2015年4月10日(金)
数多くの“本格ミステリィ”作品を世に送り出してきたPCゲームブランド・Innocent Grey(イノセントグレイ)。そんな彼らが女の子同士の恋愛――いわゆる“百合”に特化した作品『FLOWERS』をリリースし、それまでのイノグレファンや百合クラスタの人々を驚かせたのが昨年4月。そして2015年4月17日、その続編『FLOWERS -Le volume sur été-』が満を持してついに発売されます!
ということで、前作の発売前には体験版のプレイレポートをお届けしたわけですが、今回は一足早く製品版マスターをお借りして、第1章のプレイレポートをお送りしたいと思います! さらに後半にはInnocent Grey代表/原画担当スギナミキ氏のインタビューもあわせてお届けしますので、そちらもぜひチェックしてください!
“百合系ミステリィADV”と銘打たれた本作『FLOWERS』は、季節ごとに区切られた全4季のシリーズとなっており、第2季となる今作の季節は“夏”。全寮制のミッションスクールを舞台に、そこで暮らす少女たちの日々のふれあいを描いていきます。今作の主人公は車椅子の少女・八重垣えりか。新たな転入生・考崎千鳥とアミティエになった彼女は、出会い方が最悪だった故に最初は反目し合いますが、日々の出来事や様々な事件を通して互いに心を近づけていき……。
――という新たなアミティエの関係も気になるところですが、本シリーズのもうひとつのキモ“ミステリィ要素”は今作でも健在。劇中では女の子同士の恋愛だけでなく、大小様々な“事件”も描かれ、プレイヤーはそのたびに犯人を推理していくことになります。まずは本作のベースとなるストーリーとメインキャラクターを紹介しつつ、第1章を通して最初の事件の流れを追ってみましょう。
心に傷を持った少女、白羽蘇芳。
出逢いの季節、“春”に自分を受け入れてくれる友、そして恋人を持つことができた。
が、互いを赦しあった恋人、匂坂マユリは理由を言わぬまま学院を去ってしまう。
喪失感を悟られぬように振る舞う白羽蘇芳に、
書痴仲間である八重垣えりかは心を痛めていた。
癒やす方法はないものかと考えていた折り初夏を迎えた学院に、一人の少女が転入する。
少女の名は――考崎千鳥。
最悪の邂逅を果たす八重垣えりかへと、少女は言う。
“貴女は卑怯者”だと。
夏月を迎えた学院生活の中で起こる奇妙な事件。
八重垣えりかはアミティエとなる考崎千鳥とともに学院の謎に挑む――。
■ 八重垣 えりか(ヤエガキ エリカ) ■
花 | エリカ(ツツジ科) |
花言葉 | 孤独、謙遜、休息、心地好い言葉、博愛 |
誕生日 | 9月17日 |
声優 | 佐倉綾音 |
人嫌いの変わり者。男性的なしゃべり方をするが、これも他者との間に壁を持ちたいが故。1人を好むものの、からかうためには話しかけにもいく。白羽蘇芳とは書痴仲間であり、互いに好きな作家を紹介し合うなど唯一胸襟を開く間柄。そのアミティエである匂坂マユリが学院を辞めたことで心を痛めているのではと、内心心配している。趣味は読書と人の弱み探し。同じく変わり者の転入生・考崎千鳥とアミティエになったことで、彼女の学院での日々は大きく変わっていく。
考崎 千鳥(タカサキ チドリ)
花 | 紅千鳥(バラ科) |
花言葉 | 何て愛らしい、気品、高潔、忠義 |
誕生日 | 2月1日 |
声優 | 洲崎綾 |
芸術家肌の変わり者。感情を表情に出さないため取っつきにくいと思われており、そのうえ気になったことは素直に口に出し尋ねるため、いらぬ騒動を起こすこともしばしば。転入する前までは劇を中心とした芸能活動を行っており、下地であるバレエや歌唱の実力は学院でも指折り。趣味はクラシックバレエとボイスレッスン。八重垣えりかとアミティエになるものの変わり者同士、空まわりしてしまう。しかしある事件をキッカケに、2人の仲は少しずつ変化を見せ始めることに。
