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2015年2月4日(水)

『東方Project』とPlayStationの今後は!? ZUN氏らが参加した座談会を全文掲載【電撃PS】

文:電撃PlayStation

 1月某日、東京のとある居酒屋にて、PlayStationのインディーズゲームプロジェクト“Play, Doujin”の主要メンバーを集めた座談会が行われた。現在発売中の電撃PlayStation Vol.583に掲載している座談会のノーカット版をお届けする。

『電撃PlayStation』

 同人作品として高い人気を誇る『東方Project』。昨年9月のSCEカンファレンスでは、その二次創作作品をPSフォーマットでリリースする“ZUN×PlayStation”プロジェクトが発表され、大きな話題を呼んだ。

 昨年12月にこのプロジェクトは“Play, Doujin!”と名を改め、『東方』だけに限らず、広く同人ゲームにPSフォーマットの門戸を開くことを宣言し、インディーズ界に新たな旋風を巻き起こそうとしている。今回、ZUN氏をはじめとした“Play, Doujin!”の主要メンバーに、プロジェクトの現状や今後の展望をざっくばらんに語ってもらった。

■座談会参加メンバー

ZUN氏JYUNYA氏
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▲音楽やシステム、キャラクターなど、『東方Project』の世界を構築した原作者。“神主”の愛称で親しまれており、無類のビール好きとしても有名。▲『東方』二次創作を代表するサークルの1つ・AQUASTYLEの代表。ゲーム制作以外にも、動画投稿やゲーム実況の投稿などで精力的に活動中。
 
響谷 ゆろ氏江崎 望氏
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▲新たに“Play, Doujin!”への参加が決定したサークル・CUBETYPEの代表。『東方』以外にもさまざまなコンテンツの二次創作を扱っている。▲メディアスケープ株式会社代表取締役。“Play, Doujin!”を企画し同人サークルと交渉を行う。プライベートでも10年ほど同人サークルの活動をしてきた。
 
小山田 文雄氏伊東 章成氏
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▲メディアスケープ株式会社取締役。江崎氏とともに“Play, Doujin!”の中核を担う。SCEと同人サークルの橋渡し的な役割を担当する。▲SCEサイドでPSフォーマットにおける国内のインディーズ関連全般を担当。“Play, Doujin!”も先頭に立ってプロジェクトを推し進める。

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■プロジェクトの始まりは超特急!

『電撃PlayStation』

――昨年9月『東方Project』の二次創作がPlayStationフォーマットでリリースされるというお話がありましたが、こちらの展開のきっかけを教えてください。

伊東:メディアスケープさんから声をかけていただいたのがきっかけですね。

江崎:そもそも我々がお話させていただく前から、PlayStationはインディーズ系のタイトルに力を入れていまして、インディーズを応援する“PlayStation love Indies”というプロジェクトがありました。

 ところが、このプロジェクトに登録できるのは法人だけと聞きまして。つまり、法人化していないサークルの同人ゲームはこのプロジェクトに直接参加することができなかったんです。

 そこで我々メディアスケープが間に入ってPlayStation love Indiesの体裁を守りつつ、同人ゲームも他のインディーズゲームと同じようにリリースできるようにしたいと思ったのが、このプロジェクトの発端になります。そのときはちょうどインディーズゲームのイベントBitSummitの第2回の真っ最中でして、直接SCEさんのブースでお話をさせていただきました。

伊東:同人は海外でもそのまま“DOUJIN”という英語があるように、海外でも人気のある日本の文化です。インディーズゲームの日本展開をしていくうえで、同人ゲームに注目していましたが、日本の同人ゲームは今までにコンシューマで展開することがなかなかなかったため、手探りの状態が続いていました。

 そんななかメディアスケープさんと話をしていくうちに、同人活動をしている方も、インディーズゲームで現在旗揚げをされている方も、ゲームを作ることに対するスタンスは同じなんだなということに気づきました。そこでインディーズと同じ形での展開が可能だと確信し、メディアスケープさんと我々で一緒に取り組みましょうという話になったわけです。

江崎:そのあと、ZUNさんに本プロジェクトの話でおうかがいを立てたのが去年の7月ですね。SCEさんのカンファレンスで発表されたのが9月ですから、考えてみるとかなりのスピードで話が進みました。

伊東:プロジェクトの詳細を決めるにつれて、お互いに「これはおもしろくなる」という考えが一致して、動き出しは素早かったですね。運よく、ZUNさんの考えをうかがう機会も重なったため、OKをいただけるまでも早かったように思います。

――ZUNさんは、このプロジェクトに対してどういう感想を持ちましたか?

