――開発中のおもしろエピソードや苦労話などはありますか?
叶:竜騎士さんから“選択肢”の話をいただいたものの、実際やってみて即後悔しましたね(笑)。つじつまを合わせるのも大変だったんですけど、選択肢によって先が見えてしまうと興ざめしてしまうので、その調整に苦労しました。それと、原作は文章と絵だけで見せる演出がとにかく秀逸なので、イベントCGをどう差し込むかにも非常に悩みましたね。
――ratoさんはなにか苦労された思い出などはありますか?
rato:僕も原作をプレイしてたから、『ひぐらし』=竜騎士さんの絵というイメージなんです。なので、デザインには苦労しました。でも、やるんだったら変えなきゃ意味がないとも思って、ディテールは忠実に再現しつつも、けっこうワガママを言わせていただきました。
竜騎士:すみません、一点だけ気になってるんですけど、魅音の立ち絵に拳銃がないですよね。
rato:拳銃がないのは……話の中で全然使われないからですね(一同爆笑)。
竜騎士:あれも最初はアイデアあったんですけどね。実はあれはガス圧が高めてある違法改造エアガンで、しかもBB弾のかわりにボールベアリングを撃つという設定だったんです。ところが、使う前に本当にそういう事件があって。それでボツにしたんですよ。
――イベントCGは、かわいらしいテイストからデフォルメ、怖い系統など、いろいろな絵柄がありますよね。
rato:原作でもあった日常と非日常の使い分けは、相当意識しました。怖いシーンなんかは倫理上、絵を入れられなかったところもあるんですけど、その分、直接描写を避けた日本の怪談的な怖さになったかなと思います。
――そういった“怖さ”というのは、原作版の『ひぐらし』にも通じる感覚ですよね。
竜騎士:結局のところ、原作はサウンドノベル、つまりノベル媒体なので、あえて正面から描かずに怖がらせるという手法になるんです。仮に『ひぐらし』が映画だったら、直接表現バリバリだったかもしれませんが、ノベルだと直接描かないほうが、むしろ想像力をかき立てることがあるんですよね。
――『憑落し編』について伺います。こちらはどういうお話なんでしょうか?
rato:エグい話です。
叶:自分たちはいいことをしてるつもりなんだけど、スタートが間違ってたから悲劇しか起こらない。圭一・レナ・詩音の3人がみんなで鉄平を殺しに行ったらどうなってたのか、という話ですね。
竜騎士:だから『祟殺し編』のifですね。本来は『祟殺し編』では圭一しか絡まないから圭一だけで帰結するんですけど、こっちは3人も絡むうえ、みんな■■■■■なので、殺したあとがもうふつうではすまない。
叶:当事者たちは仲よくやっているつもりが、だんだん疑心暗鬼になってきて、仲間割れみたいな感じになっていって。
竜騎士:いやもう本当にエグいですよ。『憑落し』って“憑き”を落とすんだからいいことなんじゃないのって思うんだけど、それこそ“突き落とす”ような話で。
叶:まさにその意味を入れたかったんです。“憑き”っていうのは悪いイメージじゃないですか。それを落とすつもりで行動してたのが、実はみずからを突き落としていた……という。