電撃ドットコム > 電撃オンライン > レビュー > 『ワンダと巨像』

◇ レビュー ◇
電撃オンライン編集部がオススメするソフトを個性的なレビュアーがアツく語ります!
タイトル
ワンダと巨像
レビュアー
ヒビキタケル

今までにありそうでなかった! 巨大な敵につかまりながら
弱点を探して倒すスペクタル巨編!!

 丘の上に立つと急に辺りが暗くなった。日がかげったのではなく、巨大な何かが青年を覆うように影を落としたのだ。影を追うように“何か”を見上げた青年は、そのまま硬直して動けなくなった。身長は青年の5倍はある。牛によく似た顔にはサファイアのように青く輝く巨大な目が埋まっていた。体中が硬い体毛で覆われており、頭部には折れた2本の角が生えている。茶褐色の体毛からところどころのぞく筋肉は、丸太のように太く、力強い。そしてなにより目を引くのが、その右手に握られた棍棒だ。巨石を切り抜いて作られたような無骨で原始的な武器。しかし、サイズは巨像に合わせたものになっており、その破壊力は一撃で青年の全身を粉々に砕いてしまうだろう。(メディアワークス発行 電撃「マ)王創刊号P49より一部抜粋したものを改訂)

 上の文章は現在発売中の電撃「マ)王で、『ワンダと巨像(以下、ワンダ)』の紹介を小説の形式で書き綴ったものを一部改訂したもの。オンラインのレビューでは写真を使わないので、ちょっと流用させてもらっちゃった。ま、元を書いたのはオレだしね。続きが気になる人は電撃「マ)王をぜひ! おっと、話がちょいとズレたな。ようするに『ワンダ』は、こんな風にでっかい巨像に1人で(馬もいるけど)立ち向かっていくA・AVGだ。「巨大な敵と戦う」ゲームなら今までにも数多く出ているけど、その敵ってあくまで「見た目のインパクト」を重視したものであって「巨大であること」自体にとくに意味はなかった。そしておそらく「巨大な敵と戦う」ことに意味を持たせた最初の作品が『ワンダ』だと思う。そういう意味では、ゲーム史の新しい1ページを切り開いた作品ともいえるね。『ワンダ』を開発したのは幻想的な風景と“手をつなぐ”システムで、世界中で高い評価を受けたAVG『ICO』のチーム。彼らが4年の歳月をかけて作り上げたという、まさに入魂のA・AVGだ。秋葉原に巨大な看板が立ったり、印象的なCMが流れたりと宣伝もたくさん行われているので、気になっている人も多いんじゃないかな? かくいうオレも『ICO』が大
好きで『ワンダ』の発売を心待ちにしていた1人。電撃PSと電撃PS2、電撃「マ)王と紹介記事を担当したけど、それぞれ異なるアプローチから記事を作っている。今までにないゲームだからこそ、今までにない紹介記事を作らなくっちゃ! と気合入りまくりで仕事をさせてもらった。そんな担当ライターがベタボレしちゃう『ワンダ』。もちろん、このレビューでもその魅力をガッツリと語っちゃうよ!

●透明感のある青い空! 果てしなく広がる草原!
 絵本のような世界がプレイヤーの冒険心をくすぐる!!
 ゲーム画面を見ればひと目でわかると思うけど、幻想的でかつリアリティのある不思議な風景は、誰もが心を奪われる美しさがある。これは前作である『ICO』の世界観を踏襲しているといってもいいね。世界はすべてシームレスにつながっていて、ほとんどの場所がゲームスタート時に行くことができる。巨像を倒さずに馬に乗って世界を探索するというのも楽しみの1つ。木になっている果実を採ると体力の最大値がアップしたり、トカゲを倒して光る尻尾を取ると腕力メーターが上がるといった要素もある。巨像を倒すのに詰まったら、気分転換をかねて果実やトカゲを探してみるのもいいね。個人的には段差を馬で飛び越えたり、海岸線を馬で走るのが好き。あと、断崖絶壁に登って、そこから飛び込んでみたりとか。あまり高いところから落ちると死ぬけど(笑)。高いところから落ちたときに下腹部が「キュ~ッ」となる感じがじつにいい。男なら「キン○マ袋が縮み上がる感じ」というのが一番わかりやすいな。女の子に聞いてみたら、やっぱり下腹部のあのあたりが「キュ~ッ」となるらしい。どうでもいい話だけど、あの感覚が好きな人は結構いるハズ。こんな楽しみ方ができるのもグラフィックが生み出す圧倒的なリアリティがあるからこそだ。

●剣を太陽にかざして巨像を捜す!
  馬を飛ばしたり、崖を登ってみたり!

