2013年5月23日(木)
音楽は、大きく分けるとハイ・ミドル・ロウの3つの音域から成り立っており、そのバランスによって曲の雰囲気は大きく変化する。3つの音域や音圧などの余分な部分は削り、足りない部分は少し肉付けする微細な調整を行い、最終的な音を決定するのがマスタリングエンジニアの仕事だ。その微調整だけで、原曲のよさをそのままに、曲にグルーヴ感まで足せると言うのだから驚きだ。
また、作曲家本人では気が付かないクセや、それによって偏ってしまった音楽のバランスの1つ1つもエンジニアが調整する。なお、マスタリングを作曲家が自ら行うこともあるため、林さんによると「その時のために、自分のクセを石井さんの修正方法から汲み取って、生かせるように勉強している」そうだ。
特にアルバムはたくさんの曲の集合だ。曲の集合にバラつきをなくして1つの作品として仕上げるのも、マスタリングの役目だという。
▲空港の管制室を思わせる作業台。ここで石井さんが音楽に魔法をかける。 |
▲作曲家から受け取った曲を左のMacで再生し、右のWindowsの“SADiE”というソフトを使って録音する。基軸となるのはこの2台のマシンだ。 |
音域の調整に使用するイコライザーとコンプレッサーは、それぞれデジタルとアナログの2パターンが用意されている。アナログのイコライザーは、0.5デシベル単位の調節しかできないが、デジタルのイコライザーは0.1デシベルから調節が可能。ただし、アナログ機材でしか出せない音もあるとのことで、どちらのマシンを使用するかは、豊富な経験を持つ石井さんの感覚による判断次第だ!
▲イコライザー、コンプレッサー、ブラックボックスが三神合体しているアナログ機材。最下部に鎮座するブラックボックスは、音響ハウスのオリジナルのもの。一体どんな役割を果たすものなのか、すべては謎に包まれている……。 |
▲上段にあるアナログイコライザーは“GML9500”。GMLは“ジョージ・マッセンバーグさんのラボ”の略とか。誰!? かっこいい!! | ▲中段のアナログコンプレッサーは、“NEVE-33609”を使用。型番がガンダムっぽい! かっこいい!! |
▲デジタルコンプレッサーは、TC.Electronic社の“System6000”。“究極のプロセッシング・プラットフォーム”という公式サイトの製品紹介がすでにかっこいい!! | ▲アナログ化した音源を再びデジタル化するには、Pacific Microsonics社の“HDCDコンバーター”を使用する。横文字かっこいい!! |
▲作業をする石井さんの右手の先には、試聴する音源を選択するセレクターが。たまにアルバム内の別の曲を聴いて、作業中の曲と統一感があるかを確認するのも、アルバム作りには欠かせない作業だ。 |
スタジオにある高級スピーカーからいい音が出るように調節したとしても、家庭用のスピーカーではどうしても音質や音圧が劣化してしまうため、曲がまったく違うイメージになってしまう。そこで、家庭用のスピーカーで聴いても元の音源と遜色ないように調整によって再現させるのも、マスタリングの大事な役目だ。「その技術に優れている点も、スーパーエンジニア石井さんの魅力の1つ」と林さんは語る。
▲スタジオモニタ用のハーマンインターナショナル社“JBL 4338”スピーカー。 | ▲一般家庭にもあるようなミニコンポでも音を確認している。 |
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