2019年4月10日(水)

映画『ハロウィン』を観たあとは『デッドバイデイライト』! 追加キャラ3名に迫る元ネタ考察第4回【電撃PS】

文:電撃PlayStation

『Dead by Daylight』は、CERO Z(18歳以上のみ対象)のソフトです。
※18歳未満の方は購入できません。

 4月12日には、新作映画『ハロウィン』の公開も控え、殺人鬼シェイプことマイケル・マイヤーズの使用率もうなぎ登り!? とはいえ、新しい殺人鬼や生存者も気になる! 1人の殺人鬼と4人の生存者に分かれて命がけの儀式を行う、非対称型対戦アクション『デッドバイデイライト(DbD)』。今夏には専用サーバーへの移行、そして秋にはNintendo Switch版の発売が予定されるなど、ますます盛り上がりを見せています。

『デッドバイデイライト』

 本作に登場する個性的な殺人鬼の元ネタ紹介も4回目。今回は殺人鬼リージョンとプレイグ、生存者のアッシュをお届けします。

⇒“『デッドバイデイライト』に登場する殺人鬼の元ネタは?”第1回はこちら

⇒“『デッドバイデイライト』に登場する殺人鬼の元ネタは?”第2回はこちら

⇒“『デッドバイデイライト』に登場する殺人鬼の元ネタは?”第3回はこちら

【注意!】殺人鬼の元ネタとなった映画については、内容のネタバレに言及しているものもあります。今回紹介している映画をこれから見ようと思っている人はご注意ください。

THE LEGION(リージョン)

『デッドバイデイライト』

本名:フランク・モリソン(ジュリー/ジョーイ/スージー)
性別:男
武器:ハンティングナイフ
特殊能力:愚連の狂乱

『デッドバイデイライト』

 リージョンは本作オリジナルの殺人鬼で、男女4人のティーンエイジャー集団です。スキンを変更することによってキャラクターが切り替わるという、他の殺人鬼にはない珍しい仕様になっています。

 リージョン(LEGION)とは軍団のこと。日本では“レギオン”と表記するほうが一般的でしょうか。もともとは古代ローマ軍団(ラテン語でLegio:レギオー)のことです。狭義では、マルコによる福音書第5章9節に登場する悪霊のことを指します。

 ある男に取り憑いた悪霊にイエスが「何という名前なのか」と尋ねたところ、「名前はレギオン。たくさんだから」と答え、自分たちを豚に憑かせてほしいと懇願します。そして2000匹もの豚に乗り移ったレギオンは湖になだれ落ち、溺れ死んでしまいました。有名な“ガダラの豚”の一節で、中島らも氏の小説のタイトルにもなっています。

『デッドバイデイライト』
▲リージョンの特殊能力は高速移動しつつ切りつけて深手状態を与える“愚連の狂乱”。効果時間中に近寄られたら避けることは困難です。

 さて、無軌道なティーンエイジャーのストリートギャング(……というより、彼らは単なる田舎の不良集団ですが)が登場する映画というと、真っ先に思い浮かぶのがスタンリー・キューブリック監督の『時計じかけのオレンジ』(1971年公開)でしょう。ベートーヴェンの交響曲第9番をバックに、麻薬入りのミルクを飲みながら夜ごと悪事を繰り返す主人公アレックスと仲間たち。その姿は、リージョンと重なる部分が多々あります。

 また、フード姿でマスクを付けた集団のイメージは、天才ハッカーたちの巻き起こす事件の顛末を描いた『ピエロがお前を嘲笑う』(2014年公開)とも重なります。ベンヤミンたち4人のハッカー集団“クレイ”はあの有名な実在のハッカー集団アノニマスを模したようなマスクを被って行動しています。電脳世界での攻防を地下鉄車内に見立てたシーンでは、アクセスしている人物それぞれが奇妙なマスクを被った姿で描かれており、ネット上での“匿名性”を象徴的に表していました。

 フード姿の不気味な少年たちが登場する『シタデル』(2012年公開)も、リージョンを思い起こさせる作品です。妊娠中の妻が謎の集団に襲われ、ショックで主人公トミーは外出恐怖症になってしまいます。恐怖心を見抜く少年たちは、現実のものともこの世ならざるものともつかない存在として描かれていましたが、恐怖心を克服したトミーには無力でした。もしかしたら彼らは、トミーの恐怖心が生み出した存在だったのかもしれません。

