2019年2月28日(木)
コーエーテクモゲームスが3月1日に発売予定のPS4/Xbox One/PC(Steam)用ソフト『デッド オア アライブ 6(DOA6)』。その開発者インタビューを掲載します。
『DOA6』は、打撃、投げ、ホールドの3すくみが特徴の3D対戦格闘ゲーム『デッド オア アライブ』シリーズ最新作。“激闘エンターテインメント”をかがけ、新たなシステムやこれまで以上の描写を実現したタイトルになっています。
プロデューサーとディレクターを兼任する新堀洋平さんにインタビューを行いました。発売まであとわずかということで、開発の開発経緯やキャラクターの特徴、本作のシステムについて、語っていただいています。
――改めて本作が開発されることになったきっかけ、経緯について聞かせてください。
長期に渡って『DOA5』シリーズを運営していくなか、基本無料版もあって『DOA』プレイヤーが増えました。ただ、どんなタイトルでもあるように、ある程度プレイして満足したプレイヤーが離れていきました。その状況を見ているなか、新規のユーザーに向けてそろそろ新しいものを作っていこうと考えたのがきっかけですね。
――プレイヤーの声と開発内の声、どちらが本作の開発への大きな原動力になったのでしょう?
両方ですね。プレイヤーのなかで「そろそろ新しい『DOA』を遊びたい」という声が出ていたのは把握しています。一方で『DEAD OR ALIVE 5 Last Round』は継続的に収益を生んでいたので、続けたいという考えや続けてほしいという声があることもわかっていたのですが、同じタイトルをずっと続けていくと次回作がドンドン作りにくくなっていきます。
――『バーチャファイター』のキャラクターが参戦することに始まり、『戦国無双』シリーズの井伊直虎や『ザ・キング・オブ・ファイターズ』の不知火舞が参戦するなど、『DOA5』はタイトルとして話題が途切れなかったように思えます。
そうですね。おかげさまで新しいものを継続して打ち出せたと思っています。ですが、『DOA5 LR』は容量の都合でダウンロードコンテンツを追加できなくなりそうなところまできていました。それらの事情もあり、本作を開発するための動き出そうとする計画は、たしか2017年あたりから始まっていました。
――まだ動き出してはいないんですね(笑)。
はい! 本作は完全新規のゲームエンジンを使って制作しているのですが、当時はこのエンジンができあがっていなかったので、動き出す準備をしていた段階です。
▲前作で好評だった“やわらかエンジン”ではなく、本作は新たなゲームエンジンで制作されている。 |
――好評だった『DOA5』シリーズから本作に移行するにあたって、どんなことを目標にしましたか?
まずは『DOA5 LR』を超えなければいけないということです。RPGなどではナンバリングごとに違う世界観やシステムを作ることもありますが、対戦格闘ゲームで好評だったものを変えると失敗してしまいます。残すべきところは残しつつ、不評だった部分を変えて『DOA5 LR』のプレイヤーにも本作を遊んでもらうというのが狙いですね。
――『DOA5 LR』で不評だったものとして、どんな要素があるのでしょう?
大きな部分だとオンライン周り、特に通信ラグの緩和が最優先課題です。本作では『DOA5 LR』よりも快適にオンラインプレイを楽しめるようにリリースするのはもちろん、リリース後も改善を続けていく予定です。
あと『DOA5 LR』は“クリティカルスタン”や“クリティカルバースト”がシステムの中核になっていたため、初心者からは地上で殴られっぱなしになる点に不満の声があがっていました。また“パワーブロー”も少々使いにくい、出しにくいという声がありました。
――クリティカルバーストヒット後に少しだけボタンを長押ししたパワーブローを決めるコンボは、自分も失敗することがありました。
そのコンボですが、大きな大会で失敗したプレイヤーがいたんですね。間違いなくトッププレイヤーである人でも緊張や焦りでミスしてしまうのですから、初心者には敷居の高いシステムだったと思います。
――本作には“ブレイクブロー”、“ブレイクホールド”、“フェイタルラッシュ”の新システムが搭載されていますが、それぞれどんな風に活用されると思いますか?
まずフェイタルラッシュは、わかりやすい部分としては初心者向けの簡単に出せる連続技です。各キャラクター数十種類の技を全部覚えてから対戦をしましょうというのは正直大変。そのため、初心者の方はまずボタン連打で出せるフェイタルラッシュを主体に遊んでみてください。
ここからは中級者以上に向けた話になりますが、フェイタルラッシュには1発目がヒットしないと続く攻撃が出せないとか、上段攻撃で発生スピードが早くはない欠点があります。ではいつ狙うかといったら、クリティカルスタン後の追撃になるでしょう。
フェイタルラッシュが当たった相手は通常のホールドを使えない“フェイタルスタン”という特殊なやられ状態になります。そのためクリティカルスタン状態の相手への追撃という視点では、フェイタルラッシュは強力な上段浮かせ技と同等のものと言えるのです。
――フェイタルスタンでもブレイクホールドは可能ですよね?
