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ファンも驚くほどのやり込み要素が満載されたPS2版『バーチャファイター4』(以下、『VF4』)。充実度120%の本作は、どのようにして制作されたのか? その答えを探るべく、マスターアップ直前の昨年末、『VF4』の生みの親である鈴木裕氏と片岡洋氏にインタビューを敢行! 開発時に秘められた真実が明らかになる!!
【この記事は、電撃プレイステーションVol.199に掲載された文章を、加筆・修正したものです】

PS2版はSEGA-AM2の最優先プロジェクト

――先日、実際にPS2版をプレイしてみて、その移植度の高さに驚いたのですが、今回はまったく新しいハードであるPS2への移植ということもあり、やはり苦労された点は多かったのではないでしょうか?
鈴木裕氏(以下敬称略):
確かにスペックがかなり自由なアーケードの基板から家庭用機への移植は、毎回苦労しますが、PS2だから特別に苦労した、という部分はありません。アーケードゲームの開発もいわば毎回新しいハードで開発するようなものですから。とはいえ今回は、SEGA-AM2のPS2参入第1弾ということで、恥ずかしいものにはしたくない、という気持ちはありました。
――PS2版の開発がスタートしたのはいつ頃だったのでしょうか?
片岡洋氏(以下敬称略):アーケード版を開発している傍ら、PS2の基礎研究を約1年前から始めていました。アーケード版の開発が終了した後、総動員でPS2版の開発をスタートさせました。
――ということは、ほぼ半年間での移植になりますね。
片岡:道理でスケジュールがキツイわけだ(笑)。でも現在(2001年12月14日時点)、アーケードの移植だけならほぼ開発度100%の作品として発売できる状態になっています。あとは新たなフィーチャーを可能な限り入れ、120%以上の完成度にしている段階ですね。とにかくスタッフの熱意がすごくて、「もういいよ」って言ってもまだ何か入れてます(笑)。
鈴木:もともとアーケード版の開発スタッフには別のプロジェクトが控えていたのですが、それを変更し、まさにSEGA-AM2の最優先プロジェクトとして制作をしている状態です。
――ちなみにアーケード版は『3』から約5年ぶりの新作となったわけですが、そもそも『4』を作る際のコンセプトは、どのようなものだったのでしょうか?
鈴木:前作の『3』は、地形のアンジュレーション(高低差)などの新機軸を導入することで、かなりチャレンジブルな作品に仕上がったと思っています。この『3』での挑戦が結果的に、プレイヤーが『VF』に求めているものを明らかにしてくれました。それを踏まえたうえで、「『VF』本来のおもしろさとは?」といった本質的な部分から見直して作ったのが『4』なんです。相手が上・中・下段のどれで攻撃してくるのか、という読み合いを重視した形ですね。実際、現在プレイしているユーザーさんの声を聞いてみても、その方向性は間違っていなかったと思います。
――システム以外のコンセプトとしては?
片岡:
僕にとって「タイトルを重ねるごとに最先端の技術を取り入れてきた作品が『VF』である」というイメージがあります。ですから今回の『4』では、全国のアミューズメントスポットをネットワークとカードを使って結ぶ【※1】、ということをやってみたんですが、これもセガだからこそ、『VF』だからこそ、うまくいったシステムではないかと考えています。
――確かに、絶対的な戦績が残るという意味で、カードシステムは『VF』ファンの求道的なプレイスタイルとマッチしましたよね。
鈴木:これまでは自分の戦績がわかりませんでした。それが数字でわかるというのは、スゴイことですよね。「オレはこんなに負けてるのか…」とか(笑)。
――トータルで7,000試合を越えている人を見たことがありますよ。
片岡:今、VF.NETで調べてみたんですが、最多試合数の人は9986試合(12月14日時点)もプレイしていますね。
――ひえー!!
鈴木:もう1万試合ですか……。もしもその人が複数のカードを持っていたら、個人としての総試合数がもっと多いかもしれないと考えると……やはりスゴイなぁ。

