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今年4月に設立20周年を迎えるチュンソフト。その記念作品として、『風来のシレン』シリーズのモンスターを育成してサッカーチームを作る『ネットサル』(GBA)、オリジナルRPGの『HOMELAND』(GC)の発売を予定している。この任天堂ハードの2作品の楽しさを、チュンソフトの中村社長と、それぞれの開発者に語ってもらった。

●『ネットサル』誕生のきっかけ
――まず『ネットサル』についてお聞きしたいと思います。『ネットサル』という名前はどこからきたんでしょうか?
冨江慎一郎氏(以下「冨江」):そもそもは「ネットワーク上でなにかやりたいよね。」ってことで、社内のPC上で実験的にゲームを作ったことがきっかけなんです。それで、GBAなら、ネットのようにケーブルでつないでやれるということで、それとフットサルをかけてタイトルが『ネットサル』になったんです。
中村光一氏(以下「中村」):でも、そのときPCで作ったものは、あくまで『ネットサル』の基本になっているものであって、ゲーム自体は違うものですよ。アイテムありの3Dサッカーというところは同じですが。
冨江:その時キャラがないんで、とりあえず、ぬすっトドの絵を使ってやっていたんですよ。で、そのゲームがおもしろそうだったんで「このまま(ゲーム開発を)進めていくならシナリオ書くよ」って冗談で私が言っていたんですけど、それがいつのまにか本当になっちゃった(笑)。
――『シレン』のモンスターを使ったのもその流れで?
冨江:一番のきっかけはそれでしたね。それに『シレン』のキャラクターなら特殊攻撃やアイテムも使えますし。ハードがGBAになったのも、『シレン』のキャラクターを使ったというのが大きいですね。
――『シレン』のモンスターが全部で18種類出てきますが、それを選んだ基準は?
冨江:ユーザーの人気と、特殊能力ですね。実際に『シレン』をやっていただくとわかるんですけど、『シレン』はプレイするたびにいろんなドラマが起こるんですよ。で、なんでそんなことが起きたのか理由を考えるとモンスターの特殊能力が原因だったりする。そこらへんの予想できないドラマをサッカーでも生かしたいなって思いまして。特殊能力は選択の大きな基準になりましたね。


●地球がひっくりかえるようなドラマが(笑)
――確かに『ネットサル』をプレイさせていただくとアイテムや特殊能力で、いろんな試合展開が生まれますね。
冨江:地球がひっくり返るようなドラマが起こるんですよ。レイズアップ(1ゴールの得点が上がるアイテム)なんかでも、たまに信じられないことが起こりますね。
――私も試合終了直前に3点負けてて「あーあ」と思ってたんですが、最後にゴールを決めたら4点入って「あ、勝った……」って(笑)。
冨江:(笑)ハチャメチャなんですけど、精神的な感覚は本当のサッカーと変わらないですよ。たとえば4-0で楽勝だと思っている時にレイズアップで5点ボールになっちゃうと、絶対に守らなきゃいけないってプレッシャーがプレイに影響するんです。ものすごく緊張感があるんですよ。私もサッカーをやっているんで、その感覚はすごくいいなあと思いました。
――フェイントやスルーパスのような、サッカーゲームによくある操作がないのは?
冨江:操作をやさしくしたかったんです。このゲームのメインはモンスターの特殊能力や必殺技、アイテムなんかでどれだけ反則的なことをできるかというところなんで(笑)。
丸田康司氏(以下「丸田」):それに、ボールを持っていないキャラでも参加できるのが『ネットサル』のおもしろいところなんですよ。
中村:遠くから石を投げて敵のキーパーを倒したりとかね(笑)
――みなさんが作るチームに特徴などは?
冨江:一時期はぬすっトドにこだわりましたね。トドだらけのチームを作って(笑)。実は「このモンスターだけ」っていうチームが結構強力だったりします。ただ、それをやっちゃうとチームに個性が出過ぎちゃって、相性の悪いモンスターがいるチームが相手だとまるでだめだったりするんですけど。
中村:自分で操作するときは、タイガー・ウッホが気持ちいいですね。相手を持ち上げられるんで。相手キーパーがゴールキックしようとするときに持ち上げて投げちゃう(笑)
冨江:キーパーを持ち上げられますからね(笑)。自分がウッホを使って相手のゴール前で味方からのパスを待っているとしますよね。パスが来ると、当然相手のキーパーはそれを取ろうとするんですが、そのときにキーパーを持ち上げちゃうんです。そうするとパスがそのままゴールに入っちゃう(笑)。
丸田:私はドラゴンとにぎりへんげだけでチームを作ってます。ドラゴンに炎を吐かせて相手を焼いておいてシュートをズドン!(笑)
――(笑)なるほど。ほかに有効な戦法はありますか?
冨江:たとえば、カラクロイドは爆発に強いんですよ。だからセンターフォワードをカラクロイド、それ以外をオヤジ戦車にして後ろからドカドカ大砲を撃つとか(笑)
――そういった戦法はいくつもありそうですね。ユーザーの発想って無限ですから、開発の方が思いもよらないものとかも。
冨江:それを見つける楽しみもありますよね。