はい。ですが、自分のフェイタルラッシュが相手のブレイクホールドで止められたということは、わずかなダメージで相手にブレイクゲージを半分消費させたということになります。フェイタルラッシュをブレイクホールドで受け止められた後は、ブレイクゲージの面で優位に立っていることになります。
――フェイタルラッシュは立ち回りのなかで出すのではなく、相手をクリティカルスタンさせた後の追撃に使うのが強力なんですね。
立ち回りでも狙いを絞れれば強力ですよ。相手のサイドステップに合わせてフェイタルラッシュの1発目を当てると相手がフェイタルスタンかつ、こちらに背を向けている状態になります。そこから背中を向けた相手にのみ決まるコンボを狙うというのが上級者向けのフェイタルラッシュの使い方です。
▲サイドステップにフェイタルラッシュ1発目を当てれば、大ダメージの追撃が狙える。 |
――ブレイクブローはどういった位置づけになるのでしょうか?
とにかく威力の高い攻撃ですから、単純にコンボに組み込むのが効果的。でもオススメしたいのは相手の連携に割り込むような使い方ですね。本作には派生が上段と中段しかない連携が非常に豊富です。ブレイクブローは出始めに相手の上段及び中段攻撃を受け止めつつ攻撃できる性質があるので、こういった連携に対して繰り出せると勝率が上がると思います。
――ブレイクホールドはやはりそういった強力な攻撃の回避手段になるのでしょうか?
ブレイクホールドはコンボの回避がメインになります。地上で打撃を受けそうな時、普通のホールドなら相手の攻撃を読んでホールドを選択しなければいけないところ、ブレイクホールドなら相手がどんな打撃を使ってきてもOKなんです。
――新システムのうち、いつでも出せるフェイタルラッシュは他の技とどうバランスを調整しましたか?
『DOA』のバトル中によくあるシチュエーションといえばお互いが五分の状況と、どちらかがクリティカルスタンになっている状態になります。この2つの状況でフェイタルラッシュの1発目が他の技と比較して何を強くして、どこを弱くするかを意識して調整しました。例えば前者の状況では、攻撃発生が早い技とリーチの長い技が強力ですよね。そこからフェイタルラッシュはいわゆるジャブよりもリーチの長い技として設計しています。
また、攻撃発生については『DOA5 LR』のクリティカルバーストを誘発する技と比較しています。フレームの話になりますが、クリティカルバーストを誘発する技は発生20フレームの中段技です。それをもとにフェイタルラッシュは20フレームよりも少し早い攻撃発生にしています。
――そういった新システムも学べる場として、個人的に“DOAクエスト”がおもしろい試みだと感じました。動かない相手になにかをする、もしくは実戦形式でなにかを成功させるというモードはよくあるのですが……。
よくわかりましたね。あの“DOAクエスト”のAIには“クセ”みたいなものをあえて設けています。例えば“ホールドを決めろ”とミッションで提示しているのにひたすら投げ技だけを使ってきたら、それはゲームじゃないですよね。通常のCPU戦のAIならそれは起こりえます。
ですが、“DOAクエスト”のAIは気づければ簡単にミッションをクリアできるようにしています。我々も初心者に対戦格闘を教える時に「この技を出すからホールドしてみてよ」と言って実際に試してもらうじゃないですか。そんな動きをCPUがしてくれたらおもしろいだろうと思って、専用のAIを用意しました。
――そのうえで、“DOAクエスト”を遊ぶとコスチュームが手に入りやすいというのが心憎いですね。
始めたばかりの人やライトにプレイする人に、『DOA6』のルールをモチベーション高く学んでもらうにはどうすればいいかと考えた結果、“DOAクエスト”を攻略するとコスチュームが効率よく手に入るようにしました。
▲“DOAクエスト”では3つのミッションを達成するごとに、コスチュームの設計図を入手可能。設計図を一定数集めるとコスチュームが手に入る。 |
――おなじく新要素の“DOAセントラル”についても聞かせてください。
「キャラクターが着替える場所が欲しい。可能ならばヘアスタイルなどをコーディネートしてバトルに行きたい」というのが“DOAセントラル”が生まれたきっかけです。以前にリリースした『DEAD OR ALIVE Xtreme 3』でもクローゼットでプレイ中の女の子に限り自由に着替えができたので、そのノウハウを生かして、本作では着替えるための施設を用意しています。
格闘ゲームだから本来この要素はなくてもいいんです。でも、あったほうがいいし、このシリーズであれば必要としている人もいると思って実装しました。
――前作でもあったのですが、本作でメガネがさらに充実していることに驚いたのですが、どなたの趣味になるのでしょうか?
別にメガネフェチがいるわけではありません(笑)。『DOAX』シリーズは女の子だけなのでいいのですが、『DOA』は男性キャラも多くいる。彼らにもマッチするデザインにしたうえで、メガネが自動できれいにフィットするプログラムはないので手作業で調整しています。それをやれたのは、愛以外の何ものでもないかと。
ただ、キャラすべてにメガネの設定を用意し、それを全キャラに付けると作業工数は掛け算的に増えていくんです。「スタッフ、よく頑張った!」とほめたいですね。それくらいに地味に大変なので、この発言はぜひ残してください(笑)。
――わかりました(笑)。プレイしているとコスチュームの質感を含めて、ビジュアルが格段に進化していると感じます。映像表現に関して、本作だからこそできたということはありますか?
