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ゲーム中に使用された楽曲はもちろん、様々なおまけを収録した「スペースチャンネル5 パート2 サウンドトラックボリューム『チュー!!』」「スペースチャンネル5 パート2 サウンドトラックボリューム『ヘイ!!』」の2枚がいよいよ発売! そこで今回は、サウンドを担当したウェーブマスターの幡谷氏と、ゲームデザインディレクターの吉永氏にサントラならではの魅力を徹底的に語ってもらいました。

なんと今回のサントラは2枚に分けて発売!
その違いとは!?

――今回、ボリューム「チュー!!」、ボリューム「ヘイ!!」の2枚に分かれての発売となりますが、これは最初から予定していたことだったのですか?
幡谷氏(以下敬称略):はい。とうていCD1枚では入りきらないというのと、前作のサントラで入れてみた「おまけ」がおもしろかったので、また今回もやってみたいと思いました。結果的には前半と後半に分けて、ストーリーの流れに沿ったものになっています。
――ストーリーの前後で2枚に分かれているとのことですが、ボリューム「チュー!!」とボリューム「ヘイ!!」で聴かせどころやコンセプトの違いはあるのですか?
幡谷:コンセプトに関してはほとんど違いはないですね。どちらを先に聴いても、もう一方の内容は予告などでカバーできるようになっています。まずは、手軽に楽しんでもらいたいと思いまして。
吉永氏(以下敬称略):ボリューム「チュー!!」にはメキシカン・フライヤーが入っていて、ボリューム「ヘイ!!」にはエンディングが入っている……。どちらも外せないですね。
――サントラの曲は、ゲーム中のものに比べて長くなっているなど微妙に変わっていますが、これはゲーム中の曲を再編集したものなのですか?
幡谷:そうです。サウンドトラックを作ろうと思った時に、ゲーム中の曲から回答のボイスといった効果音を抜くだけだと、メロディラインが消えて、まるでカラオケのようになってしまいます。それではおもしろみにかけますし、ゲームの曲はステージ内でもシーンや展開ごとに細かく分かれていますから、サントラに合わせた編集が必要でした。
――サウンドクリエイターとしては、サントラの方が楽しいのではないですか?
幡谷:サントラはあくまで2次的なものという感覚でとらえています。ゲームの方はゲーム内でどれだけ機能するか、ボイスとか効果音が鳴った状態でどうなるか、というものを前提に考えているので、それで完結しています。これはこれで非常に楽しいですよ。一方のサントラは、ゲーム的な制約が少ないので、こちらもおもしろいです。

一番こだわったのは
レトロフューチャーを表現するための「音色の質感」

――『スペースチャンネル5』シリーズの音作りに対するコンセプトを聞いてみたいのですが。
吉永:最初に、メキシカン・フライヤーの入ったプレゼンムービーがあったんです。その時点で、基本的なコンセプトとなる「レトロフューチャー」をイメージした世界観、音楽の方向性が決まっていたという感じですね。
幡谷:そうですね。曲を作っている時に一番こだわったのは、「音色の質感」でした。「レトロフューチャー」というのが世界観のコンセプトとしてありましたから。60年代、70年代を感じさせる音や当時の音楽のスタイルをどうやって持ってくるか、というのが難しかったですね。
――吉永さんから、音楽サイドへの注文があったりしたんですか?
吉永:こっちでやりたいことがある場合、曲の大前提であるテンポを最初から指定させてもらったり、ここで何か一発「ボカーン!」と入力させたいんで、曲もそういうのが欲しいなど、ゲームシステム的な部分の都合が優先されることがありました。だから、曲としての機能の部分と、芸術的な部分、例えばユーザーに伝えたい感情などの要素を満たして作るっていうのはすごいなと思いました。普通のゲームだと、戦闘シーンと戦闘の曲はそれぞれ用意されても、決してからんではこないんです。例えば戦闘の最後の1発が、曲の一番いいところで終わるようにはなっていませんよね。『スペースチャンネル5』シリーズの場合は、それが前提になっているので、サウンドをまとめる上での難易度はすごく高いと思います。自分自身、こんなにサウンドの人と話をしながら、仕事をしたのは初めてなんです。むしろ、話しすぎっていうぐらい。音楽は、前作の『スペースチャンネル5』のシステムそのものなので、コンセンサスをとらないと成立しないんですよ。今までだと、ちょっと離れて作業してても折り合いがついたりしていたんですけど、今回は話さないとダメという感じでした。だから、サウンドチームとゲームセクションは、全員かなり意見のすり合わせをしています。専用のチャット回線があって、ああでもないこうでもないと話をしていました。


