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2011年12月28日(水)

【通好みゲームメーカー 会社案内 Vol.4 ケイブ編】浅田氏が『インスタントブレイン』で伝えたかったこと、そして梅本氏への思い

文:megane

――本作の音楽には、8月に急逝された梅本竜さんがかかわっていますが、浅田さんは梅本さんと古くからの友人だったとお聞きしています。その梅本さんに対する思いをお聞かせ願えますか?

浅田 『インスタントブレイン』が完成して、発売されるまではこういったことを話すのは控えようと思っていたんです。でも、ゲームが発売された今だからやっと、梅本さんが亡くなったということを受け入れられるようになったかなと思います。

 自分が梅本さんと初めて会ったのは、中学3年生か高校1年生くらいの時でした。梅本さんはその時すでにゲーム業界でお仕事をされていたんですが、自分も当時からゲーム業界で働きたいと言っていました。当時はまだインターネットが一般的ではなくて、草の根ネットのBBSなどが主流だった頃です。

 それで自分もゲーム業界に入っていろいろと経験して、時には梅本さんに相談しながら「いつかアドベンチャーゲームを一緒に作りたいね」なんて話をしていたんです。今回、『インスタントブレイン』という作品でそのチャンスがあって挑むことができましたが、残念ながらこういう結果になってしまいました。

 亡くなられた8月のその日に、ご連絡を親族の方からいただいて、最期の対面もしてきたのですが、その頃って本作のサウンドの制作が相当やばい状況だったんですよ。元々、ギリギリまで待てても8月末だとは思っていました。とはいえ、梅本さんは曲を書くのが結構速いタイプなので、「本当にヤバくなったら教えてほしい」というふうには伝えていました。

 梅本さんは『赤い刀・真』で音楽をお願いしていた頃から体調を崩されていたようでした。ですので、「何曲か他の人にヘルプをお願いしようか」ということも相談していましたが、本人は「自分でやりたいから」と言っていたので、そのままお願いしていたんです。

 実際、梅本さんに作っていただいた曲でゲーム中に使われているのは、5曲+αといった感じです。その他にもボツになった曲が何曲かありまして、その中の1つに本作のメインテーマがあります。これは世に一切出ていない、自分と梅本さんしか持っていないものですが、梅本さんが亡くなってから、これを世に出すべきかどうか非常に悩みました。でも、亡くなる直前くらいに梅本さんと相談して、「もう一度作りなおそう」という話になったものですし、クリエイターがボツにしたものを勝手に世に出すわけにはいかないということで、これは永久にお蔵入りにするべきだろうと思っています。

 また、亡くなったという連絡を聞いた時に、「この人は何のことを言っているんだろう?」と頭の中が一瞬真っ白になりました。電話を切ったあとも悲しいというか、何も浮かびませんでしたし、本当のこととも思えませんでした。でも、それから本作のサウンドのディレクションを担当していただいている高見 龍さんに確認したところ、やはり同じ電話を受けていたということで、「ああ、やはり本当なんだ」と思いました。その後落ち着いてきて、プロデューサーとして梅本さんの楽曲をどうにかしないといけないと思い、これは絶対に作り上げないといけないとも思ったんです。それが梅本さん自身も望んでいることだろうと思いましたし。

 梅本さんとは、今年の正月くらいから本作のサウンドの方向性についてやりとりをしていて、「こんな曲はどうだろうか」といったことを、他のシューティングゲーム制作の合間にずっとやっていたんですね。ですので、完成していた曲は5曲+αですが、ボツにした曲はもっと多いんです。

 ただ、梅本さんに作っていただいた曲が5曲ないしは6曲しかないのに対して、ゲーム中で使われる曲は全部で30曲以上……。それではどうするかという話になった時に、梅本さんのサウンドを自分たちで再現するしかない、という結論に達しました。そこで、同じくサウンドを担当してもらっていたヨナオケイシさんと“梅本さんの楽曲とは”といった分析から作業を再開しました。

 すでに納品してもらっていた楽曲について“梅本さんがどんな思いで作ったのか”というようなことをすべて分析して、急遽参加してもらった他の作曲者さんに、自分から意図をすべて伝えました。8月以降のサウンド制作の半分は、分析に使ったのではというレベルですね。他の作曲者さんたちも、梅本さんの楽曲を分析してくれていたみたいで、違和感があると思える曲は極力少なくなったのではと思います。とはいえ、“完全なる梅本竜”になることはもちろん不可能なので、ファンの方からすると全然違うと思われてしまうかもしれませんが……。

 また、この作品を“追悼”という体裁にするのは本当に嫌だったので、“梅本竜っぽく作ってやるから上で見てろよ”みたいな勢いで最後まで作りました。“制作途中で逝きやがって”という思いですね。

 そして、梅本さんとの間には、これまでに話していた、いろいろなアイデアがあるので、これからはそれを形にしていきたいと思っています。それが、これまで梅本さんに教えてもらったことに対する恩返しになるのかなと自分の中で勝手に思っているんです。来年の1周忌になったら、また愚痴でも言いに行こうかなと思っています。

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