 ゲームの基本的な流れは(1)巨像を捜す→(2)巨像の弱点を探す→(3)弱点まで行ける状態にする→(4)弱点を攻撃して倒す……を繰り返して進む。巨像を探すには主人公のワンダが持っている剣を太陽がある場所で掲げると、太陽の光を反射した光が出現する。この光を左スティックで調整して1本に集まったところが目指す巨像のいる方向。位置がピッタリ合うとブルッと振動するのでそこを目安にするといい。

 あとは巨像を目指して進むんだけど、フィールドがものすっごい広いので歩いてたどりつくのはまず無理。そんなわけで愛馬のアグロに乗って移動するのだけど、このアグロの動きがまたリアルなんだな。常に行動をともにしているだけあって、だんだんと愛着が沸いてくるしね。アグロに乗っているときや、そばにいるときに何も装備していない状態で○ボタンを押すとアグロをナデナデできるのもいい。そんな風にアグロをときどきいたわってやりつつ、剣で方向を確認して巨像探しに向かう。途中に敵が出てきたり、ほかの人に話を聞くということがないので巨像のもとへ一直線に向かえる。

 もちろん、途中には迂回しなくてはいけないところや馬ではいけない場所もあって、そこではジャンプやつかまるといったアクションを駆使していく。といっても、ほとんど障害はないといってもいいレベル。『ICO』にあったような仕掛けを期待していたオレは、ちょっと拍子抜けしちゃった。でも、謎解きの要素はすべて巨像との戦いに集約されていて、そのことに気がついてからは移動時は「景色や雰囲気を楽しむもの」と割り切ってプレイしていたよ。

●おいおい、こんなヤツどう倒せっていうんだよ!
  と叫びたくなる個性的な巨像たち

 いよいよ巨像とのご対面となるわけだが、実際に目の当たりにするとそのデカさに度肝を抜かれると思う。巨像の種類も二足歩行や四足歩行するタイプだけでなく、空を飛んだり湖に住む巨像もいたりとバリエーションが豊富。新しい巨像と出会うたびに「コイツ、どうやって倒すんだよ!」と心の中でツッコミつつ「さて、どうやって倒すかなぁ~?」とひとりごちる。巨像を前にしてビビると同時にワクワクするこの感覚は、ほかのゲームじゃなかなか味わえない。言ってみれば推理小説で殺人事件が起こったときのような「衝撃と謎の提示」がある。

●巨像の攻撃をかわしながら体を登れ!
  そして巨像に仕掛けられた謎を解け!

 さてさて、この巨像。とにかくデカイだけじゃなくてメチャメチャカタイ。体毛のある場所は剣を刺したり、弓で攻撃したりできるけど蚊が刺した程度にしかダメージを与えられないのだ。そんなわけで、巨像を倒すには体のどこかにある弱点を探し出して攻撃しなくてはいけない。弱点は巨像に向けて剣の光を反射させたり、剣を持った状態で弱点に近づくと発見でき、青白い光が紋章のように浮かび上がって表示される。巨像によっては複数の弱点があることもあるけど、だいたい1つは頭にあることが多いかな。ようするに簡単にいける場所にはないわけだ。で、弱点がわかったら、次にそこに行くまでのルートや方法を探す。これが前述した「巨像に仕掛けられた謎」を解くことになる。基本的には巨像の体毛や体についている突起物などを利用して巨像を登って弱点を目指すのだが、それだけではうまくたどりつけない場合が多い。そこで周囲のものを利用したり、仕掛けをうまく発動させたりして弱点にたどりつく方法を探すのだ。また、巨像の顔に矢を当てて巨像を怒らせ、誘導するのもポイント。弱点に行くための方法がわかった瞬間というのは、パズルを解いたときにも似た興奮を味わえる。巨像ごとに倒し方が違うし、なかには複数のパターンで倒すことができる巨像がいるのもいい。

 しかし、登られるほうの巨像だっておとなしくしているわけじゃない。巨体に近づこうものなら武器で攻撃してきたり、足で踏みつぶそうとしてきたりする。巨像は体がデカイから、その動きは緩慢なヤツが多いけど、攻撃を受けたときのダメージはハンパじゃない。というか「ヘタすると即死! ヘタしなくても瀕死!」ぐらいのダメージを受ける。でもま、あれだけ個体差があれば、それも納得できる感じなんだよね。もしも死んでしまった場合でも、リトライを選べばすぐに巨像戦から再スタートできるのも親切。初めてプレイしたときは最初の巨像に踏まれて死んだり、巨大な棍棒で殴られて死んだりと、もう大変だった。今ではもう、すっかり慣れて攻撃をギリギリでかわしたりする「魅せる」プレイができる余裕が生まれたけどね。

 無事にルートや方法を見つけたとしても、巨像はワンダを振り落とそうと激しく抵抗する。これがまたスゴイ揺さぶられっぷり! R1ボタンを押している間はつかまることができるんだけど、つかまっている状態では腕力メーターが徐々に減少していく。腕力メーターが尽きると手を離して落ちてしまうので、このあたりの攻防もスリリングでいい。カメラワークも絶妙で、まるで映画のワンシーンのような迫力だ。この美しくも激しい攻防は自分でプレイしているのにもかかわらず、思わずみとれてしまう。ほかの人がプレイしているのを眺めているのも結構楽しいので、友人を家に呼んだときの接待用ソフトとしても、『ワンダ』はオススメできるね。

●巨像の弱点に剣を突き刺して攻撃!
  タメ攻撃で大ダメージを与えてトドメを刺せ!