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ZUN:最初は、このままではすでにリリースされている多くのインディーズゲームと大差ないものになるだろうという印象でした。ですが同時に思ったのは、ここに一次創作者である自分がかかわることで、ほかのインディーズ展開とは違ったものになるという思いもありましたね。

 言ってしまえば、僕がかかわらないとあえて新しいプロジェクトを打ち立てる意味がないだろうと感じました。ただ、今までコンシューマとはかかわってこなかった『東方』を、PSにリリースしていいのかということは悩みましたね。

 同人だけでなく、どんなコンテンツでも“変える”ということはストレスになりますから。2、3時間ほどじっくり悩んで(笑)出した答えが「いきなり自分がPSで一次創作作品をリリースすることはない」ということですね。

 もちろん、将来的には出してほしいという声が上がるかもしれませんし、出さざるを得ない空気になるかもしれません。ですが、とりあえず自分は直接はかかわらないというスタンスで行こうと考えています。あと、これはおそらくユーザーさんが気にしているところだと思うので話しておきますが、新作移植問わず『東方』の一次創作をPSフォーマットでリリースするかは未定です。

伊東:同人活動において、二次創作というものは重要な要素です。また同人ゲームがこのプロジェクトを通して、インディーズとして世界に羽ばたいていく可能性もあります。二次創作は権利の問題がネックとなりますが、二次創作に寛容なことで話題となっている『東方』のZUNさんにご快諾いただけたからこそ、このプロジェクトは一気に走り出すことができました。

――そんな『東方』二次創作作品ですが、数あるタイトルのなかから配信タイトルはどのようにして決まったのでしょうか?

小山田:最初に発表させていただいた3作品に関しては、伊東さんからも「この作品はぜひ」というお話があったもので、いわばSCEからオファーをかける形になっています。

 ですが、当然PSとWindowsでは開発環境が違いますし、同人サークルはその環境に触れたこともありません。そこでまず、サークルさんにはPSの開発環境に触れてもらうことを最初に行うべきことと考え、早い段階で開発機材をお渡ししました。

伊東:発表前でしたし募集は難しかったため、少々強引ではあったかもしれませんが、こちらから直接オファーをさせていただきました。いろいろな『東方』二次創作を見たりプレイし、「これはぜひPSユーザーにも遊んでほしい」というタイトルを選び、9月のカンファレンスで発表させていただきました。

江崎:サークルさんへのオファーが可能になる段階までこぎつけたのが昨年の7月ですから、およそ1カ月の間に話をまとめた形になります。あのころは毎日メールを10通以上やり取りしていましたね(笑)。

小山田:9月に動画を配信することは決まっていましたので、各サークルさんに「リリースするタイトルの動画をください」と連絡を取っている横で、別サークルさんのタイトルの動画をムービーに盛り込むという、まるで余裕のないスケジュールでした。

ZUN:私の写真も欲しいと言われて急きょ撮影に応じたのですが、カンファレンスで出た写真は、じつは居酒屋3件目くらいの写真なんですよ(笑)。

伊東:まさかSCEのカンファレンスで、ビールを飲んでいるZUNさんの写真が映し出されるとは誰も思っていませんからね(笑)。本プロジェクトが一気に広がったのは、あのインパクトのおかげかもしれません。

ZUN:お酒を飲んでいる自分の写真に一切触れず、プロジェクトの説明に移っていく流れもおもしろかったですね(笑)。

江崎:我々としては、このプロジェクトを公開するにあたって、ZUNさんの写真は必須だろうと考えていました。写真がないと、ZUNさんと関係のない人間が集まって、勝手に『東方』の二次創作を利用しているように見えてしまいますから。そういう意味では、ZUNさんが“いつもどおり”お酒を飲んでいる写真ということも、ある意味正解だったかもしれません(笑)。

JYUNYA:僕は1サークルとして参加させてもらったので知りませんでしたが、本当にものすごいスピードだったんですね。初めて我々のサークル・AQUASTYLEにメールが来たときのことは今でも覚えています。コミケ1週間前という、非常に忙しい時期でしたから(笑)。