白羽 蘇芳(シラハネ スオウ)
花 | 花蘇芳(マメ科) |
花言葉 | 高貴、質素、不信仰、裏切り、疑惑、豊かな生涯、目覚め |
誕生日 | 3月16日 |
声優 | 名塚佳織 |
無口で心配性で小心者。以前と変わらぬ気質だが、春を経て自分を相手へと委ねることを覚えた。しかしもっとも心を赦し合ったアミティエ・匂坂マユリが理由も告げずに学院を去り、心に新たな傷を負ってしまう。春から夏に移り変わるも喪失感はともなったままだが、友人やもう1人のアミティエらに悟られぬように振る舞う。映画や小説を友にしていたため、会話の中で映画や小説の引用が出ることもしばしば。趣味は文学、音楽、映画鑑賞で、部活動は料理部。
→その他の登場キャラクターについては前回の記事をご参照ください。
概要の説明が終わったところで、次はいよいよプレイレポート……といきたいところですが、その前にぜひ本作のOPムービーをご覧ください。鈴湯さんの優しい歌声と、夏らしいさわやかな演出がなんとも印象的。そして、ここでえりかと千鳥の仲よしっぷりを事前に堪能しておくと、序盤の2人の険悪っぷりがより衝撃的になるのでオススメです(笑)。
さて、ここからは夏篇のプロローグから第1章の終盤までのプレイレポートをお送りします。個人的に気になっているところは、前作のEDを経て蘇芳がどうなっているのか。そして主人公がえりかに移ったことと、新キャラ・千鳥との絡みですね。各媒体の情報で“最悪の出会い”をするというのは知っているのですが、それがどれほどなのか……。というわけで、さっそくプレイスタートです!
●季節は夏――蘇芳が負った心の傷は未だ癒えず
冒頭、えりかのモノローグで前作のあらすじが語られていきます。そして場面は図書室へと移り、そこには物憂げにメトロノームを見つめる蘇芳の姿が。彼女――白羽蘇芳はアミティエの匂坂マユリと心を通わせたのですが、マユリは何も言わずに学院を去ってしまったのでした。それから時間が経ったとはいえ、えりかはずっと無理をしている蘇芳の様子が気にかかるようで……。
当たり前ですが蘇芳、まだ吹っ切れていないですね。表面上だけでも普通に振る舞っているのが救いではあるのですが、やはりプレイヤー視点でもつらいものがあります。そしてえりかと蘇芳の距離感が、個心的にすごく好き。シニカルで人嫌いなのに蘇芳のことだけは本気で心配しているえりかと、そんな彼女にアミティエとはまた違った好意を寄せる蘇芳。異なるカップル間の横のつながりっていうんでしょうか。そういう要素が百合モノには重要だと思うのです。紅と黄と白みたいな。
●えりかと千鳥、変わり者同士の最悪の出会い
えりかが部屋に戻ると、外から歌声が。その歌に、いなくなった匂坂マユリを重ねたえりかは、気になって外へ見に行くのでした。そして桜の木の下で歌っていたのは、同じ制服を着た見知らぬ少女。彼女はえりかに気づくと、盗み聞きをしていたのかといきなり喧嘩腰で話しかけてきます。もちろんえりかは少しも怯まず、毒と皮肉を込めて言い返しますが、これに対する少女の反応は……。
あぁ、これは最悪です! 最悪としか言いようがない!(笑) 変わり者同士がよくない出会い方をすると、こういう感じになってしまうのですねぇ。今のところ、この2人が仲よくなる未来がまったく想像できません。それどころか、アミティエになるからには同じ部屋で生活するということで……考えただけでも恐ろしい……。
●千鳥との再会、そして新たなアミティエの始まり
次の日。いつもは自室勉強のえりかですが、この日はバスキア教諭のお願いで教室へ。そこで6人の転入生が紹介され、なんとその中に昨日会った少女・考崎千鳥の姿が! しかも“相性のよさ”を理由に、えりかのアミティエになることが決められていたのです。当然えりかは抗議しますが、いつも介助してもらっているバスキア教諭の笑顔の前に、あえなく折れるのでした。
