クリエイターの貴重な話が満載! 『鬼武者』発表会詳細レポート!


■さまざまな分野の精鋭クリエイターが集結

  1月17日、東京六本木のヴェルファーレで、カプコンのPS2ソフト『鬼武者』の完成記念記者発表会が行われた。これはソフト発売日を一週間後に控え、マスコミ向けに開催されたもの。
  和太鼓の演奏で幕を開けたステージには、プロデューサーの稲船敬二(いなふねけいじ)氏が登場し、まずはソフトの完成を報告。その後、『鬼武者』の制作に関わったクリエイター5人が次々と壇上に上がり、制作の苦労話や興味深いエピソードを語ってくれた。
  このレポートでは、普段は聞くことのできないクリエイターのコメントを中心に、『鬼武者』の魅力に迫ってみよう。

豪華メンバーが揃った発表会は和太鼓の演奏からスタート。

■「自信があるから、ぜひ体験版をプレイしてもらいたい」 (プロデューサー・稲船氏)

 これまで『ロックマン』シリーズなど、数多くの人気ゲームを世に送り出してきた稲船氏は、今回の『鬼武者』完成に寄せて、以下のように語ってくれた。
「“やっと”という言葉がこれほど似合うゲームはないでしょうね。時間もお金もたくさんかけて、スタッフの数も延べで言うと何百人、もしかしたら1000人以上の人がかかわってるかもしれない。まさに多くのスタッフの努力の賜物です。そのかいあってすごく満足いくゲームに仕上がりました」
 また、ゲームとしての完成度については、
「ゲームって安いもんじゃないんで、体験版でまず触ってもらって、面白いと思った人が買ってくれればいい。自信がなければそんなことはしないけど、今回はそれが実現できたからうれしく思っています」 とのコメント。
  自信に満ちた発言は、ゲームへの期待をますます盛り上げてくれた。
「満足のいくデキに仕上がった」と言い切る稲船氏の表情に自信のほどがうかがえる。
■「シンプルでインパクトのあるシナリオを心がけた」(シナリオ・杉村氏)

 稲船氏に続いてステージに上がったのは、『バイオハザード2』などのシナリオを手がけるフラグシップの杉村升(すぎむらのぼる)氏。
「ユーザーの人がゲームをやるときは、やはりゲームに夢中になりますから、シナリオは複雑にならないように、シンプルでインパクトのあるものを心がけました」と語った。
  また『バイオハザード』がリアル路線だったのと比較して、 「『鬼武者』ではファンタジー要素を取り入れて、戦国時代なのに洋風の敵が出てきたりと、バリエーション豊かに仕上げた」とのこと。さらに明智左馬介を主人公に設定したことについては、「色のついていない実在の武将を取り上げることで、こちらの好きな色に塗り上げることができる」と考えての選択であることも明かしてくれた。
稲船氏が聞き手に回り、杉村氏(右)とトーク。日頃はなかなか聞けないシナリオ作りの話題に華が咲いた。
■「これは“戦いの音楽”です」(ミュージックコンポーザー・佐村河内氏)

 音楽を担当した佐村河内守(さむらごうちまもる)氏は『鬼武者』の音楽に関して、以下のような興味深いコメントを寄せてくれた。
「メインテーマである交響組曲“ライジング・サン”は、オーケストラに新日本フィルハーモニー交響楽団150名、和楽器に人間国宝を含む世界的奏者53名、それに指揮者と副指揮者を含む総勢205名という、純楽曲としては世界的に例を見ない大編成で演奏されました」
「本曲は、いま流行りの“癒しの音楽”とは対極にある“戦いの音楽”です。しかし、癒す前には必ず戦いがあるはず。左馬介は愛する人のために戦いましたが、誰もが一人一人それぞれの戦いをされているはずです。戦うためには勇気が必要です。この音楽がみなさんの戦いに、ほんの少しでもお役に立てたらと願います」
さまざまな分野で活躍する作曲家の佐村河内氏。代表作に、映画「秋桜」や、ゲーム『バイオハザード ディレクターズカット デュアルショックバージョン』などがある。
■「映画と同じように演出して、演技をつけました」(CGディレクター・佐藤氏)

 オープニングムービーを担当した佐藤嗣麻子(さとうしまこ)氏は新進気鋭の映像作家。彼女が演出した『鬼武者』のオープニングムービーは、世界最大のCGの祭典・シーグラフで最優秀賞を受賞している。
「受賞の知らせには驚きました。サムライムービーっていうのも受けた理由かもしれない(笑)。あと、6人同時のムービーキャプチャーを採用したおかげで、人物どうしのからみをちゃんと描くことができました」
 また、ムービーの演出に関して、「実際の合戦では訓練を受けていない人たちが戦うんだろうということで、へっぴり腰でかっこ悪いけどかっこよく見える、というのを目指しました。モーションキャプチャーの役者の人にも、『あなたは農民よ』とか『あなたは仲間を見放して逃げるのよ』という感じで映画と同じように演技をつけました」とコメント。
「将来はモーションキャプチャーで目の玉の動きを再現できるようになるといいですよね。目の玉とまぶたの動きが感情表現の一番大切なところですから」と、今後に向けての希望も語ってくれた。
主な代表作は、映画「ヴァージニア」や「エコエコアザラク」など。オープニングムービーの映像は、もう目にした人も多いかもしれない。
■「タイトルの意味はエンディングで明らかになります」(CGディレクター・金田氏)

