2013年8月10日(土)
──ゲーム中では、敵組織の最終的な目的は明示されていませんが、結局のところ燈月は何をしたかったのでしょうか。
表から見た裏、裏から見た表はイコール(=)ではなく、それぞれ見え方は違います。燈月というキャラクターは、身を持ってそれを体験した人物です。彼の真の目的は、大切な人と、永遠をともにすることでした。冷静に大局を見通すことができる切れ者の彼が、一個人の願望のため、世界を巻き込んで事を起こした原因は、彼の過去にあります。
幼くして両親を亡くした燈月は、姉が唯一の肉親でした。彼女は燈月にとっての実姉であり、また母のような存在でした。端的に言うと、とてもシスターコンプレックスであったわけです。彼は、世界の裏を担う機密組織“O∴M∴L∴(組織の略称。読みは、オーエムエル)”の直下で働く特殊組織の総司令官であった過去があり、唯一の肉親である姉もまた、その特殊組織の研究所に所属していました。
MTの表向きは、凶悪犯罪を専門とする特殊部隊で、国立研究所は自然環境や医療技術研究を行っているとされながらも、裏ではMINDや狂精神界の研究、強制的なMIND憑依など、兵器開発目的の人体実験を行っていたのです。
燈月の姉は、機密組織“O∴M∴L∴”の指示のもと、燈月のあずかり知らぬところでその実験に被検体として利用され、表世界での存在を失い、MINDと同化する形で裏世界の住人となってしまいます。MINDの姿形はMIND使いにしか目視できないため、裏世界の存在を知りながらも、ただの人であった燈月は姉を捜すべく、遺された研究報告書をもとに自身の命と半身を引き換えにMINDと強制契約を結び、MIND使いとなります。
しかし、MINDが上位となる不完全な契約により、その後もMINDは燈月を蝕み、残された時間と身体を徐々に喰らっていくこととなります。さらに、MINDと融合してしまった姉を表世界(物質界)にとどめるため、燈月は自身のMINDに加えて姉とも契約を結び、侵食はより加速しました。
自身の残された時間を悟った燈月は、延命処置として、自身の代わりに他のMINDを喰らう事で時間を稼ぎ、“O∴M∴L∴”への復讐と、“O∴M∴L∴”が秘密裏に探していた、永遠があるとされる第三世界を手に入れるための準備を整えていました。
──燈月を慕っていた麗華と雪斗にとっても、報われない話ですね。
麗華と雪斗は、それぞれ過去に大きなトラウマを持っており、それゆえに盲目的に燈月を慕っています。どちらも共通して、「必要とされたい」という願望を強く持っています。燈月はそれらを与える代わりに、2人に力を行使することを求めていました。
また、MINDとMIND使い間の関係が、必ずしも友好的ではないことをほのめかす、重要な役割を担ったキャラクターでした。MINDの基本的な性格は獰猛にして攻撃的、常に人を捕食しようと試みている……そこから予想される2人のその後は? など、いろいろとご想像していただけたらと思います。
──謎の多いキャラクターというと、奏は何者なのでしょうか?
奏は、一番自由そうに見えて、一番不自由な位置づけにいる特殊なキャラクターです。彼は“O∴M∴L∴”の目として現地におもむいて見聞し、それを組織に報告する任を負っています。
奏が“O∴M∴L∴”と敵対しているはずの燈月たちと、グループとして行動をともにしていたのは、監視の命令の他に、互いの利害の一致と、わずかな共感から来るものなのかもしれません。退屈が嫌いな彼は、変化と自由を求め、燈月に力を貸し、慧に助言を与えていました。無類のゲーム好きの彼は、文字通りその身を賭けたゲームをしていたわけです。『MIND≒0』のその後を描く機会があった時、どんな活躍をしてくれるのか期待がかかるキャラクターの1人であると思います。
──雫が特別な力を持っていた理由とはなんでしょうか。また、ゲーム中では謎が多い“特別授業”について具体的に教えてください。
天宮高校には、慧・紗菜・獅子が通う普通科と、雫が通う生物資源科という2種類の学科があります。表向きはごく普通の県立高校ですが、生物資源科には、裏世界の影が潜んでいます。
生物資源科には、意図的にMIND使いの素養を備えた一般出の子供たちが集められており、雫たちが受けていた“特別授業”は、国立研究所研究員による“自分の心を見つめなおし、身体と精神の繋がりの科学的な根拠を立証する授業”。つまり、“MINDとの強制契約・憑依実験”を行うというものになります。
──絵本のような“混沌の禁書”や、最初に訪れる“慟哭工房”など、印象に残るダンジョンが多く登場しますが、それぞれのダンジョンのモチーフを教えてください。
狂精神界の見た目やモチーフは、キャラクターイメージや、敵サイドの燈月たちを意識したダークイメージ漂う単語や一文を元にイメージボードが作成されました。
【慟哭工房イメージ抜粋】
・施設内に張り巡らされた配管
・ベルトコンベアー式に流れ作業で進む製造ライン、量産
・廃墟、廃棄
・巨大なファン
・階段、梯子
・創造と破壊
・いらない子
・狂った運命の始まりの場所
【混沌の禁書(リィナ)イメージ抜粋】
・すべてが薄っぺらな紙で作られた世界
・転がっているクレヨンや絵の具といったこの世界を造るための道具
・へたくそな絵
・幸せになるはずだったお姫様
・迷い込んだら戻れない
・報われない物語
こうして書き出したテキストを改めて見ると、非常にむずがゆいのですが、こうした妄想からイメージボードが作られ、ダンジョンパーツに落とし込まれて行きました。
──“ご老人”や“第三世界”など、本編内で気になる単語が散見されますが、この作品の背景や組織などについて教えてください。
“ご老人”は、“O∴M∴L∴”のことです。世界を裏から取り仕切る機密組織で実質的な表世界の支配者で、構成員は匿名のため特定はされていません。物質界・狂精神界の先に存在する、“第三世界”を手に入れるため暗躍していて、第三世界には本当の“永遠”があるとされています。
──ゲーム中に出てくるMINDは固有の名称で呼ばれませんが、それぞれのMINDに名称の設定はあるのでしょうか?
各個人のMINDに正式名称はありません。MINDの設定として、“対同士でしか意思疎通を図ることはできない”というものがあります。対同士、本人同士の会話に呼称は必要ないのですが、他人との会話時に名称が弊害として出てくるわけです。
──では、琴音のMINDが暴走状態の時に敵として出てくる“ベイズクラッシャー”は、MINDの名称というわけではないと。
“ベイズクラッシャー”という呼び名は便宜上のものであり、MIND自体の正式名称ではありません。また、各ダンジョンで遭遇するMINDたちの名称も同じく、MINDという異世界の住人の総称の中の分類・呼び名・通り名といったイメージで解釈していただけたらと思います。……でも、獅子あたりは、そのうち自分のMINDに「お前の名前考えてやった!」とか、言いだしそうですね(笑)。
──その他、ゲーム中では語られていない裏設定などありましたら教えてください。
そうですね……獅子は左利きです。この設定は、獅子役を演じていただいた中村悠一さんの一言からつい最近決まりました。底抜けに明るく、お馬鹿な発言の目立つ獅子ですが、稀にシリアスな一面を見せてくれることがあります。そんな彼の2面性を表すため、片腕のみ鬼化させたデザインとしました。あとは、雪斗君のお母さんの職業は教師といった設定もあります。
→エンディングを衝撃的な終わり方にした意図とは?(3ページ目)
(C) 2013 ACQUIRE Corp. All Rights Reserved.
データ