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2009年3月16日(月)

その時、奇跡のドローを目の当たりに!? 白熱のプロツアー京都ベスト8レポート!!

文:電撃オンライン

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■ ガブリエル・ナシフ選手 VS マテオ・オルスィーニ・ジョーンズ選手 ■

 続いて、ガブリエル・ナシフ選手選手とマテオ・オルスィーニ・ジョーンズ選手選手の戦いをレポートしていこう。

 ナシフ選手は“クイックントースト”と呼ばれる多色のコントロールデッキ。メインデッキに採用された《羽毛覆い》《崇敬の壁》という2種類の壁が採用されており、逆に問答無用の全体除去である《神の怒り》がサイドボードに控えているのが特徴的。対するマテオ選手はルイス選手と同じ白黒のトークンデッキで、こちらは《黄金のたてがみのアジャニ》だけでなく《遍歴の騎士、エルズペス》も採用されておりトークンの打撃力が向上していることに加えて《思考囲い》も搭載しており、相手へ干渉する力も備えている。

 とはいえ、数で押すタイプのマテオ選手のデッキに対して、ナシフ選手は2種類の堅固な壁に加えてメインデッキから《火山の流弾》4枚、サイドボードには《蔓延》2枚に《神の怒り》2枚と対策十分。ナシフ選手有利なマッチアップと言えるだろう。

 1戦目をナシフ選手が取り、続く2戦目。まずはマテオ選手が先攻2ターン目の《苦花》で先制し、続けて《思考囲い》でナシフ選手の手札に迫る。公開されたナシフ選手の手札は《若き群れのドラゴン》《火山の流弾》《謎めいた命令》が2枚とあとは土地といった状況。ここで《若き群れのドラゴン》を捨てさせ、さらに続くターン《ブレンタンの炉の世話人》で《火山の流弾》を無効化しようとするが、これには《謎めいた命令》でカウンター。すでに《苦花》が展開されている以上、リセットボタンを封じられるのはナシフ選手としては致命傷になりかねない。しかし、マテオ選手は続くターン2枚目の《ブレンタンの炉の世話人》を引き込む。《苦花》から生み出されたトークンでの攻撃でナシフ選手のライフを削り、改めて《ブレンタンの炉の世話人》プレイするが今度はカウンターはなし。《風立ての高地》をセットしマテオ選手がターンを返したところでナシフ選手は《謎めいた命令》で《風立ての高地》をバウンスし、カードを引く。

 ナシフ選手が続く自分のターンでプレイしたのは《真髄の針》。指定するカードはもちろん《ブレンタンの炉の世話人》。これで再び《火山の流弾》が威力を発揮することとなった。しかし次のマテオ選手のドローは《潮の虚ろの漕ぎ手》。もちろんマテオ選手は即座にこれを召喚。このプレイに対応してナシフ選手は《火山の流弾》で場を一掃するが、その後に場に出た《潮の虚ろの漕ぎ手》の効果で《苦花》を破壊するために取っておいた《エスパーの魔除け》を奪われてしまう。

 再びのナシフ選手のターン、ドローは《火山の流弾》。これを打たずマテオ選手にターンを渡す。マテオ選手はさらに《潮の虚ろの漕ぎ手》を展開し、ナシフ選手の反撃の芽を摘もうとするが、ナシフ選手はこれに対応して《火山の流弾》で先に出ていた《潮の虚ろの漕ぎ手》を除去し《エスパーの魔除け》を取り返すと、即座にプレイして《苦花》を叩き割る。これで一応マテオ選手の猛攻を防いだ形となったが、まだマテオ選手は《変わり谷》をコントロールしており《火山の流弾》の脅威が去った今、クリーチャーと化して残り少ないナシフ選手のライフに襲いかかる。ナシフ選手も3枚目となる《謎めいた命令》で《真髄の針》を回収し、再度プレイして今度は《変わり谷》を指定。さらにマテオ選手が追加しようとした《メドウグレインの騎士》を《砕けた野望》でカウンター、激突の効果でめくれた《エスパーの魔除け》でカードを引き、ようやくフィニッシャーである《若き群れのドラゴン》にたどり着く。しかし1ターン遅く、最後は《ブレンタンの炉の世話人》によって最後の1ライフを失うこととなり、マテオ選手が星を1-1のイーブンに戻す。

 3戦目が始まる前、マテオ選手は《ブレンタンの炉の世話人》をサイドアウトするかを少し考えていたようだ。確かに《火山の流弾》に対しては有効なカードだが、ナシフ選手のデッキに組み込まれている《羽毛覆い》《崇敬の壁》といったクリーチャーの前ではただの1/1に過ぎない。しかし、結局そのままデッキ内に残すことを決め、3戦目を開始する。

