2019年4月19日(金)
セガゲームスが運営するオンラインゲーム『ファンタシースターオンライン2』。4月24日に行われる大型アップデート“Stars:EPISODE6”についての開発者へのインタビューを掲載する。
お話を伺ったのは、EPISODE6ディレクターの吉岡哲生さん。アップデートを控えたEP6の新クラスやアップデート内容、さらには先日公開された新規アニメーションについてお聞きした。
――ファンタシースター感謝祭2019の東京会場、セガフェス2019と2つのイベントが終わりましたが、それぞれの感想を教えてください。
東京会場はEP6の実質的なお披露目、セガフェスは“終の艦隊迎撃戦”というEP6の代表的なところを紹介できたので、いったんは肩の荷が降りたなと感じています。ですが、すぐにEP6の配信が始まるので今はラストスパートをかけています。
――調整はもうほとんど済んでいるのでしょうか?
そうですね。あとはバグを出さないように最終確認というところです。
――それぞれの会場でユーザーと接する機会があったと思いますが、どのような会話をされたのでしょうか?
実機プレイを披露したこともあってか、普段はどんなプレイをしているのかという質問が多かったですね。ちゃんとゲームをやっているのか、確認したい意味もあったのではないかと。他にはクラスバランスや、各クラスにこういう要素が欲しいという要望が多かったです。
――やはり要望は多いんですね。
そうですね。こちらとしても、ユーザーから直接話を聞けるのでどういう意図なのか、どういった仕様が近しいのか、そういったところまで掘り下げられるのでとても参考になりました。ただ、東京会場では気付かれなかったのか、それほど声を掛けられることはなかったです。
――そんなに気付かれないものなんですか?
EP5ディレクターの濱﨑と一緒に歩いていた時に、濱﨑と記念撮影をしたいというユーザーがいて、それで自分は撮ってあげました。濱﨑のアシスタントだと思われていたのかもしれませんね(笑)。
――ファントムと“終の艦隊迎撃戦”の試遊でユーザーの反応はいかがでしたか?
おおむね好評でした。その場でご要望をいただくことも多かったのですが、アンケートはすべて確認済みで、すでにファントムや“終の艦隊迎撃戦”の配信に向けていくつかの内容は反映しています。特にファントムについては、X’masパーティーの試遊もあったのでかなり反映できたと感じています。
これまでの『PSO2』では、試遊はお披露目の意味合いが強くて、そこでいただいたご意見を反映するということはあまりありませんでした。作っていると“どうするか悩むポイント”があるんですけれども、ユーザーのみなさんのご意見を直に聞けると「よし、やろう」と決断できます。迷っている実装やクオリティに直結する部分を再確認できる場として、開発としてもありがたく使わせてもらっています。
――試遊は引き続き感謝祭の全会場でやっていくのでしょうか?
実装後のタイミングになる会場もあるので、全会場でやる予定は今のところありません。ただ、今後予定している新クラスに関しては、今回と同じようにユーザーのご意見を伺う場は作りたいですね。EP6はオープンスタンスでやっていこうと考えています。
――新クラス・ファントムのコンセプトとクラスの特徴を教えてください。
コンセプトは役割とアクション性それぞれにあります。役割のコンセプトは敵の攻撃力を低下させるデバッファーです。そしてアクション性のコンセプトは、軽快なアクションと一発の爽快感の両立で、前者はファントムシフトでのコンボ、後者はファントムマーカーの起爆があります。特徴は、操作難度は難しくなるように意図して作っています。操作が難しいぶん、見返りも大きいといったクラスですね。
――ファントム武器はどういった基準で選んだのでしょうか?
最初にロッドが決まりました。ヒーローではタリスを法撃武器としてあまりうまく使えなかったこともあって、ここは次のクラスでリベンジしたいなと思っていた部分です。ライフルが次。射撃と法撃の複合クラスを望むユーザーが多かったので、そういったところも意識して射撃と法撃に重心を置いています。ファントムのデフォルトキャラクターのイラストがロッドとライフルを装備しているのも、武器が決まった順ですね。最後にカタナが出てきて、今の形になりました。
――最初から武器は3種になると決めていたのでしょうか?
