2012年1月24日(火)
▲『リズム怪盗R』のプロデューサー・中村俊氏。これまで手掛けた作品は、『サンバDEアミーゴ』、『ソニック』シリーズ、『マリオ&ソニック オリンピック』シリーズなど。 |
――本作を制作することになった経緯を教えてください。
『ソニック』シリーズや『マリオ&ソニック オリンピック』シリーズを開発している時に、ノリがいい曲でジャンプしたり、音に合わせてアクションしたりすると気持ちいいことに気づきました。自分が気持ちいいと思うことがリズムに直結して、ゲーム作りの根底にリズムがあると感じたんですね。『サンバDEアミーゴ』以降、リズムゲームからは離れていたんですが、改めて作りたいと思い他のタイトルをやりながら企画書を作成しました。
実は『サンバDEアミーゴ』を制作した時、曲を変えるだけではゲームが進化しないことに限界を感じていまして。今作では、リズムゲームをどうしたら変えていけるかにポイントを置いて、ストーリーを足すことでシチュエーションに合わせてリズムアクションが変化するようにしました。
――そこから、アドベンチャーパートとリズムアクションパートを交互にやっていくことにしようと?
ミュージカルは静かな時と盛り上がる時があって、そのメリハリが心地いいですよね。アドベンチャーの“静”とリズムゲームの“動”を組み合わせられないかと模索しました。最初はリズムゲームとストーリーがあればいいと思っていたので、怪盗やパリという要素はなく、世界観は後からもってきました。
あと、リズムゲームといえばノリがいい曲ばかりなのですが、クラシックや静かな曲を入れたいという気持ちもありました。映画でゆっくりとしたシーンでも感情に動きがあるように、「静かな曲でも気持ちが乗れば楽しめるリズムゲームを作りたい」ということをふまえつつ、本作の企画を考えました。
――本作のテーマやコンセプトを教えてください。
ストーリーとリズムゲームが融合した“ドラマティックリズムゲーム”です。ドラマチックということで、喜怒哀楽を表現するストーリーにしていこうと思いました。このタイトルを考えていたころ、名越(※1)に企画を見てもらったことがあったんです。その時、名越からは「ドラマを語れるといいね」という話が出まして。『龍が如く』シリーズとは異なりますが、“ドラマ”を作ることに尽力しました。
※1:第三研究開発本部長にして、龍が如くスタジオ総合監督・名越稔洋氏
――企画から完成までの期間はどのくらいでしたか?
企画自体は4年ほど前に考え始めたのですが、ソフトを開発し出してからは2年です。最初はDSで作っていたのですが、動と静のメリハリや表現で苦労していました。そんな時に、3DSが出ることを耳にして、せっかくならということでハードを見直すことになりました。
ハードを変えるにあたり、3D立体視ができるハードということをふまえて、ダンスという要素が入りました。そこまでの過程では怪盗とリズムの結びつきが弱かったのですが、踊るように戦ったりテンポよく侵入したりと、3DSにしたことでつながっていなかったところがつながるようになりました。
――ダンス系のリズムゲームはすごく音楽に乗れますよね。ダンスには何かこだわりがあったのですか?
ダンスは、いろいろなTV-CMを手掛けている振付師の方と、ダンサーのアジアチャンピオンの方にお願いしています。ミュージカルもやられている方なので、いろいろ相談しつつ考えていただきました。特徴がなかったところに色を付けようということで入れたダンスですが、最初は少なかったんです。ただダンスを増やしていったほうが映えるということで、徐々に増えていきました。
――個人的にはオープニングの“SHOW TIME”のダンスが印象的でした。
オープニングは、いきなりダンスが始まって「唐突だ」という意見もあったのですが、ミュージカルも突然踊り始めるじゃないですか。ストーリーはドンドン進んでいくのですが、なぜか時々踊ることでメリハリもできる。
“SHOW TIME”では、凱旋門の上や船の上で踊りますが、ちょっとやりすぎという意見もありました。ただ派手でおもしろいということで、最初に印象づけるために採用しました。実はあのダンス以外で、あそこまではじけているものってないんですよ(笑)。
――ターゲットはどんな層を想定していましたか?
女性を含む、セガのゲームをあまり遊ばないようなライトユーザーですね。『サンバDEアミーゴ』や『スペースチャンネル5』とのコラボが発表され、古きよきセガユーザーが反応してくださっていますが、どちらかというとライトユーザーを取り込むことをやってみたいと思っていました。あと、ソニックチームでは「全世界で売る!」というのが昔からの命題でしたので、一部の人に売るのではなく全世界で売れるタイトルを作りたいと思いました。
――TV-CMでタレントを起用しているのも、ライトユーザーへのアピールからでしょうか?
昨今のゲームは、出来が悪くて売れないのではなく、知られずに埋もれてしまって売れないということが多々あります。このタイトルをやる時から、「売る覚悟を持ってやっていこう」と掲げて、しっかりタイトルを覚えてもらう施策をしていくつもりでいました。
『リズム怪盗R』まで入れると長いので、まずは“R(アール)”を覚えてもらおうと“R”の付く4人を起用しました。また、ゲームの中にある喜怒哀楽を表現してもらうために、いろいろなことをやってもらえるメンバーにしています。中でも、上島竜兵さんは涙を流したり、はげしく踊っていただいたりして、かなりの演技派であると感じました。撮影の時は、上島さんの演技に感動しましたね。
――ヒロイン・マリアのボイスに剛力彩芽さんを起用した理由は?
新しいタイトルなので、いろいろな人に知っていただきたいという一方で、フレッシュさを出したいという気持ちがありました。重鎮の方を起用すると作品に箔が付くのですが、タイトルとのバランスを考えて、これから伸びる若い彼女にお願いすることにしました。
オープニングテーマ曲を歌うmiwaさんも、ドラマのテーマ曲などですでにデビューしていて実力もあるのに、フレッシュさも感じる方です。“フレッシュ”というキーワードとPRという2つの面から、剛力さんとmiwaさんを起用しました。
→次のページでは、制作時の苦労話を語っていただきました(4ページ目へ)
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