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『水口&遠藤対談 マル秘トーク同梱版』 02 

「最初に『Rez』を見たときの感想は、
どこがポスト『ゼビウス』なの?」(遠藤氏)

水口:僕の場合、"自分が体験として得たモノを作品として昇華していく"というのがゲーム作りの基本的なスタイルですが、遠藤さんの場合はどうですか?
遠藤:いくつかありますね。まったく新しいモノを作る場合は、イメージ先行です。"なんかこんなものが欲しいな"みたいな。"やりたいこと"っていうのがだんだん凝縮されてきて、そこから作り始めるタイプですね。でも、そういうのはホント数年に一回ぐらいしかないですけど。最近作ったGB用の『DT』(※2)がそのタイプなんですけど、GB用のくせに大人向けのモノを作ったんで、"全然ダメだ"っていうヤバイことになってます(笑)。  
 あとはフラストレーションがゲーム作りの原動力になる場合がとても多いですね。ある作品をプレイしてみて"ダメじゃん、これ"ってなると、"じゃあ、しょうがないから自分で作っちゃおう"っていう感じ。一連の『ファミリーサーキット』シリーズ(※3)などはそうですね。自分の走りで100分の1秒が体感できるようなところまでやりたくて作り始めたんですよ。ちなみに走行ルーチンのプログラムは4本作りましたが、全部自分で組みました。さっきの話じゃないけど、やっぱりイメージを伝達できない部分があるんですよ。例えば"インを削ったときに外側のタイヤにトラクションがかかってるんで大丈夫、っていう感覚をプログラムにしてくれよ"って言っても通じないので(笑)。で、しょうがないから、その感覚を自分でプログラムに書くんですけど、僕はそれができる分、幸せだったんですよね。その他に「世界観系」っていうのがあって、『ドルアーガの塔』のシリーズ(※4)はこれに当てはまります。『ゼビウス』の場合、最初に作って以来ずっと何もやらないできたのは、技術がイメージに追いついて来られなかったというのが大きいですね。でも、ようやく今になってやっと作りたくなってきている感じかな。
水口:それって『ゼビウス』をモチーフにした作品っていうことですか?
遠藤:ええ。『ゼビウス』を作りたいですね。
水口:それはスゴイ。……あ、単なる一ゲーマーになっちゃった(笑)。
遠藤:『ゼビウス』では本当は"立体"を表現したかったんだけど、当時はそれができなかったんです。でも、今なら楽々と立体を表現できますからね。で、やっぱりプレイしたいのは"空間"なんですよ。上下左右が自分で感覚的に分からない空間で、自機を操縦して敵を撃っていくっていう。しかも、やって来る敵を撃つんじゃなくて、かなりフリーに飛び回りながら敵を探索して倒していくみたいなね。かつて『XEVIOUS 3D/G』(※5)っていうアーケードゲームが出たとき、グラフィックはスゴイと思ったんですけど、なんだか電車に乗せられてるみたいな感じで……。"空間を飛ぶ"っていうことと、"自分で探して撃っていく"っていうことがようやくできるかもしれないんで、"PS2でそろそろ『ゼビウス』できるかなあ"みたいな(笑)。
水口:それはやってみたい……。でも、最初に言いましたけど『Rez』の場合、"STGを作りたかったから"ということよりも、"自分のやりたいことをやるにはSTGがいちばんだろう"という発想だったんですよ。
遠藤:最初に『Rez』を見せてもらったときは、全然『ゼビウス』に似てないので、"どこが『ゼビウス』なんだ!?"って思いましたけど、実際に遊んでみて、"あ、なるほどね"っていう感じでしたね。でも結局『Rez』は純粋なSTGじゃないですよ、感覚的には。当時『ゼビウス』で「バキュラ」(※6)に向けてリズムをつけて"カンカン"って撃つのが流行ったんですけど、ああいう感覚なんですよ。そこが根底にあるから、水口さんも"『Rez』はSTGにしなきゃいけない"って思っちゃったんじゃないかな。何かほかの方法論もあったのかもしれないけど、きっと原体験の中でモノを撃って音を出すっていう考え方ができていたんだと思いますね。僕は素直に"ああ、なるほど。『Rez』は純粋なSTGとはいえないけど、STGの要素を持った良い作品だな"っていう印象でしたね。やっぱりこの作品の魅力は"音"に集約されてますよ。ホント"音"がすべてだと思います。
