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2014年9月8日(月)

『ファイアーエムブレム 紋章の謎』20周年記念。攻略しがいのある手強いSRPGの金字塔を振り返る【周年連載】

文:デルチ

 あの名作の発売から、5年、10年、20年……。そんな名作への感謝を込めた電撃オンライン独自のお祝い企画としてスタートした、“周年連載”。その第3回は、1994年1月21日に任天堂から発売されたスーパーファミコン用シミュレーションRPG『ファイアーエムブレム 紋章の謎』の思い出コラムをお届けします。

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▲『暗黒竜と光の剣』における、勧誘の名人シーダ屈指の名言「その剣でわたしを好きなようにして」。こんなセリフで口説かれたら、そりゃクールガイなナバールさんもイチコロですわ。

■ファンタジー・シミュレーションRPGの草分け的タイトル

 いまや、ファンタジー世界を舞台にしたシミュレーションRPGは山ほど発売されていますが、日本でそのパイオニアとなったタイトルこそ、この『ファイアーエムブレム』シリーズだと言えるでしょう。

 その記念すべき1作目『ファイアーエムブレム 暗黒竜と光の剣』が発売された1990年4月20日から、来年でいよいよ25周年という節目を迎えます。『ファイアーエムブレム 紋章の謎』は、それから4年後の1994年1月21日に発売されたので、こちらは今年で20周年を迎えることになるわけです。

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 当時は、たしか発売日から数カ月遅れて『暗黒竜と光の剣』を購入した記憶がありますが、このタイトルこそが自分がSRPG好きになるきっかけを作った作品だったんだと、今思い返して気付きました。それほどに、ゲームユーザーに衝撃を与えたシリーズなんです。

 また、『ファイアーエムブレム 紋章の謎』は、1作目である『暗黒竜と光の剣』の続編にあたる作品ですが、『暗黒竜と光の剣』のリメイク版も収録された2部構成というところも、当時はなかなかの驚きでした。

 今でこそ珍しくない販売形態ですが、1本で2本分遊べちゃうわけですから、かなりお得でしたよね。最近では、この2作品のリニューアル版が『ファイアーエムブレム 新・暗黒竜と光の剣』、『ファイアーエムブレム 新・紋章の謎 ~光と影の英雄~』としてDSで発売されているあたりにも、ファンからの人気が高いことがうかがえます。

 今回は、SFC版を取り出してプレイしようかと思ったのですが、押入れのかなり奥にしまってあることを思い出したので、Wiiのバーチャルコンソールでプレイしています。もちろん、Wii Uのバーチャルコンソールでも配信されているので、今からプレイするならこちらがオススメです。

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▲主人公のマルスは『スマブラ』シリーズにも登場する人気キャラ。元ネタを知らないという人は、今から『ファイアーエムブレム 紋章の謎』をプレイするのもアリだと思いますよ。

 ちなみに、昔っから言われ続けている注意点ですが、本作はファイ“ア”ーエ“ム”ブレムであって、ファイアーエ“ン”ブレムでもファイ“ヤ”ーエムブレムでもないので、これだけはしっかり覚えておいてください!

■誰もにしっくりくる、王道ファンタジーの魅力

 ゲームを始めると、荘厳な音楽とともに浮かび上がる盾のようなもの。これこそが、タイトルにもなっている“ファイアーエムブレム”です。“炎の紋章”とも呼ばれる王族の証みたいなものなのですが、ゲーム中では主人公・マルスの鍵開けツールになってしまっているとかは言っちゃダメです。「うわー、王族の証カッコいい!」とテンションを上げるのが、正しい楽しみ方だと思います。

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▲王家の証・ファイアーエムブレム。本作における最重要アイテムにして、盗賊が活躍する場を完全に奪う罪なアイテム。第1部だとニーナ姫から、第2部だとニーナに託されたリンダから受け取ることができます。

