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2010年5月2日(日)

【ハンビット・コラム第4回】中尾プロデューサーが語るオンラインゲームのBOTとRMT

 前回に引き続き、株式会社ハンビットユビキタスエンターテインメント オンライン事業部長と『グラナド・エスパダ プラス』プロデューサーを兼務されている中尾圭吾さんに、運営会社のお仕事について語っていただきます。インタビュアーは、中尾さんと韓国の開発会社へ行ったこともあるオンラインゲーム担当の鉄砲野郎・きっしーです。

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▲中尾さんがプロデューサーを務めるPC用オンラインRPG『グラナド・エスパダ プラス(以下、GE)』。プレイヤーは、新大陸グラナド・エスパダの踏破を目指す開拓者の長となり、冒険を繰り広げていく。最大3人のチームを操作して戦うバトルシステムや美しいグラフィック、美男美女のキャラクターなどが特徴だ。1人でも気楽にプレイできる点も人気の秘密。

──気がつけば前回の記事掲載から3カ月ぶりですね~。前回は、『GE』運営チームの具体的なお仕事やゲーム内イベントの展開についてお伺いしました。今回は、オンラインゲームで問題視されているBOTやReal Money Trade(以下RMT)についてお伺いしたいと思います。まずは、プレイヤーの代わりにキャラクターを操作して狩りなどを自動プログラムで行うBOTについて中尾さんの意見を聞かせください。

『オンラインゲーム運営のお仕事』
▲株式会社ハンビットユビキタスエンターテインメント 事業部長兼プロデューサーの中尾圭吾氏。

中尾圭吾氏(以下、中尾):BOTが駄目な理由は、まず主観的な事を言いますと、我々運営会社は、ゲームを楽しまれる方にサービスを提供したいのです。開発会社と運営会社で苦労して提供している空間に、ゲームを楽しむ目的以外で“プレイ”をする営利目的の方々に対して、強い憤りを感じています。

──BOTの存在がゲーム内にどのような悪影響を与えるのか教えてください。

中尾:では、ここから具体的な事をお話しします。MMOを基準にして、例を何点か挙げます。ゲーム性によって変わる部分もあると思いますので、あくまで一例としてご理解ください。
 1番大きいのは、やはりゲーム内経済バランスの破綻です。まぁ、当然ですよね。開発会社は楽しみながら生産と消費を繰り返す一般ユーザーの方を基準にしてゲームを設計していますので……。消費をせず他者の為だけに生産を続ける存在は、そもそもイレギュラーなんです。

──そういった理由から、ほとんどのオンラインゲームでは、利用規約で禁止行為とされていますよね。それでは、もっと具体的に教えてもらってもいいですか。

中尾:はい。ゲーム内経済はかなり幅広いので、今回は1番重要なゲーム内の通貨とアイテムの希少性に焦点を当てて、お話しします。


■通貨バランスが崩壊による“貧富の差の拡大”

──ゲーム内通貨を現金で売り買いするRMT業者も問題視されていますね。

中尾:RMT業者も、モンスターを倒したりアイテムを売って、ゲーム内通貨を入手します。営利目的なので消費活動は、ほとんど行いません。ゲームによりますが、多数のキャラクターを操作している場合、凄まじい量のゲーム内通貨が業者の手に渡ります。
 そして、そのゲーム内通貨を一部の方がRMTで購入します。一般ユーザーの方が1日に稼げるゲーム内通貨の10倍・100倍と購入される方がいますので、当然RMTを行った方々は大金持ちになります。大金持ちになった方々は、取引相場が少々高くても関係無く貴重なアイテムを買いますので、該当アイテムの取引相場は、一般ユーザーの方々には手が出せない状態まで高騰します。
 そうなると当然、RMTを行っていない一般ユーザーの方はゲーム内通貨で、貴重なアイテムを購入することができなくなります。露骨に相場が高騰しますので、買える人はどうやってお金稼いでいるんだ……と、疑問に思われる方も非常に多いと思います。

──私も某MMORPGで味わったことがあって。何十日間もお金をためて、いざ露店で買おうと思ったら、売値が倍になっていてア然としました……。そのときはRMTという存在を知らなかったのですが、それを知ったときゲームをマジメにプレイするのがバカらしくなりましたね。