ヒーローと対になる後継クラスなので最初から決まっていました。ただ、“アークスX’masパーティー”でパルチザンに対応するかアンケートを取ったことがあるのですが、その時にユーザーの反応がきれいに割れたのでお蔵入りになりましたが、パルチザンも実装できるように開発は進めていました。今後もああいったことをユーザーに聞く機会があるかもしれませんが、ほとんどが賛成できる内容でなければ実装できませんね。
――ファントムを使いこなすためのアドバイスがあればお願いします。
どの武器も、PAの1番目はスタンダードで扱いやすいように作っています。何を使ったらいいのか迷った時は、PA1の通常かシフトを選ぶようにする。そうやって自分から選択肢を狭めて、考える時間を挟むといいです。
――EP6の配信でシステム関連はユーザーから望まれているものが多かったような印象を受けました。この案はどこから出てきたものでしょうか?
ユーザーからの要望です。“アークスライブ!”の質問コーナーの質問は、ボクがずっと集計していたので全部見ています。放送が始まった時からの総数は1万件を超えていて、その中から参考になる意見はストックしていたため、EP6でやりたいというものをガッと実装しました。あとはEP5中にやりたかったけどやれなかったものは、濱﨑から引き継ぐ形でやっています。
――フォトンツリーの常時点灯とか、それだけであんなに会場が盛り上がるとは予想外でした。
そうですね。ただ、ユーザーのみなさんも習慣化していた面もあると思うんです。根本的に見直して改善できる点はないかということで、フォトンツリーやドリンクの飲み直しは手を入れました。こういうところはEP6ならではの調整になったと思います。
――グループチャットはどういったシステムなのでしょうか?
勧誘式のチャンネルで、グループを立ち上げた人がフレンドを誘えます。そこに加入した人たちも自分のフレンドのなかから勧誘できるという仕組みで、必ずどこかにフレンドというつながりがあるような形になります。まったくつながりのない人を無差別に誘うことはできません。
――アークスミッションの実装理由と、デイリーオーダーとの差別化をどうするのか教えてください。
デイリーオーダーはどのクエストをプレイしたらいいかというクエスト自体の目安です。デイリーミッションは普段、どういう風にプレイしたらいいかの目安になる項目が多いですね。例えばドリンクを飲むとかブーストアイテムを使うとか、普段からしっかりプレイされている方なら日常的な内容ですぐに達成できると思います。効率的なやり方を初心者さんへ習慣づけていくものというのがデイリーミッションの立ち位置になります。
――ウィークリーミッションにはどういった内容が?
ウィークリーミッションでメセタがもらえるものは3つあります。武器やユニットの強化、アイテム分解をするといった強化や素材を集めるというもの。もう1つはクエストカテゴリのなかから、これをクリアしてくださいというものです。最後はクライアントオーダーで一定額のメセタを獲得するというもので、公開した動画では40万メセタになっていましたが、今は調整して20万メセタになっています。武器強化を1回して、ヤーキスのオーダーを報告して、クエストを1回クリアしてみたいな形になるので、そんなに時間はかからないのではないかと考えています。
――TAハルコタン5回に比べるとだいぶラクになりそうです。
報酬のメセタはクロトのTAオーダーを全部やった額を基準にしているので、ハルコタン5回の人にとっては増額になるようにしました。インフレの懸念もあるのですが、メセタが足りなくて強化ができないよりはいいのではないでしょうか。
――ギャザリングやカジノ、クラフトなど既存コンテンツの調整はありますか?
ギャザリングとクラフトはあります。ギャザリングは料理アイテムのうち、ギャザリングに対して効果を発揮する料理の数値を大幅に上方修正して、狙ったアイテムが取りやすくなるような調整が入ります。クラフトは古い装備がまた輝けるような仕組みが入ります。詳細については今後の感謝祭でお伝えできればと。
――カジノは?
カジノは予定がないのですが、景品の見直しはやっていこうと考えています。
――バトルとチャレンジ以外の用途として、コミュニケーションができるような共通シップを追加する予定はありますか?
