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過去最高のクレイジーさを誇ると言われている(!?)、『クレイジータクシー3』がいよいよ7月25日、Xboxに登場! 電撃オンラインでは、このゴキゲンなゲームの発売を記念して、本作プロデューサー・菅野顕二氏に直撃インタビューを敢行! 『クレタク』の魅力をバッチリお届け!!


●『3』のハナシを伺う前に、聞いておきたいことがあります!
『クレイジータクシー』ってどうやって生まれたの?


――:『クレイジータクシー3』、いよいよ発売ですね。おめでとうございます&開発お疲れさまでした!
菅野顕二氏(以下、敬称略):ありがとうございます。
――:さて、今作で早くもシリーズ3作目になる『クレイジータクシー』ですが、この大ヒットシリーズが純粋に日本人スタッフだけで制作されていると知ったとき、誰もが衝撃を受けるだろうと思われるんですけど、それはともかく、そもそもこのゲームを作ろうと思ったきっかけは何だったのでしょう? 菅野さんは以前、『トップスケーター』の開発をされていた方ですから、その流れで、こういう路線が好きな人なんだなぁ、と思ってはいるんですけど。
菅野:きっかけ、ですか。「あ、こういうの作ろう!」と思ったのは…そう、ボクは渋滞が大っ嫌いでしてね(笑)。
――:は、はぁ。
菅野:渋滞中って、よく隣の車線が空いてるのが気になるじゃないですか。でも移ったらこっちの車線が空きはじめるかも…、なんて思ったり。
――;思います思います!
菅野:そういう風に思っている人って、この渋滞中に何人位いるんだろうって考えると、結構いるんじゃないのかな、と思って。で、この思いを何かしらゲームにぶつけられたら楽しいのでは? というワケです。あんまり人には言わないんですが、それがきっかけですね(笑)。
――:確かに、渋滞中ってウザいですよねー。
菅野:そう。その気持ちを蹴散らしてやるのが楽しいかな、と。構想を練っていた当時、クルマのゲーム=レースっていう考えが主流だった時期だっただけに、すごく新鮮なアイデアだったと思いますよ。"クルマの運転で遊ぶ"っていうことは、そもそも楽しいことですし、だったらレース以外のものが作りたいな、と。でも、まだ1つ何か足りないな、って感じていたんです。
――:その1つとは?
菅野:映画の「キャノンボール」みたいにしよっか? みたいに開発チーム内で話し合ってはいたんですけど、なんかしっくりこないんですよね。そんな折、企画の人間と話していて、「タクシーってどう?」なんて何気ない会話があったんです。その"タクシー"って言葉が妙に引っ掛かって、タクシーに乗って爆走するってどうですかね? って、うちのボスである小口(久雄氏/現・ヒットメーカー社長)に話すと、「じゃあそれにしよっか」ということに。
――:割とあっさり決まったカンジ?
菅野:最初は多方面から大反対されましけどね。「かっこいいのかそれ?」みたいな。でも、タクシーをクールに作ろうぜ! と説得を続けて一カ月後くらいかな、「みんなやろう!」っていう話に落ち着いてスタートしたんですよ。懐かしいハナシですね~(笑)。
――:「クールに!」というのが決め手だったのでしょうね。何年前のハナシになるんですか?
菅野:アーケードが出たのが、1999年の2月ですから、2年とちょっと前、くらいですかね。
――:『クレイジータクシー』は、もともとアーケードゲームの企画なんですよね。アップライトの筐体でしたけれど、クルマのゲームであの筐体を採用するって珍しいですよね。
菅野:アメリカではポピュラーですけれど、日本ではあまり見かけない筐体ですよね、アップライトって。『クレイジータクシー』は、熱中してやり込むタイプのゲームではなくて、ふらっとゲームセンターにきて「あっ、今日ちょっとやろうかな」って軽い気持ちでプレイしてもらいたかったんですよ。遊びのスタイルとしてもクールに決めたいよね、っていう考えがあったので、あの筐体を採用したんです。
――:クルマを立ちながらプレイするって新鮮でしたね。ブレーキの効かなさ加減と立ちながらのプレイスタイルっていうのが妙にマッチしていた気がします。よく前につんのめってましたよぉ。
菅野:あのブレーキの効きは、シリーズ通してボクと一緒にやってきたメインプログラマーのさじ加減の上手さですね。ボクが「ウゥっていうカンジで!」と適当に言っても、それを汲んでくれて作ってくれる(笑)、彼のおかげですよ、ホントに。彼がいなかったら、『クレイジータクシー』というゲームは為し得なかったですね。
――:ダッシュも「ウヒっていうカンジで!」みたいな指示で入った仕様なんですか?
菅野:実は、最初のアーケードのロケテストまでは、ダッシュは入っていなかったんです。で、ロケテストが終わったときに、「クルマを走らせているときに何かガチャガチャいじりたいね」ってボクが意見したら、「ま、そうかもね」って、みんなが賛同してくれて。それで入った、というワケです。
――:当時、ユーザーにとって『クレイジータクシー』=アップライト筐体、なんてイメージが浸透していたと思いますよ。そのイメージが強かっただけに、DCに移植されるという発表があったときは、「いったいどうなるんだろ?」みたいな不安をユーザーは持っていたかもしれません。そんなユーザーの不安を吹き飛ばす自信はありました?
菅野:アーケード版では軽い気持ちでプレイしてもらいたかったので、"道を複雑にして最短ルートを探す"といったような楽しみを排除して作っていました。ですから逆に、DC版を作る場合には、そういった楽しみをどんどん盛り込もうと。遊び込める要素を入れれば受け入れられるハズだ、という思いがありましたから、あんまり心配はしていませんでしたね。