トレーニングモードはファンの要望を体現

――そんなアーケード版が現在も絶大な人気を誇るなかで、PS2版はどんな位置付けの作品になると考えていますか?
片岡:例えば現時点では、レースゲームなどでいいタイムをだしても、せいぜいネットで自慢できるぐらいじゃないですか。でもPS2版『VF4』で練習して上達すれば、アーケードでウデを披露できるかもしれない、という期待感がありますよね。家庭とは別に、アーケードという檜舞台が用意されているのが『VF』ですから。
鈴木:初心者がPS2版で練習してから、アーケードという別ステージでデビューする、こういったことはアーケードでの強さがプレイヤーのステイタスとなっている『VF4』だからこそ可能なことだと思っています。
――練習用に用意されたPS2版のトレーニングモードですが、「フリー」「トライアル」「コマンド」の3つの練習法があるなど、今までの家庭用の『VF』とは比較にならないほど充実していますよね。
片岡:ある意味、開発スタッフそれぞれが1プレイヤーですから、自分たち自身が「こんなことができたら……」と考えている部分を反映させて作りました。
――トレーニングモードの画面写真を見てみると、コマンド入力の表示方法が2種類あるようですが?
片岡:数字のタイプは、コマンドの入力タイミングをフレーム数【※2】で表しています。ゲージのほうは、コマンド入力の長さやタイミングを視覚化したものですね。これを見れば、ボタンを同時に押している、いないといった入力のミスを、すぐに把握することができます。
――相手のCPUに任意の技を出させ、その対処法を練習、といったこともできるんでしょうか?
片岡:「フリー」というトレーニング方法で可能です。まずCPUを操作して好きな技を入力し、記録します。そのあと再生すれば、CPUは記録させた技をずっと反復しますので、それをガードしたり避けたりして練習することができます。事実上、自分で入力できる技は、すべてCPUに再現させることが可能です。

PS2版はとにかく自由に楽しめる!

――ほかのモードとは少し方向性が異なる「A.I.システムモード」は、どういった意図で収録されたのですか?
片岡:A.I.に似たシステムは、実は『VF2』の時も入っていました。それを仕込んだプログラマーが、それをもっと発展させたいということで、今回オリジナルモードとして入ることになりました。
鈴木:1作目の時にもキャラクターを操作しないで自動で闘わせる実験をしたことがあります。今回のA.I.も、アクション性よりも思考型の遊びとして楽しめる、というのがPS2版のおもしろさの1つだと思います。
――ちなみに、A.I.キャラで段位【※3】を上げることは可能でしょうか?
片岡:ええ、「KUMITEモード」に出場させれば段位を上げることも可能です。自分よりもA.I.キャラの方が段位が上になる、といったこともありうるかもしれません(笑)。
鈴木:「KUMITEモード」で戦っている自分のA.I.キャラを応援するのは、かなり燃えます。期待してください。
――あと、リプレイデータのキャラの動きを、A.I.キャラに学習させることが可能ですよね。
片岡:「ARCADE」「KUMITE」「VS」の3つのモードで記録したリプレイデータを使って、学習させることができます。ちなみに、ほかのプレイヤーが記録したリプレイデータからでも学習可能です。
鈴木:たとえば、現在開催している「格闘新世紀」【※4】の決勝戦がリプレイデータになったら、かなり貴重なデータになります。PS2版の発売後は、リプレイデータの交換などで新たなコミュニケーションが生まれるとうれしいですね。
――ちなみにA.I.キャラはどこまで強くなるのですか?
片岡:実は僕自身、A.I.キャラがどこまで強くなるか見当もつかないのですが……(笑)。でも単に強いキャラを作るだけでなく、個性的なA.Iキャラを育成し、メモリーカード2を持ち寄って対戦してほしいです。
――PS2版には、ほかにもアイテム収集【※5】など、1人で楽しめるが充実していますが、これは開発の当初から意識されていたことなのでしょうか?
片岡:ええ、コアな『VF4』ファンは、もちろん練習して強くなるのが最大の目的だと思いますが、なかにはいきなり対戦についていけない人もいると思います。そういった人たちにも『VF4』の駆け引きを楽しんでもらいたい、という気持ちは大きいです。
鈴木:もちろんPS2版で練習してアーケードに参戦してもらえると、開発者としてはとてもうれしいです。しかし一方で、それにとらわれない自由な楽しみ方ができるのも本作の大きな特徴だと思います。
――それでは最後に、お2人が考える『VF』シリーズの魅力をお聞かせください。
片岡:『VF』というものは、もはやスポーツだと思います。「九州に強いプレイヤーがいる!」と聞くと、飛行機で遠征に行く人もいますし(笑)。あくまで"キャラの強さ"ではなく"プレイヤーの強さ"がクローズアップされる。そこがおもしろさだと感じますね。
鈴木:いわば、鉄人28号よりも操縦している正太郎くんが注目されるという(笑)。実際に『VF4』をプレイしていると、画面上の動きを見ているだけで「これはアイツだ」とわかってしまうことは多いですよね。そのようにプレイヤーの個性が反映されるのが、『VF』シリーズならではの魅力なのではないでしょうか。

