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2012年10月3日(水)

『バイオハザード6』リレーインタビュー第3弾でプランナーチームが語ったシナリオを軸とした作り方――ユーザーごとのスタイルを楽しんでほしい

文:電撃オンライン

■開発者でも新鮮な要素がゲーム中に詰まっている

――ワールドワイドでリリースされる作品ですが、ローカライズはいかがでしたか?

佐々木:全世界に売っていきたい作品なので、世界的なカルチャライズをかなり気にしています。基になる物語を作ったのは山下と外部のライターなんですが、それを海外に持っていった際にどういう表現になるのか、セリフはどうなるのかを、米国のロサンゼルスの外部スタッフさんと協力してずっと調整を続けていました。ロサンゼルスでモーションキャプチャーを収録している時に、ネイティブなアクターさんの自然な演技から出たセリフを反映させつつ、現地スタッフと密なやりとりをしながらローカライズの精度を上げていきました。

――モワンヌさんはゲームデザインをするうえでどのようなことを心がけましたか?

『バイオハザード6』

モワンヌ:レオンのシナリオを担当したので、そのシナリオのカラーにマッチする敵を考えていきました。スタッフが150人もいるとそれぞれの個性がある。それぞれのチームに求められているものと、やりたいことを模索して、敵やギミックのアイデアを出していきました。

――レオン編で特に意識したのは何でしょう?

モワンヌ:ゾンビが久々に復活しているのですが、『4』以降のアクション性が強くなった流れを盛り込む必要がある。そのためにアクション性が強くなっている中で、ゾンビをどう描くかは命題でした。そこに関しては、ゾンビだけなくさまざまなアクションをプレイヤー側に用意することで対応できるようにしています。

――やはりゾンビが好きで、思い描くゾンビ像を持っているのでしょうか?

『バイオハザード6』

田岡:あると思いますよ。『バイオハザード』のゾンビもそうですし、ジョージ・A・ロメロの『ゾンビ』や『バタリアン』のゾンビもある。『デッドライジング』のゾンビと、本作『バイオハザード6』のゾンビは異なり、このゾンビはこういうものというお約束がある。本作であればどういう風に感染して、どんな仕組みになっているのかという設定を考えて、話にもゲーム性としても、うまく組み込めたと思います。

――皆さんが好きなシナリオを教えてください。

佐々木:難しいですね。あえて言うと……レオンかな。久々にゾンビと戦えるのがうれしかったんです。僕は1995年にカプコンに入社したんですが、その時に隣の机で第1作『バイオハザード』を作っていました。それで衝撃を受けてから、ずっと『バイオハザード』シリーズの大ファンなんですよ(笑)。

――ディレクターが大ファンってすごいですね。

佐々木:すみません(笑)。ただ、あの時のインパクトが染みついているので、それを今の技術で遊べるのはうれしかったので選びました。

田岡:僕はクリスの中盤あたりから、すごく感情が入るので好きです。あとは3本を終えた後にプレイするエイダ編ですね。他のシナリオをやっている時は気にもならなかったけど、エイダ編をやった後にクロスオーバーの裏側が明かされるのが気持ちイイので、そこが好きです。今、聞かれた「好きなシナリオはどれ?」という質問なんですが、僕もいろいろな人に聞いているんですよ。

――開発スタッフに聞いていたんですか?

田岡:本当にいろいろな意見があるのがうれしかったです。例えば全員が「レオン編がいい」と答えたら、どうしようかなって思うんですが、いい意味でわかれている。なので、発売後はプレイした人の意見が楽しみですね。ユーザーさん同士で話し合ってもらえることに、期間段階から憧れていたのでぜひそうなってほしいです。

山下:シナリオを作っていく中で、すべてのシナリオに気持ちが入っています。その中で選ぶとすると、クリス編の後編は人間関係が劇的に変わっていくのがおもしろいです。あとはジェイクとシェリー編ですね。面識のないところから始まり、逃亡劇をしていく中で絆を深めて、どうなっていくのかを見てほしいです。関係性の変化がおもしろい物語になっていると思います。

