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2014年11月15日(土)

UGSF史観から『しんぐんデストロ~イ!』を覗く! 美少女×戦車vs怪獣=壮大なスペースオペラだった!?

文:皐月誠

 バンダイナムコゲームスは、iOS用アプリ『しんぐんデストロ~イ!』をApp Storeにて配信している。本作についてゲーマー諸氏に注目してほしいのが、バックボーンに“UGSF”シリーズとしての設定が存在する点だ。

『しんぐんデストロ~イ!』

 UGSFとは、AC『ギャラクシアン』や『ディグダグ』から、PS『エースコンバット3 エレクトロ・スフィア』、DS『みずいろブラッド』など、旧ナムコ~バンダイナムコゲームスのオリジナルタイトルに設定された、一種の“裏設定”。ジャンルやプラットフォーム、発売時期もバラバラな各タイトルだが、実は同じ宇宙観を共有している。それは、陸戦の王者・戦車を駆る美少女たちに指揮を下し、恐ろしい怪獣たちを撃滅していく『しんぐんデストロ~イ!』も同様だ。

 せっかくなので、この記事では軍事史研究家をお招きし、『しんぐんデストロ~イ!』でUGSFユニバースへ召喚された新人司令官殿(それはあなたです!)へ、ギャラクシアン(銀河系人類)の永い戦史を語っていただくことにする。おいでませ!

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「グッモーニン! 宇宙軍事史研究家のクーソーシ・テカラネ・テクダサイ博士でございます!」

“UGSF”
▲ガストノッチ!! ※博士は本記事オリジナルのイントロデューサであり、バンダイナムコゲームスおよび旧ナムコ、実在の人物、団体などとの関係はありません。

「さて、まず根本的なキーワード・UGSFを説明しなければならないでしょう。UGSFとは軍事組織の名前です。紆余曲折あって誕生した“銀河連邦”の“宇宙軍”……つまり“United Galaxy Space Force”なのです! “アングラなサイファイ”じゃないよ? ……多分」

●舞台となる惑星オリウス、その名の意味は?

「惑星オリウスに召喚されたあなたは、凶暴な怪獣どもに対し、唯一有効な兵力、つまり旧時代の戦闘車両を運用して戦っていくことになります。極めて特殊な状況につき、それ以外の兵器や武力は投入できない模様です。大変ですね!」

『しんぐんデストロ~イ!』 『しんぐんデストロ~イ!』
▲自軍の戦力は“タンク!タンク!タンク!”とばかりに戦車オンリー。ちなみにタイトルの英字副題はガールズ・タンクバタリアン……新任司令官さん、“タンクバタリアン”ですよ。“タンクバタリアン”。
“UGSF”
▲で、こちらが戦車で怪獣と戦うWii U『タンク!タンク!タンク!』。
“UGSF”
▲さらにこちらが、戦車の軍団と戦うAC『タンクバタリアン』。

「オリウスという、この名前……とある宇宙言語体系において“オリ”は数字の“3”、“ウス”は“星”を意味することから、なんらかの理由で“3番目の星”と呼ばれているようですね。“2番目の星”とか“4番目の星”とかもあるのでしょうか? 確か“2”はその言語で“シオ”だったような、そして“4”はゼ……ゼなんちゃら……だったような……? いやあ、軍事史研究家なので言語学には明るくなくて」

「そんなオリウスについて、解明できている事実はごくわずかです。なにせ、銀河連邦の管理下にない惑星なのですから。そんな星なのに地球型の人類による文明が存在するらしいのですが……なぜでしょうね? まあそれは追々研究するとして、ともかく現地人類を守るためには、怪獣たちを撃破しなければなりません!」

『しんぐんデストロ~イ!』 『しんぐんデストロ~イ!』
▲ギャラガやオクティ族など、凶暴なETIたちも怪獣として出現します。超・破壊はエクスタシーかつブキミが気持ちいいのでブッ飛ばしましょう!
“UGSF”
▲昆虫状の生物であるギャラガは、人類が初めて接触した地球外の有機生命体です。彼らの次元跳躍技術・ハイパードライブは、UGSFが接収してどこかで使っているとか。ディメンションをワープさせるドライブ……?(PS3/PSP PCエンジンアーカイブス版『ギャラガ’88』)
“UGSF”
▲グチャドロっとした見た目のオクティ族。人を外見で判断してはいけないとは言いますが、彼らは見ての通りに凶暴です。(Wii バーチャルコンソール版『爆突機銃艇』)
“UGSF” “UGSF”
▲戦車で挑まなければならないようなオクティ族ですが、歴史的なドリラーであるホリ・ススム氏の母上は母星へ少数精鋭で挑んで殲滅したというのですから、実に恐ろし……もとい素晴らしい女性ですね!?(PS3/PSP PSアーカイブス版『ナムコミュージアム VOL.5』より『バラデューク』&PSアーカイブス版『Mr.ドリラー』)

●FEDCOMって知ってるかい?

