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2014年4月7日(月)

「パパ、保証人って何?」『ヒーローバンク』の下里プロデューサーにゲームの狙いや制作秘話を聞く!

文:宮居春馬

 3月20日にセガから発売された3DS用ソフト『ヒーローバンク』。本作を手掛けた下里陽一プロデューサーにインタビューを行った。

『ヒーローバンク』

 『ヒーローバンク』は、お金をテーマにした異色のRPG。ひょんなことから100億円という多額の借金を背負ってしまった主人公・豪勝カイトが、新時代のサイバースポーツ“ヒーローバトル”を戦い、借金を返済するというストーリーだ。

 インタビューでは、本作の魅力はもちろんのこと、お金というこれまでにないテーマに取り組んだ経緯や、下里プロデューサーの個人的なお金の使い方などについてもいろいろとお話ししていただいた。

『ヒーローバンク』
▲インタビューに応じてくれた下里陽一プロデューサー。代表作は、セガの大人気シリーズ『シャイニング・フォース』シリーズ。

■あいさつ代わりに“お金”について直撃!

――『ヒーローバンク』は“お金”がテーマの作品です。ということで、まずはプロデューサーに“お金”について聞いていきたいと思います(笑)。

 いきなりですね(笑)。

――早速ですが、下里プロデューサーが今買いたいもので一番高いものはなんですか?

 ソフトクリーム製造機が欲しいです。あれ、100万円ぐらいして高いんですよ。僕はすごくソフトクリームが大好きでして。ストレス発散のために、ソフトクリーム食べ放題のネットカフェで、漫画も読まずにソフトクリームを食べ続けたりしてるんです。

――それで家にも製造機を置いておきたいと。

 ええ。ネットで探したんですが、100万円ぐらいすることを知って「さすがにダメだな」と(笑)。しかも、ソフトクリームが永久的に出てくるわけじゃなくて、材料も買わなきゃいけないのでコストパフォーマンスが悪いんです。手が出ないけど欲しいものですね。

――宝くじが当たったらすぐに買えそうですけどね(笑)。

 宝くじで、もし1等が当たったら恐らく株を買います(笑)。株を買って、配当金で暮らしていくのが、僕がいろいろ考えて辿り着いた、1等の使い道なんです。すごく現実的な使い方で申しわけないんですが(笑)。安定株を買えば、配当金が月々何十万と入ってくるので、それがいいと思うんですよ。家などを買っちゃうとあっという間になくなってしまいますから。

『ヒーローバンク』

――1等が当たった時のことを、かなり具体的にシミュレーションされているんですね(笑)。

 宝くじは20年くらい前に初めて買って、「1億当たったらどうしようかな」と買うたびに毎回考えていたんです。

――20年くらい前とは、購入歴が長いですね!

 最近は買うのを止めちゃいましたけどね。確率を知ってしまったので、「これは絶対当たらないんだな」と思って……。

――何等かに当たったことはあるんですか?

 ないんですよ。だから止めたんですよね。3,000円すら当たったことがないので、本当にクジ運が悪いんです。

――何年ぐらい前に買うのを止めたのでしょうか。

 5~6年ぐらい前でしょうか。ただ、ずっと買っていたわけではなくて、気が向いた時に買っていただけですよ。インスタント宝くじの大人買いなんかもしたことがあります。結局全部ハズレでしたが(笑)。

――子どものころのお年玉の使い方はどうでしたか?

 ウチはお年玉をもらわない家庭だったんです。親同士が協定を結んで、お年玉をあげないことになったみたいで……。お爺ちゃんお婆ちゃんが3,000円ぐらいくれたんですけどね。小学校で年明けとかに「いくらぐらいもらえた?」なんて話をするじゃないですか。お金持ちの子が「○万円ももらった」とか言っている中で、「3,000円です」とは言いづらくてイヤな思いをしましたね。

――小学校のあるあるネタですね。

 ただ、すごく恵まれていたのが、ゲーム機をよく買ってもらえたことなんです。当時は結構高かったんですが、中学生の時にパソコンも買ってもらえました。8ビットマシンで20万円ぐらいしたので、全然家庭にない時代だったんです。それでプログラムを組んで、自分でゲームを作ったりしていたことが今につながっている感じです。

――ゲームに関しては、ご両親のご理解があったんですね。

 理解があったかはわかりません(笑)。ゲームをやっていると、母親には「将来こんなの役に立たない」なんて言われていたんですよ。まさか将来、ゲーム会社に就職するとは思ってもいなかったでしょうね。

『ヒーローバンク』

――実際にゲーム会社に就職されてから、なんと言われました?

