2013年5月23日(木)
▲『Sakura Flamingo Audiography -GREY-』 | ▲『Sakura Flamingo Audiography -PINK-』 |
作曲家は、作曲から録音までをすべて1人で作業を行っているわけではない。エンジニアという、“第1リスナー”が客観的に音楽を聴き、マスタリングによって作曲家とリスナーとの間に橋を掛けてくれる。
CDアルバムを購入する際、「この曲は、別のCDでもう持ってるし……」と思ったことが一度くらいないだろうか。確かに譜面上は同じ曲だが、それはリマスタリングによって大きな進化を遂げているかもしれない 時間経過による技術的な進歩はもちろんのこと、聞き手へ曲を提示する方法がエンジニアの手によって変われば、同じ曲であっても、まったく新しい曲へと進化する。
“リマスタリング音源”は、よくCDの紹介などで目にする言葉だが、今までそれほど気にしていなかった方も多いのでは? リマスター前の音源を持っている方は、この機会に新旧の音源を聴き比べてみるのもおもしろいかもしれない。
こうしたマスタリングによって、より深みを増した音源が収録されるアルバム『Sakura Flamingo Audiography -GREY-』『Sakura Flamingo Audiography -PINK-』。このCDについて、k.h.d.n.からメッセージをいただいたので紹介する。
林さん:今、みんなはmp3プレーヤーで再生した音楽を聴くことが多いけども、音はmp3にすることで圧縮されてしまうんです。些細な差だけども、こだわって作った音楽と違うものを聴くことになってしまう。だから、まずはCDをプレーヤーでそのまま再生して、聴き込んでほしい。曲順にも意味があって、1つの作品になっています。
永田さん:今回は、いわゆるベスト的な内容であるとも言えますが、この2枚ですべてがわかるというわけではないですし、決してこれで終わりでもありません。個人的には、k.h.d.n.の音楽は音だけでなく、世界を提示するものだと考えています。その一端がゲームに表われていることもありますし、CDに収録される音やビジュアル、または配信などに表現される場合もあります。
それを踏まえ、単なる音楽CD、単なるゲームミュージックのCDとして終わらないものにしたいと、林といろいろ相談しながら作りました。ぜひとも聴き込んで、いつまでも手元に置いてほしいなと思います。
「ゲームミュージックが好き!」という気持ちから、音楽制作に足を踏み入れた方、または「これから作ってみたい!」という方も多いはず。そんな読者に向けてのメッセージを、永田さんと石井さんからいただいた。
▲物腰柔らかな性格の石井さん。 |
石井さん:今、デジタル技術の進歩で、音楽が家庭でも手軽に作れるようになりました。作曲していく中で、いろいろと外から意見を言われるかもしれません。でも、自分がカッコイイと思う音楽をまず作ってほしい。曲作りはイメージから起こすしんどい作業だし、同様にアレンジも大変な作業です。技術面は音楽表現の一行程で、サウンドメイキングはCDをお手本にすれば何とか形になる。ただ、お手本を解読するにはそれなりのスピーカーで聴かないと細部まで解読できないのが厄介ですけど。何度もトライして一生懸命作って、聴く側と聴かせる側の壁が見えた時にはプロの手を頼ってください。曲を作る過程を楽しむことも音楽の1つですから。
▲意外と繊細な永田さん。 |
永田さん:裾が広がった分、みんなが同じようなものを作りがち。だからこそ、自分を信じて、自分がかっこいいと思ったものを作ってもらいたいよね。
石井さん:音楽はトーナメントが開かれて一番が決まるような世界じゃないから厄介ですよね。一番を決めるのは聴く人ですからね。
技術的な面では、エフェクトを使うにも、なぜそれを使うのかを考えて使うようにするといいかも。最初は音がリッチになるし変化が大きいからなんでもリバーヴかけるとかしがちなので(笑)。あとは、EQを上げて強調しようとせずに、いらない帯域を切ってアプローチしてみるとか……。
k.h.d.n.のこだわりや、石井さんの技巧が光る『Sakura Flamingo Audiography -GREY-』と『Sakura Flamingo Audiography -PINK-』。k.h.d.n.ファンはもちろん、ハウスやテクノのクラブ系サウンドに興味のある人にも、ぜひこの楽曲に浸ってほしい。『ラジルギ』や『カラス』などの異色STGを彩ったサウンドの世界から、新しいゲームミュージックの魅力が見えてくるかもしれない。
▲マスタリングの現場には電波系STG『ラジルギ』の相田タダヨちゃんも参戦していた。 | ▲真剣な面持ちでTwitterに投稿する林さんと、スマホに夢中な永田さん。 |
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