「さて、次は“なぜあなたがオリウスに召喚されたか”を説明しましょう。ことの直接的な始まりは、銀河連邦中枢コンピュータ“FEDCOM5”から、処理管理ユニットの1つ“R.U.T.Y.(ラティー)”が喪失されたことにあります。この“FEDCOM”シリーズとは、星間規模のコンピュータ・クラスター・システムです」

「銀河連邦が総力を挙げて開発した初代バージョンのFEDCOMは、2255年に稼働を開始しました。この2年前からは、未確認知的機械種のETI・通称“UIMS”の兵器解析と、そのデータをもとに新兵器を開発する“D計画”が推し進められています。D計画は特殊航宙機の開発が主目的と知られていますが、時期的には初代FEDCOMもUIMSのデータをもとに構築されたかも知れませんね」

“UGSF”
▲“D計画”からは、航宙機の代名詞とも言える“ドラグーン”シリーズが生み出されました。(PS3/PSP PSアーカイブス版『ギャラクシアン3』)
“UGSF” “UGSF”
▲UIMSは人類から地球を奪取したことすらある恐ろしい敵です。根本的な生態が地球型生物とかけ離れる上に、形態も生育環境によって大きく変貌するらしく、その姿は奇妙奇天烈かつ奇想天外!! 不思議なことが当たり前!(DS『みずいろブラッド』)

「2290年、人間型ETI・ボスコニアンの仕掛けた極大規模の第3次侵攻に対し、UGSFは開発中だった特殊航宙機“ブラスターMk-2・フェニックス”の緊急投入作戦“オペレーション・ファイナル・ブラスター”を敢行しました。これは、ボスコニアンの前線基地惑星を陥落せしめるほどの成功を収めます。その後、UGSFが疲弊した体制の調整とETI残党の排除を進める中、星間コングロマリットの1つ“ゼネラルリソース”は対ETIの傭兵部隊を設立するとともに主要8惑星間に回線を連絡させ、FEDCOMを“FEDCOM2”へと進化させます」

“UGSF”
▲ボスコニアンに痛打を加えた“オペレーション・ファイナル・ブラスター”。疲弊したボスコニアンはこの後も損耗を続け、約200年後には銀河連邦へ降伏します。(Wii バーチャルコンソール版『ファイナルブラスター』)
“UGSF”
▲傭兵部隊“バウンティハウンズ”の隊員には、外宇宙戦闘艦すら轟沈させる超大型ETI・ゾルギアに対し、少人数で致命傷を与えた人たちもいたらしいですよ。ゾルギアが幼生だったから成功したようですが……オクティ族の件といい、スゴい人間がいるものですねえ。(PSP『バウンティハウンズ』)

「なおオペレーション・ファイナル・ブラスターにおける戦線では、従来のボスコニアンとは技術系統の異なる奇妙な兵器……板状の質量弾などが確認されています。ボスコニアンと何者かの間に同盟結託、あるいは技術接収などがあったのでしょうか? ボスコニアンを軍門に従えた銀河連邦は何かをつかんでいると思うのですが、一般には明かされていません」

“UGSF”
▲従来のボスコニアンからすると明らかに異質な、回転する板状の質量弾。他にも謎の地上絵が見られたとか。(Wii バーチャルコンソール版『ファイナルブラスター』)

「2660年には銀河連邦勢力下の各恒星間が無機物転送エネルギーチューブ“スターライン”で結ばれたため、全星系のコンピュータを接続させることが可能となりました。進化を続けるFEDCOMにもこの技術は導入され、5万光年規模の巨大なコンピュータグリッド“FEDCOM5”が形成されます」

“UGSF”
▲星をつなぐネットワークと言えば、アストロレスキュー隊の用いるラインがありますね。規模は小さいながら、なんらかの共通技術を感じます。(海外用PC版『スタートリゴン』 ※Amazon.com他にて配信)
“UGSF”
▲1998年にネオダイン・インダストリーという企業が計画した次世代通信衛星も“スターライン・ネットワーク”という名前だったようです。何か関係があるのでしょうか……?(PS2版『タイムクライシス2』)
“UGSF”
▲2010年ごろ『黎明スターライン』という歌を唄ったアイドルもいたらしいですよ。関連性は……はて?(PS3『アイドルマスター ワンフォーオール』 ※同曲は関連CD『MASTER SPECIAL 02』への収録)

「それまでFEDCOMの中核をなす処理管理ユニット・Root Unitシステムはハードキー形状でしたが、“FEDCOM5”へのアップデートにおいて人型形状……簡単に言えば人造人間へと刷新されました。これは、2407年にETI・バッツーラの手でRoot Unitが奪取され、一気にUGSFが窮地へと追い込まれたことに由来します。つまり、“いざとなったら歩いて逃げる鍵”なら安心! というわけですね」

“UGSF”
▲従来のETIとはまったく異なる、異次元からの侵略者・バッツーラ。1人の英雄とギリギリで完成した新型航宙機、そして多大な幸運がなければ、銀河連邦どころか宇宙を滅ぼされていたほどの脅威でした。(PS3/PSP PSアーカイブス版『ナムコアンソロジー1』よりリメイク版『スターラスター』)

●召喚された原因は、銀河を巻き込む大陰謀にあった……かも?