●社内で『ネットサル』を禁止にしようかと(笑)
――東京の次世代ワールドホビーフェア(1月24日・25日幕張メッセで開催)では、『ネットサル』がかなり盛況でしたね。
冨江:テストプレイでは育成をメインにやってもらったんですけど、チームを作ってもらった後に「オートランキング」というシステムで順位を競ってもらったんですよ。それが好評で。
――それは育成したチームのデータを送信して登録しておけば自動的にリーグ戦をやってくれるというものですか?
冨江:そうです。コンピュータが自動的に対戦してくれて勝敗で順位が出るというものです。けっこうみんな自分のチームの順位が気になって見に来るんですよね。かなり評判がよくて「ヨッシャーッ」って感じでした。
――オートランキングは製品版にも?
中村:
いえ、オートランキングはゲームソフトとはまた別なんです。ですから、たとえば、協力してもらえるお店があれば、オートランキングのソフトをお渡しして、そのお店でランキングを競ってもらう。
――そのお店に来た人で競えるわけですね。
中村:
そうです。それに、登録されているチームのデータを自分のソフトに移すこともできますから、強い人のデータを持って帰れば、どうやればそのチームに勝てるのかを試せるんです。
――それはいいですね。強いチームが、なぜ強いのか分析することもできる。
冨江:試しに、社内でオートランキングをやってみたんですよ。出入り口にモニターを置いて、みんなが育成したものを入れていくんですけど、これがみんな燃えまして。
中村:絶対にかなわないチームが出てくると、なぜなんだとデータを見始めて。仕事がそれで止まってたね(笑)。禁止しようかというくらいでしたから(笑)。
冨江:みんなの進化が見ていておもしろいんですよ。それに、はやりもあるんですよね。ウッホがはやったりゲイズがはやったり。
――そこまでシステムがあるなら、日本一のネットサルチームをみたいですよね。チュンソフトさん主催の大会などは?
中村:もちろん、それも計画しています。手始めに編集部対抗の最強バトル決定戦を実施中です。
――実現したら、日本一のチームを自分のゲームボーイアドバンスに入れられるかもしれないですよね。それはすごいことですよね。


