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2014年2月16日(日)

石渡太輔さん、早矢仕洋介さん、寺田貴治さんの3人が格闘ゲームを熱く語る! “JAEPO2014”で開催された格闘ゲーム座談会の模様をお届け

文:電撃オンライン

 2月14日~15日に千葉・幕張メッセで開催されていた“ジャパンアミューズメントエキスポ2014”。開催初日のメインステージで開催された“ALL.Net P-ras MULTI 格闘ゲーム開発者座談会”の模様をお届けする。

格闘ゲーム座談会

 セガが提供するアーケードゲーム用オンラインネットワークサービス“ALL.Net P-ras MULTI”(APM)。本サービスを利用する格闘ゲーム3タイトルの開発陣として、『DEAD OR ALIVE 5 ULTIMATE ARCADE』のプロデューサーを務めるコーエーテクモゲームスの早矢仕洋介さん、『ギルティギア イグザード サイン』のゼネラルプロデューサーを務めるアークシステムワークスの石渡太輔さん、『電撃文庫 FIGHTING CLIMAX(ファイティング クライマックス)』のディレクターを務めるセガの寺田貴治さんの3名が登壇した。

 ゲスト陣の話を取りまとめるモデレーターには、ファミコン世代のレジェンド・高橋名人。同じ格闘ゲームというジャンルながら、システムや表現方法が全く異なる人気3タイトルの開発陣はお互いのゲームをどう思っているのか? 気になる部分はどこなのか? などを率直にぶつけつつ座談会は進行して行った。

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▲コーエーテクモゲームスの早矢仕洋介さん▲アークシステムワークスの石渡太輔さん▲セガの寺田貴治さん▲高橋名人

 実はゲストの開発陣3名はお互いに面識がなく、このステージが初めての対面という。初顔合わせでも貴重なトークは聞けると思うが、ゲスト陣が共通して尊敬する存在・高橋名人を仲介することでスムーズかつフランクな感じで進めていこうという狙いだ。その狙いはズバリ的中し、石渡さんや寺田さんは高橋名人を前に一介のゲーム少年に戻ったような無邪気な興奮を見せて、座談会を前にしてお互いをゲーム好きの仲間として打ち解けているような感が出ていた。

●お互いのゲームで気になっていたのは、こだわりのグラフィックとゲーム演出

 座談会は、まず各ゲストが1タイトルずつ紹介し、それについてどんどん語ってもらうという形式で進行した。なお、記事では実際にステージにて行われた掛け合いをできる限り再現する形でお届けする(敬称略)。

格闘ゲーム座談会

 最初にスクリーンに登場したのは、13年ぶりにアーケードに復活した『DEAD OR ALIVE 5 ULTIMATE ARCADE』。早矢仕さんは『DOA』シリーズの特徴として「打撃・防御・ホールドの3すくみにし敵の攻撃をカウンターで反撃できる、攻撃的なシステム」と「3Dゲームなのでリアル、だけどド派手な演出」の2つを挙げた。しかし、『DOA』シリーズといえば美麗なグラフィックとキャラクターの可愛さも特徴のひとつ。話題は自然とキャラクターの話に移行していった。

高橋名人:「もう胸がバインバイン動きますもんね」
寺田:「DOAのテストモードで“胸の揺れ設定”とかありますよね(笑)」
早矢仕:「胸が大っきいので揺れちゃうんですよ(笑)。今回は、胸の揺れ具合を“バストムーブ”という項目でお店のオペレーターさんに設定できるようにしました。だから、このお店は揺れ具合が物足りないなぁ……と思ったら、オペレーターさんにお願いすればその場で再設定できます」
高橋名人:「揺れない設定なんて誰がするんだー」
早矢仕:「僕らは揺れMAXで行きたかったんですが、バストムーブの設定を入れてと言われたんですよ(笑)」

 バストムーブ設定はセガからの要請だというのを暴露した早矢仕さん。だが様々な年齢層のお客さんがくるアミューズメント施設ではこうした項目は必要なのだという。また、ゲスト開発陣からは『DOA』シリーズのド派手な演出が素晴らしい要素だという声が挙がっていた。

