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2014年2月13日(木)

『九龍妖魔學園紀』インタビュー:學園ジュヴナイルの名手・今井秋芳監督のルーツを探る【最新作『魔都紅色幽撃隊』発表記念特別企画】

文:長雨

 『東京魔人學園伝奇』『九龍妖魔學園紀』といった“學園ジュヴナイル伝奇”で知られる今井秋芳監督へのインタビュー第2回をお届けする。

 今井監督によるファン待望の完全新作PS3/PS Vita用ソフト『魔都紅色幽撃隊』が、アークシステムワークスより2014年4月発売予定で現在開発中だ。この新作発表を記念して、今井監督と金沢十三男プロデューサーへのインタビューを実施。“學園ジュヴナイル伝奇ADV+RPG”のルーツを探るとともに、最新作にかける熱い意気込みをお届けする。

 今回は、今井監督の代表作の1つ『九龍妖魔學園紀』についてたっぷりお話をうかがった。『東京魔人學園伝奇』について聞いた第1回のインタビューとあわせて、ぜひご覧いただきたい。


◆『九龍妖魔學園紀』とは?

 今井秋芳監督が手掛ける“學園ジュヴナイル伝奇”の1つ。宝探し屋(トレジャーハンター)である主人公は、学園生活を送るかたわら、そこに隠された遺跡の謎に挑むことになる。

 遺跡を探索するパートで、敵を倒しながら奥へと進んでいく3Dマップが採用されているのが大きな特徴だ。『東京魔人學園剣風帖』など、今井監督作品ではおなじみの感情入力システムも継承されている。

 『九龍妖魔學園紀』は、PS2用ソフトとしてアトラスから2004年9月16日に発売された。2006年9月28日には、新ダンジョンやエピソードなどを追加した『九龍妖魔學園紀 re:charge』も発売されている。

“學園ジュヴナイル伝奇”インタビュー “學園ジュヴナイル伝奇”インタビュー “學園ジュヴナイル伝奇”インタビュー

◆『魔都紅色幽撃隊』開発スタッフ プロフィール

今井秋芳監督:“學園ジュヴナイル伝奇”の生みの親。独自の世界観と、若者たちの青春群像劇を描いた作品群は多くのファンに愛され続けている。

金沢十三男プロデューサー:『夜想曲』をはじめとした赤川次郎サウンドノベルシリーズなど、ミステリやホラージャンルを得意とするプロデューサー。今井監督とはゲームボーイアドバンス『東京魔人學園符咒封録』でもタッグを組んでいる。

“學園ジュヴナイル伝奇”インタビュー
▲「今井監督はここにいますよ」と金沢プロデューサー。仲よく肩を組んで(?)写真撮影を行った。(今井監督はデビュー以来、一貫して顔出しNGであることで有名)

■ピラミッドと本格トレジャーハンターを再現した『九龍妖魔學園紀』

――『九龍妖魔學園紀』は、2DのシミューレションRPGだった『東京魔人學園伝奇』とは打って変わって、3DダンジョンをメインとしたRPGになっていて驚きました。

今井:トレジャーハンターといえばピラミッドなので、それを作りたかったんです。ピラミッドを作るには3Dで再現するしかないので、そこは最初から決まっていました。

――トレジャーハンター要素をベースに、システムやダンジョンを作っていったんですね。

今井:そうですね。トレジャーハンターものを作ろうという思いから、ストーリーや世界観を決めて、遺跡のビジュアルも3Dで表現しようと考えました。

――世界観もすごく凝っていますよね。

今井:ダンジョンは、逆さピラミッドにしました。ピラミッドはもともと王の墓なので、埋葬された者が天に召されるように作られています。『九龍妖魔學園紀』ではその逆で、「呪われろ、地の底に落ちろ」という意味が込められたものになっています。

 またダンジョン内では謎解き要素があるんですが、そこはすべて、『古事記』と『日本書紀』に由来する日本ならではの記紀神話をモチーフにしました。

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▲遺跡の独特な雰囲気が、3Dで見事に表現されている。(画面写真はPS2『九龍妖魔學園紀』)

――金沢さんは、『九龍妖魔學園紀』が制作されていた当時、どんなお仕事をされていましたか?