「全体を通して聴くと『ありがとうございました!』みたいな
満足感があると思うんですよ


――前作のサントラを聴いて、期待している人も多いと思いますが、前作以上にネタが入っているというのは、最初からやろうと決めていたんですか?
吉永:やろうという話は聞いていました。
幡谷:それは、当然やるものとして考えていたのですが、どこまでやるかというところで悩みました。前回のものがどういう感じで受け止められているのか、プロデューサーの意向はどうなのか。やりすぎていないか……とか。結果としては、中途半端にやるのは逆におもしろくないでしょうということで、今回のように力の入ったものになりました。ただ、構成上、ゲームの世界を邪魔しないように、エクストラトラックとして区切りをつけるよう気を使っています。
吉永:ネタ的には、今回の方がやりたい放題で飛ばしぎみであるような気がするんですけど(笑)。前後の曲にはさまれていると、聴いた後の印象が素晴らしいという感じですかね。ベタベタなネタもいっぱい入っているんですけど、全体を通して聴くと「ありがとうございました!」みたいな満足感があると思うんですよ。
幡谷:こういうところに入っているネタは、ゲームの世界の裏話ですし、最後の曲の後は外伝的な扱いなんで、そこは楽しみやすい作りになっていると思います。
――ゲームをやった人だとよくわかる、楽しめるサントラになっていると思います。この種のサントラは、何度も聴いていると曲をスキップしがちになるんですが、それがうまくミックスされているなと感じました。ラジオショウのような企画CDっぽさといた雰囲気ですか。
幡谷:そうですね。特に『スペースチャンネル5』というタイトルがこういう作りをすごくしやすいので、いい機会だと思っています。ゲームのサウンドトラックというのは、どうあるべきかと。従来のコレクター的な「全部の曲がそのまま入っていますよ」というものではなくて、ゲームをやった人がどういう楽しみ方ができるのかという……。2次的な楽しみがあったり、プレイを振り返って楽しめるものを作っていけば、もっと買う人も増えるだろうし、新しいサウンドトラックの形態というのを確立できるんじゃないかなという思いもあって、かなり力を入れて作りました。
――ゲーム制作の間は、お互いかなりやりとりをされたということですが、サントラ制作の方でも話し合いをされたんですか。
吉永:私がやったのはネタパートと歌詞の部分です。基本的に、ネタを書いてサウンドチームへ持っていくんですが、いろいろと注文されまして……。だいぶ書き直したりもしましたね。
幡谷:力関係が変わるっていうのがあるんですよね、ゲーム制作のときと比べると。あがってきたネタにうーん……っていってみたり(笑)。
吉永:力関係が変わるっていうとちょっといいすぎな気もしますけど(笑)。結局セリフだけあれば成立するものじゃなくて、曲は鳴るしSEもかかりますよね。そういうことも考えた上での、総合的な完成形というのは開発側では想像できないんですよ。私ができるのは純粋にセリフネタの部分なので、そういった音が入った状態で判断されリテイクとなったときに、『ああ、ココはそこまでいわなくてもいいんだ』ということに気づいたり。音が入って初めてわかるということもあったので、3回ぐらい手直ししました。
幡谷:それでも全体的には、なごやかに一緒に作っているっていうムードでしたけどね(笑)。
吉永:プレッシャーはちょっとありましたよ。サントラオリジナルのフルコーラス版があると聞いていて、「すごいんですねー」って思っていたら、「歌詞もひとつおねがいします」とサウンドチームのほうから言われちゃって。歌詞なんて書いたことがないんですよ。ゲーム中に出てくるのは、歌詞とは言わん! という感じなので……。すごくドキドキして、「できましたぁ」って小さい声で持っていったりして。あと、歌にするときに伸ばしづらいフレーズや語尾とか、逆に教わっちゃったって感じなんです。
幡谷:ひかえめに言ってますけどね。”パインのテーマ”ってあるんですけど、これの歌詞が……。
――私も気になりました、ゲームとぜんぜん違うって。
幡谷:最初にきた歌詞の冒頭が、「私はネギが好きで~」っていう歌詞で(笑)。
吉永:それはですね、どうしても出だしの言葉が見つからなかったんですよ。
幡谷:担当がNG出して。
吉永:パインの歌に関しては、ゲームで出ているところをサビにしたいと思ったんですよ。でも、名乗りが最初に来ないと誰の歌かわからない。じゃあ、何が最初の情報として必要かというと、自分が属している組織の名前かなと。「普通名乗るときって何を言うかな……名刺を出したら、○○の○○ですって言うよなぁ……それで、こんなことをしている会社なんですよ……って言うよなぁ』なんて考えたりしました。歌詞としてより、情報を出していく優先順序って考え方なんです。歌詞としてはどうなんだっていうのは、実はわからなくてビクビクしてたんですけど、あんまり怒られませんでしたね(笑)。
――こういう曲はうれしいですよね。ユーザーって、ゲームと同じものを聞きたいというのと、違うのを聞きたいという、非常に欲張りじゃないですか。その欲求を満たすように収録されていると思います。