 弱点までたどりついたら、巨像の体に剣を突き刺す。つかまった状態で□ボタンを押すと剣を振り上げ、もう1度□ボタンで剣を突き刺せる。剣を振り上げたときに、腕力メーターの内側から外側にかけて光が広がっていく。光が腕力メーターの一番外側にきたあとに□ボタンを押すとさらに大ダメージを与えられる。でも、巨像に揺さぶられるとタメ状態がキャンセルされてしまうので要注意。巨像の動きを見ながら、ギリギリのところで剣を刺す。この駆け引きが熱い。
 そして最大の見どころが、剣を刺したところから噴水のように勢いよく黒い煙! 「ブッシュゥゥゥゥゥ」と勢いよく噴き出します。この噴水が出るとこれまで守勢に回っていたのが一気に攻勢に転換した感じがして、じつに気持ちいい! まさに至福の瞬間。徐々に減っていく腕力を見てもう1回刺すか、安全な場所に1度引き返すかの瀬戸際のドキドキ感もたまらないものがある。弱点が複数ある巨像の場合は、同じ弱点にある程度ダメージを与えると弱点が消えてしまう。そうしたら次の弱点を探し、最終的に巨像の体力メーターを0にすれば巨像を倒せる。こうして巨像を捜して倒すことを繰り返して物語が進む。物語は言葉ではなく表情で語るシーンが非常に多い。ワンダは死んでしまった少女を生き返らせるために巨像を倒していくことになるんだけど、表情だけでも「ひたむきさ」や「まっすぐな気持ち」がよく伝わって好感が持てる。

●徹底したこだわりが『ワンダ』の楽しさを彩る!
  こんなところにも注目してくれ!

 『ワンダ』をプレイしてかなり気に入っている部分がBGM。巨像を捜す移動の場面では風の音や鳥の鳴き声などの環境音がメインなんだけど、巨像に遭遇した瞬間に重低音の聞いた勇壮な音楽に変わる。それもワンパターンではなく、巨像によって数種類のパターンが用意されているのだ。で、弱点にたどりついたときや体に登ったときにもBGMが変わる。これがまた、映画みたいな演出でカッコイイのだ。BGM自体のデキもよく、耳に長いこと残る。オレなんか、朝起きて頭の中に『ワンダ』のBGMが流れ出してきたことがあるくらい。12月7日にはサウンドトラックが発売されるから、それも楽しみだ。

 そのほかには『ICO』でもあった2周目以降のやり込み要素。ネタバレになるのでここでは書かないけど、『ワンダ』では『ICO』以上に用意されている。1周目とはちょっと違った遊び方もできるので、ぜひ2周目以降もプレイしてほしい!

●10年に1本出るか出ないかの名作!
  これはゲームの歴史で語り継がれていくべき作品だ!

 圧倒的に大きさを誇る巨像と戦いや抜群のカメラワーク、そして作品全体にただようせつない雰囲気。『ワンダ』はここまで語ってきたように、ゲームの歴史を塗り替える画期的な作品だとオレは断言する。前作『ICO』とはゲーム性そのものが違うものだけど『ICO』同様に何年経っても語り継がれていくべき作品だ。

 とはいえ、気になったところもないわけではない。巨像の種類はかなりあるとはいえ、クリアにかかる時間がファーストプレイでも10時間前後と短い。何周もプレイさせる魅力はあるが、一度倒した巨像は倒し方がわかってしまっているので新鮮さはどうしても薄れてしまう。巨像の数を増やすか、同じ巨像でも倒す方法がもっとたくさんあるとよかったかも。それとカメラワークはかなり自然でオレは全然酔わなかったけど、3D酔いする人にはそれでも酔ってしまう人がいた。視点のカッコよさや迫力を重視するあまり、ワンダ自身の位置が把握しにくい場面もある。

 だけど、これらの不満点も本当に細かい部分であり、オレはここ数週間すっかり『ワンダ』漬けになってしまった。ゲームの難易度もそれほど高いわけではないく、巨像との戦いである程度時間が経つとヒントを教えてくれたりするなど、親切で丁寧に作りこまれている。巨像と戦う映像が気になった人なら買って損なし! 普段はあまりゲームで遊ばない人にも、この世界観と興奮はぜひ味わって欲しい。

 
 
画面写真

レビュアー紹介

ヒビキタケル
 SPGやACTなど、人と対戦できるゲームが大好き。『マーセナリーズ』のような自由度の高い作品や、『Killer7』みたいな個性的なゲームも好む。レビューではゲーム性はもちろん、読み込み時間などのテンポのよさを重視して評価する。


●好きなゲーム
『パワプロ』シリーズ
『パワースマッシュ2』
『WE』シリーズ
『ピュ~と吹く!ジャ
ガー 明日のジャンプ』
『ルミネス』
『Killer7』
『マーセナリーズ』
『ワンダと巨像』


ワンダと巨像
パッケージ写真
●機種:PS2
●メーカー:SCE
●ジャンル:A・AVG
●価格:7,140円(税込)
●発売日:2005年10月27日

(C)2005 Sony Computer Entertainment Inc.

■ソフト紹介ページ

今すぐ購入!