やっぱり、こうなりますよネー。本来であれば6人の転入生が3人ずつのアミティエになるはずだったのですが、適性試験の結果、千鳥だけは相性のいいえりかのアミティエに。どんだけ相性よかったんでしょう、この2人。さらにここからちょっと先になりますが、蘇芳も2人のことを“似ている”と評します。もしかしたら本当に似たもの同士なのかもしれませんが、まだまだ不安しかありません。えりかの心情と見事にシンクロしていますね(笑)。
●自分の好きと嫌いを書き込む“自分ノート”
千鳥への学院の案内を頼まれたえりかでしたが、さすがに2人きりは疲れそうなので蘇芳に助けを求め、委員長の立花も付いてきてくれることに。ところが飼育小屋でやたらとうさぎに好かれる姿や、“自分ノート”に自分の好きなもの、嫌いなものを律儀に書き込む姿を見て、えりかは少しずつ千鳥に興味を持ち始めます。
普段はツンケンしているのに、なんだかんだと文句の1つも言わず自分を介助してくれるところも、えりかにとっては大きかったのかもしれません。そして何より“おもしろいヤツ”と思わせる要素があるかどうかが、えりかにとっては重要。千鳥の自分ノートは、そんなえりかにとってかなりおもしろい要素だったのではないでしょうか。そして非常にどうでもいいですが、2人の食事シーンがものすごく美味しそうで困ります。お腹が空きます。ちなみにこの部屋での食事シーンはこの後も何度も登場しますが、仲よくなるにつれて、自分のフォークで相手に食べさせるみたいな描写が出てきてヤバイです。みなさん覚悟しておいてください。
●衝突する千鳥と立花、そしてえりかは……
聖歌の授業中、千鳥は見事な歌声を披露して周りを驚かせます。しかしその後、林檎の迂闊な発言がキッカケとなり、みんなが触れないようにしてきたマユリの話題に。何も知らない千鳥はマユリに会ってみたいと言い出し、空気を無視して居場所を聞こうとしますが、この事態に蘇芳は耐えきれず泣き出してしまいます。蘇芳に対するひどい仕打ちに怒る立花。ふたりは言い合いとなりますが、えりかが助け船を出しつつ、バスキア教諭が2人に罰を与えて騒動は一応終結。えりかはうさぎの世話を言い渡された千鳥に付き合わされながら、クラスで孤立していくアミティエのことをなんとかしたいと考えるのですが……。
えりかとは少しずつ打ち解けてきたというのに、クラスでは孤立化まっしぐらの千鳥。思ったことをそのまま口に出してしまう性格にも問題ありですが、授業中の一件は彼女の知らない出来事だっただけに、一方的に責め立てようとした立花にも問題あり。前作では蘇芳たちの問題を外側から見ていたえりかでしたが、今度は自分が当事者として板挟みになっているわけで、さぞかし面倒くさいと思っていることでしょう(笑)。
●子うさぎ消失事件が発生! 犯人は千鳥!?
そんなある日、生まれたばかりの子うさぎが消えるという事件が発生。クラス内での立場もあり、立花たちの疑惑は飼育小屋の管理をしていた千鳥に向きます。彼女と一緒に世話をしていたえりかは“ある想い”の元、この事件の調査を預かることに。かくして、えりかは千鳥と一緒に現場検証と聞き込みを開始。自分たちの潔白を証明するべく動き出します。
この事件、千鳥本人は自分が犯人扱いされても構わないと考えています。でもえりかには、万が一にも蘇芳に誤解されたくないという想いが。加えて、蘇芳はマユリがいなくなってからというもの、うさぎの世話をすることで心の隙間を埋めてきました。そんな彼女に、真相のわからない離別を二度も味わわせたくなかったのです。というわけで、ここからはいよいよ本作のもう1つの特徴である“推理”の始まり。
●えりかと千鳥はともに“真犯人”を見つけることに
朝の7時に子うさぎがいるのを千鳥が確認しており、沙沙貴姉妹が異変に気づいたのが12時半。その日、庭師が一日中剪定を行っており、犯行可能時刻に飼育小屋を訪れた人物を特定することは可能。さらに沙沙貴姉妹からは、もう1つ有力な情報が。はたして誰が、どんな理由で子うさぎを隠してしまったのでしょう……?