寺田:「ポリゴンで3Dキャラを作ると“リアルの束縛”が出てしまい見た目がストイックになってしまう。『DOA』シリーズはDANGERシステムの壁爆破やステージ落下などでド派手に作っているのはスゴイと思う」
早矢仕:「ゲームに触ってもらいたくて敷居が低く見えるように派手にしました。あと殴られたときのリアクションをより派手に激しくしようと考えていくと、ステージを利用したほうがいいというのが我々の出した答えです。なので、派手な演出は非常に力を入れてます」
石渡:「僕もゲーセンで『DOA』シリーズを結構遊んでいるのですが、まず相手に勝つことより背景を壊したい、ステージ下に落ちたい! って思ってますもん(笑)」
早矢仕:「わかります、アイツを狙った場所に落としたいとかですよね(笑)。そういう遊び方をしてもいいと思って開発してます」

 続いてスクリーン登場したのは稼働直前の『ギルティギア イグザード サイン』。本作の特徴として、石渡さんからは「ギルティギアは15年続くシリーズ物ですが、シリーズ最新作というより弊社の格闘ゲーム最新作という位置づけ。新規プレーヤーに始めてもらいたくてシンプルにまとめつつ、ギルティギアファンにも楽しんでもらえる懐の深さを持てるよう開発した」という開発コンセプトが紹介された。ゲスト開発陣から即座に話題にされたのは、やはり3D格闘ゲームとは思えない特徴的なグラフィックだ。

高橋名人:「ポリゴンだと思えないよね、アニメだよね?」
石渡:「実は1カ所だけ、オープニング冒頭のオッサンだけはアニメです(笑)。でもその部分以外はオープニングもすべて3Dモデルです」
寺田:「バトルシーンでパースが付いてキャラクターが歪む演出もモーションでやってるんですか?」
石渡:「そこはグラフィック陣が血の涙を流しながら、1コマずつ3Dで作成する荒業をやっております」
早矢仕:「うちも開発スタッフがロケテストに行ったのですが、3Dなのかどうか触っても全然わからなかったと言っていましたよ」
高橋名人:「キャラクター単体でグリグリ回転して鑑賞できるモードが欲しいよね」
石渡:「会社に来ていただければ開発用のデバックモードで動かせますので、ぜひ見に来て下さい(笑)」
高橋名人:「メディアの方が来てるから、本作がちゃんと3Dキャラだという証明を記事にしてもらいましょう(笑)」

 3Dキャラと感じさせない美麗グラフィックの影にはアナログ的な手法も取り入れているという。こうした地道な作業がプロの目から見ても驚きのアニメーション感を出している秘密だった。『ギルティギア イグザード サイン』では5種類のボタン配置パターンが用意されており、アーケードゲームでは珍しい柔軟性をゲスト陣は注目していた。

寺田:「操作性として今回ボタン配置を5種類も用意していましたが、アレはどういう意図なんでしょうか?」
石渡:「世の中には既にすばらしい格闘ゲームがたくさん出てますのでボタン配置の慣れの有無があると思います。そういうプレーヤーが慣れているボタン配置で遊んでくれればといいな思い、いろいろ用意しました」
寺田:「これも先ほどの開発コンセプトの新規のプレーヤーにも遊んで好きになってほしいという一端があるんですよね」
石渡:「格闘ゲーム自体を盛り上げていくためには、やはり(操作性など)色々な部分で橋渡しができればいいなと考えています」

 3番手に登場したのは、電撃文庫とセガがコラボした2D格闘『電撃文庫 ファイティング クライマックス』。寺田さんはコンシューマー畑出身でアーケード用格闘ゲーム開発は初めてだという。人気シリーズの『DOA』と『ギルティギア』開発陣を前に謙遜気味だが、寺田さんからは「電撃文庫ファンという格闘ゲームがあまり得意でない人でも楽しめながら、格闘ゲームファンも長く楽しめる。取っ付きやすいんだけど、やり込むと格闘ゲームの深みはきっちりあるというのを目指した」と開発ポイントが告げられた。

 本作の登場キャラクターは電撃文庫のキャラなので、原作に格闘シーンがない作品もある。そうした“特異なキャラクターを上手に格闘ゲームにもちこむ手法”が話題の焦点となった。

