『陰キャラブコメ』は普通の乙女ゲームの主人公では到底見ないキャラ性がすさまじい!【東城咲耶子のおすすめインディーゲーム】

東城咲耶子
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 電撃オンラインユーザーのみなさん、こんにちは! 私、東城咲耶子がひたすらおすすめのインディーゲームをゆるく紹介する“東城咲耶子のおすすめインディーゲーム”第8回です!

 最近、すっかり暑くなってきましたねー。

 まだ初夏だけど、私はすでに暑さに負けてバテバテになっています。弱い……。

 陰の者にとっては、やっぱり夏はおうちでゲームが最強ですな。

 先日、放送された“電撃インディー大賞2023”で視聴者も出演者もザワつかせ、あの日の話題をさらっていった例のゲームはもうプレイしてみましたか?

 まだやっていなくて「なんだったんだ、あれは!?」で止まっている方もいると思うので、ぜひお手に取ってもらいたくこれを書いています。

 というわけで、今回は『陰キャラブコメ』を紹介していきます!

※本記事内にはネタバレを含む要素がありますので、ご注意ください。

『陰キャラブコメ』

 タイトル通り、陰キャたちとラブコメができます!!!

 したくない……!? そんなこと言わずに!

 乙女ゲームをほとんどやらない私でも、3周したらすっかり“陰キャっていいな”に染められつつあります!

 もしかしたら、陰キャという単語を初めて聞く方もいるかもしれないので、一応説明しておきますと“陰気なキャラクター(性格)”の略語です。

 我々オタクが引っ込み思案だったり、インドア派だったり、コミュニケーションが苦手だったりする、自分のそういった性格を指して自虐的に使うことが多いです。

 対義語は陽気なキャラ、すなわち陽キャです。おそろしい生き物。コワイ。

 私もロードバイクみたいな1人で黙々とできるスポーツしかしない、人生ずっとオタクとして生きてきたちょっとばかり陰の者です。ちょっとだけね! 好きな話を語ってるときだけは陽気だよ!?

 この作品の主人公もそんな私と同じくらいの“オタク同士だと饒舌にしゃべられる快活な女子。オタクの中では明るいほう、でも陽キャを前にすると死ぬ”という子です。ものすごくよく分かる。

 ちょっと自分に似ていると感じる女子が多そうな絶妙なキャラ設定で天才。

 そんな彼女が偶然、陽キャの群れに襲われた陰キャを助けたことがきっかけで、大学のゲーム同好会の会長をお願いされてしまいます。

 でもこれは、彼女にとっては願ったり叶ったりの展開。なぜなら彼女は陰キャを愛し愛されたい、オタサーの王になりたい女子だったのです!

 というところから始まる、異色の乙女向け恋愛シミュレーションノベルゲームです。

 よく見る乙女ゲームの攻略対象と言えば、あらゆる属性のキラキラした線の細い男の子たちのイメージ……。

 しかし、これは『陰キャラブコメ』!

 攻略対象は、もちろん陰キャ男子たちのみ! 日ごろならこんなにスポットが当たるはずのないキャラクターたち。

 そんな攻略対象の男の子たちは、ぜんぶで4人います。

 しゃべりが止まらない、止まらないどころかセリフの枠から毎回めちゃくちゃはみ出てくるマシンガントークのカードゲーマー、だいだいくん。

 デートももちろんカードショップ! サイゼ! 牛丼!

 このゲームの看板とも言える、100点満点の完璧な陰キャです。

 そして2人目は、可愛い顔して中身は最悪。台パン上等、引くほど口も態度も悪いゲーマー、Ashくん。私なら耐えられなくて取っ組み合いのケンカになりそうなキャラナンバーワン!

 優しくて穏やかで常識人に見えるけどもちろんそれだけでは終わらない、主人公への愛が重すぎて別ルートにも出張ってくる謎多き陰キャ、つがいさん!

 私的にナンバーワン嫌なタイプの闇を抱えています。

 そして、なぜお前のような者がオタサーにいるんだ……帰ってくれ……という気持ちになる、金髪、ダンス部、チルくさい陽キャのにしむら! まぁでもこのタイトルなので、大体、察しつくよね。

 この4人それぞれにルートがあり、グッドエンドやバッドエンドを目指して仲を深めていくいくわけですが、そもそもそう簡単に恋愛には発展しません。

 一般的な恋愛ゲームならいろいろなイベントが起きて、フラグが乱立して、みんなが主人公に好意を抱き始め「さぁ誰の好感度上げようかなー!」ですが、この作品にはそういったあるあるは通用しません。

 普通にしてたら恋愛対象として見てももらえません。みんなそれよりゲームがしたいから。

 なので、始めに誰を狙うかが選択できます。恋愛ゲームであまり聞いたことない直球さですが、落としたい男子に狙いを定めて全力で押して押して押しまくって、ようやく相手の心を溶かせます。陰キャ、ハードルが高い!