 「そんなこと言ったっけ?」ってとぼけられています(笑)。今でも僕は覚えていますけど。

――今『ヒーローバンク』を遊んでいるお子さんが、将来ゲーム会社の道に進んだりすることもあるかもしれないですね。

 僕は中学からずっとゲームで育ってきて、一応は真っ当な大人になったと思っているので、必ずしもゲームが人格に悪影響を及ぼすとは思っていないんですよ。捉え方の問題だと思うんです。ただ、みんながみんな最初からから正しい答えにたどり着けるとは限らないので、僕ら作り手側がうまく導いていけるように、十分気を付けなければいけないです。

■これまでにないキッズ向けタイトルへの挑戦

――下里さんは、これまでキッズ向けのタイトルはあまり担当されていなかったようですが、今回抜擢された経緯を教えてもらえますか?

 取締役の名越稔洋が今作の製作総指揮ということもあって、名越自身がこのプロジェクトのおもしろさをすごく推していたんです。そこで「やってみようよ」と私に声がかかりまして、抜擢されたという流れです。

――キッズ向けのタイトルを担当するにあたり、苦労はありましたか?

 今回はメディアミックス展開もしていまして、他メディアの担当者さんにもご協力いただいて、一緒に世界観を作っていったんです。私も名越も子ども向けのタイトルは初めての挑戦だったんですが、他のメディアさんに経験値の低さをフォローしていただいた感じでしたね。その代わりに、私たちがゲームとしてのおもしろさを提供していくという分担で進んできました。ただ、ゲームを子どもが遊びやすくするにはどうすればという部分は難しかったですね。

――協力してもらっているメディアに、ノウハウを教えてもらったということでしょうか。

 ノウハウというよりは、感覚的な部分が大きいです。大人が当たり前だと思っていることが、子どもにとっては違うんですよ。こちらが「子どもが遊ぶならこれぐらいのレベルにしよう」と思っても、実はそんなに気にすることがなかったということが多かったです。子どもを意識して優しくしすぎると、むしろ子どもたちが遊ぶにしては未完成なものになってしまうといったアドバイスをいただきました。

――作品のテーマに“お金”を選んだことには、どういった理由があるのでしょうか。

 さまざまなキッズ向けタイトルが出ている中で、人気タイトルになるためには差別化しないといけないと、題材をいろいろ考えていたんです。そこで出てきたのが“お金”でした。“お金”って少しタブー視されているところがあるじゃないですか。でも、逆にこれだけ身近なものなのに題材として扱われていないということは、チャンスなんじゃないかなと思ったんです。

『ヒーローバンク』 『ヒーローバンク』

――“お金”という題材にはマイナスイメージも付いてきがちですが、その点についてはどのように考えていたのでしょうか。

 マイナスイメージにならないよう、すごく慎重に進めました。なので、キャッチコピーなども非常に気をつかったものになっています。発売前にユーザー調査をした時は、やはり親御さんがマイナスイメージを持っていたんですね。なので、ネガティブな印象をなるべく持たせないようにプロモーションしていくという点は、とても意識しました。

――マイナスイメージを持たせない工夫としては、何が一番大きかったと思いますか?

 ユーザー調査をした当初は、“お金を奪う”といったイメージが強かったんです。なので、そういった要素や言葉を使わないようにしたところはありますね。今作は“お金”を題材にして、最終的にその大切さを伝えたいということを意図しているんです。とはいえお金の大切さばかりをうたうゲームだと、おもしろみもなくなってしまうので難しいところですね。

――そのおもしろみを出す部分が、もう1つのテーマである“ヒーロー”なのでしょうか。

 そうですね。お金の要素を“ヒーロー”とミックスすることによって、ゲームとして王道的なおもしろさが出たんです。お金のネガティブさをなるべく軽減していきたいと、つねに思っていました。

――実際にゲームが発売されてからの反響はいかがですか?

 子どもさんたちの直接的な感想はネット上ではあまり出てきませんが……身近なところで言うと、私の妹にちょうど小学校3年生の息子がいまして、発売日から買ってプレイしているみたいなんです。その子から友だちの話を聞くと、メディアミックス展開やTV-CMが功を奏して、その子の周囲では認知されているようです。楽しんでもらえているようなので、ターゲット層にうまくアプローチできているのかなと手ごたえを感じてます。

■スタッフのプロレス愛がにじみ出たバトルシステム

――バトルがかなりプロレスを意識している印象を受けたのですが、これは狙っていたのでしょうか?

