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2013年3月30日(土)

パート別スタッフが語る『BEYOND: Two Souls』に込められた信念 ――『BEYOND: Two Souls』開発スタッフインタビューその2

文:おしょう

■豊かな感情表現を実現させるためのテクニックとは

――Quantic Dreamの作品の登場人物は非常に豊かな感情表現を見せてくれるのが魅力ですが、『BEYOND: Two Souls』ではその感情表現のためにどのようなことを重視されていますか?

Christophe:まずはDavidのシナリオ、そしてなんといっても役者さんの演技が重要です。その2つによって、プレイヤーにどのような感情を喚起させるべきかが決まってきます。具体的な制作過程としては、パフォーマンスキャプチャーで収録した映像を元に、アニメーションや設定を足していき“演技を拡張”していく感じですね。

 まるで虫眼鏡で見るかのように大切な部分に焦点を当てて、それを広げていきます。そのあとにカメラアングルや音で、さらに感情表現の幅を広げていくのです。

『BEYOND: Two Souls』

Damien:映画では役者の演技に対し、カメラアングルや照明で感情を引き出すように工夫しますが、本作でも同じように照明を使って、優しい場面では柔らかいライティング、激しい場面では非常にドラマチックなライティングで盛り上げていく、といった演出を行っています。

Christophe:その一方で映画とは異なる部分も多々あります。まず、パフォーマンスキャプチャーの収録時はセットがなく、現実感のない空間の中で演技をしてもらう形になります。また、映画の完成版は2時間くらいですが、ゲームではもっと長い時間ドラマが展開するので、覚えるセリフも膨大です。実際に撮影する期間も長く、役者さんの負担は大きいですね。

――ちなみにキャプチャーできない目の動きなどはどのように再現されているのでしょう。

Christophe:目の動きは実際に眼球をキャプチャーするわけではなく、まぶたの動きなどを元に復元しています。目は人間の感情を表現するうえで重要な部分なので、かなり気を使いますね。

――それだけ細かい感情を表現するには、リアルな人間の観察も重要だと思いますが、やはり日常的に家族や周囲の方の表情を観察されているのですか?

Christophe:ええ、毎日観察しています(笑)。地下鉄に乗っているときなどは一番観察しますね。地下鉄の照明の中で人の顔がどのように見えるかとか、寝ている人や疲れている人はどのような表情をするのか、とか……。やがてすべての人の表情を影とディテールで判断して見るようになったら、もう職業病ですね(笑)。

――街や背景を作る際のこだわりもお聞かせください。

Christophe:街の作り方という部分でも、Davidのシナリオには細部にいたるまでこだわりがあり、ロケーションはそれをどう忠実に表現するかになります。まずシナリオにとってどのような舞台が必要か考え、それに基づいて写真などの資料を収集していく流れですね。

――街の風景において『ファーレンハイト』では雪、『HEAVY RAIN』では雨といった天候が1つのモチーフになっていましたが、今回はそういったモチーフはないのでしょうか。

Christophe:『BEYOND: Two Souls』ではステージが大きいですし、1つの街だけでなくさまざまな場所が登場するので、そういったモチーフは限定していません。

 また、数日間の物語だった『ファーレンハイト』や『HEAVY RAIN』と異なり、『BEYOND: Two Souls』はジョディの15年間を描く物語なので“視覚的に時間の変化がわかる”ように描いています。特に本作は時系列順に物語が語られるわけではないので、視覚的な変化は重要です。ジョディのキャラクター描写も年代ごとに髪型や服を変化させ、視覚的にどの時代の物語なのかをプレイヤーにわかってもらえなくてはいけません。

 ジョディの周囲の人物たちが年老いていくなどの変化でも時代を感じられるようにしています。また、ジョディの行動やエイデンの能力も、年代ごとに変化していきます。

Damien:そういった意味で、今回の『BEYOND: Two Souls』は『HEAVY RAIN』の延長線上の作品とは考えてほしくないのです。ゲームの構築の仕方もまったく違うので、プレイヤーに新たな驚きを与えたいと考えています。

――最後に、それぞれのお立場から、本作をどのように楽しんでほしいかお聞かせください。

Christophe:まずは単純にジョディという女性の人生を楽しんで、そして友人や家族と、この『BEYOND: Two Souls』の体験を共有してほしいです。

Damien:本作は20%プレイしたらひと区切り、というタイプの作品ではなく、とにかく没入して全編通してプレイしてしまうようなゲームになると思います。可能な限りいいゲーム体験を提供したいですね。とにかく長い間秘密にしていたプロジェクトだったので、改めて多くの人の目に触れることになるのが大きな喜びです。ぜひ楽しみにしてください。

→一番難しかったのは、幅広い層がプレイできる
直感的なプレイを実現すること(3ページ目へ)

(C)Sony Computer Entertainment Europe. Developed by Quantic Dream.

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