 各エンディングはぜひダウンロードして見ていただくとして、私の面白かったシーンや感想を攻略順に1人ずつ、ほんのり語らせてください。

 まず、だいだいくんとカードショップデートのシーン。あらゆる描写がやたら細かくて、陰キャとしてわかるわかるの嵐で笑いました。

 「私はカードゲームが好きだけど、しない人は絶対ここに連れて行かれても困るよな……」という心配をよそに、全力でオタクの熱に付き合ってくれる主人公!

 陰キャを落としたい心、本物だぁ……!

 あと出てくるカードの絵柄が、キャラクターの絵の上に担当声優のメッセージとサインが金の箔押しで印刷されているやつで「あ、ああ~~!! あるある!!!」とアガりました。

 こ、細かくてさすが。

 Ashくんのルートは、素直になれないAshくんに主人公がグイグイ踏み込んでいくシーンが心に残っています。

 尋常じゃない口の悪さに、理路整然と向き合うメンタルもすごい。陰キャのためならなんでもする女……。

 暴言の中にゲームへの本当の想いを隠していたAshくんの心を、無理やりこじ開けて、打ち明けさせて、背中を押してあげます。

 そんな主人公を嫌いになれないAshくんの気持ち、わかるなー。

 自分も向き合いたくない自分を、こんなにまっすぐ見つめてくれる女子、好きになっちゃうよなー。

 つがいさんは、うっかり口が滑って告白してしまうシーンが最高に刺さりました。か、可愛い。チョロさが一番、乙女ゲームっぽい!

 「一応、乙女ゲーだから、1人くらいは万人ウケしそうなキャラがいるんだなぁ。たしかにオタクじゃなくても、物静かで読書が好きなのも陰と言えば陰かぁ」と思った気持ちを全力で吹き飛ばしていく、展開そのものが衝撃のルートでした。

 唯一、序盤から気にかけてくれて一番好きになったキャラなのに、私はその属性は無理だなーという闇があって……ぐぬぬ……。

 ちょっと見て欲しい。どう思う? 私とつがいさん、どうしたらいいと思う?

 にしむらは、陽キャな見た目と反して“可哀想なのが可愛い”というジャンルで、全編、不穏で「ヒェーーー」でした。泣いちゃう。

 グッドもバッドも可哀想で刺さる人にはエグいくらい刺さりそうだけど、私にはその属性萌えがないので、にしむらと生きるのはちょっと荷が重いかも……。(笑)

 でも、段々と追い詰められていくにしむらの状況や、性格のリアルな“キツさ”がすごくて、作者のじょせふさんの巧みな筆致に引き込まれました。文章うま!

 いろいろ語りましたが、もう1つだけ!

 このゲームの面白さは、ぶっ飛んだ乙女ゲームとしてだけでなく、実は骨太な隠しエンディングにもあります。

 どのルートも基本は、陰キャたちそれぞれに向き合いたくないダサさがあって、主人公がそれらから目を逸らさずいっしょに向き合ってくれることでグッドやバッドに物語が進みます。

 ですが、普通にプレイしているとだいだいくんだけバッドの選択肢が出てきません。

 だいだいくんのバッドが出てきてから、話が一変します。

 「あれ? これただの乙女ゲームじゃないな? なにかおかしいな」と。

 「ゲームだしぜんぶ見ておこう」と、軽い気持ちでバッドエンドを回収したら、主人公の二面性が思ったより激しくて驚いたり、ふとした瞬間のだいだいくんのセリフが妙に刺さったり、その「ん?」と思わせて隠しエンディングに辿りつきたくなる塩梅も絶妙でした。本当に上手いなぁ……。

 一貫して、可哀想な陰キャを救って狂わせて慈しみたいエゴの塊として描かれる、普通の乙女ゲームの主人公では到底見ないキャラクター性がすさまじかったです。

 だいぶ歪んでいるけど、その情熱が隠しエンディングでいきてくるところがアツかったなぁ。

 電撃インディー大賞2023のときは隠しエンディングまで見ていなかったのですが、あのときと今ではまったく感覚が違います。(笑)

 ぜひ隠しエンディングまでたどり着き、そこで待つだいだいくんを見つけてあげてください。

 これだけ語り倒せて、PC版はなんと400円(Android版は500円)です! やっす!!

 この夏、いっしょに陰キャ救おうぜ。

 それでは、みなさんもよいインディーゲームライフを!

  • ▲最近の姫っぽい東城。はべらせるならアルパカがいいな……。

※ゲーム画像はAndroid版のものです。
©じょせふ

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