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2012年2月15日(水)

タイトルから物語を引き出した――第18回電撃小説大賞銀賞受賞作『勇者には勝てない』の著者・来田志郎先生のインタビューを掲載!

文:電撃オンライン

『勇者には勝てない』

■死ぬかもしれないと思って小説を書き出した

――イラストをご覧になっていかがですか?

 びっくりするぐらいかわいいです! 表紙の2人のあまりのかわいさにド肝を抜かされました!

――イラストを見て、キャラクターへの印象が変わったりしませんでしたか?

 漠然と「かわいい」としか考えていなかったヒロインを、かわいいはもちろんのこと大変グラマラスに描いていただきまして! 妹のいるお姉さん、という面が自分の中でより強調されました。

――キャラクターの名前には意味が含まれていたりするのでしょうか。

 “菅田香澄”さんは神のような人物ということで最初“神田”だったんですが、“神”を入れてしまうとそのままになってしまうと思ってこうなりました。北瀬はもともとが巨人なので、北欧神話の北のイメージから。鉄次郎という名前は、鉄人28号みたいに大きくて強いというイメージから付けました。

――イメージで付けていく感じなんですね。

 もとのイメージから遠くなっていますが、一応どのキャラクターにも名前の由来はあります。

――作品を書くうえで影響を受けたものなどはありますか?

 ジャンルで言うと冒険ものが好きなんです。命知らずな男たちが困難に挑んでいくような。でも、この作品はそういったものではなくて、ごく自然に死にたくないと思っている人たちの話になりました。

――前回の第17回にも応募されたということですが、それ以前にも作品を書いたことはあるんですか?

 いいえ。そのときが初めてでした。

――小説を書き出したキッカケはなんですか?

 3年ぐらい前に、十二指腸潰瘍で救急車で運ばれたんです。その時あまりのお腹の痛さに、死ぬかもしれないなと思ったんですよ。入院することになって病室のベッドを見上げているその時に、「こんな何もしないで死んでしまっていいんだろうか」と唐突に大げさなことを考えてしまって、さらに大げさなことに今まで自分が培ってきたものを、若い人たちに残さなければいけないんじゃないかと思ったんです。後で思い返すと大げさな考えにもほどがるのですが、死にそうになると、今までまったく考えなかったことが頭に浮かんでくるんですよ。病気は全然大したことなくて3日ぐらいで退院できたんですが、せっかく生きて帰ってこられたことだし、頑張ってみようかなと思って、小説を書き出したんです。

――そこでライトノベルを選んだのはなぜですか?

 若い人たちに向けて作品を書きたかったんです。

――ライトノベルの読者というと、中高生ぐらいですよね。

 そうです。思春期の多感な人たちにです。

――そういう人たちに向けて何かを残したい、ということでライトノベルを書き始めたということですが、この作品にはどういった想いが込められているんですか?

 「これからいろいろあるだろうけど人生って結構なんとかなるよ」といったようなことを言いたかったんです。

――受賞した時のエピソードなどあれば教えてもらえますか?

 最終選考の連絡をいただいた時に、17回はどんな作品が受賞したんだろうと思い、そこで『はたらく魔王さま!』を見つけたんです。この作品も勇者と魔王モノで、似ているなーと思ってよくよく調べたら、勇者と魔王モノっていっぱいいろいろあるんだなーと……。

――そこで初めて気が付いたんですね。

 僕の中では、勇者ではなく悪役が主役というところが、ものすごく意表を突いたつもりの作品だったんですよ。なので本当に驚きました。

――ちなみに、『はたらく魔王さま!』は読まれました?

 もちろん読みました。勇者と従者が出てくるところは似ていますが、物語のテーマなどはかなり違うのでちょっと安心しました。

――応募作品の執筆にはどのくらい掛かりましたか?

 3~4カ月ぐらいです。書き出してからちょっと詰まってしまって、2~3週間寝かせたりもしました。

→“ファンタジー世界にいる忍者”が好き?(3ページ目へ)

(C)SIROU RAIDA / ASCII MEDIA WORKS

データ

▼『勇者には勝てない』
■発売元:アスキー・メディアワークス
■発売日:2012年2月10日
■価格:620円(税込)
 
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