水口:このゲームを作るにあたっては、いろんなモノからインスパイアされていて、もちろんそのひとつが高校生の頃に遊んだ『ゼビウス』なんですけど、その他に、僕の友人がアフリカで撮ってきたビデオがあります。それは、ケニアのナイロビの道端で5~6人の人たちが酒を呑んでいる光景を写したものなんですけど、ひとりが皿を"ガンガン"って叩き始めると、それに合わせて誰かが手拍子を"パンパン"って入れて、次第にみんなの身体が揺れ始めて、誰かが"ワー"って歌い始めると、他の人も"ワー"って……。"コール&レスポンス"の連続がグルーヴを生んでいくっていうか。まあ、何気ないビデオなんですけど、それを見たときに、"例えば指揮者のように、みんなを盛り上げていく。そういう面白さや楽しさを体験させることはできないか"っていうことを色々と考えてみたんです。例えば"俸を使っていろんなキャラたちをどういう風に盛り上げていくか"といった実験もやったりしましたけど、そういう実験の中のひとつがこの『Rez』だったんです。"コール"して返ってくる"レスポンス"に対してまた自分が"コール"していく、この連続がどんどんスパイラル状に高まっていくときに得られる感覚っていうのは、ある種のトランス感だったり、グルーヴ感だったり……って、言葉にしても"何じゃそりゃ?"ってみんなに言われちゃうんですけど(笑)。でも、僕らの遺伝子の中に、今は眠ってるけど確かに組み込まれている快感みたいなモノって結構あると思うんですよね。で、それを引き出せるのが唯一ゲームなのかなって思うんですけど。
遠藤:それは確かに"音ゲー"がいちばん良いですよね。"音ゲー"といっても既存の、"タイミングに合わせてボタンを押す"というタイプじゃなくて、"音に依存する"タイプというか……。おっかないから自分ではまだ作っちゃダメだと思ってるモノのひとつに、"バーチャルサウンドを使ったゲーム"っていうのがあるんですよ。それはかなり"来る"と思いますね。ただ、おそらく精神に異常を来たしちゃう人が続出になっちゃうから。バーチャルサウンドって、背後に人が動いてる音なんかを聴くと、実際に人がいるような圧力を感じるんです。体温すら感じられますよね。その実験をみたときに"ああ、これはスゴイな"と思いましたよ。恐怖感や暖かい気持ちなども表現できるし、空間の広がりとかも表現できるし。
水口:3Dサウンドの中でいちばん驚いたのは「ホロフォニックス」(※7)ですね。今からもう15年ぐらい前にアルゼンチンのズッカリニという人が開発したモノで、内容自体は背後でマッチ擦ったりといったデモなんですけど、とにかく凄いんですよ。聴いたことあります?
遠藤:もしかしたら同じモノを聴いてるかもしれないね。
水口:ドライヤーの音が聴こえると、ホントに熱く感じるんですよ。人間って、感覚が交錯すると錯覚を感じちゃうようなところがあるのかもしれませんね。まあ、僕らも『Rez』ではそういったこともずいぶん考えましたけど、確かにやり方によっては非常にヤバイものになりますよね。
遠藤:うん。
水口:"音"については、ジョージ・ルーカスやスティーブン・スピルバーグ(※8)も"映画の中で果たす音の力は7割ぐらいある"って言ってますね。もちろんそれは、映像を軽視してるわけじゃなくて、音にはそれくらい別の錯覚を生み出す力を持っているっていうことで。『Rez』の実験の中でも、音を微妙に変えるだけでプレイしたときの感覚がまったく変わるということを体験しましたよ。例えばクラシックの音源や人間の声とか。人間の声でもちょっと怖目の声とか、とても明るめの声とか、その音源ひとつ変えるだけで全然違うゲームになっちゃうんですよね。"こんなにも変わるものか"と驚きました。
遠藤:それは期待してる部分でもあるんですけど。アペンドディスクを出してくれたらなとか、そういう意味で(笑)。
水口:僕らとしても、『Rez』はやり続けていきたいですし、まだまだやりたいことがいっぱいあるので、いろんなトライを重ねていくと思いますよ。
遠藤:とりあえずヘッドホンも買ってくれた人はアペンドディスクくらい出してくれないと怒るだろうな(笑)。曲や効果音を変えるだけでまったく違うゲームになるだろうっていうことは、『Rez』の場合、はっきり予想できますからね。
 そういえば、ゲーム中に「レイヤーレベル」が上がる部分でエコーがかかりますけど、あれは良いですよね。エコーの使い方が映像とマッチしているというか。エコーって突然かかると、一瞬、視界的にブレイクしたような感じになるんですよ。それを上手く使ってるなと思いました。
