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2013年6月15日(土)

スクエニの市村龍太郎氏に聞く『ブラッドマスク』。その作り込み度はアプリの常識を覆す予感(PS4&Xbox Oneインタビュー付き)【E3 2013】

文:野村一真

『ブラッドマスク』
▲『ブラッドマスク』のプロデューサー・市村龍太郎氏。

――まず、実機を用いて『ブラッドマスク』のあれこれを教えていただけるとのことですが。

 早速プレイをお見せしましょう。『ブラッドマスク』の大きな特徴として、写真からキャラクターを作ることができるというのがあります。せっかくなので、よろしかったら野村さんの顔をカメラで撮影してキャラを作ってみていいですか?

――えっ!? 不細工ですが、せっかくの機会なので、まあ問題ございません(笑)。

 日本人にとって、自分の写真をキャラクターの顔に使うのって、やっぱり恥ずかしい感覚がありますよね(笑)。逆に海外の人たちの場合、「ひゃっほい!」的なことが多いんですけど。使用する写真はカメラで撮影したものでもいいですし、Web上で拾ってきたものでもかまいません。著作権とかを侵害しなければ、自分で書いたイラストをそのまま取り込むこともできます。

――かなり自由度が高そうですね。

 ワールドワイドで展開するにあたって、キャラクターをどうするか、いろいろ考えたんですけど、こういうやり方もありなんじゃないかと。我々が用意したキャラクターも一応はあるんですけど、それだけじゃなくて、いろいろな国のさまざまな人種の人たちが、自分好みにキャラクターを作れるというのが、テーマとしてはいいんじゃないかと判断して、このような仕様にしました。

――あっ、先ほど撮影していただいた私の表情がキャラクターの顔に取り込まれました(笑)。輪郭が補正されて、ふっくらした顔がゲーム中ではシュッとしました。これはうれしい!

 スマートになれるのも1つ売りです(笑)。ただ、今の状態だと髪の毛が覆いかぶさっている感じですので、髪の毛を変更するなどしてカスタマイズしていきましょう。普段やらないような髪型に挑戦するという手もありますね。もちろん、女性キャラクターも作れます。

――おー、いろいろと整ってきました!

 髪の色を明るくしたら、なんだかアーティストっぽくなりましたね(笑)。肌の色もなじませたので、ちょうどいい感じになったんじゃないでしょうか。肌の色をなじませる仕組みはなかなかないと思います。これをやることで、うまい具合にバランスがとれた顔に仕上がりますよ。では、このキャラクターで早速プレイに移りましょう。

『ブラッドマスク』 『ブラッドマスク』
▲カメラで撮影してもらった表情がキャラクターの顔に取り込まれ、もろもろのカスタマイズも完了。輪郭補正のおかげで顔がマシになりました!

 ここからイベントシーンやバトルをお見せします。出発前に2人の仲間をパーティに入れたんですけど、この仲間も、実は他のプレイヤーが作ったキャラクターなんです。野村さんと同じように顔を作ったキャラクターが、バーっと表示されて並ぶんですよ。その中から2人を選ぶことができます。ランダムで表示させることはもちろん、あらかじめFacebookと連動させたうえで表示させることもできます。ちなみに、2人の仲間はAIで戦ってくれます。

――おっ、イベントシーンですね。

 イベントシーンにも、ちゃんと取り込んだ顔のキャラクター出てくるようになっています。イベントやバトルはもちろん、キャラクターが表示されるところすべてにおいて、取り込んだ顔が反映されます。

『ブラッドマスク』
▲こんな感じでイベントシーンでも自分の顔のキャラクターが。恥ずかしい。

――次はバトルですね。私の顔のキャラクターが戦うのか……。

 もちろんです(笑)。バトルの操作はすごくシンプルで、タップをすると攻撃、スワイプをするとその方向に避けます。ゲームアプリの『Infinity Blade』の場合、スワイプで攻撃を繰り出せるんですが、『ブラッドマスク』はその逆というか、ちょっと違う操作性にしてみました。360度すべてにおいてモデルを作っているんで、背景もこの通り。このシンプルな操作性でどれだけ奥深く戦えるかというところに挑戦しています。iPhoneにも対応していて、親指だけのプレイも快適に行えますよ。

――あっ、体力が減ってきてます。

 この攻撃は、ヴァンパイアの吸血です。吸血されると相手のHPが回復してしまいますので、なるべく吸血されないように戦っていくのもポイントです。ここで、ちょっとテクニカルなことをやってみましょうか。敵の攻撃を受けそうなところで、タイミングよく避けると、スローモーションになって連続攻撃のチャンスが生まれます。

『ブラッドマスク』
▲タイミングよく避けることに成功すると、このエフェクトが発生。
『ブラッドマスク』
▲カウンター扱いとなり、タップし続けることで連続攻撃を繰り出せる。

 この“ひきつけて避ける”というテクニックが戦闘のポイントで、これを続けていくと、画面左上の円形のゲージがだんだん溜まっていきます。主人公はヴァンパイアと人間のハーフなんですが、このゲージが溜まり切ると、ヴァンパイアの血を呼び起こしてスペシャルアタックを繰り出せます。このようにタップすると、ヴァンパイアの一部能力を引っ張り出した連続攻撃ができて、さらに仲間も追撃。そして最後に必殺技を一発かませます。派手で威力の高い攻撃がシンプルな操作で出せるんですよ。

――これは気持ちいいですね!