小山田:そのときはまだ発表していないこともあって、詳しいことは言えませんでした。ただ、詳細を語らないまでも、プロジェクトの概略と、タイトルの名称を出してもよいかと聞いた覚えがあります。

JYUNYA:ちょうどそのときはコミケで発表する新作の作業が最終段階で、サークルの面々が集まって作業をしていたんですよ。それで、メンバーにメールの内容を話したところ「そんな妄言はいいから早くデバッグしろよ」って言われました(笑)。

小山田:コミックマーケット直前という忙しい時期にメールを出したのは、理由があるんですよ。同人サークルは作品を作る期間だけエネルギッシュに動いて、イベントが終わると一時的に休養に入るところが多いので、必ずサークルがアクティブである時期に連絡をしたわけです。このタイミングであれば宣伝や連絡などでウェブやメールを利用していることが多いので、確実に見てくれるだろうと。

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伊東:じつはそのカンファレンス自体にもちょっとしたこぼれ話がありまして、当初は本プロジェクトをカンファレンスで発表する予定はありませんでした。

 ただ、個人的にはPlayStationがインディーズに力を入れていたことも踏まえてカンファレンスで発表すると、いい意味の「違和感」があって話題になると思っていました。その後、社内で相談してみたところ、あっという間にカンファレンスで発表することになりました(笑)。

■早ければ今年中にPSで東方二次創作を遊べる!

――そろそろプロジェクトが始まってからの話に移りたいと思います。ここまでに話した過程があり、サークルさんにお声がけしたんですよね?

小山田:CUBETYPEさんとは個人的に知り合いでしたので、このプロジェクトが動き出したときに声をかけています。そのときはまだタイトルが決まっていませんでしたが、色よい返事がいただけましたので、このたびタイトルとサークル名を公開しました。

JYUNYA:発表があった9月は、我々同人サークルにとって冬コミの準備真っ最中なんですよ。それが12月末まで続いていて、年が明けた今、ようやくスタートできるかなといった具合です。

小山田:今回のサークルさんは、コミックマーケットのスケジュールを基準に動かれます。9月には冬コミ、長いところはその次の夏コミまでスケジュールを決めています。その作業の合間を縫う形になりますので、2015年、もしくは2016年のリリースになってしまいます。

 ですが、AQUASTYLEさんとCUBETYPEさんは2015年になんとかリリースできる算段がついている状況です。遅れての発表になりましたが、もしかすると現在一番開発が進んでいるのはCUBETYPEさんかもしれませんね。

ゆろ:そこはAQUASTYLEさんがPlayStation Vitaで開発をしていて、我々がPS4で開発を進めているというのも理由かと思います。PS4のほうがPS Vitaよりも開発環境がPCに近いので。そのぶん少し素早く開発を進められているのかなと思います。

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JYUNYA:そうですね。こちらは現在、画像を表示するプログラムを作っていまして、それを今月中には動かしたいなと考えているしだいです。

ゆろ:ただ、開発自体はラクなのですが、説明内容などは初めて見るとちょっとわかりにくいとは感じています(笑)。

伊東:なるほどです。このプロジェクトで初めてPlayStationでの開発に携わったからこそ出てくる疑問点は、参考になりますし非常にありがたいものです。PS4をはじめ、新しいプラットフォームは、皆様のご協力やご意見をいただきながら開発環境を整えていきたいです。

江崎:参加されるサークルさんとはそれぞれお互いに情報を共有していきたいですね。メディアスケープとしても、開発のサポートをしていこうと考えています。

JYUNYA:ちょっとおもしろいと思ったのは、ほかのサークルさんに開発状況を聞いたら、同じPS Vitaの開発なのに自分たちではまるで使わないプログラムなどの話が出てきたことですね。同じ山頂を目指しているのに、違う山を登っているかのようで、こういった違いというのも同人サークルならではなのかなと思いました。

小山田:同人サークルはみな別々に開発を行っていますから、制作にかかわるプログラムを統一することは難しいでしょうね。ですが、共有できる情報だけでも共有していけば、今後参加されるサークルさんの開発がやりやすくなるかと思います。

伊東:コンシューマゲームメーカーの場合、開発チームが社内に複数あり、チーム間の情報を共有できるというサークルにはない強みがあります。ですから、そこを補うためにも情報の集積は有効ですね。

■『東方』にはまったきっかけとは?