金沢:たしか、当時の電撃PlayStationで『九龍妖魔學園紀』について何か書いたことを覚えています。なんでだろう(笑)。

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▲電撃PlayStation VOL.270表紙用描き下ろしイラスト。

今井:たぶん『東京魔人學園』と『九龍妖魔學園紀』のコラボブックですね。それは私も覚えていますよ。雑誌のスタッフも、キャストも、制作サイドも、みんなハガキで応援メッセージを送ってもらったという設定のコーナーで、ゲームボーイアドバンスの『東京魔人學園符咒封録』でご一緒した金沢さんにも書いてもらいました。

 あの小冊子は、皆守と京悟が握手している号の付録ですね。あれはすごく印象深かったです。

■シミュレーションにアクティブさを持たせた戦闘システム

――『九龍妖魔學園紀』の戦闘システムは、どのように作られていったのですか?

今井:『東京魔人學園』ではAP(行動ポイント)を使って武道を表現をしましたが、『九龍妖魔學園紀』では違うアプローチをしています。こちらでは、シミュレーションにアクティブさを入れたかったんですよ。

 『東京魔人學園』の戦闘は囲碁や将棋のようで、戦術をじっくり練る楽しみがある反面、アクティブさとは離れたシステムになっていました。でも、トレジャーハンターって、すごく活動的な職業じゃないですか。だから銃を撃つにしても、銃を選びます→撃ちます→バンバンというのは違うなと。APがなくなるまでずっと銃を撃ち続けられるようなアクション性がほしくて、『九龍妖魔學園紀』の戦闘システムはあのような形にしました。

――ボタンに武器を割り振って、アクションゲーム的に戦えるのがすごく楽しかったです。

今井:実在する重火器を、ボタン押しっぱなしで使えるようにしていますからね。それもシミュレーションの中に、アクティブさを出すための要素でした。手りゅう弾を投げてマシンガンをAPが尽きるまで打つとか、プレイヤーがやりやすいように戦えたと思います。

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▲プレイヤーが各ボタンに武器を自由に割り振ることができ、ボタンを押すだけでAPが尽きるまで簡単に攻撃できた。(画面写真はPS2『九龍妖魔學園紀』)

――戦闘だけでなく、ダンジョン内のアクションもやり応えがあっておもしろいものが多かったです。

今井:あのシステムは、ユーザーさんにも高く評価してもらえましたね。完全なアクションにしなかったのは、苦手な人が遊べなくならないようにするためです。

 たとえば裂け目をジャンプしましょうという時に、ヘリのギリギリまで移動してジャンプするというのを難しく感じる人もいます。そこで、通信簿で体育の成績を上げてスキルを伸ばすとジャンプできる距離が伸びるなど、アクションが苦手な人でもちゃんとクリアできるような仕組みにしました。

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▲特定の行動をとることでダンジョン内のギミックを解いたり、隠し要素をオープンできたりした。(画面写真はPS2『九龍妖魔學園紀』)▲通信簿でスキルを伸ばすことで、ダンジョン内での行動が有利になっていく仕組みだ。(画面写真はPS2『九龍妖魔學園紀』)

――同じAPを使った戦闘でも、作品ごとにまったく違う作り方をしているんですね。最新作の『魔都紅色幽撃隊』ではどうなるのでしょうか?

今井:『魔都紅色幽撃隊』では、幽霊の行動を予測するためにAPを使います。チェスで、駒の動きを予測しながら戦うのに近いですね。チェスの駒の場合は、アタックすると生か死の2択ですが、本作ではキャラごとに技が用意されています。どの技なら相手を倒せるか、プレイヤーが選べるのが大きな違いでしょうか。

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▲APの範囲でうまく敵の行動を予測し、バトルを優位に進めていく。(画面写真はPS3/PS Vita『魔都紅色幽撃隊』)

■感情入力システムのボタン長押しは、感情の高まりを表現

――感情入力システムも、『九龍妖魔學園紀』でかなりバリエーションが増えました。

今井:最初はガンとボタンを押すと、より強い気持ちを表せるようにしたかったんです。普通にボタンを押すとただの“愛”なんですけど、ガツンと押すと“強い愛”になるみたいな。

 そんな加圧式のコントローラを使いたかったのですが、現実的に難しいですし、コントローラがすぐに壊れるなと(笑)。そこでボタンを長押しすることで、感情が高まっていくのを表現する方向にしました。

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▲キャラクターとのコミュニケーションでは、8つの感情+無視(未入力)を入力できる。(画面写真はPS2『九龍妖魔學園紀』)

―――感情入力システムの分岐が多いですが、そのぶんシナリオ制作が大変ではありませんか?