 本作は、ゲーム開始時に『暗黒竜と光の剣』か『紋章の謎』どちらから始めるか選択できます。初めてなら、ぜひ『暗黒竜と光の剣』からプレイしてほしいところ。ちなみに、『暗黒竜と光の剣』を1人も戦死させずにクリアすれば、自動的に第2部である『紋章の謎』を引き続きプレイすることができます。

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 さて、本題に入る前に、『暗黒竜と光の剣』の物語を簡単に説明していきましょう。かつて英雄アンリに倒された暗黒竜メディウスが突如として復活。メディウスはドルーア帝国を再興して、アカネイア大陸に攻め込んできます。それによって、辺境の地に逃れた英雄アンリの血を引くアリティアの王子・マルス。その2年後、彼が国と平和を取り戻すために立ち上がる、というお話です。

 英雄の血を引く王子。征服された祖国。邪悪な竜。もう、ファンタジーの王道をこれでもか! と盛り込んだ設定に、当時はワクワクしました。先の展開が読めないような物語も魅力ですが、王道には王道の、きっとこんな展開を見せてくれるんだろうという期待に応えてくれる安心感があるところがいいですよね。

 当時は、自分も小説の『ロードス島戦記』などにドハマりしていましたし、巷にあふれる作品も剣と魔法という世界観が多かったと思います。それだけ、王道ファンタジーに人気があった時代でもあったんだと、すごく懐かしく感じました。

 余談ですが、FC版とSFC版で設定が変わっている部分がいくつかあります。なかでも有名なのが“リフ=きずぐすり”問題。これは、FC版ではマルスが村を訪れることで仲間になったリフというキャラが、SFC版ではきずぐすりに変更されたという悲しい事件。ちなみに、下の画像の右側の写真がFC版のリフさんなんですが、まあこんなつるっぱげよりはキュートな女子のささやかな気持ちのほうがうれしいかもしれません……。

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▲『暗黒竜と光の剣』は、FC版をダイジェスト的に収録したものというアナウンスでしたが、FC版が全25章だったのに対し、SFC版は全20章と、ダイジェストというにはかなりのボリュームだったりします。
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▲安心と信頼の傭兵オグマさん。彼がいなければ、クリアまでもっと苦労したことでしょう。第1部、第2部ともに早い段階で仲間になってくれるところも、オグマさんへの信頼が深まる理由です。
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▲第1部をプレイして人間関係を理解しておけば、第2部の感動の度合いもかなりアップ! 王道ファンタジーの魅力をトコトン詰め込んだ物語は、20年前のゲームとは思えないクオリティです。
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▲妹にはめっぽう弱いマチスや、大陸一の弓騎士ジョルジュさんなど、個性的なキャラクターも魅力の1つ。ここでピックアップしておきながらなんですが、個人的な好みで、自分はあまりこの2人を使ってはいませんでした(笑)。

 そんなこんなで、いよいよこの記事の本題である『紋章の謎』に突入です。ゲームタイトルからもわかるように、第1部では強大な悪に立ち向かう戦士が集う物語が描かれたのに対し、第2部ではアカネイア大陸の歴史とその謎に迫る物語が展開していきます。

 その物語は『暗黒竜と光の剣』の完全続編。シーダとの婚礼をひかえたマルスのもとに、前作の仲間にして強力な軍事国家となったアカネイア神聖帝国の皇帝ハーディンから、反乱軍を討伐せよという書簡が届くところから物語が始まります。

 『紋章の謎』では、この完全続編ならではの人間ドラマが最大の魅力と言っても過言ではないでしょう。かつてともに戦った仲間との再会。そして仲間だった者が敵として登場するといった展開は、今プレイしても胸が熱くなる、続編だからこそ描けた魅力なんだと思います。