ZUN:ちょっと聞きたいのですが、『東方』の二次創作を始めたきっかけとか、今も続けている理由はどのへんにありますか?

ゆろ:私のきっかけは『東方M‐1グランプリ』という、東方キャラクターに声をあてて漫才をするという二次創作ですね。それにハマってから東方原作に入っていったので、やや亜流なハマり方だと思います。

JYUNYA:僕のきっかけは、15年ぐらい前に読んだあるゲーム誌の同人作品を紹介するコーナーですね。そこで『東方』という作品を知りました。その何年かあとに友人の家で『東方紅魔郷』の体験版をプレイしたのですが、当時は弾幕シューティングが苦手だったんですよ。

 ですが、『東方』の場合は難易度によってはヘタな自分でも弾を避けられて、敵を倒せる。しかもそこにBGMがシンクロしてものすごいテンションが上がるんですよ。苦手だったものって、一度気に入るといっそう深くハマりますよね。それからは普通にプレイするのはもちろん、スコアアタックに挑戦することもあり、完全に東方漬けの生活をしていました。

 そういった経緯があって第1回例大祭(『東方』オンリーの同人イベント)に出ようと決めたんです。そういえば当時、苺坊主さんに「俺たちも第1回例大祭に出て同人ソフトで東方を盛り上げよう」と熱く語ったりもしましたね。流行ってからではなく、自分たちが流行らせていこうと。

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ZUN:だいぶ変わったハマり方ですね(笑)。ソフトを作れる技術を持っていたからこそというか。

JYUNYA:当時は僕も若かったので、勢いのままに突っ走りました。

ZUN:つまりファン活動の延長線上でゲームなどを作っていたわけですよね。それが今回、急にコンシューマになると聞いたとき、どう思いました?

JYUNYA:「おもしろい」けれど「いいのかな?」という2つの気持ちがありましたね。よくも悪くも表に引っ張り出していただいて、SCEさん、メディアスケープさん、それにZUNさんの後ろ盾がある状態で好きにやっていい。

 非常にうれしいことなのですが、若干その流れに酔っている感もあるので「おかしい、話がうますぎる」という思いもあります(笑)。ですが、せっかくの流れですから、このまま酔い続けていきたいですね。

ゆろ:先日、ほかの同人サークルさんとこのプロジェクトについて話す機会があったのですが、「よく参加したね」と言われました。私としては「PS4に自分の同人ゲームをリリースするという“扉”があるなら、みんな開けるだろう」と語ったのですが、意外と慎重な感じで。

江崎:twitterなどの反応を見ていても、本プロジェクトへの反響には極端な部分もあります。「おもしろい」といってくれる人も多ければ、いろいろと否定的な憶測などもありました。

 同人活動をされている人は「目立てるものなら目立ちたい」という人もいれば「そっとしておいてほしい」という人もいるんですよ。我々としては、そっとしてほしいという気持ちも大事にしますが、目立ちたい人には機会を用意したいと考えています。

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小山田:メディアスケープでは『東方』二次創作も含め、同人ゲームをPSでリリースするサークルさんを応援する“Play, Doujin!”というプロジェクトを立ち上げました。

 これは“ZUN×PlayStation”というプロジェクトだと『東方』の二次創作だけを指すプロジェクトになってしまうためです。我々が目標としているのは『東方』かどうかに関係なく、同人をPSフォーマットで出す道筋があるということを認知してもらうことですからね。

ZUN:スマホじゃなくて、PSでリリースしようと考えたのはなぜですか?

ゆろ:僕が子どもの頃にはゲーム機はあるけど、スマホは当然ありませんでした。子どもの頃に遊んだゲーム機に自分のゲームを出せるという魅力は大きいですね。また、ゲーム機はコントローラが共通なことも大きいです。

JYUNYA:僕、自分のゲームで遊ぶことが好きなんですよ。それこそ、リリースしたらそこから半年ぐらい生放送をしつつプレイするぐらい好きです(笑)。だから自分のゲームをふとんに寝っ転がったまま、携帯ゲーム機で遊べるというのがうれしいですね。

伊東:自分たちの“好き”を全力で入れ込んでいるインディーズがPlayStationの世界に入っていただくことで、魅力的なコンテンツがより一層豊富になり、PlayStationを楽しんでいただける方がさらに増えていくのではないかと思います。その点では同人も一緒で、そういった熱量のある皆さんに参加してよかったと言っていただけるとうれしいです。

■今後の同人ゲームの理想像とは?

