News

2012年8月27日(月)

【まり探】目指すは“ダンガンロンパ”というジャンルの確立――『スーパーダンガンロンパ2 さよなら絶望学園』開発者インタビュー

文:まり蔵

●学級裁判の緊張感やスピード感は、前作と比べて圧倒的に増加

――ゲームシステムについてお伺いします。今回、マップ移動を横スクロールにした理由は?

小高:『1』と違って舞台が密室ではないので、広い空間や場所の雰囲気を見せたかったんです。でも、一人称視点だと広く見せられない。美しい海や空を堪能してもらうのなら、絶対に三人称視点だろうと。あとは見下ろしタイプにするのか、横スクロールタイプにするかの選択でした。

菅原:最終的に横スクロールに落ち着きまして、アドベンチャーゲームではなかなかお目にかかれない見栄えになりました。砂浜の波などには2.5Dの表現も入れ込むことができて、前作にはない絵ができたので満足しています。飛び出す絵本のようなマップ出現時のアニメーションにも、力を入れることができましたし。『1』では時間がなかったというのもありまして、2.5Dの表現ではやり残したことが多かったんですよ。

齊藤:前作は、飛び出す絵本のような方向性で行こうと決定した時期が遅かったんですよね。『2』はすでに決まっている状態から始まったので、見せ方にこだわることができました。

小高:今回、背景にはかなりこだわっていますね。アニメーションをしているマップも多く、プレイ後に心に残るマップが多数あると思います。そこは従来のAVGとは異なり、RPGのような感覚で作られています。

寺澤:今作では、かつてグラスホッパー・マニファクチュアに在籍していて、現在はフリーの石坂明彦さんにお願いして、アートディレクションをしていただいたんですよ。

齊藤:AVGの背景に外部の方を招聘して、監督のようなことをしてもらうことはあまり例がないと思うのですが、『2』ではそうまでして表現にこだわりたかったんです。

小高:石坂さんには会社に常駐していただいて、一緒に開発していただきました。

【まり探】 【まり探】

――学級裁判パートは、新たに加わった“反論ショーダウン”や“ロジカルダイブ”でよりアクション要素が強くなっていると感じましたが、これは意図して作られたのでしょうか?

菅原:そうです、本作は推理アクションゲームなので(笑)。前作よりも、よりハイスピードになっています。“ロジカルダイブ”は、前作でボツになったネタを復活させました。“閃きアナグラム”も新しく“改”調整していますが、アクションが苦手な方でもクリアできるように難易度を調整しているつもりなので、難しすぎることはないと思っています。

――“ロジカルダイブ”は、最初「ジャンプができずに落ちたらどうしよう……」と思っていたのですが、感覚的な操作で楽しめました。

菅原:横に移動して進んでいけばなんとかなるので、そこまで複雑にはなっていません。タイミング重視のアクションにして、初心者の方でもクリアしやすいようにしています。

――ゲームシステムを作っている際に苦労した点は?

菅原:苦労だらけなんですが、特に“反論ショーダウン”は仕様が固まるまでに二転三転しました。最初は議論の中で“反論”が起きて、議論の中身が変わるというシステムだったんですが、あまりうまくいかなかったので今の形にしました。僕の中で、『1』では弾を撃つことをしたので、『2』では斬ることにしようと。それで“反論ショーダウン”では、言刃(コトノハ)を用いて斬ることにしました。学級裁判ではできるだけいろいろなことを体験してもらいたいと思っていて、“反論ショーダウン”では新たな遊びを提供できたと思っています。

【まり探】

――“反論ショーダウン”はなかなか歯ごたえがありますよね。結構手こずりました……。

菅原:そうですね、ちょっと難易度が高いですね(一同笑)。ただ僕たちは、少し疲れるくらいがちょうどいいと思っているんです。

寺澤:緊張感やスピード感は、前作と比べて圧倒的に増えたと思います。そこはアクション性に対する僕らのこだわりです。アクションだからこそ、これだけのスピードやテンポを保つことができる。テキストアドベンチャーでは、ここまでの演出は難しいのではないでしょうか。『ダンガンロンパ』ならではのシステムだと思いますね。

――制作中の印象的な出来事や、トラブルなどのエピソードがありましたら教えてください。

齊藤:トラブル……多すぎて、どれがトラブルなのか……。

寺澤:でも大きいトラブルといえば“十神事件”じゃない?

小高:実は、十神の音声収録で漏れがあったという事件がありまして……。コーディネーターの方にお願いして、別枠でセリフを2つほど収録してきてもらいました。基本的に開発期間が短いので、トラブルだらけです。シナリオ、システム、イラスト……すべてを平行して作っているので、トラブルが起きやすいんです。

齊藤:声優さんの収録スケジュールもかなり違います。本来であれば、シナリオが全部書きあがってから収録します。ただ本作は、シナリオとゲーム性が深くかかわってくるため、ある程度の段階で収録をしようとしてもセリフが変わることがあるんです。だから、ギリギリまで調整した後で収録に入ります。ただ、声優さんは人気の高い方ばかりなので、スケジュール調整が難しい中でなんとかしてもらうことになるのです。

小高:すべてが同時進行なので、シナリオを書いている身からするとかなりしんどいです。システムの相談をしつつ、「背景をどうしよう?」と話しつつ、さらにキャラクターを作りながら次の章を書いている。もうワケがわからなくなります(笑)。シナリオも、短編ではなく1つ大きな物語としてつながっているので、最後まで書くと最初のほうにほころびが出てきて、そこを直すと同時進行で進めている他の部分とモメたり……。

寺澤:作る前は、『1』よりもスムーズに制作できると思っていたのですが、そんなことはなかったです。むしろ『1』よりきつかった気がします。

小高:おかげで燃え尽きました(笑)。

【まり探】

→次のページでは『ダンガンロンパ』の今後について伺いました(5ページ目へ)

(C)Spike Chunsoft Co., Ltd. All Rights Reserved.

データ

▼『スーパーダンガンロンパ2 さよなら絶望学園』ダウンロード版
■メーカー:スパイク・チュンソフト
■対応機種:PSP
■ジャンル:AVG
■発売日:2012年7月26日
■希望小売価格:5,200円(税込)

関連サイト


まり蔵探偵事務所