「”早口編”は、おいしいトチリかたしないかと待ってたんです」

――ところで”うららダンス早口編”は一発取りなんでしょうか?
吉永:あれは、延々と収録やってましたね。僕とサウンドの人が担当してたんですが、当初予定していたオチとは大分違うものになってしまいました。最初は「長いセリフが全然言えなくて、でも最後の一番難しいセリフだけを二人ともビシっと言えるっていう落とし方にしたいね」と言ってたんですけど、実際現場でやってみたら、なにがなんだかわからなくなってしまって……。最終的には編集のテクニックで、今入っているものになったという感じです。結局、30分以上やってましたね、あれ。
幡谷:おいしいトチリかたしないかと待ってたりしたんで(笑)。
吉永:ある意味、間違えるのが前提でネタを組んであったので、実際ヒューズやうららの声をやっている方(※注1)に、「絶対間違いを誘ってるでしょ」「何でこんなネタなんだ」という内線やメールを、10回ぐらいもらいました。前日に。
――”着メロメドレー”は、本物を使ったんですか?
幡谷:それはJフォンのサービスで配信されているものです。前作の曲なので、今も配信していますよ。
吉永:初めて聴いたとき、AMIGA(※注2)の音源みたいな音が入ってて驚きました。
幡谷:あの曲、ウェーブマスターの役員が作ったんですよ。FM音源の達人で、全部ミミコピ(耳で聴いて譜面を作ること)で作った力作です。
――”お風呂対決”というのがありますが、これは何を対決しているのですか。
幡谷:おでんとお風呂というのは、前作のサントラの流れを組んでいるんですけど……。
吉永:何を対決しているかっていうと、ひとりでディレクターがお風呂に入っていて、気持ちよさそうに鼻歌を歌っていると、同じフレーズを歌う人たちがどんどん集まってきて、「俺の鼻歌の方がエレガントだ」って、だんだん意地になっていくというノリなんですね。ゲーム本編で展開される、だんだん人が集まってきて曲が豪華になっていく場面のパロディという意味もありました。この風呂はいったい何人入っているんだろうっていうところまできてるという。
幡谷:要するに、意地を張り合ってるわけです。
吉永:対決ってサントラに書いてあると、何を対決しているんだろうと期待して買ってくれるかなというのがちょっとだけあったり(笑)。読んだときに『対決』って書いてあると、ドラマっぽいかなと思ったりしました。ドラマって書いてあるほどのことはないんですけどね。「想像していたのとちがうじゃん!」って感じで。ドラマってフレーズにしてあると、昔ソノシートとかで「1.○○○マンの歌」、「2.ドラマ」、「3.終わりの歌」みたいなのがよくありますけど、そのドラマっていう感じがいいなと。もちろん、ちゃんとドラマになっているものもたくさん入っていますよ。
――私たちは2枚同時にいただいて両方聴きましたが、「チュー!!」を聴いてみて予告編なんて入っていたら「ヘイ!!」も買わずにいられませんよね。
吉永:個人的に思うんですけど、これを同じ日に2枚買ったら聴ききれない気がしますから。そういう意味でも、どっちかが先のほうがいいんじゃないかなと。
――やっぱり、「チュー!!」、「ヘイ!!」の順で聴いてほしいんですよね?
吉永:そりゃ、逆じゃないほうがいいですよね(笑)。
――後半のマイケル登場シーンが好きだからとか「ヘイ!!」だけで楽しむというのはありでしょうか?
幡谷:そうですね、そういう選択肢、自由度は最低限あってもいいように作ったんですけど。確かに「ヘイ!!」だけを聴く人もいるかもしれないですね。
――「チュー!!」がゲームの前半、「ヘイ!!」が後半部分という感じに分かれているというのもありますが、「チュー!!」はいろいろな曲を散りばめてあって、「ヘイ!!」はクライマックスへ向けてどんどん昇っていってという構成ですよね。
吉永:そういう意味では、「ヘイ!!」を通して聴いていくと感慨深いというのはありますよね、確かに。

