電撃ドットコム > 電撃オンライン > レビュー > 『ファイナルファンタジーXII』

◇ レビュー ◇
電撃オンライン編集部がオススメするソフトを個性的なレビュアーがアツく語ります!
タイトル
ファイナルファンタジーXII
レビュアー
かわち山田

完成度と作り込まれた世界観&イベントは
4年待った甲斐はあると思えるほどのボリュームです!

 いやぁ、5年以上の年月を経て、ついに発売されました『ファイナルファンタジー XII(以下、FFXII』。さすが長い歳月をかけて開発されただけあって、映像面、システム、ボリュームなどすべてにおいて、恐ろしい完成度となっております。特にボリュームについてはかなりスゴい。私のクリア時間は、いろいろ脇道にそれたものの、110時間超という『ドラクエVII』以来の100時間オーバーのRPGでした。しかも、やらされている感はなく、先が知りたくて頑張って進めていって、この時間。レベル上げとかも少ししましたが、それでもダレることは少なかった。100時間以上もプレイヤーのモチベーションを保てるのは正直スゴいというのが、個人的印象。まぁ、そんなワケで、『FFXII』のシステム面とストーリーについて、レビューしていきたいと思います。映像面はキレイ、スゴいとしか言えないので省略します。あしからず。

●戦闘:次世代のスタンダードとなってほしいシームレスバトル
 たぶん、『FFXII』のもっとも注目すべきかつ、説明しなくてはいけない点が戦闘システムでしょう。ぶっちゃけ、説明しても理解できないと思いますので、プレイして理解してもらいたいんですけどね、これだけは。今作での戦闘は、エンカウント(画面切り替え)をせずに、移動するフィールドで行われる。最近、ゲーム業界でハヤリのシームレスというモノですね。プレイ前は「だから何?」とか思っていたのですが、プレイしてみると、フィールドと戦闘マップの切り替えがないということは、これまでと全然違うじゃんと、骨身にしみてます。コマンドを選んで行動するという基本システムに変化はないのですが、「戦闘時の移動」と「フィールド上の全ての敵が相手」、「地形」という、さまざまな要素が加わったことで、戦闘が奥深いものになってます。もちろん、時間の概念もあるので、リアルタイムで判断すべき要素が増えて自由度が広がった反面、複雑になって、システムを理解するのに時間がかかってしまう原因になってますが。ま、それは少しプレイすれば理解できるとは思いますけど、ちょっと難しい。また、よく戦闘時に専用のBGMがないという不満の声が聞こえてきますが、確かにほのぼのとしたBGMで戦闘というのはアレですが、音楽が変わらないという点は、個人的にはそれほど気にならなかったですけどね。むしろ、戦闘状態になって武器を持つ(抜き構える)際に、少しタイムラグがある方が気になったかな。フィールドにいる際は常に抜刀状態でもよかったのでは……などと、思ってしまう部分は少々ありましたが、それでもかなりプレイしやすく、将来性のある戦闘システムではあります。というか、もうこの戦闘に慣れてしまうと、従来のランダムエンカウントのRPGには戻れないと断言できる。仕事でほかのRPGをプレイした際、そう確信しました。次世代RPGの1つのスタンダードなシステムになるでしょう。っていうか、なってほしい。そんな感じです。

●ガンビット:プレイヤーがAIを設定できる便利なシステム
 リアルタイムかつ、キャラの移動など、やることの多い『FFXII』の戦闘。はっきり言って、1人で3人のキャラを操作して戦闘するのは、かなり大変。そこで、便利なのが「ガンビット」。これは、仲間の行動を事前に設定しておく、AI設定みたいなもの。そう書くとめんどくさそうですが、「対象」と「行動」を決めるだけなので、かなり簡単。使い方によっては、「仲間を突っ込ませて、自分は回復役」、逆に「自分が突っ込んで仲間を回復役にする」、「全員ガンビットで楽々戦闘」などと、自分のプレイスタイルにあわせられるのがポイント。主人公にもガンビット設定可能なので、プレイヤーは移動だけとかもできるのです。ちなみに、私は主人公は自分で操作し、仲間は回復と普通に戦うというシンプルな設定にしていました。自分である程度介入できないと、イヤなタイプなので、こんな設定。でも、編集部では全員ガンビットで適当に戦闘というのが多いようです。ま、先に述べたとおり、プレイスタイルでいろいろできるわけで、かなり優秀なシステムかと。賢いし、とても便利だし、どう設定するかパズル的な要素もあって、奥が深いし。突き詰めれば、スゴい便利になるかも。個人的には突き詰める気はないけどね。