――やはり、このプロジェクトに参加されているサークルさんは、東方同人界隈で注目されていると思います。みなさんの活動が、ほかのサークルさんが参加するか否かに影響するかと思われますが、そういった点で何か思うことはありますか?

ZUN:自分だったらプレッシャーを感じます。適当に始めて「やっぱりダメでした」ということになるんじゃないかと。ここでダメというのは売上が伸びなかったという部分になりますが、作り手としては「自分のゲームがPSに出た」という達成感や満足感は確実に感じられると思います。

JYUNYA:僕たちサークルとしてはおもしろそうだという部分もありますが、十数年同人活動をやっていて、コンシューマハードに自分たちのゲームをリリースする機会を与えられたということは奇跡じゃないかとよく話をしています。。

 売上には自信はありませんが、今後のために何かしらの成果は残したいとは考えていますね。おもしろいものを作りたいという思いは、それだけ人をひきつけると思います。ですからおもしろいだけでもいいですが、それだけではなく「うまくやりたい」という思いはありますね。

江崎:現時点でも、既存のコンシューマとは違うおもしろい試みをやらせてもらっていると思います。AQUASTYLEさんは最初の制作発表がニコ生ですし、その後の情報もブログなどで公開しているなど、既存のゲームにはない試みばかりです。

伊東:そういった部分も含め、自由さが魅力のひとつですよね。SCEもプロモーションに積極的に協力していますし、作り手の皆様が好きなタイミングや手法で発表するなど、インディーズ、同人らしさを大事にしていきたいです。

小山田:まあどうがんばっても、SCEさんのスケジュールに縛られる部分はあります。例えば、宣伝用の動画をPlayStation Storeで掲載する際には即公開できるわけではなく、SCEさんの確認を経て公開することになるわけです。ですが、そういった動かしようのない部分以外は、なるべくサークルさんの要望が最優先に通るというのが“Play, Doujin!”の醍醐味かなと思います。

――“Play, Doujin!”の今後の理想像はありますか?

江崎:“Play, Doujin!”という名前ですから、やはり多くのサークルさんに参加していただいて、サークルさん自身にPSという場で何ができるか考えてほしい。そして「これが自分たちのPSのゲームです」と出してほしいですね。ですので、こちらから具体的な理想を求めることはありません。

ZUN:僕は“Play, Doujin!”の作品を見て、同人作品を作る人が増えてくれたらうれしいですね。

江崎:そこは同人を作る人間は常に考えていることですね。

小山田:同人を作る人が増えてほしいということは当然ですが、PSで開発するということはある程度ハードルがあります。ですから、リリースされるタイトルは新しい作り手の目標になるものであってほしいですね。

 そして、新しい作品がさらに新たなユーザーさんの目標になるというように循環していけたら、と考えています。これは“Play, Doujin!”だけではなく、あらゆるインディーズ環境を含めての循環です。

伊東:SCEとしてもインディーズや同人活動の活性化をさらに推し進め、個人や小規模体制でもコンシューマハードに創作物を出せる環境をご提供できたらと考えています。ですから同人作品を作っている皆様のご意見は、大事にしていきたいです。

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ZUN:自分も昔、商業でゲームを作っていましたが、それが嫌で『東方』を作り始めました(笑)。同じような人がこのプロジェクトでゲームをリリースしてくれたら、回りまわって環境が変わったことにもなり、おもしろいですね。

伊東:このプロジェクトが広がりを見せれば、若い世代にもゲームを作る人が増えてくると思うんですよ。そういういい流れができてほしいし、最終的に同人という日本独自のコンテンツ制作環境で、世界とも勝負していけるという話が出てほしいです。

ZUN:そうやって若い世代がおもしろいゲームを作ってくれないと、老後に遊ぶゲームがなくなっちゃいますしね(笑)。

伊東:このプロジェクトをきっかけにゲーム制作者が増えてくれたら、本当にうれしいですね。また、PlayStationは世界中で販売しているので、日本国内だけでなく海外のゲームファンも含め、より多くのユーザーの方がPSで同人ゲームを遊ぶことになるという話も決して絵空事ではありません。日本語のままでもいいから出してほしいというくらい熱心な海外のお客様もいらっしゃいます。

JYUNYA:そういえば、キャラクター名やスペルカード名の英語表記ってどうなるんですか?