●最新作『3』はXboxで発売! 菅野氏曰く、
『3』になって初めて『クレタク』は完成した!?


――:DC移植以降、『クレイジータクシー』シリーズはPS2、GCと家庭用ハードで発売されているわけですけれど、『3』はXboxでの発売ですよね。ズバリ、それは何故?
菅野:セガがマルチプラットフォームを発表する時期――ちょうど『2』を作っている途中だったんですけど――、Xboxが発売されるという情報もその頃出始めてて、ヒットメーカーとして何か早い時期に新ハードで立ち上げたい、という話が社内で出ていまして。で、どのタイトルだったらすぐに開発できるか? と揉んでいる時に『クレイジータクシー』というタイトルが浮上してきた、というワケです。『クレイジータクシー』を支持してくださっているユーザーの皆さんの層を考えると、マイクロソフトの出す新機種が一番マッチングするのではないか、という見解もありましたし。
――:Xboxでのソフト開発について、開発者からは「開発しやすい」or「しにくい」、という真っ二つの意見を聞くのですが…。
菅野:やっぱり初めて触るハードですし、開発当初は試行錯誤の連続でしたけどね。終盤になるにつれて、ハードのポテンシャルがわかってくるんですよ。ですから開発チーム内では、「いいハードだな」という評価が大多数ですね。まだまだ『3』はハードの性能の氷山の一角しか使っていないのかもしれませんし。
――:Xboxが現行の家庭用ハード中、最高スペックを誇ると言われているだけある、というカンジですかね。
菅野:ハードの能力が見えてくると、どんどんやりたいことが出てくる、高望みしてしまう、というのが開発者の性なワケで(笑)、もっともっとイロんなことを入れたかったんですけど。まぁ、限られた開発期間の中ではよくここまでできたなぁ、というのが正直なトコロです。
――:『3』の開発期間は短かったのですか?
菅野:異常に短いですよ。10カ月程度でしたもん。
――:ス、スゴイ。それだけ短い期間の中で、登場ドライバーを増やしたり(総勢12人!)、『1』『2』のステージをリニューアルして盛り込んだり…。ホント、アタマが下がります。今作もクールな選曲ですしね! 『3』でもSILVER BULLITやBRAIAN SETZERなどなど、超豪華メンバーが目白押しですけど、どうやって選曲されるんですか?
菅野:ゲームの雰囲気に合うことを大前提に選曲してますよね、やっぱり。サンフランシスコなりニューヨークなり、ラスベガスなりの雰囲気にマッチするような曲を探していくんですけど、コレがすごく大変なんですよね。結局は自分が知っている曲に落ち着くんですけど(笑)。「ベガスだったらBRAIAN SETZERかな」っていうファーストインプレッションの曲に落ち着いちゃいましたね。
――:そういったファーストインプレッションは、現地で取材しているときに出てくるものなのでしょうね。
菅野:実はね、『1』『2』に関しては取材したことなかったんですよ。
――:えぇ!? そうなんですか!? あんなに"らしい"のに?
