●「ファブラ ノヴァ クリスタリス」
複数のタイトルを有する新しい“FF”
――今回3タイトルが発表され、“FFXIII”は「ファブラ ノヴァ クリスタリス」として展開していくとのことですが、その方向性が決まったのは、いつですか?
橋本真司氏(以下、橋本。敬称略):『FFXIII』については、3年前から構想がありました。野村は『キングダム ハーツII』の企画と並行しながら考えており、北瀬はPS2で『FFXIII』を発表しようとしていました。
北瀬佳範氏(以下、北瀬。敬称略):タイミング的には、『キングダム ハーツ』が終わり、『FFX-2』が終わり、次に何を作ろうかといったころになりますね。
――そのころは、すべての作品をPS2で発表という方針だったのでしょうか?
北瀬:そうです。まだPS3が見えていなかったので。
野村哲也氏(以下、野村。敬称略):ただ『FFVersusXIII』だけは、タイミング的に次世代機の可能性が、当初からありました。
――『キングダム ハーツII』制作開始時には、すでに“FFXIII”は複数になると決まっていたのですか?
野村:はい、その段階では2タイトルですね。
北瀬:『FFXIII』と『FFVersusXIII』は、おぼろげながら構想がありました。その2タイトルを橋本がさらに広げて、あとから『FFAgitoXIII』の制作が決まりました。
田畑端氏(以下、田畑。敬称略):『ビフォア クライシス -FFVII-』の終わりを話し合ってるころで、次のものをと考えていたときですね。1年ほど前のことになるでしょうか。
――各タイトル間のつながりはどうなるのでしょうか? 同じ神話をベースにしているとだけ、現在は公表されていますが?
鳥山求氏(以下、鳥山。敬称略):ええ、今のところ、神話をベースにしている部分だけです。それ以外はあまりしばられないで、各タイトルごとに制作しています。作品を作っていく過程で、なんらかの仕掛けを入れていくことはあると思いますが、現状は神話のみです。
――神話の登場の仕方も各作品で異なるのでしょうか?
鳥山:当然違ってくるでしょうね。すべての作品をプレイすることで神話の全体像が見えてくるかもしれません。
――神話を作られたのは、どなたでしょうか?
北瀬:神話がすべてのスタートになっていまして、基本的にはここにいるメンバーと、野島(一成)さんで手掛けています。
――今回、各タイトルのロゴが「ファブラ ノヴァ クリスタリス」のロゴとあわせて4つ公開されましたが、これに描かれているイラストが、神話と関係していのでしょうか?
北瀬:そのへんは秘密です(笑)。
――並び方に関係はありますか?
野村:考えたときには、この並びかなと思って置きましたけど、意味はなきにしもあらず、といったところでしょうか。ロゴのイラスト自体も、天野(喜孝)さんがペンで繊細なものを描いてくれています。今までは筆で描かれた豪快なものが多かったのですが、ペンタッチにしたのは、天野さんなりの考えがあるらしいです。それはまだ明かせないですけどね。
北瀬:ロゴのイラストは、基本コンセプトを伝えて描いてもらいました。ほとんど天野さんの自由なデザインです。天野さんのなかで浮かび上がってきたものが、あのイラストです。線画が上がってくるとは思いませんでしたが、すごく新鮮でそのまま使わせてもらいました。
――各作品のイメージカラーはありますか?
野村:ナンバリングの『FF』シリーズは、昔から白が基調です。伝統的に白なので『FFXIII』も白ですね。『FFVersusXIII』は、それと対となるので黒です。
――今後「ファブラ ノヴァ クリスタリス」として発表する作品のイメージカラーはすでに決定していますか?
橋本:「ファブラ ノヴァ クリスタリス」のほかの展開として、まだ明確に提示できるものはないのですが、構想ができたときに、あらためて考えると思います。
●『ファイナルファンタジーXIII』
圧倒的なグラフィックと洗練されたバトル
――まず『FFXIII』で気になるのが、戦闘シーンです。映像を見せていただいても、どう操作したらあんな動きになるのかが想像つきません。
鳥山:『FFXIII』は、正統派の『FF』シリーズを引き継ぐということで、ATB(アクティブタイムバトル)を継承しています。コマンド入力バトルの戦略性を維持しつつ、どれだけスピーディなバトルを楽しんでもらえるかをコンセプトにして制作しています。
――では従来どおりのコマンド入力タイプの戦闘に?
鳥山:はい。そのうえでスピード感を出しています。プレイヤーがコマンドを入力していくことによって、アクションが連鎖していくような形になります。
――キャラのアクションパターンは、かなりの数が用意されそうですね。ではバトルは、ATBを継承するシステムであるわけですか?
鳥山:ベースにはATBらしきものがありますが、時間軸を操作して、新しいバトルを見せるようにしています。
――映像を見ていると、『FFVIIアドベントチルドレン』のバトルを思い出させるものがありますね。
鳥山:『FFXIII』は『FFVIIアドベントチルドレン』のバトルをどれだけゲーム内に取り込めるかに挑戦しています。『FFVIIアドベントチルドレン』は映像作品ですが、今までの“FF”ではできなかったバトルを見せてくれました。逆に『FFXIII』では、その映像をどれだけ再現できるかを軸にしています。
――パーティを組むことはあるのでしょうか?
鳥山:はい。1人のときもありますし、何人かのパーティを組む場合もあります。パーティバトルでは、仲間とのアクションの連鎖がドンドン発生し、バトル空間をフルに使います。
――スピーディなバトルを目指しているわけですね。
鳥山:スピーディーな部分と、戦略性をマッチさせたものを目指しています。
――スピーディさと戦略性の両立は、なかなか難しそうですが?
