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2013年12月11日(水)

『ドラッグ オン ドラグーン3』レビュー。シリーズファンが考察する鬱と狂気を秘めたヨコオタロウ節と、シリーズ最新作としての評価【電撃DOD3】

文:タダツグ

■そもそもなぜ、この『DOD』という作品が愛されているのか?

 ここまで書いてきて、ふと疑問に思ったことがあります。僕も含めて、ぶっちゃけファンは、ヨコオタロウさんが手掛けるこの『DOD3』という作品に、何を期待しているのだろうか? ということ。ここからは、シリーズ作品のネタバレも書かせていただきますので、関連作品を未プレイの方はご注意ください。

 僕はイチファンとして、“予想を裏切る展開などで、プレイヤーをビックリさせるサプライズ”がヨコオさんの作品の魅力だと思っています。でも、実はそれって氷山の一角でしかなくて、本質的には、その悲劇の先(もしくは手前)になんらかの主張というか、見えない“ヨコオイズム”的な何かが存在していて、それこそが我々ファンの心を打つのではないかとも思うのです。

『ドラッグ オン ドラグーン3』 『ドラッグ オン ドラグーン3』
▲特に『DOD1』では、先がまったく予想できないカオスな物語が大きな話題を呼びました。ただ、それだけがあの物語の魅力であったかというと、それはちょっと違う気もするわけで。(写真は『DOD1』のもの)

 それは、ヨコオさんがヨコオさんならではの手法で、人間の心の動きを解析した結果によるものなのか、または彼が自らの感性のおもむくままに導いた結果なのかはわかりません。狙っているのかいないのかがわかりませんし、たぶん、いろいろ説明が足りていない部分もあるのでは、って気もします(あの人の場合、足りていないことを把握したうえで放置している可能性大ですが)。

 でも、その“何か”こそが、我々をこんなにも惹きつけてやまないような気も……するんですよねぇ……。

 ということで、僕なりに考えてみました。これはあくまで僕の仮説ですが、ヨコオさんの考える美学、手掛ける物語の根底にあるのは、“どうしようもない絶望に抗い、戦う者たちへの讃歌”なのではないでしょうか。『DOD1』では、絶望しかない戦いの中で救いを求めるように戦い、ようやくたどりついたのがあの新宿での悲劇でした。『ニーア』で兄と妹(または父と娘)が“愛”によって導き出した結論は、そのまま種としての滅びに直結する結末でした。

『ドラッグ オン ドラグーン3』 『ドラッグ オン ドラグーン3』
▲絶望に抗ったところで、それが報われるとは限りません。それでも、抗い続けること。そこにヨコオさんの考え方というか、美学のようなものを感じてしまうのです。(写真は『ニーア』のもの)

 これらを見て、僕は思うのです。“人間にはどうすることもできない、絶対的な何か”というのは、この世界に確かに存在するのでは……と。現実世界はもちろん、それはゲームの世界においてもそうなのかもしれません(少なくとも、ヨコオさんが作る作品内においては)。そしてその絶望を前にして、たとえ勝つことができないとしても、必死に抗う登場人物たちに、僕たちは魅せられているのではないかでしょうか。

 それこそがヨコオさんの作品の根底に流れる“ヨコオイズム”であり、僕たちファンがどうしようもなく惹かれる部分な気がします。ご本人にそういうと、「全然見当違いですよ」とか言われるかもですが……。

『ドラッグ オン ドラグーン3』

 だいぶ脱線した気もしますので、『DOD3』に話を戻しましょう。僕はこの物語に触れた時、その手触りというか、プレイした感覚が、ものすごく新鮮に感じたんです。それは、言い換えると“違和感を覚えた”とも言えるわけで、もしかしたらこの感触を『DOD』らしくないと感じる人、自分の求めるものではないと感じる人もいるんじゃないかなぁと思います。

 ただ、今回の物語の根底にもしっかりと……むしろ、これまでの作品以上に“絶望へと抗い続ける美学”が貫かれており、僕は心を打たれました。作品の根幹がブレないクリエイターさんというのは、ものすごく誠実だと思います。常に奇想天外な側面ばかりを見せてくれるヨコオさんですが、実はファンに対してものすごく真摯に向き合ってくれているんだと、『DOD3』をプレイして確信しました。

 常に我々に驚きを提供しつつ、自らの主張をしっかりと物語に織り込むというのは、きっと両立させるのが大変なことだと思うので。

『ドラッグ オン ドラグーン3』
▲人と竜の物語。その絆の形。個人的には、3作目にして最高傑作が生まれたのではないかと感じています。あくまで個人的にですよ、と予防線を張っておきますが(苦笑)。

 ゼロという主人公が持つ、ゆるぎない信念。それをすぐそばで支えるミハイルの純粋さ。そして、この2人の間に存在する強靱な絆の力。『DOD3』では、『DOD1』のカイムとアンヘルとも、『DOD2』のノウェとレグナともまったく異なる、新たな人と竜の関係性が描かれています。

 ゼロとミハイルがどのような絶望と相対し、どのようにして抗うのか。少しでも興味がある方は、ぜひこの『DOD3』をプレイしてみてほしいです。きっと予想もつかない、だけどどこか懐かしい物語が、あなたを待っていますよ!

→より深く、濃く、物語を楽しむためのアドバイス(3ページ目へ)

(C)2013 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.
Character Design : Kimihiko Fujisaka.

データ

▼『ドラッグ オン ドラグーン3 設定資料集+ザ・コンプリートガイド』
■プロデュース:アスキー・メディアワークス
■発行:株式会社KADOKAWA
 
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