今井:感情入力システムを作ったのは私なので、全然大変じゃないです。感情も「これならシナリオができる」と思ったものばかりですからね。

金沢:『魔都紅色幽撃隊』では大変です(笑)。シナリオのお手伝いもしているんですが、感情ごとのニュアンスの違いを、完全に出さないといけないですからね。僕が今までやっていたサウンドノベルの主人公も無色透明に近いですが、今井さんの作品のはもっと透明に近い。すべて主人公視点の物語で、主人公の手も足も出てきませんからね。予定調和のセリフが書けないんです。

今井:『魔都紅色幽撃隊』の主人公は、無色透明な変態ということだけ決まっています(笑)。

金沢:“味”=“なめる”っていう選択肢が変態っぽいよね(笑)。

――“味”と“嗅”は、なかなか衝撃的な選択肢です。

今井:東京ゲームショウの試遊で、アークシステムワークスのコンパニオンさんに笑われたらしいです。遊ぶ人がみんな、キャラをなめるので(笑)。

金沢:本編でみんななめたら、仲間になってくれなさそうですけどね(笑)。

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▲最新作『魔都紅色幽撃隊』では、感情だけでなく感覚も入力できるようになった。中には“味”や“嗅”など、使いどころが謎なものも。この2つを使って、どのようにキャラたちとコミュニケーションをとっていくのだろう……。(画面写真はPS3/PS Vita『魔都紅色幽撃隊』)

今井:あと、皆さん“なめる”と言っていますが、あれは“なめる”じゃないですから(笑)。正確には“味わう”です。味わうにも、雰囲気を味わうなどいろいろありますからね。

金沢:“怒”+“味”だと、噛みつくようなニュアンスになりますね。まあ、女の子に噛みつくのも変態ですけど(笑)。

■1つのRPGをまるまる遊べたミニゲーム『ロックフォードアドベンチャー』

――『九龍妖魔學園紀』といえば、ミニゲームの『ロックフォードアドベンチャー』もかなり話題になりました。

今井:『九龍妖魔學園紀』は、古今東西すべてのトレジャーハンターの要素を入れたかったんですよ。今後発売されるトレジャーハンターものに超えられないものを作りたい。どの作品を作る時でも、そう思って作っています。

 だから、映画『インディ・ジョーンズ』や『トゥームレイダー』、『ハムナプトラ』、日本だとマンガ『スプリガン』、小説『トレジャーハンター・八頭大ファイル』シリーズなどの要素を全部盛りにしたかったんです。

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金沢:今、用意してもらった電撃PlayStationのバックナンバーを読んでいたら、この時の今井さんもインタビューでまったく同じこと言っていますね(笑)。

今井:『九龍妖魔學園紀』のプロローグがエジプトから始まるのは、『インディ・ジョーンズ』が小さいクエストをこなした後で本編に入るのと同じ構成になっています。本編は日本が舞台になっているんですが、トレジャーハンターといえばやはりエジプトじゃないですか。そこで砂漠と遺跡の物語は、ミニゲームでやろうと思いました。

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▲自室で、プレイできるレトロゲーム風のミニゲーム。トレジャーハンター・ロックフォードの冒険を、まるまる1本楽しむことができた。(画面写真はPS2『九龍妖魔學園紀』)

――王道のトレジャーハンターを描いたRPGが、まるまる1本遊べるのはすごかったです。

今井:気の強いヒロインがいて、子どもが出てくるのはトレジャーハンターのお約束ですよね。ただ『ロックフォードアドベンチャー』の制作は、まるまる違うゲームを作ることになるので、それならもっと本編でやれることがあるんじゃないか、という話が出たりもしました。

金沢:当時、大変なことをしているなと思いましたよ。

今井:だから、全部自分で作るって言ったんですよ。シナリオもマップも、私が1人で作り始めました。最終的には、どんどんボリュームが増えていったので、みんなにも手伝ってもらいましたが(笑)。

――『魔都紅色幽撃隊』にも、ミニゲームが用意されていますね。

今井:『九龍妖魔學園紀』のミニゲームはファミコン風でしたが、今回はボードゲームです。私も金沢さんもボードゲームが好きなので、ちょっと作り込みすぎましたね。本編よりも、ミニゲームがおもしろいと言われないようにしないと(笑)。

金沢:作っているうちにおもしろくなってきてしまって、追加ボイスとか収録しましたもんね(笑)。

――お2人とも、ボードゲームはかなり遊んでいるのでしょうか?