 この敵との戦闘には続きがあって、人間型の状態のものを1回倒すと、ヴァンパイアが真の姿を現し、新たなバトルに突入します。敵のHPはもちろん、攻撃力も上がっていますし、攻撃パターンも変わったりするんで、別の緊張感が生まれると思います。今回の敵は最初に登場するものなので、そんなに強くないですが、先に進むと巨大なものが出てきたりだとか、特殊な攻撃をしてくるものとか、いろいろなタイプが出現します。プレイヤー側も装備品を変えるなどのカスタマイズ要素でキャラクターを強化し、戦っていくことになります。

『ブラッドマスク』
▲装備画面がこちら。状態異常の付与や攻撃力アップなどのスキル(?)に加え、それぞれにレベルが設定されている点にも注目。

 真の姿を現したヴァンパイアのHPが0になると、心臓に杭を刺して倒す場面に移行します。そして杭を刺すと、ヴァンパイアの血を杭に封じます。そして、その血を自分に注入することでキャラクターが育つ、いわば経験値になってレベルアップしていくんですね。『ブラッドマスク』は血液というところにこだわっているので、そういった要素も入れてみました。とどめを刺すための杭ですが、全部で3種類あって、木の杭でもらえる経験値は少なめです。ここにアイテム課金の要素が入っていまして、一番いい金の堅杭だと大量の血液=経験値が手に入り、レアアイテムも必ず入手できるという仕様になっています。

『ブラッドマスク』
▲木、銀、金の3種類の杭が存在。“入手可能レア”の項目はもちろん、“ターゲット血族”という項目も気になる要素。

 ミッションを受けてヴァンパイアと戦う流れは以上のようになります。その他の要素としては、町の中が特徴的ですね。操作はシンプルで、町の人と会話することも可能です。町の人に話しかけて、そこからミッションに向かい、クリアして戻ってくる。この流れを繰り返すことでストーリーが進展していきます。

『ブラッドマスク』
▲町の中の移動操作は非常にシンプル。カメラワークを駆使して美しい町並みをチェックすることもできる。
『ブラッドマスク』
▲町の人との会話シーン。ちなみに、この時のプレイでは言語を英語にしていたので、内容はわからず。

――町並みを見ていて思ったのですが、グラフィックの作り込みが半端ないですね。

 グラフィック面は相当高いレベルまで到達していると思います。正直、僕らも作っていてびっくりしましたね。ここまでやれるんだって。アップルの人ですら驚いていましたから。“iPhoneやiPadで究極のグラフィック目指す”というところからグラフィック制作がスタートしたので、徹底的に研究し、アップルさんにもいろいろ教えてもらいました。アルンリアルエンジンを使ってはいるんですが、それでもここまでのグラフィックを実現したゲームはなかなかないと思います。『Infinity Blade』は固定のカメラなんで、そこに表現力をつぎ込めるわけですが、『ブラッドマスク』は町中を自由に歩くことができ、そのうえでここまで表現するというのは、なかなかちょっとできない。相当なクオリティだと思います。

『ブラッドマスク』 『ブラッドマスク』
▲町のグラフィックを端的に表している写真。iOSのゲームで、よくぞまあここまでのクオリティが実現できたものだと感嘆。

 実は音楽にもかなり力を入れています。収録をハリウッドの生演奏でやりまして、アカデミー賞のバックで演奏してる人たちが『ブラッドマスク』の曲を演奏しています。『ミッション:インポッシブル3』や『カーズ』といった映画の収録を行ったエンジニアの人たちにもかかわってもらったんで、先ほどのグラフィックもさることながら、サウンドも相当豪華ですね。

――すごいこだわりようですね。正直、驚きました。

 いろいろとこだわってしまいました(笑)。こだわったと言えば、先ほど野村さんの写真をキャラクターの顔に使わせていただきましたが、実は3パターンの表情をキャラクターの顔に取り込めるんですよ。普通の表情と怒っている表情、喜んでいる表情の3パターンを取り込むことができまして、戦闘中にグッと気合を入れているところとかで表情が変わるようになっています。イベントシーンでも表情の変化が採用されるので、ユーザーさんの工夫次第でいろいろなことが起きると思います。例えば、喜んでる表情に猫の顔を取り込んだりとか。そうすると、やってなんだこれってなったりする。ゲーム画面のスクリーンショットを撮ってシェアできたりもするので、いろいろと広がりがあると思います。もちろん、2人の仲間にも埋め込まれていますので、連れていく仲間の表情に注目するのもおもしろいですね。ネタ的な表情が取り込まれていたりすると、ハハハこいつ、みたいなことになるんじゃないかと。

――そんな要素もあったのですね。

 他にも仕込んでいることはいくつかあって、そのうちの1つが“いいね!”ボタンです。ミッションが終わったあとなどの画面に“いいね!”ボタンが付いてまして、仲間に対して「あんた活躍したね」って思ったら、ボタンを押してあげるとします。すると“いいね!”のカウント数が上がっていきまして、これが人気のバロメーターになるんですよ。キャラクターとして強ければ連れて行ったほうが有利ですし、顔や表情がおもしろいキャラクターであっても、そういう部分で“いいね!”を押されるでしょう。そういった、ちょっとしたソーシャル要素も盛り込んでみました。“いいね!”のカウントは、実績解除に関係してくるんですが、たとえカウント数が高くても、キャラクターの能力など、直接的な部分には影響しません。言い換えれば、わざと影響しないようにしました。そうしないと、“いいね!”がもらえなかった時に問題が起きそうなので。“いいね!”の要素は、ライトなかかわり方のところに終始しています。

『ブラッドマスク』
▲Facebookの“いいね!”ボタンがゲーム中に。ソーシャル要素は今や、ゲームにおいても必須といえる。

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データ

▼『BLOODMASQUE』
■メーカー:スクウェア・エニックス
■対応機種:iOS
■ジャンル:アクションRPG
■配信日:2013年夏予定
■価格:未定

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