千鳥がうっかり鍵をかけ忘れてうさぎが逃げ出した、という線も考えましたが、生まれたばかりの子うさぎが歩き回れるはずもなく。これはやはり事故ではなく、人為的に引き起こされた事件ということですね。さらに独自に聞き込みをした沙沙貴姉妹からは、バスキア教諭も怪しいという情報まで出てきたわけですが……これはまぁさすがにないでしょう(笑)。
●集められた証言の数々と、そこから導き出される答え
調査が一通り終わったところで、次は推理パート。いくつかの選択肢を選びながら、事件の概要を順序立てて組み立てていきます。と、口で言うのは簡単ですが、実際にやってみるとこれがなかなか難解。選択肢を間違えると、そのままゲームオーバーになってしまいます。そしてこれこそが、単なる百合ADVではない『FLOWERS』の大きな特徴なのです。ただ単に物語を読み進めるだけでなく、ぜひご自分でも推理しつつ挑戦してみてください。あ、ちなみに自分は5回ほどゲームオーバーになりました☆
●ついに事件の真相が明らかに! 明かされた犯人は……?
そして最後に解答パート。えりかの口から事件の全容が語られます。当然、犯人も明らかになるわけですが、そこはもちろんみなさん自身の目で確かめてください! このえりかからの報告により、一連の事件は収束を迎えます。が、実はこのあと、驚きの大どんでん返しが!? その内容とは……はい、もうおわかりですね? それではご一緒に。「みなさん自身の目で確かめてください!」
というわけでお届けしてきました夏篇の第1章プレイレポート、いかがでしたでしょうか。最後の最後はかなりグッとくる展開が待っているので、早くみなさんにもプレイしてほしいです! あれこれ話したいけれど、誰にも言えないこのもどかしさ!
そしてプレイしてみた感想としては、春篇とはまた違ったおもしろさを感じました。主人公の違いによる変化だと思うのですが、春篇がしっとりした感じだったのに対し、今回の夏篇はもう少しカラッとした感じと言いましょうか。すごくテンポがいいので、止めどきがわからずついプレイ続けてしまいます。とはいえシリーズの根っこの部分、心の結びつきを重視した百合要素や、物語のスパイスとしていい仕事をしているミステリィ要素は健在。春篇プレイ済みの人は、『FLOWERS』の世界にますます引き込まれること間違いなしでしょう。自分も1人のファンとしてプレイはここまでで止めて、あとはみなさんと同じく発売日を待ちたいと思います! それでは最後に、スギナミキ氏へのインタビューをご覧くださいませ!
――本日はよろしくお願いします。今回は八重垣えりかの好物である、ホットケーキの美味しいお店からお送りしたいと思います。
夏篇の劇中に出てくるのとそっくりなのを見つけたので、これを注文します!(笑)
――えー、それでは最初に、改めて夏篇のテーマを教えてください。
春篇をプレイしていただいたユーザーさん的には、やはりあのエンディングを経て、蘇芳がどういう状態になっているのかが気になるところだと思います。なので、今回の夏篇ではそこの流れを引き継ぎつつ、新たな主人公となるえりかと千鳥の関係を描いていければと。
――たとえば春篇をプレイしていない人が、夏篇から始めるというのも有りなのでしょうか?
