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2010年5月24日(月)

続編の構想もあった――Xbox 360版『ファントム』虚淵玄さんインタビュー

文:ごえモン

『Phantom PHANTOM OF INFERNO』

 ニトロプラスが、今夏に発売を予定しているXbox 360用ソフト『Phantom PHANTOM OF INFERNO(以下、ファントム)』の監修を務める、虚淵玄さんにインタビューを行った。

 Xbox 360版『ファントム』は、2000年にPCゲームブランド・ニトロプラスから発売された同名タイトルをリメイクしたアドベンチャーゲーム。詳しくは、4月23日に掲載した本作の作品紹介を見てほしい。

 電撃オンラインでは、PC版原作のシナリオを手掛け、Xbox 360版では監修を行っている虚淵さんに、『電撃ゲームス』と合同でインタビューを敢行。PC&Xbox 360版の開発経緯や登場キャラクターの誕生経緯、さまざまな裏話などを語っていただいたので、虚淵さん&『ファントム』ファンにぜひご覧いただきたい。

■登場キャラクターが死ぬからといって、よくない物語とは限らない

――まずは2000年に発売されたPC版『ファントム』の開発経緯からお聞きします。発売当時は、『ファントム』のようなダークな作品が珍しかったような気がするのですが。

 当時、ダークな伝奇モノとして、Leafから発売された『雫』や『痕』があったんですね。これを見て、「このスタイルで美少女ゲームが成り立つのなら、やってみる価値はあるだろう」と始めた企画でした。

――自信はかなりあったと。

 自信というか、最初は志が低かったんですよ。「5,000本売れて黒字になればいいじゃない」くらいのつもりで始めた企画で、冗談半分みたいなところが大きかったですね。

――なるほど。もともとコアなゲーマーに向けて制作されていたのでしょうか?

 当時は、美少女ゲームではなくて教材ソフトなどを制作していたんですね。なので美少女ゲーム業界に一切接点がなく、社内も部活動的な意味が強かったんです。「このまま、好きなことでビジネスを成り立てるチャンスがつかめるといいよね」ぐらいの気持ちで。そういう意味で、採算を度外視して肩の力を抜いて制作していました。

――当初は幽霊モノだったんですよね?

 そんな企画もありました(笑)。最初は、もっと純然たる和風の伝奇モノだったんです。でも、それがあまり社内でフックしなくて。社長のでじたろうがガンマニアなものですから、後から『ファントム』の企画を出したら、俄然(がぜん)そっちに気が乗っちゃいまして「じゃあこっちで行こう」と。

――『ファントム』のバイオレンスでスタイリッシュな世界観は、社内の雰囲気があったから生まれたものなんですね。

 そうですね。もっとしっとりとした叙情的な『雨月物語』のような話にしようとしていたので、それよりも“銃と車”をキーワードに、バイオレンス方面に特化させることになったのは社長の趣味からでしょうね。

『Phantom PHANTOM OF INFERNO』 『Phantom PHANTOM OF INFERNO』

――虚淵さんの手掛けるシナリオは、映画や冒険小説のような作品が多いですよね。当初から、いわゆるギャルゲー的な物語よりも、映画のような話を作ろうと思っていたのでしょうか?

 一応、“美少女ゲームを作る”という意識はありました。ただ、それだけに特化したものを作るノウハウがまったくなかったので、「この方向性なら作れるかな?」という話の作り方が、たまたま冒険小説的な物語でした。それを若干美少女ゲーム方面に振ってやれば、『痕』のラインまで持っていけるだろうと。

 当時、業界には『ToHeart』や『Piaキャロットへようこそ!!』などがありましたが、これらの作品は完全に女の子との交流に主軸を置いた作品じゃないですか。これを作るには、やっぱりしっかりしたノウハウがいるだろうと。私もラブコメを多く読んでいたわけではないので、だったら、普段から趣味で読んでいる冒険小説や映画の方法論を持ち込んで、商品が作れたらもうけものだと思っていました。

――そんなダークな世界観の『ファントム』が、多くのユーザーに受け入れられた要因についてどう分析しますか?

 正直、当時は途方に暮れていました(笑)。いまだに、「あれはなんだったんだろう」と思うこともありますが、たまたまLeafの高橋龍也さんの実験的な作品が世に出てきた時期で、みんな同じような“色モノに飢えていた”ように思います。“ひと味違ったものに対する欲求”みたいなものがあったんじゃないかと。

――色モノだった『ファントム』を、今回Xbox 360でリメイクした理由について教えていただけますか?

 アニメ展開からの流れですね。確か、シリーズ構成の黒田洋介さんから「TVアニメ版のキャラクターに絵を差し替えて、ゲームを出すのもありじゃないですか?」という話をいただいて。それがめぐりめぐって本当になってしまった、という感じですね。

――どちらかというと、TVアニメ版『ファントム』を見て、その世界観を気に入った人にプレイしてほしいという感じですか?

 そうですね。ゲームをプレイしていただければ、ヒロインごとのルートなど細かいところまでわかっていただけると思うので。

――Xbox 360版『ファントム』で、特に見てほしい部分はどこですか?

 やっぱりTVアニメ版の段階で、映像的に入らない部分などをそぎ落としてしまったところがあるので、そこを補完するという意味でプレイしていただく価値はあると思います。アイン以外のルートもありますし、TVアニメしか見ていない人にとっては、クロウディアルートなんてたぶん想像がつかない方向に転がっていくと思いますよ。

――虚淵さんの作品だと、この『ファントム』もそうですが、バッドエンドのような物悲しいエンディングが多い気がします。その理由というのは?

 自分がもともと悲壮な話が好きなので、死んでしまってすぐ終わるデッドエンド的なところにあまり持っていきたくないんですね。一応、死んだら死んだでドラマ仕立てになるような作りにしています。それこそ、私は“主人公の生き死にって話にあまり関係ない”と思っているんです。“死んじゃったからよくない話”っていうのは、ちょっと受け入れがたいですね。だって、誰でも死ぬわけじゃないですか。

『Phantom PHANTOM OF INFERNO』 『Phantom PHANTOM OF INFERNO』

→次のページで、虚淵さんが登場キャラクターの誕生経緯について語る!
(※ネタバレ含む)

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