菅野:ボクは『3』でも取材しなくていいじゃんって思っていましたけど、さすがに取材しに行って来ましたよ、デザインチームが。ボクは行っていないんですけどね。で、確かにロケ取材は効果あるんだなーと思いましたね。今まで取材させなくて反省しております(笑)。
――:具体的にどんな効果が?
菅野:ストリップっていう場所があるじゃないですか。いろんなネオンによる明かりもあれば、モニターによる明かりもあって。その再現がすごいんですよ。遠くではぼやけていて、近くでははっきり見える光がある、という空気感? っていうんですかね。あれは多分、確かに行ってみないと分からないかな、と。その空気感を『クレイジータクシー』の架空の街で再現するという点で、行かなかったら出来なかったかなって。ボクも本音を言うと――デザインチームには内緒ですけど――、ストリップ風の道を本当に作れるのかな? ってすごい心配だったんです(笑)。でも、出来上がってきたモノを見たら、そんな心配は吹き飛びましたよ。「ありあり! ありそうありそう! 来年にはホントに建っているんじゃないの!?」って思いましたもん(笑)。
――:早くプレイして見てみたい!
菅野:他にもグランドキャニオンにも取材に行ってもらいました。この取材のおかげで、シリーズ最大の高低差を実現できましたね。とにかく、ベガスをモチーフにしたコース「グリッターオアシス」は、マップの全容が分かれば分かる程楽しくなってくるコースに仕上がっていると思いますよ。
――:コースだけでなく、クルマの挙動そのものにも見直しが図られたそうですが、具体的には?
菅野:『1』では本当に爽快な走りが楽しめたんですけど、『2』では急なコーナーが多いコースだったので、それに対応した曲がりとか、壁に当たったときの処理とかで、ちょっとマイルドに対応されていたんですよ。これには賛否両論あったと思うので、『3』に関しては『1』のような勢いが感じられる挙動になるようにと、もう一度見直して作っています。他にも多彩なエフェクトによって、よりクレイジーな感覚を出そうとも思っていますし、ね。
――:より爽快に! よりクレイジーに! 走りが楽しめるわけですね!
菅野:『3』になってやっと『クレイジータクシー』は完成したと、我々は思っています。ぜひ期待していてください!
――:ユーザーのみなさん、爆走できるまでもう少しの辛抱です。発売日までは安全運転を心がけてくださいね~。


菅野顕二氏
1993年、セガ入社。AM3研に配属。AC『ジュラシックパーク』でアシスタントディレクターを務めた後、ディレクターとしてAC『ファンキーヘッドボクサー』に関わる。代表作:『トップスケーター』、『クレイジータクシー』シリーズ

『クレイジータクシー3 ハイローラー』

■メーカー:セガ
■対応機種:Xbox
■発売日:2002年7月25日
■価格:6,800円
Original Game (C) SEGA
(C) Hitmaker/SEGA, 2002

→公式サイト