鳥山:戦略を考えつつ気持ちよくバトルができる。両方を満たすことがベストです。『FFX』のスタッフが再集結して作っていますので、PS3ならではの新しいバトルを見せることにチャレンジしています。
――世界観的には、今までの“FF”シリーズとは毛色の違う雰囲気を感じますが?
鳥山:今までは『FFVII』や『FFVIII』が一番未来的なの世界観を持っていましたが、『FFXIII』はそれよりも先の未来の物語です。ファンタジーというよりはSFっぽくなっていますが、ベースにクリスタル神話をおくことで、ファンタジーらしさと未来っぽさを両立させ、かつリアリティを失わないような世界観を見せていきます。
――文明も、かなり発展している印象を受けますね。
鳥山:機械にしても、洗練されたものを登場させるようにしています。これはPS3という新しいハードだからこそ挑戦できることです。例えば映像の中で「グラビティボム」というものを使ってます。これは従来なら「グラビデ」という魔法だったものを、あの世界の人は兵器として使用しています。
――魔法と機械文明をうまく融合させた世界ですか?
鳥山:例えば「ファイア」で料理はできないじゃないですか。丸焼けになってしまうので(笑)。それを機械などでうまく制御できたら、みたいな世界ですね。
――『FFXIII』が、PS3で手掛ける初めての作品になると思いますが、ハード自身の感触はどうですか?
鳥山:表現力はすばらしいものがあるので、作りたいものがようやくリアルに再現できます。それをゲーム内で体験できるわけですが、どこまでも細かく作り込めてしまうので、今までの感覚で作り込みを行うとキリがありません(笑)。
――物量的な作りやすさはどうでしょう?
北瀬:PS2と同じ物を作るのは簡単ですけど、PS3クオリティのものを作るとなると、いつものRPGを制作する感覚では不十分ですね。だからこそそれを生かして、新しいRPGを『FFXIII』で見せる予定です。
――『FFXIII』の制作のために「ホワイトエンジン」と呼ばれるものを構築されたそうですが?
北瀬:今までは、『FFX』ならそのチーム内だけで作ってきましたが、今回は描画エンジンやモーション制御など、開発環境やライブラリを構築する専門のテクニカルチームを置いています。彼らの作ったものがホワイトエンジンというもので、『FFXIII』の開発に使用しています。
――今後はその環境があったうえで、PS3用タイトルの開発を行っていくのでしょうか?
北瀬:『FFXIII』で使ったものを『FFVersusXIII』でも使ったりするでしょうね。もちろんゲームの特性が違うので、改良する必要はありますが。
――画質という面で、PS3だと、ムービーと通常のゲーム画面との差がどんどんなくなってますよね。
鳥山:どちらにするかという部分は、状況によってうまく使い分けていきます。同じ描写をするにも、ムービーのほうが表現しやすくスムーズであればそちらを使いますし、逆にリアルタイムによるイベントシーンのほうがよい場合は、そちらを使います。プレイヤー側としては、どちらも違和感なく見れるのかなと思います。
――グラフィックに圧倒される一方で、プレイヤーが操作するゲーム部分も気になりますが?
鳥山:来年のE3あたりにはお見せできるようにがんばっています。今回の映像でお見せしたものが、ちゃんとゲームとして操作できるはずです。
――今回の映像では、コマンド表示が出たときに、初めてゲーム画面であることに気づかされました。
鳥山:あれも操作できるようになります。早めにお見せできればいいのですが……(笑)。
橋本:主人公が森を歩くシーンは、本当はもっとすごいですよ。
鳥山:あのシーンはカメラワークが早いので気づかないところでしょうが、よく見ると虫が飛んでいたり葉っぱが揺れたりします。あのシーンもプレイヤーが操作できる部分なので、細かいところは立ち止まって眺めたり、自由にできます。
橋本:コマンドが出たらみんな気づくでしょうけど(笑)。
――オンラインへの対応の可能性などはありますか?
北瀬:今のところその予定はありませんが、半年後くらいにはオンライン要素を入れたくなるかもしれません。ですが、少なくともメインでネットワークを使うことはなく、何かおもしろい要素があれば入れたいというくらいですね。今まではグラフィックに特化して研究していたので、オンライン対応はこれから考えます。 |
北瀬 佳範 氏
YOSHINORI KITASE |
 |
『FFXIII』のプロデューサー。『FFVII』以降、シリーズのディレクターやプロデューサーを務めてきた。また、「コンピレーション オブ FFVII」の中心人物でもある。 |
|
鳥山 求 氏
MOTOMU TORIYAMA |
 |
『FFXIII』ディレクター。『FFVII』などの制作に参加。『FFXIII』は鳥山氏がディレクターと務めた『FFX』、『FFX-2』のスタッフが中心となり進行中。 |
|
野村 哲也 氏
TETSUYA NOMURA |
 |
『FFVersusXIII』ディレクター。多くの作品でキャラクターデザインを担当。『FFVIIアドベントチルドレン』や、『キングダム ハーツ』シリーズではディレクターを務める。 |
|
田畑 端 氏
HAJIME TABATA |
 |
『FFAgitoXIII』ディレクター。モバイルコンテンツの『ビフォア クライシス -FFVII-』でもディレクターを務めている。 |
|
橋本 真司 氏
SHINJI HASHIMOTO |
 |
『FFVersusXIII』プロデューサー。「コンピレーション」作品では、『FFVIIアドベントチルドレン』のプロデューサー、『CC』では北瀬氏と両名でプロデューサーを務める。 |
|
|


|