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2013年11月15日(金)

【ほぼ毎日特集#61】目黒将司さんと土屋憲一さんのコラボが生んだ未公開音源を掲載! インタビュー「教えて!土屋憲一先生」(後編・ミゲル)

文:ミゲル

■一晩ででき上がった名ジングル「エヴリディ・ヤングライフ! ジュネス♪」

――土屋さんのアレンジは丁寧で素敵です。

土屋:アレンジに関しては、“やるべきことをやる”という意識を強く持っています。『ペルソナ4 ザ・ゴールデン』の『真・ミツオ転生』も、本当は『ペルソナ4』の時点で入れておくべきだったんですけれどもできなかったので、“やるべきことをやった”結果としてでき上がった曲ですね。

●『真・ミツオ転生』/土屋憲一

※2012年6月27日発売『ペルソナ4 ザ・ゴールデン オリジナル・サウンドトラック』(アニプレックス)

 これもいわゆる“ピコピコ音源”ですが、目黒さんが作曲した『デビルサマナー 葛葉ライドウ 対 超力兵団』の曲を、僕がFC風にアレンジしたものもあります。息抜きというか、ついカッとなってというか、趣味で作ったものですけれど。好きな曲を耳コピーでシンプル化して骨組を観察するということは、今でもやります。立場的になかなか公開はできませんが(笑)。

●未公開音源『バトル -ライドウ-』FC風アレンジ/原曲:目黒将司 アレンジ:土屋憲一

※本楽曲は、ゲーム中に使用されたものではありません。

※原曲『バトル -ライドウ-』:PS2用ソフト『デビルサマナー 葛葉ライドウ 対 超力兵団』初回購入特典ディスク収録

 『ペルソナ4』といえば、あとは『ジュネスのテーマ』ですね。『ペルソナ』シリーズのネタ曲というと『サトミタダシ薬局店のテーマ』がありますが、あそこまでハジけたものではなくて、お茶の間を演出する効果音の1つだと思っていたんです。「テレビからジングル流れて、ふ~ん」くらいの気持ちで作ったら、菜々子が歌ってくれたおかげで盛り上がってしまって、逆に恐縮な感じになってしまいました(笑)。

 神田朱美さん(堂島菜々子役)のレコーディング前日に、プランナーから「菜々子がTV-CMに合わせて鼻歌を歌うシーンがあるんだけど、明日レコーディングなので曲を作ってくださいナウ」と相談されて、急きょ「エヴリディ・ヤングライフ! ジュネス♪」の部分だけの仮歌を作って持って行ったんです。

 その僕が作ったジングルを小塚良太くんが膨らませて、『ジュネスのテーマ』を作ってくれたんですよ。

――小塚さんとのコラボレーション感もいいですね。

土屋:本当に、あの中毒になる感じがうまいですよね。「某家電量販店で流れてそうな曲でね?」と頼んだらあれができ上がって、「うわぁ~、うまいなぁこれ」と思いました。脱力感がみなぎっている上に、妙に頭から離れなくてね(笑)。

●『ジュネスのテーマ』/小塚良太

※2008年7月23日発売『ペルソナ4 オリジナル・サウンドトラック』(アニプレックス)

――アレンジ曲の制作が多い土屋さんですが、ご自身の曲がアレンジされることも多いですよね。それについて、何か感じることはありますか?

土屋:初めてCD化していただいた『女神異聞録ペルソナ』の時は、アレンジャーさんがギリシャの方で「音楽業界すげぇ……!」と思いました。アレンジしていただける、ゲームファンの方に聴いていただけるのは光栄ではありますが、あくまで自分が作っているものは“ゲーム”であって“音楽”を作っているわけではないという意識を持っています。ですから(サウンドトラックも含め)“音楽CD”になった時には、いい意味で自分とは関係ない別の世界の出来事のような、フワッとした感覚でした(笑)。

 ファンの方が喜んでくださるようにアレンジしていただければ、それが一番です。我々が作っているものは音楽単体としてバラで売るものではないので、いざ音楽だけをクローズアップしてCDを作るとなった時は、音楽の専門家が手掛けてくださるとうれしいです。なので、もはや自分が口を出すことではないというか、すでにいちリスナーになりきるっている面がありますね。

――アレンジされたご自身の曲を聴かれた時は、どのような気持ちですか?