ありませんが、グループチャットが共通シップで使えるようにしたいと考えています。
――エキスパート条件の更新時期はいつごろを予定していますか?
今は“なるべく早く”としか言えません。
――難度としてはどれくらいのイメージでしょうか?
すでに配信されているクエストが対象で、それ用に新しくクエストは作りません。条件の更新はエキスパート条件の達成者が増えすぎてしまったことへの対応という意味合いがあって、ここでエキスパートを再定義するためにいったん更新するような形です。ですので、エンドレスロナーのような本当にひと握りの方を対象にしたものではありません。
――新★15武器はどのクエストで登場しますか?
難度ウルトラハードでは用意していて、“終の艦隊迎撃戦”でも出ます。★15に関しては、今までのようなシリーズ武器はあまり用意していません。ボクは個人的にシリーズ武器というものが好きじゃないんです。1つ潜在能力がわかってしまうと他の武器も予想できるじゃないですか。そこは武器1つ1つ見た目も遊びもユニークなものにしたい。シオン系装備にどう立ち向かっていくのかはEP6の★15武器の課題でもあるので、独自性で対抗するような形で目指しています。
――ペットの★15はどうなりますか?
まだ出ていない★14のペットがあるので、まずはそちらからになります。
――特殊能力追加が複雑化していますが、システム的な救済はありますか?
具体的なことは決まっていませんが、開発側としても問題は把握しています。
――話がズレてしまいますが、“領域調査:異世界の残滓”は何層まであるのでしょう。
最前線でプレイされている方のためにも、ここでは伏せさせてください。
――テレビアニメ第2弾として、EP1~EP3を題材に選んだ理由を教えてください。
僕は開発のディレクターなのでアニメにはかかわっていませんので、事前に聞いてきた話になります。EP1~EP3は『PSO2』の原点ということで、多くの人に楽しんでもらえるというのが一番の理由です。第1弾はオンラインゲームの販促アニメ的な部分もあったのですが、今回はアニメとしておもしろいものを作りたいと考えています。スタッフに関しても、SFアニメに造詣の深い方々を入れていて、わりとハードなSFアニメになると思ってください。
――全何話くらいになる予定ですか?
まだ言えないのですが、1クールでは短いというのはスタッフもわかっています。ですので、そのあたりはご安心ください。
――キャスト(声優)はどうなりますか?
基本はゲームと同じ方にお願いしています。フィリアなど、登場機会が少なく兼役でやってもらっていたキャラクターは、設定含めて刷新しますが、メインは同じだと思ってください。ただ、構成をイチからやり直しているので、お話の前後関係を入れ替えたり、バッサリ切ったところもあって、惑星丸ごとアニメには登場しないところもあります。EP3までの本当に重要な部分をしっかり描くので、登場しなかったり、扱いが変わるキャラクターもいます。そういったところはストーリーをすでに知っている方でも、新しいものとして楽しんでもらえる要素になると思います。
――主人公はどうなるのでしょうか?
主人公はアニメ用に新しく設定していて、主人公自体にも謎のある人物になっています。
――外見はデフォルトキャラクターですけど、これはスパッと決まったのでしょうか?
すごく悩んだとのことです。ある意味では『PSO2』を象徴するキャラクターなので、こういった形になりました。担当声優さんに関しては、今後の感謝祭で発表を予定しています。
――次の札幌会場の見どころを教えてください。
これまでの感謝祭は2カ月弱にギュッと詰めて開催していましたが、今回はEP6配信以降も続いていくので、EP6の流れも含めて並走していく形になります。今後の配信予定だけでなく、配信済みのものが実装してどうなったのか、具体的に言うとファントムの移行率だとか、サブクラスの人気といったデータも出していき、いつもの感謝祭とは違ったものにできると考えているので期待してください。
――“アークスライブ!”的な内容が強化されていく感じでしょうか?
そうですね。それから、細かいフィードバックを開発が受け取ってどう作っていくのか、ユーザーのご意見を素早く反映するという部分でも感謝祭という場を使っていければと考えています。恥ずかしい話ですが、開発の立場だと気づけないことが意外と多くて、ユーザーの反応でこちらも素早く切り替えていかなければなと。
――実装前にやるスピード感というのは、今までになかったと感じます。開発体制も変わったのでしょうか?