今井:アナログゲームをやっている世代ですからね。ファミリーコンピュータを持っている人が少なく、カードやボードゲームで遊んでいました。

 戦闘もののシミュレーションがすごく好きで、アバロンヒル社のウォーシミュレーションなどをよく遊んでいましたね。

金沢:僕もアナログゲームが好きなんですが、最近は子どもが『マジック:ザ・ギャザリング』にはまっているので、今井さんに最近使っていないカードをもらえないかと相談中です(笑)。

――そういったアナログゲームの経験が、ミニゲームでも生かされているんですね。

今井:ミニゲームのタイトルは『ハイパーナチュラル』。わかる人にはわかるネタです。ボードゲームではプレイヤーのキャラを選べるんですが、イケメン兄弟や尼僧など海外のゴーストものに出たゴーストハンターがモデルになっています。『東京魔人學園』のキャラクターデザインを担当した小林美智さんに協力してもらいました。このためだけに(笑)。

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金沢:そこまでやらなくてもよかったってほど、作りこみましたね。

今井:相当遊べる内容になっていますね。ボードゲームのボックスが開くところから始まり、パネルがちゃんと広がるモーションが入っています。中には駒とライフのおはじきが入っていて、おはじきはカラカラと動くんですよ。

 ボックスのアートも、デザイナーに頼んで描いてもらいました。スタッフもノリノリで作っていますね。こういった作り込みには厳しい私でさえ、「よく作ったね」とほめちゃうぐらいですから(笑)。

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▲超本格的なゲーム内ボードゲーム『ハイパーナチュラル』。カードのキャラクターデザインは『東京魔人學園』でおなじみの小林美智さんが担当している。(画面写真はPS3/PS Vita『魔都紅色幽撃隊』)

――それは、とても楽しみです!

今井:このためだけに、専用のルールを作りましたからね。本編とは完全に別のゲームです。

金沢:今井さんがA3の紙に、「こんな感じ」と書いたのが始まりです。

今井:こういう風に遊ぶというのを、さーっと書いたんですよ。それを、プランナーやスタッフたちがうまくまとめてくれました。

金沢:今回は夕隙社の仲間たちとも遊べるので、いろいろおもしろいと思います。あのミニゲームの部分だけ携帯アプリにしたいですね。

今井:いや、いっそ本物のボードゲームとして作りたいです(笑)。ただ、こんなにミニゲームを作り込んでしまうと、次回からのハードルが高くなりそうで大変です。ユーザーの皆さん的に、ミニゲームが作り込まれている大前提になっちゃって、ミニゲームがないとがっかりされてしまいそうですからね。

■閉鎖された學園ならではの個性豊かなキャラクターたち

――『九龍妖魔學園紀』のキャラクターの中で、特に思い入れのある人物はいますか?

今井:思い入れはみんな一緒で、特別というのはいないですね。ただ皆守は、人気が出るだろうと思っていました。

 ソフト発売までに、印象的だった出来事があるんですよ。『九龍妖魔學園紀』と『東京魔人學園』の合同イベントを開催して、私も専用のシナリオを書いたんです。その時は蓬莱寺京一にはみんな“愛”と叫んでいたのに、皆守には“友”とか“悩”という微妙な反応で(笑)。

 でも、案の定、ソフト発売後には皆さんに皆守を好きになっていただけたようで、うれしかったです。私の作品はシステムやキャラの魅力がわかりにくいところがあるので、そこはメディアの力などを借りて、発売前からうまくユーザーの皆さんに伝えていきたいですね。

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▲皆守甲太郎(声優:浜田賢二)。『九龍妖魔學園紀』に登場する、気だるい雰囲気をまとったクラスメートで、主人公の親友となる人物。カレーが大好き。男女問わず、絶大な人気を博したキャラクターだ。

――『九龍妖魔學園紀』は、個性的なキャラクターが特に多かった印象があります。

今井:閉鎖された学校が舞台なので、みんなおかしいです。

金沢:オカマとか、かなりすごいですよね。

今井:ジュヴナイル作品には、デブとオカマが出てきます。オカマでなくても、女言葉の同級生が登場したり。もちろん、『幽撃隊』にもオカマが出ますよ。

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▲朱堂茂美(声優:坪井智浩)。『九龍妖魔學園紀』に登場した、かなりインパクトの強いオカマキャラクター。陸上部に所属しているため、足がかなり速い。見た目は大変濃いが、中身も負けず劣らす濃い。▲肥後大蔵(声優:津村まこと)。巨大な体と、それに似合わないかわいらしい声を持った少年。お菓子が大好きで、よく食べている。オカマと並び、ジュヴナイルシリーズには欠かせないキャラクターだ。

――オカマ以外のキャラクターも、部活動ごとに個性派ぞろいでした。

今井:他の作品と被らないようにしていたというのもありますからね。でも取手など、予想外に人気が出たキャラクターもいたので、よかったです。

 取手は特殊な姿をする場面もあるんですが、これは最初、全員そうしようと思っていました。ただそれもおかしいなと思って、方向転換した名残が彼の服装です。『魔都紅色幽撃隊』には、『九龍妖魔學園紀』ほど濃いキャラクターは出てこないと思います(笑)。

金沢:そうかな。けっこう濃いキャラはいると思いますよ(笑)。

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▲取手鎌治(声優:加瀬康之)。音楽が得意な、心優しい少年。しかし、ある事情で別の姿を披露することも……。

■『魔都紅色幽撃隊』は、ホラーではないドラマを描く

――今回、“幽霊”をテーマに選んだ理由は?

