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2008年9月8日(月)

映画「バイオハザード ディジェネレーション」の小林裕幸プロデューサーを直撃

文:電撃オンライン

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――今回映画をプロデュースするにあたり、苦労した点などありますか?

小林氏:ゲームはプロデューサーは1人なんですが、映画だと何人もいることですね。TVアニメの「デビル メイ クライ」をやった時にも、いろいろな会社さんが入って、複数のプロデューサーと会議なども重ねたという経験があるんですよ。でもその時は、まわりが一歩引いている感じでゲームを作るのと同じだったのですが、今回はソニーピクチャーズさんと「映画としてどうだ」っていう面から話したり、「こっちの方が映画的におもしろくなる」など、さまざまな指摘を受けたので、映画や映像業界のやり方を学べました。共同でやっていくという感じが強かったですね。

――ゲームの制作と映画制作で、ギャップを感じたことはありましたか?

小林氏:最近のゲームは、監督を立てて、脚本を作って、モーションキャプチャして、撮影していくというように、映画のような工程で作っていくのですね。だから制作的なところでは、ギャップを感じて苦労したという部分はそんなになかったです。あるとしたら、作り方ではなく見せ方の違いですね。

――見せ方というのは?

小林氏:ゲームはプレイの間をムービーでつなぐので、映像が飛び飛びになるんですよ。そういう飛び飛びのデモを作るやり方と、映像1本で作品を作るというのは、感覚が違いました。攻略マップを考えなくていいとか、操作性を調整しなくていいというのがなかったので、楽でしたけど(笑)。しかし作品にした時、ノンインタラクティブでお客さんに見せるだけになるので、映像が流れていく中での感情移入のポイントや観客のモチベーションのコントロールなどをガッチリやっていくのは、これまでにはなかったので大変でした。あとは、脚本にもゲーム以上に時間をかけましたね。コンテも長編になるので、ゲームとは違った感じで、ボリュームがありましたよ。

――今回、『バイオハザード2』の7年後ということで、外伝ではなく『バイオハザード』の歴史の中で起きた1つの事件という形になるのですね。

小林氏:外伝には絶対にしたくなかったんですよ。外伝にしちゃうと「外伝なら見なくてもいいや」と思ってしまう人がいるんで、シリーズの間に入ってもおかしくない作品にしようと。ラクーンシティの事件から7年後ということなんで、当然『バイオハザード2』から7年後です。じゃあ『バイオハザード4』の“レオン”は関係ないのか? というとそうではなくて、合衆国のエージェントというのはそのままです。ただし、クレアがかかわってくるということと、ストーリーでカギとなるのが、ラクーンシティでの事件ということなんで、『バイオハザード2』の7年後としています。個人的には、『バイオハザード4』の1年後を描いたつもりです。どちらにしても、ゲームの続編だと思ってもらえれば問題ないです。

――ゲームの世界観を生かした映画ということですが、逆に映画の設定を生かしたゲームの制作というのもあったりするのでしょうか?

小林氏:……今のところはないです(苦笑)。でもそういう要望が出てくれたらいいなと思いますね。「これをゲームで楽しみたい」と感じるくらいの作品だと思ってもらえたということだと思うので。


――先日、コミコンで発表会をされた際に、ファンの方と交流があったということですが。

小林氏:そうなんですよ、初めてアメリカのファンと交流しました。すごく熱烈な人たちでしたね。小さな女の子が顔に包帯を巻いて、さらに小さなチェーンソーのオモチャを持っていたんですが、“レオン”が好きみたいで、彼の映像を見て絶叫していました(笑)。あとは、太っちょの男の子が“レオン”のコスプレしていたり……熱狂的なファンばかりでおもしろかったですね。当然、ネットやアンケートで海外のファンについては知っていたんですが、生で見ていろいろ驚きました。そして、まだまだ『バイオハザード』は元気だなと。

――ファンから直接質問を受けたということですが、どういった質問でしたか?

小林氏:「“エイダ”は出ますか?」とか、「リッカーは出ますか?」とかですね。ゲームファンがたくさん来てくれたので、ゲームよりの質問が意外に多かったです。でもやっぱりゾンビが出た時の反応はよかったですね。ゾンビ好きはたくさんいるんだなと感じました(笑)。

――確かに、日本よりもゾンビ好きは多い気がしますね。本作のターゲットは、どのように考えていますか?

小林氏:基本はゲームの『バイオハザード』ファンです。あとはこういうエンタテインメントの映像が好きな人ですね。でもまずは、『バイオハザード』のファンに喜んでもらえることを考えて作っています。そこは本末転倒にならないようにしつつも、98分の作品なのでシリーズを知らない人でも、さらっと映画館で見て楽しめるようにしたいです。新作映画を見るような気持ちで来ていただきたいですね。

――「バイオハザード ディジェネレーション」の魅力を教えてください。

小林氏:『バイオハザード』はホラーというイメージが強いと思うんですが、映画でホラーにしてしまうとターゲットが狭くなってしまうんです。今回は、大作娯楽映画のようにしたかったので、アクションあり、当然ホラーもあり、謎も用意しているのでサスペンス的な要素もあり、恋愛要素もあるという、いろいろな要素を入れ込んでいます。中でも、人間ドラマは多く描いていますね。実はゲームって人間ドラマを描きにくいんですよ。でも今回は映像作品なので、ゲームでは描きにくかった人間ドラマを多く入れています。ホラーだと、怖いのが苦手な人は映画館に行かないんですが、たくさん出てくる人間のドラマをふんだんに描いているので、怖いのが苦手な人も見られると思います。

――最後に作品を楽しみにしている人へ、メッセージをお願いします。

小林氏:シリーズが好きな人は、ゲームの続編として「新作ゲームが出た!」という感じで見ていただければと思います。『バイオハザード』を知らない人でも、これをきっかけに知ってもらえればうれしいです。ゲーム会社なんで、その後ゲームソフトを買っていただければ最高ですが(笑)、でも単純に映画として、楽しんでもらえれば幸いです。2週間限定ですが、映画館に行ってください。延長はないです!

世界的に人気を誇る『バイオハザード』シリーズのCG映画「バイオハザード ディジェネレーション」のプロデューサーを務めた小林氏。「CGムービーはリアルなものが少ないので、珍しく世界中で見られる頭身の高いCGムービーになると思います」と語っていた。

(C)2008 カプコン/バイオハザードCG製作委員会

■「バイオハザード ディジェネレーション」
【公開日】2008年10月18日~2週間限定世界先行上映
【配給】ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
【上映館】東京・新宿ピカデリー、大阪・梅田ブルク7、名古屋・ミッドランドスクエアシネマにて
【スタッフ】(敬称略)
 監督:神谷誠
 脚本:菅正太郎
 プロデューサー:小林裕幸
 制作:デジタル・フロンティア

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