水口:そう言ってもらえるとうれしいですね。
遠藤:細野(晴臣)さん(※9)が『VIDEO GAME MUSIC』を作ったときに曲を聴かせてくれたんですけど、『ギャラガ』という曲で突然"ガーン"ってエコーがかかると、その瞬間に真っ暗なスタジオの中の壁がなくなったような感じがしたんです。で、細野さんが"エコーはこうやって使うんだよ"って。"宇宙になっただろ"って言われて(笑)。ホント、スゴイなって思いましたよね。
水口:僕らもそういった驚きの連続です。例えばエフェクトがかかってなくて"なんだよこれ、全然気持ちよくないじゃない"っていう音が、エフェクトかけたら思いっきり変わっちゃったりとか。確かに"音"ってヤバイですよね。僕らもきちんと考えて作らないと。それに"音"云々以前に、やっぱりゲームってすごく深い体験を人に植え付けてしまうものですからね。
遠藤:うん、注意しないと。数年経つと"高校生のときに遊びましたよ"とか言う熱狂的なヤツがでてきたりとか(笑)。現在30歳前後の人の中に、僕の熱狂的なファンがいたりするんですよね。僕よりも僕のことをよく知ってたりして、"そういえば今年のお花見の時期に熱出されてましたよね"とか言われたり。そんなの覚えてないって(笑)。
水口:僕は札幌の高校に通ってたんですけど、札幌で雪の中を通学してるような高校生がたまたま『ゼビウス』を見て衝撃を受けて、しかも実際にゲームを作る人間になって、そして今回『Rez』のような作品が生まれて……。遠藤さんにしてみれば、こういうことをどうのようにお感じになっているんですかね?
遠藤:新しい人が出てきてくれなきゃダメでしょう。ナムコをやめたときくらいからかな、"新しく登場する人がゲームを作りやすい環境にするために、ゲームクリエイターの立場を上げていかなきゃ"ってずっと思ってきたんですよ。特に昔は"ゲーム"っていうだけで低く見られてたし、そこから解放したいという想いもありました。だいたい僕はホントは"金髪にしたり"とか"ピアスしてみたり"とか、そういう方向性なんですよ(笑)。でも、とりあえず"ゲームを作っている人はまじめな人、頭が良い人、きちんとしている人、常識的な人"というイメージでみんなに捉えてもらう必要があったんですよね。で、新しく出てくる人がどういう格好であっても大丈夫なようにしておこうと。だから(岡田)耕始や(金子)一馬(※10)が真っ黒な格好をしていてもそれはそれで良いと思うし(笑)、どんどん新しい作家が出てきてくれた方がやっぱり嬉しいから。そういう意味では『スペチャン』、『Rez』の「水口哲也」っていう男を見ていたいんですよ、僕は。
水口:まあ、どこまで突っ走れるかわかりませんけど。
遠藤:『スペチャン』は衝撃的でしたからね。もともとネーチャン好きだし(笑)。
水口:ハハハ。あれ、完成したこと自体が奇跡のゲームというか……。
遠藤:ホント良く作ったなって思います。とりあえず僕的にはすばらしく感動しましたよ。ただ残念だったのが、"PSだったらミリオンいったかもしれないな"ってことかな。
水口:それはわかりませんけど。そういう意味で、次回の『2』はチャレンジなんですよね、僕らの中では。『スペチャン』は『3』も『4』も『5』も、作れるだけ続けていこうと思ってるんです。ゲーム業界の『スタートレック』とか『寅さん』にしたいなと(笑)。
遠藤:僕はそのうち"「うらら」貸してくれ"って申し込みに来ようと思ってますよ(笑)。Jフォンってうららをイメージキャラにしてるけど、あれはオイシイよね。
水口:まあ、諦めないで作っていけば何か良いこともありますよ(笑)。
遠藤:本当にそう。それに、自分で自信のあるものは諦めないで済むから。やっぱり自信作っていうのは僕も作り続けてるんですよ。だから、実は『ゼビウス』ってそれほど自信作じゃないのかなとか……。
『ゼビウス』って作ったときは好きだったんですよ。でも、大ヒットして"やれ『ゼビウス』だ。やれ遠藤だ"って言われた段階ですごく嫌いになったんですね。僕の前で"ゼ"って言ったらダメっていう時期もあったくらい。それを払拭してくれたのが細野さんなんですけどね。ちょうど細野さんがY.M.Oを辞める頃、"遠藤くん、ひとつでも売れた作品があるってことは、それだけ自分が認められてるってことなんだから"って仰ってくれたんです。"僕だってこれからは「元Y.M.O」って言われることになるけど、それは自分の中で納得してるし、もちろんその前にやってたバンドだって全部消えちゃうわけじゃない。元Y.M.Oであることを超えようと思わないんだよ、無理して。そうじゃなくて、自分でやりたいことができるようになるっていう風に考えれば良いだけだから"って。それで"ああ、そうなんだ"って心が晴れましたよね。
