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タイトル 『シェンムーII』発売直 前鈴木裕氏ロングインタビュー 電撃王取材班


ディレクター・鈴木裕氏が語り尽くす
『シェンムーII』の魅力

『ハングオン』や『アウトラン』、『バーチャファイター』シリーズなど数々の名作を輩出してきた鈴木裕氏が、初めてコンシューマオリジナル作品として挑んだ超大作『シェンムー 第一章 横須賀』。広大な横須賀の街並みを再現したその"FREE"な世界は、今までにない感動をプレイヤーに与えてくれた。あの感動からほぼ2年。いよいよ待望の続編『シェンムーII』発売まで、あと1か月あまりとなった。登場人物の数は前作の3倍、舞台となるマップの広さは10倍という破格のスケールで贈る『II』。そこにはどんな世界が、そしてどんな物語が待っているのか? ファンの期待が大いに高まる今、電撃王編集部では鈴木裕氏に直撃インタビューを敢行。氏が語る『II』の魅力とは?


●もっと自由にもっと気ままになった『II』

――まず最初に、『一章 横須賀』と比較して『II』の大きな違いをお聞かせください。
鈴木氏:全体的な特徴としては、やっぱりボリュームですね。『一章』と比較した場合のボリュームは3倍から5倍の間だと思います。ディスク枚数は4枚で『一章』から1枚増えただけですが、圧縮率が全然違いますから。『一章』と同じで考えたら15~16枚になっちゃうでしょうね。

――平均的なプレイ時間はどのくらいになるのでしょう?
鈴木氏:『一章』の時は、テスターのクリアタイムの平均値がだいたい21時間くらい。で、ユーザーの方の平均クリアタイムが45時間くらいでした。で、『II』の場合、テスターがプレイして大体31~32時間ですね。ゲームをクリアするためにストレートに遊んでそのくらいです。もっとも、このプレイ方法だと『II』で用意されたモノの半分も体験しないことになってしまうんですけどね。それはともかく、『一章』での平均時間から予測すると一般のユーザーの方のクリア時間はだいたい65時間程度ということになるでしょう。

――ボリュームが3~5倍に増えたにも関わらず、プレイ時間は1.5倍以下に押さえられているのはどうしてですか?
鈴木氏:要はテンポが速いということです。『一章』でも後半ではテンポがやや速くなっていたと思いますが、『II』は最初からそれより速いテンポで進行していく感じですね。これだけのボリュームであまりゆっくり進むと、やはりストレスが溜まってしまいますから。

――香港など、ゲーム世界を探索するのもだいぶ楽になっていますね。
鈴木氏:やっぱり、舞台が広くなったことでユーザーの方のストレスが上がってはいけませんから。セーブしたい場所でどこでもセーブできたり、待ち合わせの時間まで実際に待たないで済む"待つシステム"や、プレイヤーの目指す場所まで住民が連れて行ってくれる"チェイスシステム"など、いろいろ新しいシステムを追加しています。『II』ではユーザーの方のストレスをなるべく軽減するという方向性でアプローチをしてきました。なるべく快適に遊んでもらえるような形を僕らなりに追及したのが本作ですね。そして、これまでのことを含めて考えると『II』の大きな魅力は、ユーザーの方が自分のスピードでプレイ出来るっていうところにあると思うんですよ。ゆっくり遊びたい人はゆっくりと、とりあえずどんどん先に進めたい人は、そのようにも遊べます。特に『一章』の場合、"待て"と言われたら待たなければいけなかったんで、非常にストレスを感じた部分もあるかなと思いますけど、今回は待たないでも済みますしね。だから精神的には街をブラブラしやすくなったと思いますよ。

――いわゆる"自由度"も高まったようですね。
鈴木氏:そうですね。『一章』では割と一本道な印象がありましたけど、今回は複数のヒントや選択肢が出るようになっていて、そのどれを選択しても進めるようになっていますから。丁度、富士山の頂上を目指す際に、いろんな登山口からのルートがあるようなものですね。どれから攻めていってもOKです。

――その選んだルートによって異なるイベントが発生するということは?
鈴木氏:ありますよ。ルートによって自分が体験出来ないイベントは相当ありますね。もちろん、同時に見ることが可能なイベントと不可能なイベントが混在しています。ですから、すべてのパターンを試すとしたら……。

――相当遊び込む必要がありそうですね?
鈴木氏:『バーチャファイター』の時に『マニアックス』っていう攻略本が出ましたけど、あれと同じレベルで『II』を分析しようとしたら、多分『広辞苑』みたいになっちゃうでしょうね(笑)。

――ナビゲーションのシステムについてはかなり工夫されているようですが、バトルに関してはどうでしょう?
鈴木氏:バトルに関しても、『一章』に比較してずっと良くなってますよ。結局、『シェンムーII』のシステムに『バーチャファイター2』を全部取り込んじゃってるような感じで、クオリティは格段に上がってると思います。それに、主観視点で戦う新しいものも用意されましたし、フリーバトル中にQTEが発生する場合もあるんです。前作とは違った感覚で楽しんでいただけるはずですよ。ただ僕らは、同時に『バーチャファイター4』を作ってましたから。バトルだけとったら、そりゃあ『バーチャ4』の方が……(笑)。