鈴木裕氏プロフィール
株式会社SEGA-AM2
代表取締役
最高開発責任者(CTO)
AM2事業部長


『VF』の全シリーズを手掛ける。
『スペースハリアー』『アウトラン』をはじめ、大型筐体や3D・CGを駆使した斬新なアーケード作品を次々と生み出してきたトップクリエーターである。家庭用では『シェンムー』シリーズを開発。
片岡洋氏プロフィール

株式会社SEGA-AM2
企画開発部 部長


 アーケード版では主にVF.NETの開発を担当し、PS2版では開発全体の指揮をとっているディレクター。マスターアップを目前にして多忙な毎日を送っている。代表作は『ファイティングバイパーズ』『ファイティングバイパーズ2』『アウトトリガー』など。

『バーチャファイター4』データ
■メーカー:セガ
■対応機種:PS2
■発売日:2002年1月31日
■価格:6,800
Original Game (C)SEGA
(C)SEGA-AM2/SEGA,2001,2002

キーワード解説

【※1】キャラクターカードとVF.NET 
 アーケード版『VF4』では、キャラクターカードを筐体に挿入することでVF.NETに戦績を記録することができる。そのほかにも、全国のプレイヤーの段位のチェックや、自分のリングネームの設定、友人とのチームの設定などが可能だ。ちなみにカードは1キャラにつき1枚なので、複数のキャラでプレイする場合は、カードを複数枚持ってプレイするのが一般的である。

【※2】フレーム数
『VF2』以降、各キャラの技の発生時間や硬直時間は、すべてフレーム単位(1フレームは60分の1秒)で構成されている。コアなプレイヤーの中には、技の発生フレーム数やガードされたときの硬直フレーム数を計算して戦略を組み立てている人もおり、高度な対戦では非常に重要な意味を持っている。

【※3】『VF4』の段位
 アーケード版の段位は、下から順に十級~一級~初段~十段の20段階と、最高位である小覇王、覇王の2つがある。片岡氏によると開発当初、トップ2である小覇王と覇王は、その条件の厳しさ(高段位のプレイヤーに連勝し続ける)から、誰もなれないのではないかと危惧されていたらしい。しかし、稼動開始から約半年が過ぎた現在、小覇王や覇王の称号を持つプレイヤーはかなりの数にのぼっており、非常に驚いているとのこと。これは全国で高段位のプレイヤーたちが、日夜激しい昇格・降格バトルを繰り広げていることが要因であることは間違いない。

【※4】セガ・オフィシャル大会「格闘新世紀」
 セガ主催の『VF4』の全国大会。すでに店舗予選は終了しており、1月5~20日までの間、店舗予選を勝ち抜いたプレイヤーたちによるエリア大会が開催されている。決勝大会は2月3日に東京「Zepp Tokyo」で開催予定だ。有名・無名を問わず実力者たちが集まる決勝大会は、かなりハイレベルなものになること確実。A.I.キャラ育成の参考のためにも、機会があればぜひ観戦してほしい(大会の詳細はhttp://www.sega-am2.co.jp/を参照)。

【※5】アイテム収集
 PS2版に収録された各キャラの装備アイテムの収集は、アーケード版でも大きな楽しみの1つ。各アイテムには出現条件が設定されているため、コンプリートすることはかなり難しい。とくに100連勝記念アイテムなどのレアなデータが記録されたカードはそれだけで価値が高く、実際に某有名ネットオークションで取り引きされたこともあった。またなかには、友人に協力してもらってアイテムを収集しているコレクターもいる。ちなみにPS2版では、対戦と組み手モードでアイテムを入手可能だ。