おなじみ”ディレクター”ネタ、今回はどうなっている?

――「ヘイ!!」に収録されている”あるディレクターの告白”についてお聞きしたいのですが。
吉永:これはもうお約束ですね。入れておかないとっていう。一番最初はゲームのエンディングの後、そういうのがあるったらいいなと思っていたんですけど、そんな余裕など制作中にはありませんでした。本当はゲームの中で完結しているほうが美しいと思うんですけど……。とにかく「なんでおまえ助かっているんだよ」っていうのは、ちゃんと説明しておかないといけないなっていうのがありました。シチュエーションとかネタもそうなんですけど、何よりも言いたいのはヒューズの声優さんは酒を飲んでもいないのに、なんでそんなに酔っ払いのマネが上手なのかってことですか(笑)。ちょっとしゃっくりするような感じとか、コントの世界突入中といった感じでした。
――イメージとしては屋台のカウンターですよね。
吉永:そうですね。
幡谷:前作のサントラにも屋台があったんですが、それと同じシチュエーションにしました。行きつけのおでん屋の屋台なんですよ。
――あの、おでんのフレーズを歌っていたところですか。
幡谷:そうなんです。おでんはいろいろと『スペチャン』と関係がありまして。
吉永:本編のほうでも、2周目で『おでん』って言葉が絶叫されるところがあったりとか。
幡谷:おでんの替え歌を、1作目の開発中にずっと歌っていたんですよね。それの刷り込みがあったんでしょうけど。
吉永:メキシカンフライヤーの曲に合わせて、『おーでんー』と歌うことができるという。3文字ならなんでもいいんですけど、特に響きの悪いのはおでんかなと。