 金田龍(かねだりゅう)氏は、中間ムービーとエンディングムービーを担当。
「フェイシャルキャプチャーといって、金城さんの表情をデータ化してCGで再現するという試みをやりました。これは面白かったですね。金城さんの顔にセンサーをつけて、顔の表情をリアルタイムでキャプチャーするんですが、このときに顔の表情をキャプチャーするときに声も同時にとるというやり方を採用しています。これは、映画と同じ考え方でやっているわけなんですけど、それをムービーで使うことができたので、そこは見どころとして楽しんで欲しいと思います」
 さらに金田氏の口からは以下のような発言も。
「中間ムービーとエンディングムービーを担当したので、ゲームをプレイしてぜひ見てください。『鬼武者』というタイトルの意味がエンディングで初めて明らかになると思います」
 これはなんとしてもエンディングまでプレイしなくては!
映画監督の金田氏。代表作は「満月のくちづけ」、「電影少女」、「ブギーポップは笑わない」など。
■「ほかのスタッフが大型のボスを作ってたから、違うタイプのボスのアイデアを出しました」(ゲストクリエイター・金城氏)

 主人公・明智左馬介のモデルとしてだけでなく、ゲストクリエイターの肩書きで制作にもかかわる俳優の金城武(かねしろたけし)氏。今回、『鬼武者』について、さまざまな角度から熱く語ってくれた。
「ゲームが好きなんで、今回やらせてもらえたのはすごくうれしかった。ぼくはあるエリアのボスを作ることになったんだけど、ほかのスタッフのみなさんが何を作っているかを意識しましたね。『この人がこういうのを作ってるんなら、同じことをやってもなぁ』と思って、作ったものをぜんぶ変更したこともあったし。みんなが大型のボスを作ってたから、違うタイプのボスのアイデアを出しました」
 上のコメントを受けて、会場では金城氏がアイデアを出したという中ボスの映像も特別に公開された(右の写真参照)。
  さらに金城氏は、ゲーム制作について
「自分がプレイヤーとして遊んで楽しめるものを作りたかった。『バイオハザード』の印象っていうのが自分の中にあって、やっぱりビックリさせたいって気持ちでいろいろ考えましたよ(笑)」と発言。
 今後のゲームとのかかわり方については、
「単純にゲームが好きだっていうのもあるし、自分の本職に関係する部分もある。これからは映画とゲームがひとつになっちゃうんじゃないかな。危ないシーンもスタントマンなしで撮れるから、将来は俳優とかモデルの役割も変わってくると思う」とのこと。
 その後は稲船氏と金城氏が完成版のソフトをデモプレイ。「体験版はもうやってるから、違うところがやりたい」と言う金城氏は、先のステージのボスと対決。天守閣の上でボスと戦い、稲船氏が「やっぱりうまいですね」と感心するほどの腕前を見せつけた(結局惜しいところでやられてしまったが…)。プレイ後、金城氏は「おもしろいおもしろい!」と連発。「早くソフトちょうだい」と稲船氏にねだる一幕もあった。
映画「恋する惑星」の出演で注目を集め、日本でも映画やテレビドラマ、CMなどで活躍する国際派俳優。
金城氏が考えたボスはなんと左馬介のニセモノ! 「侍どうしの一騎打ちを実現させたかった」そうだ。
金城氏がボタンを連打すると左馬介がピクピク怪しい動きを…。「これが好きなんですよ(笑)」と金城氏。
■最後は銘酒「鬼武者」の鏡開きで締め! 

…といった具合に、各ジャンルの有名クリエイターが集結した『鬼武者』発表会。稲船氏は、ゲーム以外のさまざまな分野からトップクラスのクリエイターが集まったことに触れ、
「21世紀はこういう形で作るゲームが増えると思う」とコメント。 「しかも21世紀の幕開けにこういうゲームを出せるっていうことが本当にうれしいです。たくさんの人に喜んでもらえると思います」 と締めくくった。最後は幻の銘酒(?)「鬼武者」の樽が登場し、鏡開きが行われた。 たっぷり1時間、充実の内容だったこの発表会。ソフト発売までの一週間を楽しみに待っていよう!
鏡開き後の酒は集まった取材陣に振舞われた。