2010年2月17日(水)
――『100万トンのバラバラ』の制作に入ってからは、3人はどのような仕事をしていたのですか?
池田:僕はディレクションと、ゲーム内に入っているムービーのアニメーションと編集などをやっていました。
寺島:僕は戦艦とかキャラクターとか、ムービーイベントシーンでの背景のデザインと素材作りですね。
▲ゲーム中に登場する住民は、後述する“じゅうみんひょう”のモードで閲覧できる。 |
――ゲーム中には200人以上の住民が出てきますが、全員デザインしたのですか?
寺島:そこは別の方の担当で、僕はイベントの方に出るメインキャラクターのデザインをしていました。
――中塚さんは?
中塚:僕はメニュー周りのデザインと、アニメーションと、メインゲームの背景を寺島君と手分けしてやっています。
池田:背景というのは、ステージをクリアした時とか、失敗した時の背景で見える山などのあれですね。
中塚:戦艦がやられて、だんだん落ちてこないと見えてこないんですよ(笑)。
――合間の人形劇のようなイベントシーンはどなたが作っているのでしょう?
池田:それはアクワイアさんですね。キャラクターのパーツとか元の素材とかを寺島が作って、アニメーションの基礎やディレクションを僕がやって、アクワイアさんが実際に細かいアニメーションをつけていました。
▲独特な雰囲気で描かれたグラフィックと、ちょっとシュールでおかしな会話の展開するイベントシーン。後半になるとしっかりしたストーリーが展開し始める。 |
――アクワイアさんとは、どのようなやりとりを?
池田:みんなで毎週定例会議を開いて、その週にやることや、その後につぶさないといけないことを決めていく感じでしたね。普段はメール・電話で連絡を取りつつ、必要とあれば定例以外でも会議を開きました。
――前職が『100万トンのバラバラ』の制作に役立ったという部分はありますか?
池田:僕は仕事のやり方として、外の会社と一緒にやることが多かったので、その経験は生かせたかなと思いましたけど、このソフト使えてよかったみたいな具体的なことはないですね。
寺島:僕もあまり思い当たるフシがないですね。前の仕事は、発泡スチロールを削る感じの仕事だったので。ここ来てから、フォトショップを使うようになったくらいです。
――前職は直接の作る現場で、『100万トンのバラバラ』ではデザインということですが。
寺島:そうですね。前職は職人に近い感じでした。でもこっちでは、デザインだけでなく、素材も僕がほぼ完成形まで作っていたので……。
池田:あまり活かせなかった、ということですね(笑)。でも昔の仕事は、当然偉いデザイナーさんの作ったデザインがあって、その指示通りに動いていた。でも今回は、自分たちで考えてやらないといけない。それはすごく楽しかったんだけど、大変なことでもありました。
――デザインの試行錯誤はなさったのしょうか?
寺島:しましたね。デザイナーとしての経験はゼロだったので、そういう時に、前の仕事でデザインを結構見ていたことが、手探りするにも役に立ったのではないかなと思います。
▲ゲームとは無関係だが、前職のスキルが見事に生かされたと思うのがこの造形物。20個限定で生産され、制作スタッフにのみ配られたレアモノだ。 |
――『100万トンのバラバラ』の着想はどこから?
池田:ヒマだった時にノートに戦艦の絵を描いていて、「これを切ったら、楽しいんじゃないかな?」と思ったのがキッカケです。PSPの2Dアクションを作ろうと思っていたので、平らな絵を細かく切ってバカバカ~と落ちていったら、おもしろいんじゃないかと。
――なぜ戦艦にしたのでしょうか?
池田:何なんですかね……やっぱり好きなんですね。戦艦が飛んでいるのって、僕らの世代にとって1つのあこがれじゃないですか。僕らにしたら戦艦って飛んでるものなんで、と……プロデューサーの小島さんに伝えたら、なかなか伝わらなかったですけどね(笑)。
――そこから世界観も広がっていったのですか?
池田:ゲームシステム的にタイムリミットがあった方がいいから、町があった方がいいとか。こういうストーリーだったら、突っ込めるかなとか。まずゲームありきで考えました。
▲戦艦を絵を完全に切り離すと、軽いほうの塊が落下していく。大きな塊をバラせば、かなりの爽快感。 |
――題材だけを伺うと、普通のアクションの選択もあったと思うのですが、実際にはパズルアクションになっていますよね。それは、なぜでしょうか?
池田:アクションゲームに振りすぎると、遊べない人も出てくるじゃないですか。パズルゲームに振りすぎても苦手な人がいますし、両方の人が遊べるところに落としたかったので、パズルアクション的にしました。よりアクション寄りにすることもできましたが……そういった理由で今の形ですね。
――プレイヤーができることは、切る、やる気アタック、ボムの3つで、シンプルですよね。
池田:そこはアクワイアさんとも一緒に話して、最初はボムと切るしかなかったんですけど、華があったほうがいいよね、ということでやる気アタックを入れて。名前は最初は仮でしたけど、そのまま採用されましたね(笑)。
▲やる気アタックは、画面左のゲージがたまった時だけ使うことができる、いわば必殺技。対してボムは、仲間を1人犠牲にする必要があり、3種の攻撃は非常に使い分けが重要だ。 |
――ステージが多くて、敵の種類も結構いますが、皆さんで考えたのですか?
池田:それもアクワイアさんと一緒に考えました。(制作チームに)アクワイアさんのプランナーが2人いるので、こういったステージや敵があったら楽しいんじゃないかと考えてくださって、それをみんなで取捨選択していきました。
戦艦のデザインも、最初からデザイナーがやるのではなく、プランナーさんが戦艦エディタというのでまず作るんです。それを遊んでみて、ゲームとしておもしろいとなってから、こっちのデザイナーに投げて、ちゃんとした戦艦に仕上げるという。そういった形の作業で、結構な数の戦艦を造ることができました。
――戦艦1つ1つに名前があると思うのですが、名前の他に設定はあるのでしょうか?
寺島:戦艦は全部で4色あるんです。戦艦は無人ですが、たぶん誰かが作ったはずで。それで、戦艦を造った人たちが4チームくらいあったという設定ではあります。
池田:トヨタ車、ホンダ車みたいな感じですかね。よく見ると、色ごとにフォルムの特徴は統一されているように作っています。たとえば、緑の戦艦のフォルムの特徴は統一されていて、青い戦艦にはない特徴っていう感じですね。
→絶妙なバランスと池田さんこだわりの要素に注目(3ページ目)
(C)Sony Computer Entertainment Inc.