EP5の流れを受けて、EP6を変えていかなきゃということで、プロデューサー・ディレクター陣が集まって相談して今の体制へと切り替えました。
――仕事としてはやることが増えたんじゃないですか?
そうですけど、その結果として楽しくプレイできるならいいじゃないですか。各会場での新情報としては、アニメ第2弾の続報であったり、夏以降の配信についても少しずつ触れていければと。
――名古屋会場ではジェネの公式コスプレイヤーが追加されますが、これはどういった意図があったのでしょうか?
これは隠し球的なものではなく、単純に衣装製作のスケジュールの都合です。名前のあるNPCの公式コスプレイヤーはジェネが初となるので、ユーザーのみなさんがどんな反応をするのか気になりますね。
――セガフェスで公式コスプレイヤーの方は“Iカップ”だと発表されていましたね。
選定にはかかわっていないので、ボクも発表の場で知りました(笑)。
――気の早い話になりますが、感謝祭以降もオフラインイベントをやっていく予定でしょうか?
先ほど話した新クラスの試遊も含めて、そういったことも考えていますが、まずは感謝祭を注視していただければと。
――吉岡さんは今までは裏方でしたが、EP6ディレクターとしてユーザーの前に出て伝える役割になってどのように感じていますか?
過去のエピソードディレクターと比べて「今回のディレクターは何が違うんだ?」と見られているのではないかと。ボクの場合は実機プレイで見せるような、自分の利点を生かしていって、今のところはうまくやれているんじゃないかと思っています。限られた時間の中で、どれだけおもしろく見せられるか、どううまく内容を伝えるかは難しいところです。本当はもっとお伝えしたい内容がたくさんあるんですが、出していく順番や内容の密度はいまだに悩みますね。
――情報のボリュームがあるので、おそらく1つの会場で出しすぎてもユーザー側が吸収しきれないのではないでしょうか?
そう言っていただけるとありがたいです。毎日、ボリューム不足なんじゃないかと心配しながら働いているので。
――EP5の反省を生かしてEP6は運営していくということですが、一番気を付けている部分はどんなことでしょうか?
一番は不具合を出さないこと。不具合がないのかのチェックも大切なんですけど、そもそも新規のシステムが将来的にアップデートしやすく作られているか、今後運用しやすいのかということも含めて考えることが多くなっています。それが結果的にフィードバックの早さにつながる部分でもあります。新しいコンテンツの内容も大事なんですけど、まずは不具合を出さないのが一番だと思っています。
――A.I.Sヴェガの練習クエストを追加するなど、これまでは手が入れられていなかった部分も強化されていますね。
そうですね。“終の艦隊迎撃戦”がおもしろいかどうか以前に、A.I.Sの操作がわからなかったら、おもしろいものでも伝わりづらいですから。今まではそういった部分は優先度が低かったのですが、EP6ではコンテンツに触れるまでの導線を強化しています。また、新しい体制として開発部内で行う内覧会の評価で基準点を超えなかった重要なコンテンツは、基準点を超えるまでリリースしないという形でクオリティアップをするようになりました。
――夏のロードマップの内容について、ザックリと言える範囲でお願いします。
超界探索ですが、最初はリリーパがメインですが、これからエリアが追加されていきます。新PAシステム追加は一番最初がソードで、それを使ったシステムになります。今はまだ、そこまでしか言えません。
――ファントムの後の新クラスについて教えてもらえませんか?
今言えるのは、後継クラスで武器が3種になるというくらいです。
――最後にEP6の抱負とユーザーへのメッセージをお願いします。
これまでいろいろと情報を出していって、EP6への期待も感じています。それにこたえられる、もしくは期待以上のものになるように開発一同頑張っていきます。僕は開発に入る前はアークスだったというだけで、今はプレイしていないと思われているかもしれませんが、現役プレイヤーですのでクエストで一緒になったときはよろしくお願いします。
――ありがとうございました。
(C)SEGA
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