はっきりと言えるのはライティングになります。本作では光が当たった場合、そこをリアルタイムで計算して影が落ちるようにしています。『DOA』はもともとキャラクターをきれいに見せるのがコンセプトとしてありまして、例えば女性キャラクターならどのシーンを切り取ってもカワイらしく見えるようにしていました。
そこにカワイく見せるためのウソもあったのですが、本作では描写がリアルになったためウソを付けなくなっているんです。暗いところでは暗く、明るいところでは明るい。向きが変わるだけで、表情が変わって、いろいろな見え方をするようになりました。PS4では1080Pに対応していますし、Xbox One Xであれば多少の処理不可を許容してもらえればHDRありの4Kで表現できます。撮影モードを楽しみたい人であれば、とてもきれいな描写を見ていただけます。
――汚れ表現に新しいものは入っているのですが?
1ステージあたりの汚れの種類が増えています。ここについてはまだいろいろなことができると思っているので、今後も研究を続けていきます。
注目してほしいのが“男性の顔”ですね。男性キャラクターの顔は女性とは違ってカッコよくても少しおもしろくても絵になればいい。そのため、今の新しいライティングと顔の変化を駆け合わせやすかったんです。渋い男ほどカッコよく見えると思います。バイマンとか特にオススメですね。
▲試合の進行にともなって、キャラクターが汗を書いたり服が汚れたりしていく描写は本作の特徴の1つ。 |
――本作の2人の新キャラクターのうち、NiCOは“M.I.S.T.”の研究員であることが明かされていますが、ディエゴは物語上どんな位置づけになるのでしょう?
ディエゴは“M.I.S.T.”などの組織といっさい関係のない等身大の青年です。もともと格闘大会の“DEAD OR ALIVE”にもかかわりのないキャラクターなのですが、そんな彼がいかにして大きな舞台に進んでいくかを描いています。1人のただ強いだけの男がデカくなっていく姿を見てほしいですね。
――物語上でNiCOとディエゴの位置に新キャラクターを置こうとした経緯も聞かせてください。
ディエゴに関しては、海外の担当者と話しながら設定を決めました。一方のNiCOは『DOA5 LR』でほのかを出した辺りから考えていた物語があって、その物語を描くためにはリサではない科学者が必要だったんです。そういった物語を描くために必要な設定を固めて、年齢や性別を決めていきましたね。
――では、ほのかも物語上の配置を考えて作っていたのでしょうか?
ほのかは私が『DOA』シリーズ開発に携わって2年目くらいから温めていたものを形にしたキャラクターになります。……自分は『DOA』でやりたいことがたくさんあるんです。
▲見た格闘技をすぐに覚えて、腕から謎のオーラを放つほのか。彼女の設定はシリーズ初期から考えられていたという。 |
――お話を聞くと、ディエゴとNiCOの物語上のかかわりはあまりないのでしょうか?
そうですね。ディエゴは大舞台という明るい世界に旅立っていくキャラクターで、NiCOは世界の裏側で起きているシリアスな物語にかかわってくるキャラクターなので基本的かかわりはないです。
――バトル面での2人の特徴もそれぞれ聞かせてください。
共通しているのは、操作が簡単でタメ技があるということですね。両方とも初心者向きに作っていますが、ディエゴのほうが力に優れており、NiCOのほうが自分から攻めやすく相手の技をよけつつ攻撃しやすいという差別化を図っています。
▲ディエゴ、NiCOともにPPPPの4発目のボタンを長押しすると、威力の高い技に派生する。 |
――どちらか1人を初心者さんにオススメするとしたら、どちらになりますか?
そこはもう好みですね。男性を使いたいか女性を使いたいか、1回の読み合いのダメージか読み合いの勝ちやすさか、そういった部分でお好きなほうを選んでもらえればと思います。現状では、どちらも強いイメージで作っています。
――女性と言えば『DOA』にはセクシャルな要素を求めるユーザーさんもいますよね。そういった人たちになにか送れる言葉があれば聞かせてください。
いくら語ってもいろいろところで「今回は硬派だ」って言われるんですよね。見ていただくとわかるように、かすみのデフォルトのコスチュームは以前より露出が少ないものになっていますが、それでも『DOA』は『DOA』です。豪華体験版をプレイした人には気づいてもらえたと思いますが、とにかく私を信じてほしいです!
――最後に発売を待っているユーザーさんにメッセージを!
本作はいろいろなユーザーの好みに向けて、“みんなの『DOA』”として作っています。今まで遊んだことがない人でもここから楽しんでいただけるようなゲームになっていますし、発売後もおもしろくなるように運営していきますので、長く付き合っていただければと思います。そのスタートをみなさんで切りましょう。
また、本作ではe-sportsへの施策も考えており、現在何ができるか、どの地域で何回大会を開けるかを考えています。まじめに練習している人はどこかで大会に出られるようにしていきますので、そちらもご期待ください。
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