●クラン&モブ:サブイベント的な戦闘でやり込み要素満載!!
 『FFXII』で、本編そっちのけでハマってしまうのが、クランで受けられる「モブ」でしょう。クランというのはハンターの組織で、そこで受けられるのがモブ。これは何かの略語らしいですが……説明は割愛します。簡単に言ってしまうと、討伐依頼の出ているモンスターを探し出して倒すというもの。モンスターの種類はいろいろなのですが、「出現する条件を考える」、「いろいろ試して倒す」という、攻略的要素があって、これだけで楽しい。例えるなら「モンスターハンター」的なのかな。プレイしたことないので知らんけど。また、モブを倒すことで、それに関係してくるNPCとのイベントにも繋がり、それが新たなモブの依頼が発生したり、召喚獣など、隠し要素的なことが起きてくるわけです。言い忘れてましたが、このゲームは細かいイベントがむちゃくちゃ多いんです。それがモブに関係するのか、召喚獣なのか、はたまたそれ以外なのか、もうね、探して進めるのが大変。やんなくてもいいんだけど、気になるし、やっちゃうでしょ。モブの数もかなり多く、本編のボスなんかよりも強くて、恐ろしいモンスターもいたりして、これだけでも普通のタイトル1本分なんじゃ……なんて思ったり、思わなかったり。つまりやり込み要素満載の原因の1つです。

●ライセンス:「開けたい!」という欲求を刺激する成長システム
 過去のシリーズでは、パーティキャラに個性がある場合、能力もキャラごとに個性を付けられていたことが多かった。しかし、今回はライセンスボードというシステムにより、全員が同じ能力を習得できるというスタイルになってます。このライセンスというのは、戦闘で得られるポイントを使って、チェス盤風のボード上に設定された能力を開けていくもので、全員のボードに設定された能力はすべて同じ。このパネルには、装備品や使用魔法なども設定されており、そのパネルを開けることで使用可能となる仕組み。ある意味、『FFX』のスフィア板に近いのですが、全員同じ能力を得られるという点では、『FFV』のジョブシステムに近いかもしれません。基本的なステータスは、それぞれのキャラごとに違うものの、その違いが微妙なので、好きなキャラを育てられる点ではプレイヤーには優しいシステムかも。パーティキャラが6人なのですが、過去作品のように、2つのチームに分かれて行動するというイベントもないので、好きなキャラだけ育てるというのもオツなもの。ちなみに、私はヴァンとフランとパンネロ、バルフレアという4人をメインに育ててました。アーシェは本編クリア時点でレベル21(メインキャラは50台後半)だし。ただ、個性が欲しいという人や、どう育てていいか悩むプレイヤーには、ちょっと自由度の高すぎるシステムかも。

●ストーリー:RPGの王道は『FF』らしい展開!?
 ひと言で表現するならば、王道。バリバリの王道。勧善懲悪とまでは言えないかもしれないですが、力で覇王を目指す悪そうな帝国を倒しにいくというもので、日本のRPGでは王道でしょ。帝国は完全な悪者ではないですけどね。そんな王道な物語を、松野ファンと『FF』ファンという2つの視点で考察していきたいと思います。考察というほど、崇高なものじゃないけど。

【松野ファンの視点:たまには、さわやかな展開もいいかも!?】
『オウガ』シリーズはもちろん、『ベイグラントストーリー』などもプレイしているため、たぶん松野ファンといってもいいと思うので、その視点で語りますと、世界観を共有する『ファイナルファンタジータクティクス(以下、FFT)』や『FFTアドバンス(GBA)』をプレイしたユーザーならば、いい意味で裏切られるでしょう。松野節というか、松野氏独特のドロドロした人間関係や政局の展開は少ない。これを、どう捉えるかで評価は変わってくるでしょう。そもそも、ライトユーザーの多い『FF』シリーズで、『FFT』のように親友に裏切られたり、その親友が好きな女性に刺されしまったり、主人公が行方不明になったり……そんな展開が許されるハズがない。でも、そんなダークな展開が、(私を含めた一部の)松野ファンの期待するものでもあったりするワケで。で、そんな展開を期待するのが、1週間で170本万以上も売れたゲームの何%のユーザーなのかということを考えれば、今回の王道路線は当たり前なのでしょうね。と納得してます。そもそもダークな展開を望んでいるのか、松野ファンは? とか、葛藤してみたり……。持つ者と持たざる者を意識させる批判的なセリフだったり、街の造りだったりと、“らしさ”は所々で感じることできますけどね。ま、こういうのもアリでしょ。