 実は『ドルアーガの塔』が自分の中ではとても重い作品なんですよ、ファンも多いし。アレが売れてなかったら絶対自分は潰れてたと思うけど、ヒットしたから、これからも作れるっていう感覚はありますね。もっとも、10数年ぶりの自信作である『DT』については、自信作であることとセールスとは関係ない場合もあるということで(笑)。
水口:でもそういうことって確かにありますよね。自分の想いや気持ちと反比例することって。
遠藤:本当にそうだよね。"作りたいものを作ると売れないし、売れるものを作るとつまらないし"っていう……。まあ、セガにしろ、ナムコにしろ、エライのはちゃんと作らせてくれることですよね。どちらも他のメーカーとはちょっと違うんですよ。ゲームの作り方も方向性も。
水口:そうですね。
遠藤:"縛り"が比較的少ないかな。踏み外さない限りほとんど自由にやらせてくれるというか。ゲームのなんたるかを良く理解しているんでしょうね。


   

 




脚注
(※2) DT
正式名称は『DT ローズ・オブ・ゲノム』。2001年5月発売。プレイヤーは特殊能力者「DTマスター」となって、戦略性に富んだカードバトルを繰り広げていく。各カードには断片的な物語やキーワードが記され、それらを読み解くことでゲーム世界が徐々に明らかになるというスタイルは、世界観にこだわる遠藤氏ならでは。
(※3) ファミリーサーキット
'88年にFCで発売されたRCG。アクセル全開でコーナーを抜けるのが当たり前の当時のRCGにあって、一瞬の操作ミスで即、壁に激突というシビアさ(=リアルさ)は一線を画していた。 "コンマ1秒をいかに削るか"、この醍醐味を初めて体験させてくれたRCGといっても過言ではないだろう。
(※4) ドルアーガの塔
'84年にアーケードで発表されたA・RPG。部屋に隠された宝物の出現方法は難解を極め、当時のマニアを熱中させた。その後、FCに移植され、さらに『イシターの復活』('86年/AC)、『カイの冒険』('88年/FC)、『ザ・ブルークリスタルロッド』('94年/SFC)と次々に続編が作られる。
(※5) XEVIOUS 3D/G
 ナムコが'96年にアーケードで発売した3D・STG。テクスチャーポリゴン、モデルアニメーション、モーフィング、多彩なカメラワークなど、当時の最新技術を結集して制作された。元祖『ゼビウス』のキャラが登場する。

(※6) バキュラ
『ゼビウス』中に登場する、"弾を当てることはできるが破壊はできない"動くオブジェ。弾が当たると"カンカン"というSEが鳴る。
(※7)
 ホロフォニックス
立体音響の技術で、ピンク・フロイドやマイケル・ジャクソンをはじめとしたミュージシャンが、アルバムレコーディングで使用している。
(※8) ジョージ・ルーカス、スティーブン・スピルバーグ
ジョージ・ルーカス…'44年生まれ。映画監督・プロデューサー。代表作は『スターウォーズ』('77年)、『レイダース/失われたアーク(聖櫃)』('81年)など多数。
スティーブン・スピルバーグ…'47年生まれ。映画監督・プロデューサー。代表作は『ジョーズ』('75年)、『ET』('77年)、『AI』('01年)など多数。
(※9) 細野晴臣
'47年生まれ。ミュージシャン・アーティスト。日本語によるロックの先鞭となった「はっぴぃえんど」、エキゾティックなサウンドが特徴的な「ティン・パン・アレー」、空前のテクノブームを巻き起こし世界的な成功を収めた「Y.M.O」などでの活動を通じて、日本の(あるいは世界の)ミュージックシーンに大きな影響を与えてきた。
(※10) 岡田耕始、金子一馬
岡田耕始氏…アトラスの第一開発部部長。『真・女神転生』シリーズや『魔剣X』シリーズなどのプロデューサーとして知られる。
金子一馬氏…『真・女神転生』シリーズなどで独特で美麗なグラフィックを描き続けているグラフィックデザイナーで、通称「悪魔絵師」。
 お二方とも常に黒服で身を包んでおり、"黒服とサングラス"というイメージはすっかり定着。