中尾:そうですよね。ゲーム内のお金とアイテムは、MMOの醍醐味ですので、ゲームそのものを楽しむことができない状態となってしまいます。1つ言える事は、あまりにも貧富の差が開くとプレイスタイルやコミュニケーションの差が激しくなってしまって、装備やレベルが先に進んでいる先行ユーザーも1日に短時間プレイでRMTを利用していない一般ユーザーも両方が楽しく無い状態になります。

 つまり、こういう状態になります。
一般ユーザーは「戦闘能力や資産の差が凄すぎて、プレイしても、つまらないな・・・」
先行ユーザー=一緒にパーティーする相手や戦闘をする相手がどんどん少なくなるな・・・・」

 ある程度の温度差は仕方ない部分がありますが、BOTがもたらすバランス崩壊によって、温度差は大幅に加速します。結果として、ゲームを離脱される方は少なくはないです。

──私はあまりプレイする時間がないこともあり、ゲーム内通貨がなかなかたまりません…。なので、時間がない社会人の方がRMTで手軽に大金を入手したくなる気持ちは、わならないわけではありません(汗)。ただ、誰かがRMTに手を出すと、関係のない他のプレイヤーにイヤな思いをさせてしまい、やがてゲームから離れさせてしまう。過疎化が激しければ最悪、ゲームのサービスが終了することになると思います。そうならないように、RMTに手を出してはいけませんね。


■アイテムの希少性のバランス崩壊

──ゲーム内通貨同様に、アイテムの希少性もバランスが崩れますよね?

中尾:そうですねBOTが量産しているアイテムの価値は、恐ろしいスピードで希少性が無くなります。本来、狩をして30分に1個でるアイテムは、その30分の時間に見合った価値があります。
 しかし、RMT業者は24時間稼動していますので、RMT業者がターゲットにしているアイテムの価値は、大幅に下落します。逆に、インフレーションの結果として、RMT業者が量産できないアイテムの価値は高騰します。その状況を簡単に表現すれば、「RMT業者と同じ敵を倒しても、ゲーム内通貨は稼げない!!」。
 一般のユーザーの方々は、フィールドモンスターを倒すのも好きだったり、ボスモンスターの討伐も好きだったりと、日々の気分で遊び方を変えたいと思いますよね。

──うんうん。私も短時間でも遊びたいときは、1人でもできる生産や素材収集、釣りとかをしますね。逆に時間があるときは、パーティを組んでがっつりレベル上げやボス戦を楽しんだり。その日の気分でプレイスタイルを変えるるのは、みなさんやっていることだと思います。

中尾:しかし、RMT業者がフィールドモンスターに集中する傾向がありますのでボスモンスターを討伐するとか、難易度の高いダンジョンに挑戦しないと、まったくお金が稼げないんですよね。
 そして、結果として“BOTが居ない場所を探してゲームをする”開発会社としても運営会社としてもこんな状態は望んでいません。すべてのコンテンツを楽しむ目的だけで遊んで欲しいと思っております。後は余談ですが、通貨バランスとアイテムの希少バランスの崩壊によって、RMT業者の入手できない入手条件がシビアなアイテムを量産して売る事ができる方々は、RMTで大金を手に入れた方に希少性の高いアイテムを売ることができますので、物凄い金額のゲーム内通貨を手にすることも珍しくありません。これも、RMT業者が起こすバランス崩壊が悪いのです。

──RMT業者がプレイヤーに与える悪影響は、
(1)ゲーム内の経済バランスを破綻させて、ゲーム性やコミュニティを破壊する
(2)ユーザーの方々のプレイスタイルを制限してしまう
ということですね。

中尾:私は、RMTをしないユーザーが損するサービスにはしたくありません。今現在、RMTでゲーム内通貨を購入されている方は先程、きっしーさんも言われた通り、RMTは“最高だ”という気持ちより、“悪い”と認識している状態で購入を繰り返している方が多いと思います。
 運営会社の努力が見込めたら、一緒に断ち切り、より良いゲーム環境を築けたらなと思っています。とにかく精一杯の努力を行い駆逐していく所存です。

──BOTを完全に駆除するのは難しいことだと思いますが、99%の駆除を目指してがんばってほしいです。1人のプレイヤーとして。今日はお忙しいなか、ありがとうございました!

中尾:最後まで、この記事を読んでくださいまして、ありがとうございました。

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(C)株式会社 ハンビットユビキタスエンターテインメント

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