 主人公一家が不気味なマスクの犯罪集団に襲われる『パージ』(2013年公開)は、リージョンのようなマスクを着けた犯罪者たちが暴れまくる夜を描いた作品です。年に1回医療や消防、警察の機能が停止し、殺人を含むあらゆる犯罪が合法化される夜“パージ”で、とある一家を襲う恐怖を描いています。

 フードもマスクも着けていないのでビジュアル面でのイメージはやや離れますが、『ジュース』(1992年公開)はリージョンの背景ストーリーと非常に重なる部分があります。ふとしたことから一丁の銃を手に入れた4人の少年たちは、強盗現場でするつもりのなかった殺人を犯してしまい……。ラップミュージックに乗せて描く本作には、早世した伝説のヒップホップミュージシャン2パックが出演しています。

 このほかにも殺人鬼の少年集団が登場する映画は『ザ・チャイルド』(1976年公開)や『チルドレン・オブ・ザ・コーン』(1984年公開)、『バイオレンス・レイク』(2008年公開)などがあります。

THE PLAGUE(プレイグ)

『デッドバイデイライト』

本名:アディリス
性別:女
武器:冒涜の香炉
特殊能力:黒死の吐瀉

『デッドバイデイライト』

 プレイグことアディリスは最近になって霧の森へ現れた殺人鬼です、“最古の殺人鬼”と言われているとおり、彼女は古代バビロニアの司祭です。本来は司祭の補助を務めていた女性なのですが、司祭が疫病で死んでしまったため、彼女が次の司祭に祭り上げられてしまいました。

 プレイグの特殊能力は感染性のある緑色の吐瀉物をまき散らす“黒死の吐瀉”です。黒死とはペスト(ドイツ語:Pest、英語:Plague)のこと。致死率が高く罹患すると皮膚が黒ずむので、別名黒死病と言われていました。ペストは古代から猛威を振るった伝染病として知られており、紀元前の中央アジアやエジプトですでに大流行が起こっていたことが知られています。

 ペストは欧州でもたびたび大流行を起こしています。紀元6世紀の東ローマ帝国に始まり、11世紀の十字軍遠征期にはパレスチナからの帰還船がクマネズミとともに病原菌をヨーロッパに運んでしまい、感染が拡大しました。そして14世紀の中世ヨーロッパでも大流行を起こしています。当時の欧州人口の1/3~2/3にあたる2000~3000万人、一説では全世界で1億人もの人が死亡したとされています。

 このように恐ろしい歴史を持つ黒死病の名を冠したプレイグですが、彼女の緑色の吐瀉物を見て思い起こさずにはいられない映画作品があります。ホラー映画史を語るうえで外すことのできない名作、『エクソシスト』(1973年公開)です。リンダ・ブレア演じる少女リーガンに取り憑いた悪魔パズズは卑猥な言葉で神を冒涜しますが、このときメリン神父とカラス神父に緑色の吐瀉物を吐きかけるという有名なシーンがあります。プレイグの“黒死の吐瀉”は、ここから着想を得たことはほぼ間違いないでしょう。

『デッドバイデイライト』
▲特殊能力“黒死の吐瀉”やメメント・モリで緑色の吐瀉物を吐きかけるさまは、まさに映画『エクソシスト』のワンシーンを思い起こさせます。

 この吐瀉物はエンドウ豆のスープが使われたそうです。これを真似て、映画公開当時子どもたちが野菜を咀嚼して口から吐き出したり、逆ブリッジで歩き回る“エクソシストごっこ”が流行し、ちょっとした問題になりました。

 リメイク版の『死霊のはらわた』(2013年公開)には、まるでプレイグのメメント・モリを彷彿とさせるような嘔吐シーンが登場します。オリジナル版『死霊のはらわた』(1981年公開)とは違い、リメイク版はギャグ的要素を完全に廃した過激なゴア描写を際だたせた作品となっています。

 プレイグのように吐瀉物を攻撃用途に使う作品となると、デヴィット・クローネンバーグ監督の『ザ・フライ』(1986年公開)が挙げられるでしょう。往年のSFホラー映画『ハエ男の恐怖』(1958年公開)をリメイクした本作では、主人公の科学者セスが物質転送装置の実験に失敗し、遺伝子レベルでハエと融合してしまいます。徐々に変貌していくセスは、やがて口から溶解液を吐くようになってしまいます。

 ペストそのものの恐怖を描いた映画作品には、カミュの原作『ペスト』を現代に移した『プレイグ』(1995年)やTV映画『ザ・ペスト』(2001年公開)があります。いずれも現代によみがえったペストのパンデミックをリアルに描いた恐ろしい作品です。

