2010年12月12日(日)
千葉・幕張メッセで開催中のイベント“マジック:ザ・ギャザリング(以下、MTG) 世界選手権 2010”の3日目となる12月11日。会場にいた2人の日本人にインタビューを行った。
1人は、ウィザーズ・オブ・ザ・コーストで唯一の日本人開発スタッフである射場本正巳氏。そしてもう1人は、プレイヤーとして世界選手権に出場し、惜しくもベスト8入りはできなかったものの日本人最高位をマークした高橋優太選手だ。開発スタッフと選手という2つの異なる目線は、『MTG』をどのように見ているのか? それぞれのインタビューから読み解いてもらいたい。
■射場本正巳氏インタビュー
▲開発スタッフの1人である射場本正巳氏。現役プレイヤー時代は“日本三大地雷”、“宇宙忍者”とあだ名されるほど奇想天外なコンボデッキで高い成績を残す。 |
――射場本さんと言えば、古くからの『MTG』プレイヤーにはおなじみのお名前だとは思いますが、ウィザーズ・オブ・ザ・コーストでは現在どのようなお仕事をされているのでしょうか?
射場本氏:ウィザーズ・オブ・ザ・コーストには大きくわけてカードゲーム、テーブルトークRPG、オンラインゲームの3つの部門がありますが、その中のカードゲーム部門の開発スタッフをしています。
――開発スタッフというのは、具体的にはどのようなお仕事なのでしょうか。
射場本氏:『MTG』の新セットを制作する際に、カードリストを見て収録されるカードの内容に対する意見を言ったり、あるいはそのセットで実際にシールド戦やドラフトを行い、その感想をフィードバックしたりという感じです。
――『MTG』のトッププレイヤーだった経験を生かしてのお仕事、ということですね。最新セット『ミラディンの傷跡』にも、射場本さんの意見がフィードバックされたカードがあるのでしょうか?
射場本氏:僕はコンボデッキが好きなプレイヤーなので、セットにカードを残すより、「このカードとこのカードのコンボは強すぎるだろ」といった意見を出して、セットからカードを消すことの方が多いですね(笑)。
――危険な芽をつぶしているわけですね(笑)。では、無理を承知で聞きますが、来年2月に発売される『ミラディン包囲戦』でこんな感じのコンボが見られるかも……というようなお話をチョッピリ聞かせていただけたりしないでしょうか?
射場本氏:そうですね(苦笑)、ただファンの皆さんはご存じのとおり『ミラディンの傷跡』ブロックは、あの“ミラディン”が舞台です。だからさらなるアーティファクトや“感染”の広がりなどに注目していただければと思います。
――開発陣のトップであるマーク・ロースウォーター氏のトークショーでも、アーティファクトと関係の深い《求道者テゼレット》や“ミラディン”の創造主である《銀のゴーレム、カーン》の話題が出ていましたよね。
射場本氏:ええ。それと『ミラディンの傷跡』ではまだそれほど数が多くなかった“増殖”能力をおもしろく活用できたりするようになるかもしれません。
――コンボプレイヤー的にはとても楽しそうですね(笑)。
射場本氏:はい(笑)。それに世界はあの“ミラディン”なので、過去の『ミラディン』のフレーバーを受け継いだカードの登場にもご期待いただければと思います。
――なるほど。ところで“ミラディン”では現在ミラディン軍とファイレクシア軍が戦っています。会場でもそれぞれの陣営に所属してのゲームを楽しめるようになっていますが、このスタイルはたとえばプレリリースイベントなどでも採用されたりするのでしょうか。
射場本氏:そうですね。まだ具体的なことはわかりませんが『ミラディン包囲戦』のプレリリースは、それぞれの陣営に分かれてのイベントになると思います。
――すこし前に“陣営ブースター”も発表されていましたし、楽しみです。
射場本氏:皆さんもどちらの陣営につくのか、決めておいてくださいね。
――ちなみに射場本さんはどちらに勝ってほしいと思っていますか?
射場本氏:う~ん、開発陣はみんな“感染”が好きなんですよ。ひねくれた人が多いというか(笑)。だからファイレクシア陣営ですね。
――開発のトップでいらっしゃるマーク・ロースウォーターさんも毒が大好きだそうですね(笑)。
射場本氏:はい、なので『ミラディン包囲戦』では“感染”にもぜひ目を向けてみてください。
――なるほど。では、最後に『MTG』プレイヤーに向けてのメッセージをいただけますか?