ある程度、春篇のあらすじ説明も入っているので、夏篇から始めることも可能ではあると思います。が、匂坂マユリがいないという状況に対して、やはり春篇のエピソードを把握していた方が感情移入度がより高まりますので、推奨としては春篇から順番にということになるかと思います。
――劇中では、千鳥もマユリ関連のことをなにも知らなかったがゆえに騒動を起こしてしまいますが、夏篇からのプレイだと千鳥とのシンクロ率が高そうですね(笑)。
あぁ、それは確かに! そうか、なくはないですね夏篇からのスタート(笑)。結果的に、そこから春篇のほうもプレイしていただけたらうれしいです。
――夏篇は主人公がえりかに変わることで、少し硬質な感じになるのかと思っていたのですが、実際にプレイしてみると意外と柔らかい雰囲気だなぁと感じました。
春篇のえりかを見ていると、確かにそういうイメージを持たれるかもしれません。でも本当は単に気難しいだけのキャラではなくて、ちゃんと気遣いもできますし、表面上は斜に構えつつもなんだかんだで思いやりのある子なんですよね。今回主人公になったことで、その辺りが見えやすくなっているのかもしれません。あとはシナリオの志水さんが、主人公に合わせて微妙に文体を変えているのも大きいかと。
――そう考えると、本シリーズの“季節ごとに主人公が変わる”というシステムはうまくできていますよね。各季節をプレイすることで、最終的に全ヒロインへの理解度が高くなりますし、最後の冬篇では全キャラがお気に入りになっていそうな(笑)。
そこは企画段階からの狙いでした。最後はすべてのキャラを好きになっていただけるとうれしいですね。春篇では憎まれ役的な立ち位置にいた立花も、夏篇終盤ではきっと好きになってもらえると思います(笑)。
――さて、ここからはプレイしてみて気になったポイントをいくつかお聞きしていきたいと思います。まず、えりかが“髪”や“匂い”、あとは“胸の大きさ”に関して触れることが多いなと感じたのですが、これはどういった意図なのでしょうか?
志水さん的な百合表現の1つですね。ただ春篇に比べて、確かに夏篇では多いと思います。蘇芳の長い髪や千鳥の白桃の匂い、バスキア教諭の胸がメインですね(笑)。その辺りは、実はえりかのコンプレックスも大いに関係していて。自分はクセっ毛なので髪を伸ばしても似合わないとか、体型にメリハリがないとか、アミティエの女性らしい匂いに惹かれるとか。えりかはあぁ見えても女の子なので、やっぱり色々気にしているんですね。まぁ、普通におっさんキャラだからみたいな側面もありますけど(笑)。
――食べ物の好みも若干おっさんっぽいですよね。というか食べ物、食事シーンについても触れたかったのですが、えりかと千鳥の食事シーンのバリエーションが多すぎです(笑)。
イベント絵の差分、いっぱい作りました! グラフィッカーさんは大変だったと思います。
――しかも、絵だけでなくテキストでもすごい美味しそうに書かれているので、すごいお腹が空くんですよね……。味はもちろん、使っている材料とか食べたときの感触まで書かれていて。
志水さん的には、食事シーンを美味しそうに書くというのが夏篇の裏テーマだったようで。理由は謎です(笑)。しかも千鳥がいつもサラダしか食べていないので、えりかの食べる料理が余計に際立ちますよね。
――あとは春篇の蘇芳もそうでしたが、今回のえりかも映画からの引用がすごく多いですね。
例によって志水さんが実際に観たたくさんの映画の中から拾っているので、本作で気になる言葉があったら映画の方もぜひ観ていただきたいです。わりと最近のも入っています(笑)。
――では、ここからはメインキャラについてのお話を。まずは新キャラの千鳥ですが、劇中では歌うシーンがどれも非常に凝った見せ方だと思いました。
千鳥は元タレントという設定上、歌のシーンには力を入れました。初登場時も歌っていますし、授業中でも千鳥の歌にはカットインを入れたりして。他の季節にはない特徴なので、夏篇ならではの要素として楽しんでいただければと。
――千鳥はなんというか、ストーリーを通してじわじわとよさが出てくるタイプのキャラですよね。
そうですね。最初のインパクトが強烈なので、蘇芳やえりかのようにすぐに好きになれる感じではないかもしれません。ひょっとしたら、最後まで好き嫌いが分かれるかも……。
――ただ“あのイベント”で印象がガラリと変わるのでは?