「収録現場はトータルで勘定すると楽しかったですね

――新しく収録されたドラマとかもいっぱいありますけど、ドラマの収録時の雰囲気やエピソードをお聞きしたいのですが。
吉永:細かい話をすると、出演できる人は誰なのかを聞いて、その中でプリンさんには出ていただこうということになりました。個人的に気に入ってるキャラクターなので。
幡谷:収録は常に楽しかったですね。NGリミックスの雰囲気そのままです。ギスギスしたときもありましたが(笑)。
吉永:割合で言うとすごく楽しい1:楽しい7:ギスギス2みたいな。「ウララダンス」100問じゃないですけど、単発の「イエィ」とかを延々と録っているときは大変でした。でも、楽しいときはおなかが痛いぐらい笑ってたりすることもあるので、トータルで勘定すると楽しかったです。あと、声優の方に映像を見せてゲームの雰囲気をつかんでもらったので、元気な作品だということもわかってもらって。こんなセリフいやがられるんだろうな、というのも言ってもらったりしました。
幡谷:「太鼓が好き好き」っていうんですかって聞かれましたよね。
吉永:「どんどこどこどこ」ってどういう風に使うんですかって聞かれた時は、ちょっとドキドキしましたけど(笑)。でも全体的にはどちらかといえば、ノリノリでやってもらえた感じです。ただ、そういうヘンな言葉を説明するのが大変でした。理論立てて説明すると、どういうことなのかという感じで。ある意味無駄なフレーズもあるので、理由をつけようとすると逆に難しくなってしまうんです。
――編集部的には水口さんに溶けてもらいたかったんですが(※注3)。
吉永:水口さんも、ブースの中に入っちゃうと超やる気満々でしたね。OKが出て、もう録ってませんっていうのに、延々と「違うな」ってやってました。こっちはもうコーヒー飲んでくつろいじゃっているのに、水口さんまだやってますね~って感じで。そんなことが、2回ぐらいあったような気がしますね。
幡谷:ゲームの方の収録は全部水口さんが仕切ってやってたんで。前作のサントラでも、彼が出演しているんですよ。
――ちなみに吉永さんはゲームのどこかに出演されているですか?
吉永:ゲーム中は出てませんね。
――いわゆる、キャラクターとしてのセリフはもらっていないのですか?
吉永:それは、自分が恥ずかしいので言わないようにしています。
幡谷:サントラではプリンの手下役として、プリンに怒られていますけどね。
吉永:基本的に人が言って恥ずかしいセリフを書いているから、自分では言わないようにしているんです(笑)。

サントラの中で、2人が気に入っている曲はコレ

――お二人はメインテーマの「メキシカン・フライヤー」以外に何か、特にお気に入りの曲はありますか?
吉永:エンディングの曲は好きですね。ゲーム中のものはどれも好きですけど。
幡谷:今回力を入れているのは、「メキシカン・フライヤー」のビッグバンド完全版ですね。もちろん、パインのテーマ、パージのテーマ完全版もしっかり作り込んであります。それと、銀河一リミックスは、3人のウェーブマスターの仲間にやってもらいました。”銀河一リミックス[hype the force]”は、『PSO』とか『サカつく』の曲を作った人が担当したんですけど、『サカつく』の応援歌エディットシステムを大々的に使って合唱を入れたりしています。”もっとストロボアクション”は『Rez』で曲を書いている杉山君が担当しています。これなんかも好きですね。
――ところで「Vol.チュウ!」の最後の曲に、ヒットメーカーの光吉さんが参加していますが。
幡谷:最初、彼に頼んでエンディングテーマの仮歌を録ってもらったんですよ。それの評判がよかったんで、サントラに入れられないかと思ってアレンジして収録してあります。それと「pala paya」っていうのは前作のエンディングテーマなんですけど、これをウェーブマスターのメンバーが実際にライブをしてきてくれて、それを録音したものなんです。それをスペースラウンジ2階でやったという設定にして。この曲が今までの悪ふざけを水に流してくれる、素晴らしいものになりましたね。
吉永:「ありがとうございました」っていう感じが出ましたね。最後の曲で。
――さわやかおしゃれという感じですね。
吉永:その前にお風呂対決とかして、そんな声のあとにね……。