●初めてRPGをやったときの楽しさを味わってもらいたい
――次は『HOMELAND』を中心にお話をうかがいたいと思います。なつかしいというか、RPGらしいRPGという印象を受けたんですが。
中村:
ゲームが進化してきているんでしょうがないんですが、最近のRPGはお話が混同したりルールが複雑なのがどうも……。そういう意味で、これからPGを始めるという人たちが遊べる基本に戻ったものがないかと思ったんです。初めてRPGをやったときの楽しさをもう一度味わえたらいいねということでスタートしたんです。
――絵柄が独特な感じなんですが。
丸田:そうですね。いろいろ考えたんですが、結局分かりやすくてなじみやすいキャラにしようと。変なやつらがいっぱい出てきますので楽しみにしていてください。粘土でできたような種族や、ブロックでできたような種族がいっぱいいる。それぞれの種族に特徴があって、「手つなぎ」で主人公がその能力を使えるんです。
――その「手つなぎ」なんですが、手をつないで能力を分かちあうという発想はどこから?
丸田:突然思いつきましたね。みんなで手をつないでいる状態は楽しそうだなと。手をつなぐなら誰にでもわかりますしね。
――画面写真では大勢と手をつないでますが?
丸田:ぜんぶで36人ですね。
――じゃあ、36キャラ分の能力を主人公が持てるということですか?
丸田:持てます。
――2人プレイができるということですが?
丸田:お子さんがやっているときに、お父さんが見てるだけなのもつまらないので。アイテムを使うとあるキャラクターができるんです。それを2Pが操作するんです。
――そのキャラクターには特殊な能力が?
丸田:いろんなキャラクターがいるんで、それぞれに能力がありますね。
――登場人物が音声でしゃべったりは?
丸田:それはないですね。セリフがフキダシなんで。街の人が勝手にしゃべっていたりしますよ。場面によっては、ボタンを押して話すのではなく、奥様同士がしゃべっているのを脇で見ながら歩くとかいうこともあるんです。ゲームキューブがハイパワーなマシンなので、今までできなかったこともできるようになったんですよ。

●設立20周年を迎えて
――遅れましたが20周年おめでとうございます。中村さんにとってこの20周年を一言で言うと?
中村:
一言ですか!?(笑)。そうですね、なんだかんだいっても自分たちのおもしろいと思うものを作ってこれたのではないかなあと思います。
――20年は早かったですか?
中村:
早かったような、長かったような……。でもやっぱり早かったのかな。
――今回の『ネットサル』と『HOMELAND』、それにPS2の『金八先生』は、これまでのチュンソフトさんにないジャンルのソフトですが、やはり20周年だから新しいものを出していこうという意気込みがあったのですか?
中村:それはあります。やはり「不思議のダンジョン」と「サウンドノベル」だけでは広がりに限界があるんで。新しいものを作っていきたいと思いまして。
――では、これからの「不思議のダンジョン」「サウンドノベル」シリーズは?
中村:
もちろん、それはそれで出していくと思いますよ。
――20周年を迎えたばかりですが、10年後、30周年のチュンソフトや中村さんは、どのように想像されますか?
中村:想像したくない(笑)。
冨江:杖をつきながら歩いてる(笑)。
中村:まだそこまでは(笑)。でも、今よりも邪になってるかも(笑)。…まあ、そうですね、10年たっても新しい刺激や遊びにこだわっていきたいですね。
――冨江さんと丸田さんの10年後はどうでしょう?
冨江:どうですかね。そんなに深く考えていないですし、あんまり変わらないと思いますよ。ただ、前から思ってはいますが、自分が作ったものが、遊んでくれた人に影響して、心の中に残ってくれたらうれしいなあと。あとは、おいしいものをいっぱい食べて(笑)、仲間をいっぱい作っていければなあと思います。
丸田:世界中を歩きたいなあ。今まで日本で遊んできたんで、世界中をまわって、遊ぶ人を見たいと思います。あと、10年後だと教える立場になっていると思いますが、それにも興味がありますね。