 先手のナシフ選手が土地を置いて終えた2ターン目、マテオ選手は自分のターンで再び《思考囲い》。露わになったナシフ選手の手札は《エスパーの魔除け》《熟考漂い》《熟考漂い》《羽毛覆い》《神の怒り》《謎めいた命令》。土地こそないものの非常に充実した手札と言える。マテオ選手はここから《羽毛覆い》を捨てさせ、自陣に《ブレンタンの炉の世話人》を召喚した。

 ナシフ選手はここで待望の3枚目となる土地を引き当て《熟考漂い》を想起でプレイ。ドローを進める。ナシフ選手のエンジンがかかってきたことを警戒するマテオ選手は、続くターンにまずは《ブレンタンの炉の世話人》で攻撃。その後《潮の虚ろの漕ぎ手》をプレイ、さらにその手札を取り除く能力がスタックに乗ったところで自ら《流刑への道》を《潮の虚ろの漕ぎ手》へとキャストし《謎めいた命令》をゲームから取り除かれたままにする。そして次のターン《黄金のたてがみのアジャニ》をプレイ。クリーチャーを追加すると《神の怒り》で一掃されてしまうため《ブレンタンの炉の世話人》を《黄金のたてがみのアジャニ》の能力でサイズアップさせ、ダメージを加速する方針だ。

 それに対して順調に土地を伸ばしたナシフ選手は5マナで《熟考漂い》をプレイ。カードを引きつつ《黄金のたてがみのアジャニ》の能力をけん制する。ここで《黄金のたてがみのアジャニ》の忠誠カウンターは3つ。次に全体強化の能力を使ってしまうと、返しの《熟考漂い》のアタックで破壊されてしまう。マテオ選手は《神の怒り》があることを知りながら《メドウグレインの騎士》を場に追加しナシフ選手にターンを渡す。《熟考漂い》の連打によって手札に余裕があるナシフ選手は、まず《熟考漂い》で《黄金のたてがみのアジャニ》に攻撃。これで忠誠カウンターは1つに。続くターンでマテオ選手は《黄金のたてがみのアジャニ》の1つ目の能力でライフを回復しつつ、忠誠カウンターを2つに戻し、前のターンと同様、やはり《エスパーの魔除け》という対応策があることはわかっているものの《苦花》を盤面に追加する。

 ナシフ選手は次のターン《熟考漂い》の攻撃で《黄金のたてがみのアジャニ》を破壊しようとするが、これには《流刑への道》で対処。戦線維持のキーとなる《黄金のたてがみのアジャニ》を生き残らせることに成功する。マテオ選手は返ってきた自分のターンで、引き込んだ《潮の虚ろの漕ぎ手》をプレイするが、ここでナシフ選手の《砕けた野望》。さらに激突で《蔓延》がデッキトップにあることがわかってしまう。ナシフ選手はもちろん引いた《蔓延》をプレイして場をリセットし、とうとうフィニッシャーである《若き群れのドラゴン》を召喚する。戦いの場が空に移ったため、マテオ選手は仕方なくブレンタンで地上を攻めるが、返しの攻撃で《黄金のたてがみのアジャニ》が破壊され、さらに4点のダメージを受ける。現在のライフ状況はナシフ選手が9で、マテオ選手が28。3倍以上の差があるものの、場の状況はナシフ選手が2体の4/4ドラゴンをコントロールし、マテオ選手は《ブレンタンの炉の世話人》と《苦花》という状況。さらにナシフ選手は《エスパーの魔除け》で追加のドローをしているため、手札の枚数にも大きな差がある。

 しかし、実はナシフ選手の引きが芳しくなく、大量に抱え込んでいる手札も土地ばかり。毎ターン湧き出る《苦花》のトークンがドラゴンを食い止め《ブレンタンの炉の世話人》が少しずつナシフ選手のライフを削っていく。そして、ナシフ選手のライフが5になったところでようやく解決策となる《薄れ馬》をドロー。《苦花》を破壊しつつ、2/2になっている《ブレンタンの炉の世話人》もブロックできる状況となる。これで一転苦しくなったマテオ選手は《幽体の行列》を引き込んでプレイするが、これには《否認》が飛んでくる。その後は無人の空をドラゴンが暴れまわり、ナシフ選手が2-1と再びリードする。

 続く4戦目はマテオ選手が《風立ての高地》から2ターン目《苦花》と幸先のいいスタートを切る。さらに3ターン目には《思考囲い》で《蔓延》《エスパーの魔除け》《エスパーの魔除け》《砕けた野望》《火山の流弾》から《蔓延》を落とし、さらに《ブレンタンの炉の世話人》で《火山の流弾》をケアするという立ち上がり。ナシフ選手も《風立ての高地》で取り除かれたカードをプレイさせないよう《エスパーの魔除け》で《苦花》を破壊するが、このすきにマテオ選手は《潮の虚ろの漕ぎ手》をキャスト。《砕けた野望》を奪い去る。そして次のターンでは《ブレンタンの炉の世話人》《潮の虚ろの漕ぎ手》《苦花》のトークンで攻撃することにより《風立ての高地》から《雲山羊のレインジャー》が登場。一気にクロックを加速させる。ナシフ選手も《エスパーの魔除け》による追加ドローでなんとか《蔓延》や《神の怒り》を引き込もうとするも、それも叶わず、さらにマテオ選手は《遁走の王笏》を追加してナシフ選手の手札を攻め立て、その勢いのままに4戦目を勝利する。