 今作のバトルシステムを考えていくうえで、新しいものを作りたいという想いがありました。けれど、完全新規のスタイルを短期間で確立するのは難しく、実際にあるルールをモチーフにしたほうが、ゲームとしてもとっつきやすいものになるという意見になったんです。その時に“プロレス”が挙がったことが、きっかけの1つですね。プロレス好きのメンバーが多いので、プロレスのおもしろさが必然的にゲームの中に入ってきた感じです(笑)。

『ヒーローバンク』 『ヒーローバンク』

――おひねりをもらうためにコーナーに登るというシステムが、個人的にすごくツボでおもしろかったです。

 単純に勝てばいいのではなく、観客を盛り上げていきながら最後に必殺技で勝つともらえる賞金が高くなるシステムは、まさにプロレスらしい部分ですね。このゲームはできるだけ賞金を稼ぐことが重要なので、そういった要素とプロレスは非常にマッチしていると思います。トップロープに登るのはプロレスファンにはおなじみですが、恐らくプロレスを知らない子どもたちには、とても新しいものに見えるはずです。

『ヒーローバンク』 『ヒーローバンク』

――主題歌に角田信明さんを起用したことは、格闘技つながりで決まったのでしょうか?

 角田さんは純粋にアーティストとして起用しました。最初に歌ができていまして、その歌を聴いた時にパワフルな声を持っている方じゃないと歌えないだろうと思ったんです。それでいろいろ探していたところ、角田さんがTV番組をはじめ各所で歌のお仕事をされていて、非常に力強い歌声が耳に残っていました。角田さんの力強い歌声ならこの曲にマッチすると思い、お願いしようと考えました。

――格闘家としてというより、パワフルなアーティストという部分に魅力を感じたと。

 弊社の営業からも「店頭でPVを流すと、男性のパワフルなボーカルのほうがお客様の耳に残りやすいですよ」とのアドバイスがあり、角田さんにお願いすることになりました。もちろん、角田さんはご存知の通り格闘家でもあるので、今作のテーマ“勝って、稼いで、強くなれ”に通じる、戦う男の代表としてもベストでした。

――今後のプロモーションで、プロレス選手を起用する予定はありますか?

 プロレス選手とはいずれ何かをしていきたいですね。ゲーム中のヒーローのような人が実際にいれば、子どもたちも親近感がわくと思いますし。それにプロレス選手は体格もいいですから、コスチュームを着ていただくと非常に映えると思うんですよ。

■コミカルさを演出するヒーロー着

――ヒーロー着は全部で何着ぐらいあるのでしょうか?

 約80種類ほどですね。収集要素はなんとしても入れたかったので。これでも少ないと思っているんですよ(笑)。なので、最低限の数は用意したという感じですね。

――ヒーロー着は内部でデザインされたんですか?

 内部ですね。実際にデザインを担当したスタッフは複数います。プランナーがラフである程度テーマを出して、何人かのイラストレーターさんに割り振ってデザインを固めていきました。

『ヒーローバンク』 『ヒーローバンク』 『ヒーローバンク』
▲エンター・ザ・ゴールド▲ザ・ドミニオン・ダラー▲ウオザムライ
『ヒーローバンク』 『ヒーローバンク』 『ヒーローバンク』
▲ザ・グランプリ▲センリョーアクター▲チャツミネコ

――デザインをしていくうえで気を付けたポイントは?

 職業がモチーフになっているので、それをしっかりとベースにすることですね。その中で、おもしろカッコイイというコンセプトを持たせています。ただカッコイイだけではなくて、少しコミカルなデザインになることを意識したつもりです。

――そこはやはり子どもを意識してということですか?

 それもそうですが、他との差別化という意味もあります。やはり、オリジナリティを出していかないといけませんから。

――プロデューサーのお気に入りのヒーロー着はどれですか?

 そうですね……好きなのはやっぱりカチョリーマンとつっぱり大将軍、あとはなんと言ってもセガリオンですね(笑)。カチョリーマンは普通なら絶対ない設定だと思うんですよ。このゲームならではかなという気がしますね。“オジギクラッシュ”なんて、本当に哀愁漂う技ですし(笑)。今の世代のお父さんたちにも響くキャラクターではないかと。

『ヒーローバンク』 『ヒーローバンク』
▲カチョリーマン▲つっぱり大将軍

――体験版も遊ばせていただいたのですが、手に入るのがカチョリーマンとブチョリーマンというのはなかなかショッキングでした(笑)。

 ブチョリーマンの印鑑を使った攻撃なども、すごくおもしろいですよ(笑)。

――ヒーロー着の技も、コミカルさを意識して考えているのでしょうか?