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▲第1部のエンディングから数年が経ち、マルスの周囲も大きな変化を迎えています。第1部を踏まえたうえでのストーリー展開は秀逸なデキ!
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▲第1部とは違った形で苦難の旅が始まっていきます。新キャラもかなり魅力的ですが、やっぱり第1部から引き続き登場するキャラたちの新たなエピソードが見どころ。個人的に、ミシェイルとミネルバの兄妹のエピソードがお気に入りです。
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▲颯爽と現れる仮面の騎士シリウス。その正体は、一体、何ミュさんなんだ!?▲第1部では超マジメそうだったハーディンさんも、すっかり変わられたようで……。

■手強いシミュレーションに偽りなし! 歯ごたえバツグンの思考戦術

 システムは、味方と敵が交互に行動するオーソドックスなターン制バトルで展開します。オーソドックスな内容ながら、個人的に絶妙な難易度バランスが(いや、やや難しい……いや、かなり難しいマップもありますが)本作の大きな魅力なんです。

 地形によって侵入できるユニットとできないユニットがあり、じゃあどのユニットを移動させるか、次のターンで敵はどう動くだろうか、そのターンだけでなく先を読んだユニット配置を突き詰めていく、詰め将棋的なおもしろさが味わえるわけです。そうして自分が編み出した戦術が、見事にハマった時の快感ときたら!

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▲敵の移動範囲を調べて、1体ずつ誘い出すのがベーシックな戦術。とにかく囲まれたら終わりなんです。

 その快感は、この難易度だからこそ味わえた感動であることも間違いない事実なんです。マップによっては、10回以上チャレンジしてやっと光を見出すなんてことも多々ありましたし、たった一手のミスでそれまで積み重ねてきた戦いが水泡に帰すなんてこともありました。

 なにせ、このゲームはマップの途中でセーブができないので、1度ミスったら最初からやり直しですからね。そりゃ、今でこそゲームシステムとして敵はこう動くとか理解はできますが、当時はそこまで考えていなかったので本当に苦労しました……。

 でも、必ず答えはありますし、そこに至る道が1つではないところも戦術シミュレーションの醍醐味だと思います。未プレイの方に勘違いしないでほしいのは、決して理不尽な難易度ってわけじゃないことです。あくまで歯ごたえがある難易度であって、それを乗り越えた時の喜びはハンパじゃないです。

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▲特に第2部は、第1部の応用編的な内容になっていて、難易度もグッと上がっています。上級クラスが序盤から登場したり、盗賊の配置がいやらしかったり、考える楽しみはバツグン! 第2部の第2章って、なんであんなにムズいの!?
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▲敵の増援も難易度を上げている要素の1つ。基本的に砦から出現するので、うまく砦を塞いで少数だけを出現させて、タコ殴りにして経験値稼ぎ! というのも基本戦術。とにかく、数の暴力が恐ろしいゲームでした。
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▲盗賊から村を守るという要素が難易度の上昇にかかわることも。村には仲間がいたり、アイテムをもらえたりとメリットだらけなのですが、あげるけど絶対に使うなというじいさんがいたり、気味が悪いと思っているものをくれるおっさんなど、地味にメッセージも楽しめる要素だったりしました。

 バトルシーンでは、ユニット同士のバトルアニメーションも見どころです。今見ても、このドットアニメーションは、秀逸なデキ。昨今のCGと比べると、迫力には欠けるかもしれませんが、ドットならではの味わいがあるのもたしか。

 特に、『ファイアーエムブレム』シリーズでは、攻撃が当たるか回避できるか、必殺が出るか出ないかといったドキドキを味わえるシーンでもあるので、アニメはカットせずに楽しんでほしいところ。

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▲戦闘アニメーションは、やっぱりペガサスナイトがお気に入りです。あとは、マルスの再攻撃のアクションも好きでした。

 なお、“必殺”は、ダメージが3倍になっちゃうえげつない効果なので、発動するかどうかは死活問題なレベル。味方が出してくれる分にはうれしい限りなのですが、敵に発動されると一撃で倒されちゃうことも多々あるのでシャレになりません。こればっかりは運の要素も強く、敵に必殺を出されたら無言でリセットボタンを押していましたね……。