今井:幽霊の系統はたくさんあっても、それを網羅した作品は少ないです。浮遊霊とか、動物霊とか、ポルターガイストとか、それらについて、描写する作品を創ってみたいと思っていました。

 そこで『魔都紅色幽撃隊』では、ホラーではなく、ちゃんとドラマとして霊を描こうと思っています。幽霊は人を延々呪い殺せるはずが、なぜそうしないのか。殺人鬼の霊がなぜ死後も殺人を犯さないのか。そういうことに、一定の解釈を与えたいと思っています。

金沢:エピソードによって、描く霊の種類も違います。

今井:霊がどうやって人間界に干渉し、ドアやコップを動かすのかもちゃんと描いています。霊は人間と違って、生身の手で物を動かすことができませんからね。

――作中で第六感が発動するというお話もありました。

今井:ゴーストと霊感は、切っても切れない関係ですからね。どう関係するかは、ぜひお楽しみに。

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▲事件の真相を調べていくと、通常の感情入力とは違う“第六感”が発動するようだ。(画面写真はPS3/PS Vita『魔都紅色幽撃隊』)

――今井監督作品といえば、ラーメンやカレーなど象徴的な食べ物がよく登場します。今回も何か出てくるのでしょうか?

今井:今回は焼肉です。みんな編集部で働いているので一般的な高校生よりもお金がありますし、社長の伏頼もおごってくれます。それに仕事が終わって、焼肉で反省会をするというのがすごく会社っぽいですよね。

金沢:焼肉屋の店員さん、かわいいですよね。

今井:店長と店員、ロゴまでちゃんと用意しています。店員さんは牛のエプロンをきているんですよ。

金沢:なぜか、前かがみ気味でね。

今井:巨乳の女の子です(笑)。『九龍妖魔學園紀』のファミリーレストラン・マミーズみたいな感じですね。

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▲舞草奈々子(声優:大塚麻恵)。校内にあるファミリーレストラン・マミーズのウェイトレス。マミーズは、学生たちの憩いの場所になっていた。

――それは会うのが楽しみです。話は変わりますが、遠藤ゆりかさんが歌い、PVの終わりのほうで一部が公開されているエンディング曲『黄昏ジュヴナイル』はかなり印象的な楽曲ですね。

●『黄昏ジュヴナイル』が使われている『魔都紅色幽撃隊』第一弾PV

今井:『魔都紅色幽撃隊』だけでなく、學園ジュヴナイル伝奇作品全体のエンディング曲にしようと思って作りました。ジュヴナイルのエッセンスがたっぷり入っているので、カラオケで配信されたらみんなで歌ってもらいたいですね。

金沢:遠藤ゆりかさんは、『魔人學園』でおなじみの織部神社の巫女である、曳目てい役としても出演してもらっています。

 ちなみにオープニング曲も、かなりカッコいいですよ。あの植松さんが、ロックを書いていますからね。

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▲曳目てい(声:遠藤ゆりか)。『魔都紅色幽撃隊』に登場する荒川区の織部神社の巫女で、学校では弓道部の部長をつとめている。『魔人學園』の織部姉妹と関係があるようだが?

今井:テーマ曲はロックで、メインカラーの紅。演出も色味も、これまでの作品とまったく違うようにしています。

――最後に、『魔都紅色幽撃隊』の発売を楽しみにしているユーザーの皆さんにメッセージをお願いします。

金沢:今井さんの“學園ジュヴナイル伝奇”の新作は、本当に久しぶりです。“今井節”が炸裂しているので、楽しみにしてください。また今井さんとキャラクターデザインの倉花千夏さんなど、いろいろなクリエイターがコラボしています。そこも、おもしろいと思いますよ。

今井:少し時間が空きましたが、“學園ジュヴナイル伝奇”の完全新作です。濃さでは過去2作に負けない内容になっていると思いますので、期待して待っていてください。

(C) ARC SYSTEM WORKS/TOYBOX Inc.
(C)2004 ATLUS/SHOUT!DESIGNWORKS
(C)2001 Asmik Ace Entertainment Inc./SHOUT!DESIGNWORKS
(C)2003 Marvelous Entertainment Inc./SHOUT!DESIGNWORKS

データ

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