 やっぱりそうですね。あとはヒーローの職業に合わせた技にすることを意識して作っていました。

――ちなみにカチョリーマンに傘を持たせたのはなぜなんですか?

 まあよく駅で見かける、傘を使ってゴルフをするサラリーマンのイメージです(笑)。

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――ブチョリーマンは恰幅のよさも出ていますよね。あと、頭の飾りはネクタイが逆になっているんですか?

 そうですね、逆さのデザインです。ブチョリーマンの上にシャッチョサンがいるんですが、シャッチョサンは逆に二頭身のキャラになっています。ヒラリーマンはしっかり若々しさを出してみました。目が輝いていて、将来への希望に満ち溢れているという(笑)。ちなみに社長だけはサラリーで働いていないので、シャッチョサンというネーミングなんですよ。

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▲ブチョリーマン▲シャッチョサン

――このあたりはかなりコミカルさが強いデザインですね。

 子ども受けしやすいデザインにしています。でも体験版を遊ぶとわかると思うんですが、意外としっかり戦えるんですよ(笑)。

――属性や得意な射程の関係があるので、なかなか強かったりするんですよね。

 体験版では、最初にブチョリーマンを取らないとカチョリーマンとの戦いが辛いかもしれません。

■コラボのスタートはうまい棒から

――『ヒーローバンク』はコラボしている企業がかなり多いですが、コラボを始めようと思ったきっかけは何かあるんでしょうか?

 シナリオの中にうまい棒を食べるシーンが入っているんですが、当初は“うめえ棒”にしていたんです。それを名越が読んで「どうせならうまい棒にしよう」と言ったのが始まりです。そうしたら、ヒーロー着も職業がモチーフですし、何かコラボができるんじゃないかということで乗り出していきました。

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――きっかけは名越さんの一言だったんですね。

 そうですね。“お金の大切さ”を表現する意味でも、実際の商品のほうがリアリティがありますからね。うまい棒が1本10円ということは子どもたちにも浸透しているので、いいモチーフになってくれたと思います。

――消防士や警察官のヒーロー着もありましたよね。あれも最初から狙っていたのでしょうか?

 真っ先に絵を連想しやすいところと、メインターゲットのユーザーが一番身近なあこがれの職業であるところを意識していました。

――消防士などはわかりやすいですよね。

 警察官がモデルのブルワッパや、消防士がモデルのファイアーマンは、中でもパッと見で職業がわかりやすいと思います。

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▲ブルワッパ▲ファイアーマン

――ピザ屋がモデルのマルギリータ、すし屋がモデルのニギリノタイショウも、子どもに馴染みのある企業ということで選ばれたのでしょうか。

 そうですね。ピザハットさんとくら寿司さんは、子どもたちにとってすごく身近な会社ですし、ご理解いただいてタイアップをしてもらいました。

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▲マルギリータ▲ニギリノタイショウ

――ビザハットさんは、よくタイアップをしているメーカーさんですが、くら寿司さんとのコラボは珍しいですよね。

 むてん丸(※くら寿司のマスコットキャラクター)は、3Dモデルとして世に出たのがこのコラボが初めてのことだったらしくて、先方はすごく感動されていました(笑)。

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▲むてん丸

――技や擬音もゲーム内でちゃんと再現されていますよね。こだわりを感じます。

 どのヒーロー着もこだわりを持って作ったので、随所にそれが感じられると思います。

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――ちなみに企業とのコラボヒーロー着は能力的にかなり高いほうなんですか?

 他のヒーロー着に比べると強めですね。ただ、強いヒーロー着は使用可能な時間が比較的短めなので、そこはうまく使わないといけません。

――ヒーロー着ランドリーのシステムは、そういったバランスを取るうえで重要な役割を持ってるんですね。

 なかなか難しいところではあったんですけどね。どうしても主人公の豪勝カイトの専用ヒーロー着である“エンター・ザ・ゴールド”をつい使ってしまうのですが、それだけ使ってクリアするのは実は結構難しいんです。なので、エンター・ザ・ゴールドを使いたい気持ちもわかるんですが、ヒーロー着に使用時間を設けて、必然的に他のヒーロー着に変身して戦うことを習慣づけるような形にしました。ゲームとしてのおもしろさとバランスを重視した結果、こういう形になったんです。

――エンター・ザ・ゴールドばかりにならないための工夫なんですね。

 それでも最後はエンター・ザ・ゴールドで勝たせてあげたいという思いはあるんですけどね。ゲームバランスとの兼ね合いがなかなか難しいところです。

■ゲームとは視点の違うアニメ版『ヒーローバンク』

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――アニメでは、ゲームと違ってずっとエンター・ザ・ゴールドで進んでいくのですか?