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▲必殺は、ボスで発動すると気持ちいい! 他にも、武器とクラスの相性もあって、例えば飛行ユニットは弓の攻撃に弱いなどがあります。これは、後々のシリーズにおける3すくみにつながる要素で、そのへんも考えた運用が戦術に深みを与えていたわけです。ペガサスナイトを移動させる時が、一番ドキドキしていた気がします。

 SRPGとして、さまざまな特性を持つクラスの存在も欠かせない要素の1つ。それぞれに長所と短所があるので、出撃時にどんな部隊バランスで出撃させるかも戦術となるわけです。このバランスを考えながら、どのユニットを育てていくかを考えるところも本作のおもしろさの1つ。

 さらにユニットは、レベル10以上かつアイテムを持っていれば、上級職にクラスチェンジできます。この上級クラスに向けたユニットの育成が攻略に欠かせない要素で、下級職からコツコツ最大レベルの20まで育てて、そこでクラスチェンジして再びレベル1から育成することで強力なユニットを育て上げることができます。まあただ、自分の場合は途中で面倒くさくなってレベル15くらいでクラスチェンジしちゃうんですけど……。

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▲クラスチェンジすると、パラメータはそのままでレベルが1に戻ります。ということは、限界まで育ててからクラスチェンジさせれば、それだけパラメータの上乗せのチャンスがあるわけです。そういった理由もあって、仲間になった時点で上級クラスのキャラは、伸びしろがないと敬遠されていました。
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▲闘技場は育成の施設として大活躍。まあ、闘技場でも負けると戦死扱いなので、ドキドキものでしたが。そして、レベルアップ時に訪れる“わこぶ”の恐怖! これはパラメータのうち、あまり上がってもうれしくない“技”、“幸運”、“武器レベル”の3種類しか上がらないというガッカリ成長ですが、なんだか“わこぶ”になる率って高いんですよねぇ……。

■紋章に集う仲間たち! こいつら全員死なせない!!

 本作の難易度が高めなのは先述した通りですが、その難易度を底上げしているのが、仲間たちを“死なせない”プレイ! そう『ファイアーエムブレム』シリーズでは、1度死亡したキャラは基本的に生き返ることができないという不文律があるんです。

 戦死者ゼロでクリアするのは苦労しますが、その分、エンディングで仲間にしたキャラ全員のその後を知ることができて感動しますし、紋章に集った仲間を“オレの巧みな戦術で生き残らせた”という達成感が得られます! それこそが、本作をプレイするうえで欠かせない魅力と言えます。

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▲ボス戦は事故率も高めなので、かなり慎重に攻撃せざるを得ません。それでもちょっとしたミスで死ぬこともあるわけで、そうしたらもうリセットしかないですよね……。

 何より、「仲間にしたはいいけど、こいつ絶対出撃させることがないよな……」なんてキャラでも生き残らせなければいけないというメンタル面への徒労感もあったりして、どのマップでもつねに緊張感マックスになるわけです。

 それだけに、全員を生き残らせてのクリアは、感動もひとしおです。ぜひ、最初は攻略法などを見ずに自力でクリアして、最大の感動を味わってほしいものです。(仲間になる条件など自力で見つけるのは、そこそこ大変ですが、そこは頑張って!)

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 そんな『ファイアーエムブレム 紋章の謎』は、冒頭で書いたようにバーチャルコンソールで遊ぶことができます。FC版の『ファイアーエムブレム 暗黒竜と光の剣』もバーチャルコンソールで配信されているので、2作品を遊び比べてみるのもおもしろいかもしれません。

 ちなみに、世界観は一新されていますが、同じくSFCで発売された『ファイアーエムブレム 聖戦の系譜』も名作なので、こちらもぜひ! 個人的には、GBAで発売された『ファイアーエムブレム 封印の剣』のバーチャルコンソール化を切に希望します!

 とにかくこのシリーズは名作のオンパレード。どの作品からでもいいので、プレイしないなんてもったいないファンタジー・シミュレーションRPGの金字塔にぜひ触れてみてください!

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