2019年3月28日(木)

本格クトゥルフ神話アドベンチャー『コール・オブ・クトゥルフ』をホラーが苦手なプレイヤーがレビュー

文:Go!!

『コール・オブ・クトゥルフ(Call of Cthulhu)』は、CERO Z(18歳以上のみ対象)のソフトです。
※18歳未満の方は購入できません。

 オーイズミ・アミュージオは、クトゥルフ神話を題材にした探索サスペンスアドベンチャー、PS4版『コール・オブ・クトゥルフ(Call of Cthulhu)』を、本日2019年3月28日に発売しました。

『コール・オブ・クトゥルフ』
『コール・オブ・クトゥルフ』

 『コール・オブ・クトゥルフ』は、『クトゥルフ神話TRPG』にインスパイアされた主観視点の3Dの探索型ホラーアドベンチャーです。

 その独特な雰囲気や世界観で、『クトゥルフ神話』のファンだけではなく、多くのゲームファンから注目を集めた本作。そんな話題作のレビューを、ホラーが少し苦手な筆者が、発売と同時にお届けします!

瞬時に世界に入り込める冒頭シーン

 時代は、第一次世界大戦後の1920年代。物語は、しがない探偵で生計を立てる主人公、エドワード・ピアースのもとへ、奇妙な依頼が届けられるところから始まります。

『コール・オブ・クトゥルフ』

 ピアースは、戦争のトラウマを抱えた退役軍人で、薬物とアルコールに依存する自堕落な生活を送っていました。経済的に追いつめられていた彼は、怪しいと思いながらも、その事件の調査を引き受けることになるのです。

 そんな冒頭シーンでは、自分の過去や事件の内容に詳しい説明はなく、周囲の情景とセリフだけで現状を理解しなくてはなりません。

 そして、もうすでにこの時点で怖いんです。依頼をしてくる老紳士の顔も怖いですが、どこか色あせた感じの色調で展開する事務所の場面は、間違いなく現実の世界であるというのに、どこか漠然とした不安定さを感じさせてくれるのです。そして同時に、これから起こる事件へ対する不安感も増します。

『コール・オブ・クトゥルフ』
▲発狂した画家の一家焼死事件と、依頼内容もかなりハード。画家である娘が描いたという絵画を巡り、なんともおぞましい真相を追及していくことになります。

 これだけの不安感を感じるのは、ある意味それだけ、この世界に入りこんでしまったからかもしれません。「怖いから止めたい、でも先が気になって止められない」という、ホラーにありがちな矛盾した感覚を、冒頭から感じさせてくれます。

緻密なグラフィックが醸し出す世界の存在感

 画家である娘が発狂し、家に火を放って夫と子どもと一緒に焼死した“ホーキンス家焼死事件”。ただの事故として処理された事件ですが、娘の行動を疑問視したある老紳士が、事件の真相を暴いてほしいと依頼してきたのです。

 そんな事件の本格的な捜査が始まるのは、舞台となるダークウォーター島にたどり着いてから。あらためて舞台となる島を歩いてみると、やはり緻密なグラフィックで彩られた異様な雰囲気に圧倒されます。

 廃退的で、どこか人を寄せ付けない雰囲気のある島の探索は、まるで暗闇の中を手探りで歩き回っているかのよう。早くも引き返したくなりますが、この漠然とした不安感が、主人公との一体感を感じさせ、ただならぬ臨場感を体感させてくれます。

『コール・オブ・クトゥルフ』
▲島にわずかに残る人々は、誰もが排他的でなかなか情報を得られません。さらには斧で攻撃しようとしてくる人まで……!
『コール・オブ・クトゥルフ』
▲目で見える島は、100年近く昔という時代背景もあってかあまりなじみのない光景ですが、まるでその場にいるかのように不穏な空気をリアルに感じます。

 グラフィック面でいえば、ときおり主人公が見る幻覚では、かなりグロテスクな光景もあったりします。

 大量に立ち並ぶ鮫や鯨の死体、ぬめぬめとした触手、飛び散った臓物、得体のしれない深海魚などなど。その凄惨な光景は、画面から腐臭が匂ってきそうなほど。個人的に魚貝類が苦手なので、別の意味でキツかったです……。

『コール・オブ・クトゥルフ』

解法は1つだけではない……だからこそくる不安感も

 基本的なゲームの流れは、チャプターごとに舞台となる港町や洋館を探索し、事件の痕跡を調査、さまざまな検証を重ねながら目標を達成していき、物語が進んでいく形になります。

 一般的なアドベンチャーゲームと同じですが、本作では、物語を進めるための方法が複数用意されており、それによって細かい内容が変化していくことが特徴となっています。

 具体的な話をしますと、ダークウォーター島にたどり着いた主人公は、とある倉庫に潜入することになります。

 ここに入るためには、大きくわけて、見張りをしている2人の男をどかして入る場合と、別の建物から地下ルートを通って侵入する場合の2つの方法があります。さらに、2人の男をどかす方法も複数あり、どかした後の展開も、ピアースの技能によっては細部が異なってくるのです。

『コール・オブ・クトゥルフ』
▲見張りをどかしたてピッキングで倉庫へ。しかし“調査”技能が低いと失敗し、ある女性に捕まることになります。この時“筋力”に自信があれば、力での解決を試みることもできますが……。