●気になる物語は……プレイしてのお楽しみ

――今回の『II』は、当初予定していた『二章』から『六章』に相当する部分を再構成したものになっているわけですが、『シェンムー』全体の中で、どこまで話の核心に迫っているのかが非常に気になりますね。
鈴木氏:チャイニーズマフィアも当然、話の流れで噛んできますし、シェンファにだって会えますよ。ただ、ユーザーの皆さんがどのような期待をされているかよくわからないので……。具体的にお話してしまうのもネタバレになってしまいますし、あやふやな答えだと誤解を受ける恐れもありますし。期待は期待のまま残しておいた方がいいかな。今、ここでお話してしまうよりも、実際にプレイしていただいて自分で確認してみて欲しいですね。

――『一章』ではやや"静的"な印象を受けましたが、今回はユーザーも"動的"な部分やド派手な部分に期待しているところもあると思います。特に香港などはそういったダイナミックな雰囲気の場所でもありますしね。そのあたりはどうでしょう?
鈴木氏:最初に設計されたシナリオどおりになっているだけなんですけど、確かに横須賀っていうのは静的な部分が多いですね。で、香港というのは、僕らの中では"躍動"っていうのがキーワードになっているんですね。ですから、"活気溢れる"というか、『一章』よりもずっと元気な表現になっていると思います。


●『シェンムー』ではゲームの新たな可能性を追求

――いわゆる『シェンムー』という大きなコンセプトの中で、前回には出来なかった部分も『II』ではほとんど出来たとお考えですか?
鈴木氏:"ほとんど"というと語弊がありますね。『II』には『バーチャファイター』のプレミアムディスクが付くんですけど、今、その中で『バーチャ』シリーズのヒストリー的な部分を編集しているんですよ。そこで改めてわかったんだけど、最初の『バーチャファイター』開発前からやりたいと思っていたけど、ようやく『4』になって実現したっていうものもあるんですよね。結局、やりたいことはいつも遠くにあるんです。だから、"ほとんど入っていますか?"と言われると、それはもう"ノー"としか答えられない。せいぜい"『一章』の時よりはずっとやりたいことが出来てます"っていうところかな。
ただ、"当社比"としては割と良くなってると思うし(笑)、ゲームとしてどうなのかといった部分でもかなり良く出来てるんじゃないかと思いますね。
『バーチャファイター』シリーズは、ひとつの事柄を深く掘り下げることに時間を使ったゲームで、『シェンムー』の場合は、"新しいチャレンジ"であったり"可能性の探求"であったり、より広く展開することに対してチャレンジしてるゲームなんですね。そういう意味で、やっぱり『シェンムー』の世界っていうのは、今後のゲームにおける研究素材として、我々にとっては非常に大きな意味をもっていますね。当然、そこには未完成な部分も含まれていますけどね。

――その新しいチャレンジや可能性を探求していく中から、また『バーチャファイター』シリーズのように深く掘り下げていく部分が出てくることもあると?
鈴木氏:そういったゲームが今後たぶん……。『シェンムー』の技術っていうのは『バーチャファイター』シリーズにもどんどん反映されてきていますし、この先発表するタイトルにしても、それが何であれ『シェンムー』の技術っていうものが、やはり生かされていくでしょうね。


 ユーザーのストレスをいかに軽減するかに注力したという『シェンムーII』。確かに実際にプレイしてみたところ、前作ではもどかしく感じられた部分が『II』ではまったくといって良いほどなかった。もちろんそれは、多くの新システムが加えられた結果にほかならないが、なかでも特に"待ちシステム"の影響が大きいように思われる。前作での"待たなければいけない"から"待っても待たなくてもOK"に変わったことは、精神的にも非常にラク。そうなると、かえってあちこちブラブラしてみたくなるから不思議なものだ。もちろん物語を追ってひたすら早く先に進むのも良いだろう。しかし、ただ先を急ぐだけでは、あまりにももったいない。なぜならここには"小宇宙"ともいうべき、もうひとつのリアルな世界が存在しているのだから。ときには物語を忘れ、ひとりの住人になった気分でぶらりと歩き回ってみてはどうだろう。それだけでも、この作品のすごさ、奥の深さが見えてくるに違いない。


(C)SEGA-AM2 1999,2001
ソフト紹介

シェンムーII
 当初、第二章から第六章までに相当していたシナリオを、ひとつに再構成した本作。それだけに、ゲーム全体のボリュームは、前作『一章』をはるかに凌駕し、マップの広さも大幅に拡大。そこには総計1,000人にも及ぶ住民たちが生活するリアルな世界が待っている。

●機種:DC
●セガ
●FREE
●2001年9月6日発売 
●7,800円



鈴木裕氏

『ハングオン』『アウトラン』『バーチャファイター』など、数々の名作を世に送り出したトップゲームクリエイター。
今回の取材では、氏自らがコントローラを手に取り、 『シェンムーII』の世界を案内してくれた。