ZUN:一応キャラクター名は、公式の表記はあります。ですが、さすがにスペルカード1つ1つに英語名をつけているわけではないので……海外wikiなどを見てもらえればと(笑)。

JYUNYA:メディアスケープさん、英語表記のリストとか作ってくださいよ(笑)。

小山田:海外wikiをベースにしていいと思いますよ。そもそも公式見解が出るまでに作られた公式のマンガでも、英語表記がブレていますから(笑)。逆にそれぐらいゆるい形で作っていいコンテンツだと考えてもらえればいいのかと思います。

江崎:海外もそうですが、国内だけでも反響はけっこうすごいですよ。先日のPS Vita用テーマの配信では、DL数がすごいことになったそうですし。

ZUN:アーケードでは『東方』の楽曲が、すでにいくつかのリズムアクションに収録されています。そういった話題も盛り上がりますが、コンシューマハードにカスタムテーマが来るという反響は大きかったですね。ちょっとコンシューマを見直しました(笑)。

JYUNYA:それを聞いてほっとしましたよ。じつはZUNさんがこのプロジェクトに対してどう思っているのか、気になってビクビクしていましたので(笑)。

■すべての同人サークルに門戸は開かれている

――本プロジェクトに、これから参加しようかと迷っているサークルさんにメッセージがあればお願いします。

ZUN:興味のある方は参加してみてください。インチキではないので(笑)。

江崎:そうですね(笑)。怖がらなくてもいいので、参加してくださいというところですね。

ZUN:ただ、お話しておかなければいけないことは、こちらからオファーしたタイトルだけがリリースされるわけではないことですね。興味のある方が直接メディアスケープさんに連絡を取るという道筋もある。話を聞かないうちに、こちらからはNOを突きつけることはあまりないと思います。

小山田:まだ問い合わせに対応する手はずが整っていないので、すでにお問い合わせをいただいている方にもお返事が遅れる場合もあります。とはいえ、今後必ずなんらかの形で返答させていただきたいと思います。

伊東:参加を希望される方や、ご興味を持っていただいた方は喜んでお迎えします! みんなで盛り上がりを実感していけるよう環境を作って、ゲーム制作を楽しめる場所であるよう努力します。

ZUN:ただ、もうけられるかはわからないですよ。1年間開発に時間をかけても、元がとれる保証はありません。

ゆろ:大丈夫。失敗しても間違いなく来年の飲み会のネタにはできます(笑)。

江崎:あと大事なことがありますよ。売れなくてもデータなので在庫の山は積み上がらない(笑)。

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JYUNYA:コミケだと持ち帰る在庫数が多いときは、宅配受付に事前に並んだりしますからね。

伊東:(笑)。このプロジェクトのいいところは、ダウンロード版の取り組みなので、長期的にとらえてリリースしたゲームがいろいろな形で広がる可能性があるというところですね。

江崎:プレイ動画がアップされて、急に売上が伸びる可能性もありますね。

小山田:ただし、開発は自分たちで行うということが大前提になっています。ですが、そこを乗り越えてもやりたいというサークルさんはぜひ来ていただきたいですね。無条件に受け入れるわけではないですけど、そこを乗り越える覚悟がある方々を、我々は求めています。

ZUN:そのためにもまず「このゲームなら作ってみたい」というものを第1弾のリリースなりで、世に送り出す必要がありますね。

小山田:そうですね。目標となるものをリリースしつつ、我々は新しい参加者への門戸を開いているということをアピールしていきたいです。

JYUNYA:それに関しては僕も思うところがあって、今回のプロジェクトには夢があると思うんですよ。

 僕自身ゲームサークルとして12年活動していますが、昔はゲームを作ろうとするとサークルに複数人が集まるのが当たり前でした。作り手同士の交流を目的とした“デジタルトキワ荘”というホームページなんかもありましたし、同人サークルを作りやすい環境だったんですよ。

 ですが今は作家さん1人単位で同人デビューできますし、発表できる場も多い。そうすると同人サークルに人が集まる理由が少なくなってしまうんですよね。さらに同人ソフト自体も少なくなってきているうえ、敷居も高くなって昔よりも夢を見づらくなっているように思います。実際声をかけても「絵や音楽の発表をできる場は、すでにあるのでいいです」という回答をいただくことも増えています。