 と、こうした細かい違いはいくつも用意されていますが、基本的にオートセーブなので気軽にやり直すことができません。これについては賛否ありそうですが、逆にゲームの1つの醍醐味にもなっています。

 「こんな方法で進んだけれど、もっといい方法があったのでは?」そんな不安感が、世界の雰囲気や主人公の感情とリンクし、ゲームのドキドキ感を増してくれるのです。

 こうして常に不安感を持つことが、ゲームを続けるモチベーションになってくれました。やはり不安だからこそ、先に進めて安心したくなるのでしょうか。そのまま一気にプレイしてしまったので、結果としてよかったかもしれません。

『コール・オブ・クトゥルフ』
▲事件のあったホーキンス邸では、壁の歯車を動かすことで隠し通路が出現します。この解法も複数ありますが、どんな方法をとっても、大筋の物語が変化することはないので安心しましょう。

主人公の成長でより深く世界を理解できる!

 主人公のピアースは7つの技能を持っています。最初にキャラクターポイント(CP)を振り分けられる他、ゲーム中に得られるCPを追加していくことで、能力を高めることもできます。

 これによって、細かなクリア方法にも変化が起きてくることは、先述した通り。例えば“調査”が高ければ鍵のかかったドアをピッキングできる場合がありますし、“筋力”が高ければ邪魔な障害物を動かしたりできる場合があります。また、特定の能力が高くないと、得られないヒントもあります。

 もちろん、どの技能を伸ばしてもクリアはできるのですが、ある程度“ロールプレイ”感覚を強くしてくれるので、自分の好みでこだわった方がよさそうだと感じました。

 ゲームの効率よりも、自分を重ねるように設定すれば、主人公の行動に納得しやすくなるかもしれません。ちなみに自分の場合、スーパーヒーロー的な活躍を期待して“筋力”に全振りしましたが、なんだか気持ち行動が粗暴になっただけで、思っていたのとちょっと違いました(笑)。

『コール・オブ・クトゥルフ』
▲どの技能を上げるか悩んだら、“調査”が高いと行えるピッキングがかなり便利なので、こだわらないなら“調査”がおすすめです。
『コール・オブ・クトゥルフ』
▲“医学”と“オカルト”の技能は、ゲーム中で本などのアイテムを見つけることで伸びていきます。そのためのアイテムを集めるというコレクション要素も、1つのゲーム性となっています。

ただ探索するだけでない、飽きさせない多様なゲーム性も

 本作は探索アドベンチャーですが、ただ単にマップを歩き、何かを発見していくという単純なものではありません。ゲームには、特定の場所で何があったかを探っていく“過去の再現”など、さまざまなシステムが搭載され、探索が単調にならないためのスパイスになっています。

 また、ゲームのボリュームも十分で、前述の技能を変えてみての周回プレイなども楽しめます。ただ、全体的にヒントが少なく、物語を進めるには、注意深く周囲を探し、現状の状況を理解し、それにあわせた行動をしなくてはならないことも特徴です。

 ここでまた具体的な話をしますと、とあるチャプターでは、机に置かれたランプを調査することで現実と幻覚の世界を切り替えでき、2つの世界を行き来しながら仕掛けを解いていく必要があります。

 しかも一方の世界では、行動するごとにランプのオイルが消費され、暗闇になると“空鬼(くうき)”と呼ばれる怪物に襲われゲームオーバーになります。

『コール・オブ・クトゥルフ』
▲“空鬼”は『クトゥルフ神話』における怪物です。『クトゥルフ神話TRPG』では次元を移動できる能力を持っていて、よく探索者を苦しめるために登場します。

 しかしゲーム中は、そうした状況の説明が一切ないのです。何度もゲームオーバーになりながら、2つの世界のギミックそのものを自分で解釈し、何をすべきかを考えなくてはなりません。ただ単に総当たりで探索していたのでは、先に進むことはできないのです。

 そういう意味では理不尽なゲームオーバーも多いですし、そのヒントの少なさは、人によってはストレスになるかもしれません。しかしそれだけに、ギミックを理解し、まったく理解不能だった状況の打開策が見えてきた時は、高い高揚感を味わうことができるでしょう。

『コール・オブ・クトゥルフ』
▲別のチャプターでは、捕らわれた収容所から脱出を試みる場面も。巡回する見張りの目を盗みながら、脱出の方法を探っていきます。

 最後に総合的な感想として、実は『クトゥルフ神話』については概要を知っているだけで、あまり詳しくはなかったのですが、それでもホラーアドベンチャーとして十分に本作を楽しめました。基本的にビビリなのでビクビクしながらのプレイでしたが、世界観が秀逸で没入感は高かったです(それだけに怖い思いもたくさんしましたが)。

 アドベンチャーという性質上、ストーリー的な解説はできませんが、この高い没入感のおかげで、常に不安感とドキドキ感を味わうことができました。

 『クトゥルフ神話』が好きな人だけでなく、ホラー好き、アドベンチャー好きのどちらにもおすすめできる作品だと思います。ちなみに昔、TRPG(テーブルトークRPG)にハマっていた過去があり、今回のプレイであらためて『クトゥルフ神話TRPG』に興味を持ちました。どこかでセッションをやっていれば参加してみたいと思います!

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