 そして最終戦となる5戦目。序盤は後手2ターン目にマテオ選手がプレイした《潮の虚ろの漕ぎ手》を、ナシフ選手が《霊魂放逐》でカウンターするところから始まった。マテオ選手は続けて3ターン目には《幽体の行列》、4ターン目には《思考囲い》をプレイ。これに対して手札にカウンターもあったナシフ選手だがここはあえて素通しする。そして続けてマテオ選手が《風立ての高地》をセットするとそれを《謎めいた命令》でバウンスし、カードを引く。引いたのは《エスパーの魔除け》。

 ナシフ選手が土地を置いてターンを返すと、マテオ選手のアクションは《遍歴の騎士、エルズペス》。これにはナシフ選手もたまらず残った《謎めいた命令》でカウンター。その結果、再びセットされた《風立ての高地》をバウンスできず、また《鮮烈な草地》の蓄積カウンターを使い切ってしまったため《若き群れのドラゴン》が召喚できないという状況に追い込まれる。ここでナシフ選手は引いてきた《蔓延》で《幽体の行列》トークンを除去し《風立ての高地》の能力を封じ、ターンを返す。攻め手がいなくなったマテオ選手だが手札には《雲山羊のレインジャー》がいた。しかし、土地を引くことができず、5マナちょうどからキャストした《雲山羊のレインジャー》はあえなくナシフ選手が残した2マナから《砕けた野望》でカウンターされてしまう。

 次のターンはカードを引くだけで返したナシフ選手に対し、マテオ選手は《思考囲い》をプレイ。これに対してナシフ選手は《エスパーの魔除け》を使ってカードを2枚引く。この結果、ナシフ選手の手札は《謎めいた命令》《羽毛覆い》とあとは土地という状態になり《謎めいた命令》が捨てられる。続けてマテオ選手は《ブレンタンの炉の世話人》を2体キャストし、次のターンから《変わり谷》と合わせて3体で攻撃を開始する。当然、これに対してナシフ選手は《羽毛覆い》をプレイするが、3体で攻撃するという条件を満たしたことで《風立ての高地》から《流刑への道》が飛び出し、ナシフ選手の構想を打ち砕く。

 ナシフ選手は懸命にドローを重ねるが、引くのは土地ばかり。ライフは12から8、さらに4まで落ち込み、いよいよ最後のドローとなった。ここでナシフ選手は土地を整える。――そう、すべての状況を解決する《残酷な根本原理》用に。


 そして、ゆっくりとカードを引き、それを公開するとそこにはまさかの《残酷な根本原理》が! 会場がどよめき、ナシフ選手を応援するプレイヤーの大歓声が沸き起こる。 《残酷な根本原理》が解決されると、ナシフ選手の手札は3枚増え、さらに最序盤で捨てられた《若き群れのドラゴン》が墓地から舞い戻り、さらに5点のライフがナシフ選手を安全圏へと持ち上げていた。そして、同時にマテオ選手から5点のライフを奪うと、次のターン《若き群れのドラゴン》を召喚。マテオ選手も祈りをこめてカードを引くが、そこに解決策となるカードはなく、ナシフ選手が劇的な逆転勝利を収め、準決勝へと進出した。

 そして、この間にモニターにこそ映し出されなかったものの残る最後の日本勢、山本明聖がドイツの強豪ヤンとの赤白同型デッキ対決を制し、準決勝へと駒を進めていた。 

▲ガブリエル・ナシフ選手対マテオ・オルスィーニ・ジョーンズ選手の準々決勝。高マナ域まで土地を伸ばすことができればナシフ選手の勝ち、その前に素早く致命的なダメージを与えられればマテオ選手の勝ちというゲームで、互いに一歩も引かない中、最終的にゲームを決めることとなったナシフ選手のトップデッキには、会場からも大きな驚きの声が上がった。
▲赤白Gappo、あるいは赤白ヒバリと呼ばれる同型対決となった山本明聖とヤン・ルスの準々決勝。《風立ての高地》の秘匿条件を満たさないようケアする序盤から《目覚ましヒバリ》でのアドバンテージの取り合いへとなだれこむ、同型ならではの噛み合った試合は、やはり2-2で最終戦までもつれこむ展開となったが、最終的には《包囲攻撃の司令官》が山本に勝利を呼び込んだ。

(TEXT by ねこひげ合同会社/ゆば)

■グランプリ神戸 概要
【開催日程】2009年4月18日~19日
【会場】神戸国際展示場

■プロツアー京都 概要
【開催日程】2009年2月27日~3月1日(※すでに終了)
【会場】京都市伏見区“パルスプラザ”


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