射場本氏:そうですね。この世界選手権に参加しているプレイヤーのように、もちろんトップを目指してプレイしていくというのは大切なことなんですが、それと同時に仲間内でカジュアルにワイワイやる遊びというのも楽しんでいただきたいですね。その点については、ウィザーズ・オブ・ザ・コーストとしても応援していきたく思っています。
――近年発売された『プレーンチェイス』や『アーチエネミー』、『エルダードラゴン・ハイランダー』から名前の変わった『統率者戦』などですね。
射場本氏:はい。特に『統率者戦』は来年6月に3つのデッキが出て、51枚の『統率者戦』専用カードも登場します。『統率者戦』はこれからオフィシャルにどんどんサポートしていきたいと思います。
ファイレクシアの侵攻とともに広がりを見せる“感染”と“増殖”。そして新しいアーティファクトの登場による“金属術”の強化など『ミラディン包囲戦』からますます目が離せなくなりそうだ。続いて、今回の世界選手権において日本人最高位の13位入賞を果たした高橋雄太選手へのインタビューをお届けしていこう。
■高橋雄太選手インタビュー
▲高橋優太選手。フェアリーデッキをこよなく愛するプレイヤーとして知られる。ゲームには非常にストイックな姿勢で臨み、絶えず反省と研究を欠かさない。『MTG』の日本語公式サイトではコラム『高橋優太のこのデッキを使え!』を連載中。 |
――まずは、この3日間、お疲れ様でした。今回、13位入賞という結果を残されたわけですが、今回の世界選手権の感想をお聞かせください。
高橋選手:どこかであと1勝していればベスト8に残れたのに、というのがまず第一です。『MTG』に“たられば”がないのはわかっていますが、ミスで落としたゲームが1つあったので、あそこで勝っていたら……という思いは正直あります。
――今回、スタンダードとエクステンデッドで使用されたデッキと、それを選んだ理由を教えていただけますか?
高橋選手:スタンダードは青白コントロールで出ました。このデッキを選んだ理由は、まず赤緑ヴァラクートと有利に戦えるからです。また《ギデオン・ジュラ》の採用によってクリーチャーデッキ全般に対しても優位に戦えます。
――なるほど。コントロールというと青黒のコントロールデッキを採用されているプレイヤーも多く見られました。青黒を選ばなかった理由というのはあるのでしょうか。
高橋選手:青黒は、吸血鬼デッキに対して弱いというのが選択を避けた理由です。青黒のメインの除去手段は《破滅の刃》ですが、これが黒いデッキである吸血鬼には効果がなく、また《恐血鬼》のような除去耐性のあるクリーチャーを根絶できない点で弱みがありました。
――確かに白なら《糾弾》や《天界の粛清》のようなカードがありますが、黒には現在クリーチャーを追放できるカードはありませんね。それが青黒ではなく青白という色を選んだ決め手ということですね。
高橋選手:はい。
――ありがとうございます。続いてエクステンデッドについてうかがいたいと思います。高橋さんと言えば“フェアリー”というイメージを皆さん持たれていますが、今回もフェアリーデッキを使われたのでしょうか。
高橋選手:はい。エクステンデッドではフェアリーを使いました。
――フェアリーには他のデッキに対して有利に戦えるポイントがあったのでしょうか。
高橋選手:いえ、フェアリーを選んだ理由は「好きだから」につきますね(笑)。フェアリーが特別他のデッキに対して有利に戦えるということはないと思います。
――では、そんなフェアリーデッキで戦うにあたって構築にあたって注意した点などはありますか?
高橋選手:メインは対コントロール、コンボを意識して構築しました。《思考囲い》、《ヴェンディリオン三人衆》といった対コントロールで役立つカードを多く投入しています。そしてサイドボードにビートダウン対策を詰めている感じですね。
――現在のエクステンデッド環境を見越したチューンということですか。
高橋選手:そうですね。シャ●専用●クみたいな感じで、僕専用のデッキになっていたと思います(笑)。
――専用ですか(笑)。長年フェアリーデッキを使い込んできたからこそ、世界選手権の大舞台でもデッキを信用することができたということですね。
高橋選手:はい。
――今回、3日間世界選手権を戦ってきて、印象に残ったゲームなどはありますか。
高橋選手:ドラフトで友人のルーカスというプレイヤーと同じテーブルになったんですが、そこで彼に“感染”デッキ用のパーツを独占されてしまって、彼のデッキがものすごい強さになっていたことですね。僕も彼と戦ったんですが4,5ターンで毒殺されてしまいました(笑)。
――リミテッドでそれはすごいですね(笑)。“感染”は独り占めさせてはいけないということですね。
高橋選手:いや~、あれは強かったですね。
――ありがとうございました。それでは最後に2011年シーズンにかける意気込みなどがあればお聞かせください。
高橋選手:実は僕、今年度のプレミアイベントで初日以降に残ったのってこの世界選手権が初めてなんですよ(笑)。だから来年はもっとちゃんと勝ちたいと思います。
――ありがとうございました。来年も頑張ってください!!
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■マジック:ザ・ギャザリング 世界選手権 2010
【開催日時】2010年12月9日~12日
【開催会場】千葉・幕張メッセ