高橋名人:「本来はバトルしないキャラクターもいるよね? そこを格闘ゲームにするの難しいんじゃない?」 寺田:「バトルする作品のキャラなら問題ないのですが、バスケする作品(ロウきゅーぶ!)とか、モデルの子(俺の妹)などもいます。彼女らをどうやって格闘ゲームにするかは悩みました。ただ、作品ごとにキャラクターが立っているので、モデルの子なら趣味のコスプレを活かしてバトル要素に落としこむ。バスケならバスケの技を格闘にして、チームの5人全員が登場したらおもしろいんじゃないか。難しい作業でしたが、楽しくできました」
早矢仕:「『DOA』では『バーチャファイター』とコラボをしているのですが、本作でもバーチャファイターのアキラが参戦というニュースを聞いてびっくりしてます。2D格闘でアキラをどうやって表現するんだろうって。動いてるのすごい見てみたいです!」
寺田:「少しだけ言いますと崩撃雲身双虎掌をすると手からビームがでます(笑)。電撃文庫のキャラと渡り合えるような破天荒なアキラが見られます」
早矢仕:「我々がバーチャファイターとコラボした時は原作を崩さず忠実に入れようとしたのですが、まさかセガさんのタイトルでアキラからビームが出るなんて(笑)」
石渡:「多くのファンを持つキャラクターが戦うので、ファンのイメージを壊さない努力とかが気になります」
寺田:「キャラによって頭身や異なるし背景のイメージが異なりますので、それがズレるとバラバラな印象になります。頭身やCGイメージの合わせをキッチリやることで均していった感じです」
高橋名人:「でもアキラはぶっ壊したと(笑)」 寺田:「アキラは元々がCGなので、かなり壊しました(笑)」

●人気タイトルやキャラクターを生み出した源流は? ルーツを探るとファミコン少年に戻る開発陣たち

 座談会の中盤はゲスト開発者のルーツを探る話題に。今までにプレーした格闘ゲーム、映画、アニメなどから現在開発中のゲームに与えた影響を語った。

格闘ゲーム座談会

早矢仕:「ゲームや漫画やアニメなど何でも参考にするのですが、今回の『DOA5U』では赤い服を着たくのいちの“紅葉”という新キャラを追加しました。赤い服のくのいちというと、格闘ゲームでは有名な不知火舞(『餓狼伝説』シリーズ)がいます。不知火舞は必殺技を使うと炎をまとうので、紅葉も1つだけ手から炎を出す技を入れました。『DOA』はリアル志向なので手からビームとか出ないのですが、赤い服のくのいちが技を使ったら炎を出そうと(笑)。我々のオマージュです」
石渡:「最初に作ったゲームが格闘ゲームで、影響を受けたのはやっぱり『ストリートファイターII』でした。そしてゲーム業界を目指したキッカケは高橋名人なんですよ。今でこそ格闘ゲームで大会をしてますが、僕らの子供の世代といえば“夏のキャラバン”です。シューティングゲームで競って壇上に立つとヒーローである。こんな世界観がゲームで作れることにすごく感動を受けました。僕、『スターソルジャー』はNintendo64版の『バニシングアース』までやってましたからね。(高橋名人を前に)もう今すっごいミーハーな気分でいますよ」
寺田:「高橋名人はもう我々のヒーローですからね」
石渡:「控室にいたときから僕、挙動不審でしたよね(笑)」
寺田:「格闘ゲームを作る上での源流は『ストリートファイターII』ですね。また、妙な縁があるもので、『サクラ大戦2』を週5日ほど徹夜で作業していた時に、皆で『ギルティギア』のPS版ををずっと朝まで遊んでいました(笑)。だから源流として『ギルティギア』もあるのかなと思っています」

●「全員敵ですから」と言いつつも笑顔を見せるライバルでもあり仲間といえる関係

 最後にマルチゲームプラットホーム『ALL.Net P-ras MULTI』(APM)について。1ボードで複数のゲームタイトルが選択できるAPMはゲーム開発時にとってどういう存在なのかを、ぶっちゃけた本音で語った。

早矢仕:「バーチャとコラボしたことで、バーチャのファンがDOAを遊んでくれている現状があります。APMは一緒の筐体でたくさんのゲームがあるので、例えばギルティギアを遊びにきたプレーヤーが1回だけDOAを遊んでみようかな? ということがあるかもしれない。他の格闘ゲームとのコミュニティや遊ぶのキッカケになって欲しいと思います」
寺田:「大人ですねー。僕は心が狭いので全員ライバル、敵ですよ(笑)」
石渡:「開口一番、“鬱陶しいですね”と言おうと思ったのに(笑)」
早矢仕:「もちろん負けたくないって気持ちはものすごくありますよ(笑)、ギルティギア出るの早過ぎるでしょ!」
寺田:「悔しいけどみんないいゲームなので、俺も負けずに頑張る気になりますよね」
石渡:「ただ、うちのゲームだけアキラが出ないんですよね。そこセガさんお願いしますよ」
高橋名人:「APMは開発のしやすさとかはあるのかな?」
寺田:「ダウンロード形式なのでアップデートしやすいですね」
石渡:「出しきりじゃないですからね」
早矢仕:「家庭用を作ってからアーケード版を作成したので、開発期間は実質2カ月でした。だから非常に作りやすいといえます」
寺田:「基板と筐体が一体型だとメンテナンスも大変ですしね」

