2014年3月5日(水)
ガストより、3月6日に発売予定のPS3用RPG『アルノサージュ ~生まれいずる星へ祈る詩~』をプレイしてのレビューを、担当ライターの原常樹がお届けします。
電撃オンラインで、さまざまな記事を展開してきた『アルノサージュ』の発売が迫ってまいりました。本作は独立した1つのRPGでありつつも、土屋暁ディレクターが手がけた作品とのつながりがあります。PS Vitaで発売された『シェルノサージュ ~失われた星へ捧ぐ詩~』はもちろん、不朽の名作『アルトネリコ』シリーズ(発売元:株式会社バンダイナムコゲームス)と世界観を共有するという、まさに“土屋ワールド”の集大成とも言うべき作品です。ファンにとってはこれはたまらないでしょう!
偉そうなことを言ってしまいましたが、なんと筆者は『シェルノサージュ』をプレイしたことがありません……。関連モノとなると話の大筋が理解できるのか不安だったわけですが、「1つの作品として独立しているから大丈夫!」という編集さんの甘~い言葉に騙されてみることにしました。
そのまましばらく遊んでみたわけですが、確かにその通りで、自分のような新規ユーザーが置いてきぼりになるような場面はそこまで出てきません。SFな世界観が根底にある以上、特殊な横文字が多くなり混乱しそうになる場面はどうしてもありますが、ソフトに搭載されている“用語解説機能”がしっかりフォローしています。むしろ、この用語解説機能がとにかく親切設計で、これを見ているだけでも個人的には楽しくなってしまいました(笑)。
▲惑星ラシェーラに関するエピソードは『シェルノサージュ』で語られています。本作のストーリーはそれとも関連しています。 | ▲用語解説は一部イラスト付きという、至れり尽くせり具合。土屋作品が初めてという人でも、遊んでいると詳しくなれる仕組みです。 |
『アルノサージュ』の舞台は、謎の生命体・シャールによる人々の襲撃事件が多発する世界。そこにはシャールの襲撃に武力をもって対抗する組織PLASMAと、シャールとの共存を目指すジェノミライ教団という2つの組織が存在しています。シャールをどのようにとらえるかで人々が真っ向から対立しているわけですね。
主人公の1人・デルタは詩魔法を行使できるヒロイン・キャスティとともに、PLASMAを統率する天統姫の命を受けてジェノミライ教団の本拠地・クオンターヴへと潜入することになります。ジェノミライ教団は大司教ジルの導きのもと、機械兵器を自在に操り、さらには巨大な詩魔法を使った恐ろしい計画まで準備しているとか……。
こう書くとジェノミライ教団が単純な悪の組織のように見えるかもしれませんが、一元的な考え方でとらえられないのも『アルノサージュ』の重要なポイント! 本作にはザッピングシステムが搭載されており、途中から主人公を機械兵器・アーシェスと世界の理を知ると言われる少女・イオンのコンビに切り替えることができるようになります。立場が違う2つのコンビを切り替えていくことで、それまでとはまったく異なる方向から物語が見えてくるという仕組みになっているのです。土屋ディレクターが得意とする“立体的に計算され尽くした世界”を存分に楽しめるシステムになっているわけですね。
▲物語はオレイからスタート。ジオフロントと言えども、それぞれの街はどことなく郷土色が豊かで印象に残ります。 |
▲セーブポイントを使うことでザッピングが可能に。視点を切り替えることで世界の真実が見えてくる!? |
物語には『シェルノサージュ』や『アルトネリコ』のキャラクターも登場するので、これらの作品をプレイしているユーザーであれば、さらに多面的に作品を楽しめることは必至。『アルトネリコ』ユーザーだった自分にとって、シュレリア様の再登場には胸が熱くなりました(涙)。ただ、物語的には『アルトネリコ』よりも過去なので、“再登場”と表現するのが正しいのかはわかりませんが……。
▲ネイさんをはじめ、一部のキャラは『シェルノサージュ』より引き続き登場。そちらを遊んでおくと、より深く理解できる作りであるのは間違いないです。 |
