になったりもします。
ちなみに人狼ゲームのセオリーということで言えば、登場人物たちはセオリーどおり動くわけではありません。ですが、理性的なキャラは結果的にセオリー寄りの行動を取りがちです。逆に感情的なキャラは、セオリーや確率などをいっさい無視して思い切った行動を選ぶことが多いです。こういった登場人物たちの性格や傾向は、人狼ゲームを繰り返すうちに、徐々にわかっていくと思います。
──本作ではAIと人狼を行うゲームシステムになっていますが、『グノーシア』におけるAIについて詳しく教えていただけないでしょうか? とくに、キャラクターの個性はどのように出していますか?
川勝:本作では登場人物が各自のAIを持っているのではなく、その時、その場にいる登場人物たちの性格や能力、保有スキルによって選ばれやすい行動が決まります。いわば「行動が人を選ぶ」のですが、案外現実の人間もそんな感じなのかもしれません。
そんな仕組みでプロトタイプを作り、キャラクターを入れ込んでテストプレイしてみたら、なんかもう勝手に個性が出てました。なので、キャラクターに合う個性を出そうとしたわけではなく、テストプレイで知った個性を道標にして、キャラクターのバックボーンやシナリオを作り込んでいった感じです。
まもなく発売を迎える『グノーシア』。1人プレイの人狼ゲームというこれまでにないプレイ感と、謎が謎を呼ぶ壮大なSFストーリーに期待しながら、発売を待とう。
(c)Petit Depotto. Published by mebius.
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