 APMという同じ筐体内で遊べるゲームとしてライバル視しつつも、お互いのゲームの素晴らしい部分をよく見ていたゲスト開発陣。いずれはAPM対応タイトルで格闘ゲーム大会とかできたら楽しいですよね(寺田さん)など、同一プラットフォームならではの期待を込めて座談会を締めた。

格闘ゲーム座談会

●試遊台隣に設置されたコーナーステージから放送された
 “APMチャンネル出張版 in JAEPO 3”の模様をお届け

 APM対応タイトルの紹介や大会情報を放送するニコ生番組“APMチャンネル”の出張版もセガブースにて開催された。初日3回目のステージは『電撃文庫 FIGHTING CLIMAX』の魅力を、メインステージ座談会から連続登壇の寺田ディレクターをゲストに迎えて伝えていく。

格闘ゲーム座談会

 『電撃文庫 ファイティング クライマックス』についてはこちらの特集でもある通り、2014年春の稼働に向けて多くの情報が集まっているが、改めてJAEPOのステージにて基本となるポイントを寺田さんから直接語ってもらった。

格闘ゲーム座談会

 寺田さんによると、本作の特徴について「“登場するキャラクターのすべて主人公クラス”というところ。通常の格闘ゲームだと、そのゲームの主人公キャラが好きじゃないとなかなか遊んでくれない。でも、本作なら登場する電撃作品のどれか1つでも好きなら遊んでくれるんじゃないかと思う。格闘ゲームに興味がない層など、広がった層がプレーしてくれるんじゃないかと思う」と分析している。

 格闘ゲームとしての品質については「ゲームエンジンを格闘ゲームの老舗であるエコール/フランスパンさんに協力していただき、格闘ゲームとしての質にも納得していただける仕上がりになっている。システムではメインキャラとサポートキャラを個別に選択できるので、キャラを組み合わせるカスタマイズ性も魅力」と自信を見せた。

 また稼働前で気が早いとも言えるが、追加キャラの可能性を追求されると「“稼働スタート時点”では現在公開中の8キャラで稼働します。ただ、あえてスタート時と言ってるところで察してください(笑)」と、ハッキリとした断言こそなかったがキャラ追加の可能性がありそうな雰囲気を出していた。

 JAEPOで多数の試遊台を用意しており、格闘ゲームの苦手な層でも遊べるとディレクター自らが語った『電撃文庫 ファイティング クライマックス』。実際のゲームの動作はどうなのか? 本当に格ゲービギナーでも遊べるのか? そこで試遊台を使い、寺田さんと初見プレーのMC結さんが対戦!

格闘ゲーム座談会

 実際にプレーをしながら、ボタン連打で空中コンボがつながる“インパクトブレイク”などを解説する寺田さん。大人げないが、もちろん対戦で勝利したのは寺田さんだった。初見プレーで悔しさを見せた結さんだが「サポートキャラの掛け合いは見ていてニヤニヤする」とキャラの魅力を早くもつかんでいた。そこは寺田さんもこだわっていた部分で「例えばシャナとキリトが出会うと特別なセリフになる。それがコラボの真髄だと思う」と述べた。この掛け合わせは相当量が用意されてるそうなので、稼働時はぜひ組み合わせを探して見て欲しい。

 最後にとっておきの情報として「実はそこまで隠している部分がない」と前置きしておきつつも以下の情報を公開した。

・バーチャファイターコラボはメインキャラのアキラに続き、サポートキャラにパイが登場する
・ゲーム主題歌は声優の園崎未恵が担当する。ゲームのムービーで流れているのは主題歌のインスト版アレンジ

 JAEPOでも多くのプレーヤーが試遊し、これから春に向けて稼働準備が進む『電撃文庫 ファイティング クライマックス』に期待したい。

データ

▼『DEAD OR ALIVE 5 Ultimate Arcade』
■メーカー:コーエーテクモゲームス
■対応機種:AC
■ジャンル:FTG
■稼働日:2013年12月24日
▼『ギルティギア イグザード サイン』
■メーカー:アークシステムワークス
■対応機種:AC
■ジャンル:FTG
■稼働日:2014年2月20日
▼『電撃文庫 FIGHTING CLIMAX』
■メーカー:セガ
■対応機種:AC
■ジャンル:FTG
■稼働日:2014年春予定

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