●『ネットサル』『HOMELAND』それぞれのおもしろさ
――では最後に、冨江さんには『ネットサル』の、丸田さんには『HOMELAND』の、中村さんには両方の、それぞれ楽しみにして欲しいところをひとことずつお願いします。
冨江:『ネットサル』では、モンスターが必殺技とか、特殊能力を。バンバン出してきます。ふつうのサッカーでは反則になるような(笑)技をおりまぜたからこそ起こる信じられないドラマを、ぜひみなさんに味わってほしいなあと思います。本当にいろんな結末が待っていますので、悔しい思いをしたり、喜んだりしてください。
丸田:『HOMELAND』は、冒険する世界がちょっと変わったところなので、いろんなキャラだとか街が現れます。みなさんには、不思議な街やキャラを思い浮かべながら、そこで起こるドラマを想像してもらいたいです。さらに、そこに新しいシステムの「手つなぎ」をするとどうなるのか、まで想像をふくらませてもらえば最高ですね。
中村:『ネットサル』のほうは、自分でチームを作り上げて、人と競いあうという楽しさがあります。チームを育成するというゲームは、今までにもいくつかあったと思うんですが、『ネットサル』のように、そのおもしろさがいっぱい詰まったソフトはなかったと思います。発売されたら大会なんかもやっていく予定なので、ぜひ自分のチームを育ててください。『HOMELAND』のほうは、実は言えないところで大きなしかけがあります(笑)。いずれ大きな発表をする予定なので、それをぜひ楽しみにしてください。
――本日はどうもありがとうございました。


中村 光一 氏
中村光一氏
 チュンソフト代表取締役。1984年、チュンソフトを設立し『ドラゴンクエスト』シリーズなどの開発を手がける。1992年、スーパーファミコンでチュンソフト初の自社発売ソフト『弟切草』を発売。以来『不思議のダンジョン』シリーズやサウンドノベルシリーズなど、ヒット作品を多数発売している。これまでのチュンソフトの全タイトルのプロデューサー。

冨江 慎一郎 氏
冨江慎一郎氏
 『風来のシレン』シリーズ全作品を手がけ、今回は『ネットサル』のディレクターを努める。自身もサッカーをプレイし、サッカー歴は12年。

丸田 康司 氏
丸田康司氏
 『風来のシレン』シリーズの2作品で企画とプログラムを担当。今回は『HOMELAND』のディレクターを努める。

ネットサル
画面写真
 チュンソフトの代表作『風来のシレン』シリーズのモンスターが選手となって活躍するフットサルゲーム。『シレン』のモンスターならではの必殺技や特技を使えるのが特徴。自分で選手を育てる「育成」と、育てた選手で作ったチームで戦う「試合」の2つの要素がある。
■メーカー:チュンソフト
■対応機種:GBA
■発売日:2004年4月23日
■価格:未定
■関連リンク:チュンソフト
(C)2004 CHUNSOFT

HOMELAND
画面写真
 チュンソフトが発売する完全オリジナルRPG。どこにでもいる小学生の少年が、ふとしたことから異世界に迷い込、冒険を繰り広げる。仲間と手をつなぐことで、その仲間の特殊能力を使える「手つなぎ」システムが特徴。
■メーカー:チュンソフト
■対応機種:GC
■発売日:2004年夏予定
■価格:未定
■関連リンク:チュンソフト
(C)2004 CHUNSOFT


ぬすっトド
『風来のシレン』シリーズに登場するモンスター。『ネットサル』では、相手のボールを盗んでフィールド内の別の場所にワープするという特殊能力を持つ。
 
タイガーウッホ
『風来のシレン』シリーズに登場するモンスター。『ネットサル』では、相手選手を持ち上げて投げるという特殊能力を持つ。
 
ドラゴン
『風来のシレン』シリーズに登場するモンスター。『ネットサル』では、炎を吐いて敵を攻撃するという特殊能力を持つ。
 
にぎりへんげ
『風来のシレン』シリーズに登場するモンスター。『ネットサル』では、相手選手をおにぎりにかえてしまうという特殊能力を持つ。
 
カラクロイド
『風来のシレン』シリーズに登場するモンスター。『ネットサル』では、フィールド上に爆弾のワナをしかけるという特殊能力を持つ。
 
オヤジ戦車
『風来のシレン』シリーズに登場するモンスター。『ネットサル』では、下半身の砲塔から弾を発射して敵を攻撃するという能力を持つ。