サウンドクリエイター目指している人に幡谷氏からひとこと

――話は変わりますが、電撃王はクリエイター志望の人も読んでいるのですが、現在サウンドクリエイターってすごく狭き門ですよね。
幡谷:あまり募集しないですからね。
――5,000倍という倍率もザラと言われるサウンドクリエイター志望の人たちに、何かアドバイスをいただけますでしょうか。
幡谷:僕も、サウンド志望で届くデモテープを聴いたり、面接したりしてますけど、確かにここ何年かは新卒の採用はしていないです。ものすごい数の応募が来ますけど、その中で僕らの望むような人は少ないのが現状です。機材がリーズナブルになっているので、技術的にはきちんとした曲が作れるようになったとは思いますけど、大切なのはアイディアです。なぜゲームの音じゃなきゃだめなのか、なぜゲームの音をやりたいのかというのがはっきりしていない人だと、入ってからも苦労すると思うし、違う方向へいっちゃったりすることもありますから。『Rez』で曲を書いた杉山君とはじめとした、ここ5,6年で入ってくる若手はそれぞれアピールポイントをしっかり持っています。杉山君などは自作の楽器まで作ってしまうという、ユニークな考え方を持っているクリエイターですし。それをゲームに置き換えることも柔軟にできるんですよね。『Rez』などはすごく複雑なサウンドですけど、入って1年で見事にこなしたりしてますから、考え方、持っている技術、センスを、音楽やゲームというものにのせていくことができるかできないか。そういうところをうまくアピールできる人は、どこに行っても受け入れられると思います。
――ゲームのサウンドクリエイターは、ゲームを意識しないほうがいいのかなと思っていたのですが。
幡谷:特にゲームをやっている必要はないし、やったことがなくてもいいんですけど。音楽の世界でもやっぱり独創的なアイディア、持っている技術をどう使うかというのがはっきりしている人というのは魅力があります。

――それでは最後に、この2枚のサントラが欲しいと思っている人に向けて、一言ずつお願いします。
幡谷:ゲームを楽しんでいただいた人には、満足できるような内容になっています。不安だったら、どちらか1枚を試しに買って頂いてもOKですね。
――2枚買わないとおもしろさがわからないって言いましょうよ(笑)。
幡谷:そうしたら、2枚組みにしろという話になってしまうので(笑)。
――そういう案はなかったんですか?
幡谷:ありましたが、価格が高くなってしまい、ユーザーが手軽に手を出せなくなってしまうのと、スケジュール的な問題で1枚ずつにしました。このサントラは、それぞれのCDがゲームユーザーの喜ぶような細かい素材をたくさん盛り込んでいます。ウェーブマスター総動員でがんばりましたので、ぜひ聴いていただきたいと思います。それで、ウェーブマスターという、楽しいことをしている会社があるんだと知ってもらえればと思っています。
吉永:ゲームの裏話、例えばプリンと戦う前はどうなっているんだろうとか、ディレクターってふだんはしゃべっていないけど、それ以外の時って何やってるんだろうとか、そういう裏の部分がわかるようになっているので、違う面からゲームを楽しむことができると思います。後はそれぞれが安いので、ぜひ買っていただきたいなと(笑)。

――今日はありがとうございました。

■注1

ちなみにヒューズの声を担当しているのは、『スペチャン1』ディレクターの湯田高志氏。本職声優顔負けの演技力である。

■注2
1980年代後半から90年代初頭に熱狂的なファンを作った伝説的マシン。当時のPCの中ではグラフィックやサウンド性能が群を抜いていた。

■注3
プロデューサーの水口氏も、「溶けていくぅ~」という情けない声を出す「おろおろ先生」としてゲームに出演している。ゲーム中で出会ったら、ぜひとも助けてさしあげよう。

幡谷尚史 氏
 ウェーブマスター所属。『チャンネル5』シリーズを手がけるサウンドクリエイター。ゲームのコンセプトである「レトロフューチャー」をサウンド面で見事に表現した。
 代表作は『NiGHTS』(セガ)、『ROOMMANIA#203』(セガ)。
吉永匠 氏

 ユナイテッド・ゲーム・アーティスツ所属。『スペースチャンネル5 Part2』ゲームデザインディレクター。計算し尽くされた味付けをゲームに盛り込み、ハイレベルな「楽しさ」をプレイヤーに提供する。サントラではドラマのネタ出しや歌の歌詞などを担当した。ちなみにかなりの「本の虫」とのこと。


『スペースチャンネル5 パート2』
サウンドトラックデータ
『スペースチャンネル5 パート2 サウンドトラック ボリューム「チュー!!」』
■発売元:マーベラスエンターテイメント
■発売日:2002年4月10日(発売中)
■価格:2,100円
■品番:MJCG-80091
『スペースチャンネル5 パート2 サウンドトラック ボリューム「ヘイ!!」』
■発売元:マーベラスエンターテイメント
■発売日:2002年4月24日
■価格:2,100円
■品番:MJCG-80091-92