RPGの要素だと、やはり戦闘シーンは外せません。こちらについては以前のレビュー記事でも紹介しましたが、非常に手軽に爽快感が味わえるシステムに仕上がっています。個人的には『アルトネリコ2』の戦闘システムがブラッシュアップされたという感覚が強く、ボタンをなんとなく押しているだけでも、カッコよくそれっぽく戦えるのは気持ちよく、楽しいです。
ただ、これが中盤以降になるとかなり頑丈な敵も出てくるので、広範囲の攻撃や威力のある攻撃、スキルやフレンド技など、システムをしっかり考えて戦う必要が出てきます。何も考えないで戦うと敵の反撃をモロに受けますし、気を抜いた瞬間にやられてしまうことも……。それだけやりごたえがある戦闘ということなので、逆に言えば、キャラクターの育成や詩魔法の入手が重要になると思います。
キャラクターを強化するためには、彼女たちと絆を深めなければいけません。特にキャラクターの精神世界“ジェノメトリクス”へのダイブは、土屋作品ではおなじみの要素のひとつ。こちらはRPGというよりもアドベンチャーゲームに近い形で進めていくもので、ともすれば恋愛ADVのような印象を抱かれる人も少なくないはず。ですが、そこで語られるのはキャラクターの心の奥底にある“人には見せられない部分”であって、そんなに甘いモノではありません。過去にシリーズ作品をやったことがある人はご存知かと思いますが、予想以上にドス黒い部分を見せられることもあります。ちなみに筆者も過去に『アルトネリコ2』の瑠珈に深いトラウマを植えつけられたことが……。
RPGの最中にADV的な要素が入ってくるため、人によっては最初戸惑うかもしれませんが、これもキャラクターの内面を把握するための手法の1つ。最終的にはキャラクターに感情移入する手助けになってくれるはずです。
▲精神世界の住人は、現実のキャラとは違った性格や見た目になっていることも。だけど、そこにもしっかりと意味があるんです。 |
仲よくなったヒロインとは“禊ぎ”を楽しむこともできます。“禊ぎ”とは、ともに泉で身体を清めてパワーアップするシステム。想いを伝えるアイテム“ジェノメトリカ結晶”を互いの身体に取り込んで泉の水に浸かることで、強い想いを心に入れ込むことができ、詩魔法のパワーアップにつながります。
つまり、禊ぎをしなければキャラクターの強化ができません! たとえ家族に薄着で入浴している画面を見られても「これは必要な行為なんだ」と言い訳できちゃいますね!! 素晴らしい!(笑) 美麗な3Dモデル、恥ずかしがるヒロインの仕草、そしてカメラアングル……語りたいことはたくさんありますが、これに関してはよさを語るのがむしろ野暮というものでしょう。遊んで感じてください!
この『アルノサージュ』については「音楽が気に入ったから遊ぶ」というのも1つの入り方だと思います。作中でも“詩”(うた)がキーワードになっていますが、それだけに楽曲のクオリティも半端ではありません。もちろん詩と物語自体がリンクしているのもポイント。音楽CDの視聴サイトもあるので、このレビューを読んで気になった方はぜひチェックしてみてください。
戦闘で勝つためにキャラクターと絆を深め、キャラクターと仲よくなることで世界がより見えてくる。そしてすべてをつなぐのは“詩”に込められた想い。一見するとバラバラに見える要素が1つにつながっていることが、個人的にはこの『アルノサージュ ~生まれいずる星へ祈る詩~』という作品の最大の印象でした。ゲーム自体も50時間程度では終わらない大ボリュームという内容ですし、まさに作品の中に“別の次元”が構築されていると言っても過言ではないかと。
僕のような一部シリーズの未経験者であってもしっかり遊べる作品なので、SF好きな人やキャラクターデザインに魅力を感じた人はぜひ一度触ってみてください。決してハードルが高すぎる作品ではありません!
(C)GUST CO.,LTD. 2014 All rights reserved.
(C)GUST CO.,LTD. 2006 (C)2006 NBGI
(C)GUST CO.,LTD. 2007 (C)2007 NBGI
(C)GUST CO.,LTD. 2010 (C)2010 NBGI
※画面はすべて開発中のもの。
データ