――ニコニコ動画やpixiv、最近はYouTuberも増えてきました。自身を表現できる場は、たしかに少し前に比べると圧倒的に多いですね。

JYUNYA:やっぱりPSという旗は大きいものですから、「一緒にゲームを作ろう」ではなく「一緒にPSのゲームを作ろう」と言えるほうが、夢を語りやすいかと思います。

 今回の発表などで僕のサークルでも「俺の作ったマップがゲーム誌に載っている!」と喜んでいる人もいました。その人は普段無口な人なのですが、そのときだけは「嫁や子どもに自慢します!」と、すごくテンションが上がっていて驚きました。と同時にPSでゲームを出すということは、ゲームを作ることが好きな人間にとって、ものすごく大きな夢なんだなと再認識しました。その人も小さい頃からゲーム業界にかかわることを夢にしていて、それが思わぬ形で実現できたと喜んでいました。

 長々と語ってしまいましたが、それだけコンシューマというものは魅力が大きいものなので、サークルに人を誘う際に夢を語りやすいものだと思います。もちろんこのプロジェクトが続けば、今の学生さんにも将来PSでゲームを作るという夢が広がります。ですから1発目にリリースする立場としては、そういった期待に応えたいと思います。

 あとこれは余談なんですけど、田舎で中学の新年会が行われたんですよ。そこで恩師から「キミは15年前にPSとかでゲームを作りたいと言っていたけれど、あの夢はどうなったんだい?」って聞かれたのに対して、「今年叶います」って答えられたのがうれしかったですね(笑)。

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ZUN:実際、仕事としてゲーム業界に入るのは、ほかの会社と比較して難しいことではありません。ですが、ゲームメーカーに入っても同人ゲームのように自由にゲームは作れません。

 おそらく、自分の作りたいものではなく、全体のなかの本当に細かい一部分になってしまいますね。そういった意味で、同人ゲームの方が自分が作りたいものを作れるという魅力はあると思います。

江崎:作りたいゲームを作るなら、ゲームの全貌が見えるぐらいの環境がいいと思います。

ZUN:同人ゲームは作家が見えるゲームです。どこの会社が販売しているかがわかっても、じつは下請け会社がたくさんかかわっていて……ということはありません。

伊東:そういった作家性を遊び手も楽しんでいるようですね。日本でも自作ゲームは実況プレイされやすい印象があります。

 これだけコンテンツがあふれている時代だから、おもしろいと思ったゲームをピックアップして紹介してくれる遊び手の力は大きくなっていますよね。そのおもしろい点を見つけやすい要素の1つが作家性だと思うので、個性あふれるインディーズと同人のゲームは今の時代にあっているのではとも思っています。

小山田:PS2の頃から同人ゲームがコンシューマに移植されることはありました。そういったタイトルは、素材は同人サークルさんに提供してもらって、開発は別会社が行うということで、その結果としてゲームの個性が薄くなるということもありました。

 “Play, Doujin!”では、そういったサークルさんならではの良さを残していくということは意識していますし、今後も心がけていこうと考えています。

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■『東方』のPS Vita用テーマをReader Store限定購入者特典として配布

 Reader Store×電撃PlayStationの特別企画として、現在発売中の電撃PlayStation Vol.583の電子版をReader Storeで購入した方には、特典として『東方』のPS Vita用オリジナルテーマをプレゼントしている。著名な同人サークルのコラボによる貴重なテーマなので、興味がある人はこのチャンスを逃すな!!

『電撃PlayStation』
▲各サークルが描く霊夢がロック画面に!!
『電撃PlayStation』 『電撃PlayStation』
『電撃PlayStation』 『電撃PlayStation』
▲各サークルによる壁紙が、10枚分用意されている。

(C)上海アリス幻樂団
(C)Mediascape Co. Ltd.
(C)AQUASTYLE
(C)CUBETYPE
(C)苺坊主
東方スカイアリーナ祭 Produced by 領域ZERO
幻想の輪舞 Licenced by G.rev Ltd.

データ

▼『電撃PlayStation Vol.583』
■プロデュース:アスキー・メディアワークス
■発行:株式会社KADOKAWA
■発売日:2015年1月29日
■定価:676円+税
 
■『電撃PlayStation Vol.583』の購入はこちら
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