 基本はエンター・ザ・ゴールドです。アニメではどちらかというと、あまり変身せずにそれぞれが持っている固有のヒーロー着で戦う流れになっています。時折変身することもありますけど。なので基本的にはカイトはエンター・ザ・ゴールドで戦って、たまに対戦相手の属性を見ながらつっぱり大将軍に変身するといった具合です。

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――アニメの見どころはどこでしょうか?

 ゲーム内ではあまり語られなかった、キャラクター1人1人のエピソードを掘り下げているところです。ゲームでは天野ナガレはすぐに覚醒してライバルとしてカイトの前に立ちはだかるのですが、アニメだと放送から2カ月間ぐらいは一緒に行動する予定なんです。

――結構引っ張りますね!

 ええ。その中でナガレのキャラクターを視聴者に印象付けていくわけです。他のキャラクターも1話1話掘り下げていますし、アニメではゲーム内だとフォローできなかった部分を見せていく方針です。

――よりキャラクターたちにフォーカスした内容になるんですね。

 そうですね。もともと『ヒーローバンク』を立ち上げた時に、ゲームとアニメ、漫画でそれぞれのよさを生かそうという考えが基盤になっていましたので。ゲームのシナリオがベースにはなるのですが、それを全部なぞっただけではおもしろくないので、アニメもゲームも漫画も全部違った見せ方をしていきます。基本的なストーリーラインと世界観は一緒ですが、内容は再編成していますので、ゲームをクリアしたほうがアニメを観る時に驚く部分があると思います。

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――逆にアニメから入った後にゲームをプレイしても、新鮮な気持ちで楽しめるということですか?

 もちろん楽しめると思います。むしろゲームだとキャラクターの育成や、ヒーロー着の変身といった、アニメにはないおもしろさがありますからね。

――アニメの中でも、バトル中におひねりを集めたりするシーンは再現されるんでしょうか?

 いえ、おひねりはアニメだと出ません。アニメのバトルは、派手な技やアクションで見せていく感じです。なので、アニメだと属性なども深くは語られず純粋にアクションとしてお楽しみいただけると思います。

――かなり3Dモデリングが綺麗ですよね。バトルはすべて3Dで見せていくんですか?

 アニメでもバトル部分は全部3Dですね。ゲームのオープニングムービーを作った会社が制作を担当しているので、クオリティはゲームと変わらず、毎週放送するアニメとしてはかなり高いと思います。

――TVアニメでこの3Dモデリングのクオリティはすごいですよね。

 相当四苦八苦していますけどね(笑)。毎週10分以上のバトルシーンがあるので、月で換算すると40分にもなります。月単位で40分のムービーを作ることはあまりないと思いますよ。しかもバトルシーンなので、かなり大変だと思います。

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――グリグリ動きますしね。

 さらに毎週新しいヒーロー着が登場するので、毎回新しいデザインを作らないといけないんです。相当現場は泣いていますよ(笑)。

――アニメではヒーロー着のデザインを少し変えていますか?

 当然、アニメならではのモーションがあるので、エンター・ザ・ゴールドを始め、各ヒーロー着はアニメ用のデザインになっています。アニメの作家さんにベースを変えてもらっているんです。よく見比べると、ディティールの違いがわかると思います。カイト本人もそうですね。

――セガリオンはちゃんと活躍しますか?

 アニメ序盤に、セガリオンが出てきて戦います。子どもたちは64ビット級パンチと言われてもわからないかもしれませんが(笑)。子どもと一緒に観ているお父さんが、懐かしさを感じてくださると思います。

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――セガならではですよね(笑)。お子さんと観ても楽しめそうです。

 実はそのあたりも狙いがあるんですよ。連帯保証人や借金、契約といった、子どもには難しい言葉がいくつか出てくるんです。そのあたりはちゃんとゲームやアニメの中でもなんとなく説明してはいるんですが、そこで親子の会話が生まれたりすることも狙っていたりするんです。

――子どもにいきなりそんなこと言われたらビックリしそうですね。

 Twitterを見ていたら30代か40代のサラリーマンの方が「今日子どもに保証人って何? って聞かれたんだけど」とつぶやいてて。さらに「何かのマンガで見たらしい」ともつぶやいてまして。そんなことをやっているのは『ヒーローバンク』ぐらいしかないので(笑)。その人は「保証人ってどう答えればいいんだー!」と悩んでいたようでして、そういう意味では狙い通りになったかなと(笑)。

■キャストに恵まれた奇跡

――アニメのアフレコの様子をご覧になって、いかがでしたか?