土屋:これはもう恥ずかしいです。自分でイマイチうまくできていないと思っているところを、全部聴かれて分解されていることでもあるので気恥ずかしいですね(笑)。個人的には、あまりにも大胆で大幅なアレンジは原作のイメージから離れすぎてしまうのが残念なので、あくまで元のゲームを好きな方が喜んでくれるものになればいいなと思います。音楽だけ聴いてもイケてるかどうか、というのはその次の段階の話ですね。

 自分で過去のアトラス作品の楽曲をアレンジする時は、ファンの方が何を求めて、どうすれば喜んでくださるのかを常に考えています。ですが、ニーズも多様な中、広範囲をカバーするのはなかなか難しい問題ではあります。我々が作品として発表できるチャンスは1本だけなので、一発勝負でどれだけ多くのファンの方にニヤリとしていただけるか、ということですね。

■“メガテンファン”として、やるべきことをやった結果としてのアレンジ楽曲

――『真・女神転生IV(真4)』の公式サイトでも流れていましたが、先着購入特典の中のサウンドトラックは素敵ですね。

土屋:あれは、僕が趣味で作ったものを使ってもらったんです。メガテン大好きっ子なので、ティザーサイトで流せる曲はないかと思った時に、「じゃあ、『真・女神転生』のOPアレンジ曲を作っちゃえー!」と広報さんに投げたら使ってもらえたんです。

 「こうなったら『真・女神転生II』、『真・女神転生III』と続いて、最後に小塚くんの『真・女神転生IV』がドーンと来るのはどうよ!?」という話になりまして、自分の首を絞めたというか……、『真・女神転生II』、『真・女神転生III』のOPアレンジ曲も追加で作ることになりました。

※2013年11月現在、『真・女神転生IV』公式サイトでは小塚さん作曲による『sdds IV』が掲載されている。

――あのアレンジ曲は、今の音だからこそできたといった感じがありますよね。

土屋:そうですね。あれは増子さんの原曲にあまりにも存在感がありすぎるので、原曲をそのまま流すことも考えました。でも、新たなメガテンへの花道を飾るのであれば、空気感を統一したいと思い、あのころの自分の耳に聴こえていたあの“メガテンサウンド”を、今の自分がアウトプットしてみることにしました。自分には、SFCのサウンドがああいった風に聞こえていたんですね。

●『真・女神転生』タイトル/増子司

※2003年3月5日発売『真・女神転生 サウンドコレクション』(アニプレックス)

――アトラスのニューウェーブ・小塚さんの『真4』曲が最後に来る演出も素敵です。

土屋:小塚くんなんかはもう、僕からすると「メガテンのメの字も知らない若造がッ! 俺なんか増子さんにお会いしたことありますけど!?」みたいなヤング世代に見えるワケですよ。なので最初は、「過去のシリーズは気にせずに好きに作ってね」と優しく言っておきつつ柱の陰からこっそり観察する感じでした。

 それでどんなフリーダムな音楽が出てくるかと思ったら、最初の数曲のデモから歴代メガテンシリーズのサウンドをものすごく尊重している感があふれていたので、「これはもう自分が出る幕はないな」と……。

――小塚さんなりの解釈による新しい“メガテン”ですね。

土屋:そうですね。デモを聴いて安心したとはいえ、いわゆる“メガテン保守派”の自分がその小塚くんの曲を聴くと、多分余計なことを言いたくなるに違いないので、最終チェックまでは何も言わないしできるだけ聴きませんでした(笑)。もちろん、「メガテンの曲なら俺がやりたい!」と思いますけれども、今回の僕はそういう立ち位置の人間ではなかったんですよ。

――特典サウンドトラックの最後に収録されている『reincarnation』もカッコイイです。

土屋:パイプオルガンの生演奏を録りにも行きましたね。世界的にも数少ないという男性ハープ奏者の朝川朋之さんが、パイプオルガンも演奏なさると伺ったので今回はお願いしました。収録にお借りできるパイプオルガンを探すのも大変でしたね。

 実は、築地本願寺にもお寺としては非常に珍しくパイプオルガンが設置されているそうで、「そこで収録できたらすごいね~」と話はしていました。ですが、その築地本願寺は『真4』の作中でちょっと大変なことになっているので、さすがに「使わせてください」とお願いするのは図々しいかと思って(笑)、神奈川県民ホールで収録させていただきました。

 あの生演奏曲も、特典サウンドトラックの収録曲がティザーサイトの曲だけだとなんだか寂しいと思ったので、社内でアイデアを募集したんです。そこで「パイプオルガンの生弾き入れたーい!」「イェーイ!」くらいのノリで急きょ決まったんですよ。やっぱり、『真・女神転生』といったらパイプオルガンというイメージが個人的に強いもので……。

「教えて!土屋憲一先生」
▲3DS用ソフト『真・女神転生IV』先着購入特典 サウンド&アートコレクション

→あくまで“ゲームクリエイター”として挑む姿勢(3ページ目へ)

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