 ペストに限らず伝染病のパンデミックやアウトブレイクを描いた作品となると、これはもう枚挙にいとまがありません。『アンドロメダ…』(1971年公開)、『カサンドラ・クロス』(1975年公開)、『アウトブレイク』(1995年公開)、『12モンキーズ』(1995年公開)、『フェーズ6』(2009年公開)、『コンテイジョン』(2011年公開)、『ザ・ベイ』(2012年公開)、『パンデミック』(2016年公開)などなど。邦画では小松左京氏のベストセラー小説を映画化した『復活の日』(1980年公開)をはじめ、『感染』(2004年公開)、『20世紀少年』3部作(2008年~20098年公開)、『感染列島』(2009年公開)などがあります。

アッシュ

『デッドバイデイライト』

本名:アシュレイ・J・ウィリアムズ
性別:男

『デッドバイデイライト』

 アッシュことアシュレイ・J・ウィリアムズはTVドラマ『死霊のはらわた リターンズ』(2015年放映)とのコラボで登場した新たな生存者です。演じるのは名優ブルース・キャンベル。

 『スパイダーマン』(2002年公開)シリーズで有名なサム・ライミ監督のデビュー作として1981年に公開された映画『死霊のはらわた』は、80年代のスプラッター映画ブームの開祖的な作品です。森の中の一軒家を舞台にした、いわゆる“キャビンもの”のさきがけで、続編の『死霊のはらわたⅡ』(1987年公開)、そして3作目の『キャプテン・スーパーマーケット』(1993年公開)と、シリーズ化しています。また前述のとおり、2013年には1作目のリメイク版が公開されています。

 1作目はホラー映画として高い評価を得た作品ですが、2作目『死霊のはらわたⅡ』からはコメディ要素が強くなっていきます。そしてラストで時空の穴に吸い込まれたアッシュは、なんと中世にタイムスリップしてしまいます。3作目『キャプテン・スーパーマーケット』ではアーサー王たちとともに死霊軍団と戦う、まるでモンティ・パイソンのような作品になってしまいました。

 TVドラマ『死霊のはらわた リターンズ』は、デッダイト(死霊に取り憑かれた人間)との戦いから30年後のアッシュを描く作品です。マーケットのしがない店員として働くアッシュは、ひょんな事から30年ぶりに死霊たちに見つかってしまいます。

 『死霊のはらわた』シリーズの主人公アッシュはブルース・キャンベルの当たり役で、彼の代名詞的なキャラクターです。そもそもシリーズ3作目『キャプテン・スーパーマーケット』の原題は『Bruce Campbell vs. Army of Darkness』で、役名ではなくブルース・キャンベル本人の名前がタイトルになっているくらいです。

 アッシュはSマートの日用品係で、何の変哲もない一般男性です(3作目の邦題はここから付けられているようです)。しかし2作目では自ら切断した右腕にチェーンソーを装着し、3作目ではショットガンとともに死霊の軍団に大活躍します。

 そんなアッシュですが、霧の森に迷い込んだ際に愛用のショットガンとチェーンソーがなくなっていました。どうやらエンティティは生存者に武器を与える気はないようですね。

『デッドバイデイライト』 『デッドバイデイライト』
▲本来ならレミントンショットガンが収められていた背中のホルスター。しかしショットガンはエンティティに取り上げられてしまったようです。 ▲アッシュの右手は義手になっています。義手を取り外してチェーンソーを装着することもできますが、こちらもショットガン同様霧の森には持ち込めませんでした。

 映画2作目や3作目で大活躍した愛用のショットガンはレミントン社の二連式12ゲージらしく、本人いわくSマートの「一番の売れ筋商品」。スポーツ用品売り場で109ドル95セントとのこと。本来なら背中のホルスターに収まっているはずですが、現在では空になっています。映画3作目の劇場公開版エンディングでは、『ターミネーター2』のアーノルド・シュワルツェネッガーばりのスピンコックを披露していました。

 そしてアッシュのメインウェポンともいえるチェーンソーは、右手の義手を取り外して装着することができます。このチェーンソーはもともと、右手が悪霊に取り憑かれて自分を襲ってきたときに、切り落とすのに使用したものです。もしゲームに登場していたら、ヒルビリーやカニバルとのチェーンソー対決が見られたかもしれないと思うと、ちょっと残念な気がしますね。

 いかがでしたか? 本作の元ネタを深く知るほど、儀式への興味も増すのではないでしょうか。個性的な殺人鬼や生存者が多数登場する『デッドバイデイライト』。みなさんも、ぜひ霧の森の殺人儀式に参加してみて下さい。

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