 監督さんや音響監督さんからお話を聞いたんですが、アニメの最初の3話ぐらいって、探り探りの収録になるらしいんです。ただ、『ヒーローバンク』は最初にゲームでキャラクター作りがされていたので、意外とすんなり進行していきましたよ。

――ゲームとアニメの収録で、違った部分はありましたか?

 ゲームの時は、何も絵がない状態でボイスを入れてもらったんです。設定画だけでイメージを作って演じてもらったんですが、メインキャラのキャストの皆さんがベテランの方なので、それでも完成度が高かったんですね。そこに、アニメで絵に動きが入ったことでよりよい作品ができたかなと思います。

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――ゲームとアニメで一切ブレがないというわけですね。

 ブレは全然ないですね。そこはやっぱりキャストの実力なんでしょうね。監督さんが非常に楽だと言っていました(笑)。

――キャスティングはオーディションで決めたのでしょうか?

 そうですね。最初はここまでベテラン声優さんばかりにお願いするつもりではなかったんですよ。TVアニメが前提としてあったので、ベテラン声優さんばかりを起用してしまうと、いざ、アニメの収録となった時に皆さんのスケジュールが合わないということがあるという話を聞いていたんです。

――では、なぜ今回の顔ぶれにになったのでしょうか。

 オーディションで実際に、現在キャスティングさせていただいた皆さんのボイスを聞いてしまうと、「これしかないな」と思ってしまうくらいマッチしたんですよ。なので、アニメのアフレコはなんとかしようと腹をくくってお願いしちゃいました。中でも、財前ミツオを演じていただいた沢城みゆきさんは、本当にピッタリだったんですよ。結果として、メインキャストの皆さんのスケジュールもなんとか調整できて、ベストなキャスティングになりました。

――奇跡的に皆さんスケジュールが合ったんですね。

 こんな素晴らしい声優さんたちに演じていただけて、恵まれた作品だなと思いますね。

『ヒーローバンク』 『ヒーローバンク』

■気になる今後の展開は?

――今後コラボ企業を増やす予定はありますか?

 これからアニメ、アーケードゲーム、トレーディングカードゲーム、玩具と『ヒーローバンク』としてさまざまな展開がスタートしますが、コラボをするとしても、できるだけ絞り込んで、よりターゲット層の身近なところにアプローチしていきたいですね。コラボしていただいたからには、作品の中でもそれなりのポジションで出していきたいので、ターゲット層により効果的に響く内容のほうを重視したいです。

――今後ヒーロー着を増やしていくことはないのでしょうか?

 先ほどの通り、『ヒーローバンク』の展開は始まったばかりなので、今後の各事業を含めた展開の中で増やしていきたいですね。まだまだやりたいことはいっぱいありますので(笑)。

――まだまだ新しい展開は用意してあるということですね。

 そうですね。まだ詳しくはお伝えできませんが、いろいろと考えています。『ヒーローバンク』のゲームソフトの制作を終えて、たくさんの課題とたくさんのやりたいことが出てきましたから。

――やはり家庭用ゲームの続編も作っていきたいですか?

 低年齢層がターゲットで、かつ新規タイトルなので、一発で結果が出るものではないと考えています。ですので、ゲームやアニメも含めて継続して展開していきたいですね。ぜひ今のうちにゲームやアニメで『ヒーローバンク』を思いっ切り楽しんでほしいです。

――それでは、最後に電撃オンラインの読者に向けてメッセージをお願いします。

 “お金”という今までにない題材なので、イロモノなイメージを持たれる方もいるかもしれませんが、非常に王道的なRPG作品に仕上がったと思います。子どもをターゲットにしたゲームではありますが、誰が遊んでもおもしろく、存分に楽しめるボリュームとゲーム性を持っていますので、気になったらまずは体験版をプレイしてもらって、4月7日から放送するアニメも見ていただいて、「おもしろい!」と思っていただければぜひプレイしてください!

(C)SEGA
(C)SEGA/ヒーローバンクプロジェクト,テレビ東京

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