【FFファンの視点:昔のシリーズっぽさと、集大成的な雰囲気が……】
 『FF』ファンとか自称していいのかわかりませんが(『FFXI』以外の全シリーズ、『ミスティッククエスト』や『ファイナルファンタジー・クリスタル クロニクル(FFCC)』などもプレイしております)、その視点で『FFXII』を見てみると、「世界を牛耳ろうとか思ってる変な人がいるので倒しにいくべ!」という展開で、どちらかというと『FFVI』以前のシリーズを彷彿とさせる物語かなぁ。個人的に『FFVII』以降というのは、“自分捜し”といった内面的、精神的な要素が物語のメインにくる印象だったので、今回は原点回帰的な方針だったのかな? という印象です。あくまで個人的印象ですよ。ちなみに「原点回帰は『FFIX』もあるやん!」とかいう意見は聞けませんから。それに、モブや召喚獣になっているのが、『FFT』などをメインにしつつも、『FFI』~『VI』で有名なモンスターやボスなども多くて、シリーズ集大成的な雰囲気もあります。また、主人公よりも脇役が目立つという点でも、『FFV』や『FFVI』に近いと言えるかな。いや、これは意識したんじゃないと思うけど、なんていうか、バルフレア(空賊で銃を構えているの人)が「俺は主人公だからな」とか何度も言ってるし、たぶん彼が主人公なのかも……。なんて納得できるような展開です。ただ、実は、敵となる帝国(というか、皇帝さんたち)のバックにも登場人物が存在して、そんな人たちが突然出てくるという展開かつ、それについての説明も少なく、ちょっと「アンタ誰?」とか戸惑う場面もあったりするのはナニかも……。クリアしても「あれ何だったんだろう?」とか思ってますけど。理解力足りない?

■結論:これほど作りこんだゲームはなかなかないので、プレイしてみては?
 本編、サブイベント、すべてにおいてスゴいボリュームです。そして、しっかり世界観を作り込んでいる。確かに、戦闘システムは慣れるまでに時間がかかるものの、慣れてしまうと逆にこれしか受け入れられない体になるでしょう。そんなゲームです。主人公がちょっと目立ちませんが、物語もサッパリしてますし。時間がかかるといっても、マップ画面に本編における次の目的も表示されるので、サブイベントばっかりやっていて、本編のことを忘れるなんてこともないハズ。カメラ操作が変更できないなどの不満点がないワケではないですが、昨今発売された、もしくは発売されるRPGで、ここまで造りこまれたタイトルはないでしょうから、歯ごたえのあるゲームをしたい人にはオススメですし、プレイして損はないと断言できます。特に『ベイグラントストーリー』好きにはオススメできますよ。同じスタッフですから。細かいところにこだわりが感じられるはずですよ。最後に、なんで『FF』シリーズって、2回目という概念がないのだろうかとか思ってみたり。


 
画面写真

レビュアー紹介

かわち山田
 『FMO』や『DCFFVII』など、なぜか最近、オンラインゲームに関わることが多いです。今まで避けていたのに……。プレイ(レベル上げ)するのがタイヘンで、少し疲れ気味。でも、『SOCOM』だけは別腹です。『3』の日本版発売を首を長くして待っております。SCE様。

●好きなソフト
『ICO』
『FM』シリーズ
『SOCOM』シリーズ


ファイナルファンタジーXII
パッケージ写真
●機種:PS2
●メーカー:スクウェア・エニックス
●ジャンル:RPG
●価格:8,990円(税込)
●発売日:2006年3月16日

(C)2006 SQUARE ENIX CO.,LTD. All Rights Reserved.
CHARACTER DESIGN:Akihiko Yoshida


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