『バイオハザード6』

――クリス編は、場末で飲んだくれているクリスが衝撃的でした。

山下:佐々木から「ああいうシーンから入ろう」という要望があり、やさぐれたクリスが描かれています。クリスは1作目から出ているヒーローなので、ファンの思い入れも強いキャラ。その彼がああいう形になっているのは、シリーズを遊んでいる方に強い衝撃を与えられるという意図です。

モワンヌ:僕は2年間、レオン編を作っていたので、他の物語を見たくなってしまいますね。開発者としてココが本作のすごいところだと思っていて、新鮮なものがどこにでもあるんですよ。開発スタッフ全員で定期的にゲームをプレイしていたのですが、他のシナリオでは自分が見たことのないことがバンバン起こる。

 クリス編は開発しているところがなかったので、ほとんど知らないために、毎回おもしろい経験をできました。ジェイク編のノリも独特だし、エイダの物語も特徴的。うーーん、でも1つ選ぶとしたら、ラストのオチがおもしろいクリス編ですね!

――キャラクターでもスタッフの好みはあるのでしょうか?

田岡:ありますよ。平林はエイダが好きなので、彼女を大切に扱わないと叱られます(笑)。小林は小林でレオンが好きなので、どちらも持ち上げつつ、ファンと開発スタッフの希望も取り込みつつ作っていきました。

――物語の魅力、見どころを教えてもらえますか?

山下:全部といってしまっても過言ではないほど、見どころ満載のシナリオですが、今回の売りでもある“クロスオーバー”は外せません。レオンとクリスのクロスオーバーを例にすると、レオン側から見るとこういうシチュエーションで出会って、こういう心情で進んでいくというのに対して、クリスはまったく違う感情で接する。クロスオーバーは、レオンとクリスだけではなくいろいろな組み合わせがあります。いろいろなシナリオをプレイしていただき、出会いと別れといった邂逅(かいこう)を楽しんでいただきたいです。

――2ndトレーラーの最後で、レオンとクリスが銃を構えて「テロの重要な証人だ」「テロの首謀者だ!」と言っているのは、今話していた“違った見方”の1つですね。

山下:はい、象徴的なシーンの1つです。今回シナリオを作る上で、佐々木から一番最初に見せられたのが、レオンとクリスが銃を突きつけているシーンでした。ストーリーが何もできていない状況で「この絵が見たい」というように言われ、クロスオーバーもそこから始まりました。シリーズの2大主人公の出会いなので、単純に対立して銃を向け合っていてもおもしろくないじゃないですか? なにかしら理由があって、そこが大きな起点にならないといけない。そこに向けて、皆で考え、皆で動いていきました。

『バイオハザード6』 『バイオハザード6』

――ゲームの作り方として、1枚の絵を見せるためにシナリオやシステムを構築していくというのはよくある手法なのでしょうか?

田岡:『デッドライジング』ではありましたね。ディレクターの河野(河野禎則)から「ショッピングモールにゾンビがあふれているのを見たい」と言われて、それに向けて形作っていきました。

山下:今回の『6』に関しては、佐々木から「こういう絵が見たい」というイメージビジュアルが出されるというのが、多かったです。そのビジュアルをもとに、話し合いを重ねてシナリオを作りあげていく。今までにないくらい多かったのですが、非常にやりやすかったですね。

――佐々木さん自体がそういう作り方をしてきたのでしょうか?

佐々木:まちまちです。プランナー出身なので、ゲーム性やシステムから出すことが多かったのですが、今回はビジュアルから出しました。レオンとクリスの対峙に続いて出したのは、丘の上に7人が並んでいる絵でした。が、それも何も設定は決まっていませんでしたね(笑)。パッケージビジュアルに近い絵を見せて、「この絵、カッコよくない?」っていうそれだけから始まる。……今思うと、銃を向け合っている絵は、物語からゲーム性まで、すべてを語る1枚だったと思いますね。

田岡:企画書の一番最初にも、あの絵が出ていましたしね。

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