「そして、ここからは歴史の闇ですが……2810年、Root Unitの1つであるType Yellow、つまり前述のR.U.T.Y.が、経緯は不明ながらディメンション・ワープ・ドライブの非公式実験“プロジェクト・ビフロスト”に使用されたそうです」

『しんぐんデストロ~イ!』
▲『しんぐんデストロ~イ!』メインビジュアルで上のほうにいる、こちらの人(?)がR.U.T.Y.さんです。

「しかしプロジェクト・ビフロストは失敗します。この“事故”により、R.U.T.Y.の管理下にあったUGSFでは兵器の生産・開発計画が破綻。そのままでは立ち行かなくなった諸計画は星間コングロマリット……前述のゼネラルリソース、そしてニューコムの2社に代表される企業群へと委ねざるを得なくなりました」

「ゼネラルリソース主導のプロジェクトが銀河規模へ拡大するとともに、ニューコムの強力なスポンサードを受けるUGSFが不可解な実験を敢行。その結果として銀河規模プロジェクトは散逸し、利権の一部をニューコムが継承。……これには、どうしても勘繰ってしまいますね。ニューコムとゼネラルリソースの対立は両者の設立間もないころよりですから」

“UGSF”
▲かつてユージア大陸において、ゼネラルリソースとニューコムの初となる大規模衝突が勃発しました。これ以降、両者の因縁は今日まで続いています。(PS『エースコンバット3 エレクトロ・スフィア』)

「ただ、UGSFをスポンサードしているのはゼネラルリソースも同様です。UGSF内で陰謀があれば、ゼネラルリソースとしても察しないはずはないのですが……。しかし動乱あればこその軍産利権……まさかすべてが……いや、まさか?」

「ともかく、この事故によってR.U.T.Y.はオリウスに“落着”します。そしてR.U.T.Y.は怪獣に襲われる人類文明と遭遇。現地人類を守護しようとするも支援要請が不可能。そこでR.U.T.Y.は適した兵士と兵器、そして司令官……つまりあなたを“召喚”したのです」

●といわけでグワッシャ(出発)!!

「経緯はおわかりになりましたでしょうか? この広い宇宙、暴虐に蹂躙されて滅びようとしている惑星があり、それを救えるのはあなただけなのです!」

『しんぐんデストロ~イ!』

「しかし、この怪獣騒ぎ自体にも裏で糸を引く何者かの気配が……って、女性隊員に見惚れないでくださいよ。怪獣ですよ」

『しんぐんデストロ~イ!』

「怪獣ですよ? わかってますか? 現地人類が窮地に……話を聞かないと尻をキュウリで叩きますよ!? 」

『しんぐんデストロ~イ!』

「まあ、何はなくとも出撃ですね。そうしなければ何も始まりませんからね」

『しんぐんデストロ~イ!』 『しんぐんデストロ~イ!』

「美少女たちとの戦場生活も始まらないのですよ! ご理解いただけましたら出撃しましょう!」

『しんぐんデストロ~イ!』 『しんぐんデストロ~イ!』

「さあ、何はともあれ平和な世界と新たな軍事史を築くために! しんぐん! デストロ~イ!! 」

“UGSF”

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 “美少女×戦車vs怪獣のスマホゲーム”とスタイル自体はライトながら、ディープなナムコゲームの血脈を受け継ぐ『しんぐんデストロ~イ!』。“最近のモバイルゲームにはなじみ薄いが、かつてのナムコゲームには親しんだ”という人も、プレイしてみてはいかがだろうか? 怪獣として登場する一部のキャラクター、そして『アサルト』や『サイバースレッド』などとも通じる“ナムコの戦車ゲーム”ぶりは、オールドゲーマーだからこそ楽しめるポイントだ。

『しんぐんデストロ~イ!』
“UGSF” “UGSF”
▲『しんぐんデストロ~イ!』を含め、なぜか戦車モノが多いナムコゲーム。一種の“伝統”と言えるのかもしれない。(下画像はPS3/PSP PSアーカイブス版『ナムコミュージアム VOL.4』より『アサルト』&PSアーカイブス版『サイバースレッド』)

(C)BANDAI NAMCO Games Inc.
(C)窪岡俊之
※特記ない限り、スクリーンショットは『しんぐんデストロ~イ!』のもの。

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