変わってほしいですね! 自分たちとしても“あのイベント”はすごく印象深いと思っていますので。
――気になるイベント内容に関しては、ぜひ実際にプレイしてみてくださいということで。あと、えりかと千鳥の“距離感”がすごく不思議だなぁと。最悪な出会いから始まって、アミティエになったとはいえ仲よくなったわけではないのに、場面場面ですごい距離が近い感じもして。
食事シーンのアレとか、特にそうですよね。
――そうそう、“自分のフォークで相手の口元に持っていって食べさせる”という行為が非常にインパクトがありました。いわゆる「あーん」みたいな。
実はあそこ、最初は相手のお皿のものを自分でフォークで刺して食べるという見せ方だったんですよ。で、チェックの時に自分の百合アシストが入りまして、あぁいうカタチに。
――ナイス百合アシスト! これ、決して“食べさせっこ”ではないのがポイントですよね。えりか的には冗談交じりに「ほ~らこういうの恥ずかしいだろ?」みたいなノリで食べさせたのに、千鳥が意外と普通に食べちゃって(笑)。
で、逆にえりかのほうが恥ずかしくなると(笑)。そもそも、心の底から相手を嫌っていたら絶対にそんなことできないと思うんですが、だからといって好き合っているわけでもなく。そんな状況であの行為が成立して、しかもそれがどんどん日常化していくんですよ。その辺りの不思議な距離感にも注目していただければと思います。
――距離感と言えば、えりかと蘇芳の関係もまた絶妙な感じですよね。
ですね。普通の友だち以上ではあるんですが、恋人にはならないというあの不思議な距離感、絶妙だと思います。あの2人に関しては、実は春篇ユーザーさんから要望の多かったカップリングでもあるんですよ。それだけ、えりかと蘇芳の関係はしっくりくるのだということは理解しつつ、でもカップルとして成立してしまうよりは、やっぱり夏篇の距離感があの2人にはいいのかなと。
――プレイレポートでも触れましたが、百合作品における、異なるカップル同士の横のつながりっていいですよね。恋人同士まではいかない、友情が混じった感じがすごくいいと思います。さて、その蘇芳ですが、劇中では登場キャラみんながそれぞれに蘇芳を気に掛けているのが印象的でした。
主人公ではなくなって、存在的にすごく目立っているわけでもない中、行くところどころで話題に出るんですよね。春篇で蘇芳自身が勝ち取った信頼が、そういうところで表れているというか。
――そうなんですよね。出番は多くないのに、不思議と物語全体の中心にいるような感じを強く受けました。
そう言っていただけると、こちらも安心です! 主人公が変わることへの不安はどうしても出てしまうと思いますが、こちらとしても蘇芳を単なる脇役にするつもりはなく。むしろシリーズを通してのキーキャラクターとして、要所要所でしっかり描いていきたいと考えていますので、春篇をプレイされた方はどうかご安心ください。そのうえで、えりかと千鳥の新しいアミティエについてもご期待いただければと。
――それでは、言える範囲内で構いませんので、スギナさんが夏篇で特に気に入っている見どころを教えてください。
そうですねぇ……いくつかあるエンディングの1つで、“友だち以上恋人未満”みたいな内容のものがあるんですが、これがかなりグッときます。自分だけでなく、スタッフやシナリオの志水さんもお気に入りということでした。
――ベストエンドではないんですよね?
そうなんですが、とにかく、グッとくるんですよ(笑)。こればっかりは実際に見ていただくしかないですが、オススメですのでぜひ!
――意外なお答えでしたが、そこも含めて4月17日の発売日を楽しみにしています! では最後に、ユーザーさんにメッセージをお願いします。
春篇の発売から約1年。だいぶお待たせしてしまいましたが、ようやく夏篇の発売まで残り1週間となりました。今回は主人公がえりかになったことで、春篇とはまた違った感じでプレイしていただけると思います。そして新キャラの千鳥との絡み――あの気難しい2人がどのように仲よく、そしてラブラブになっていくかが夏篇のいちばんの見どころですので、ぜひ最後まで楽しんでいただければと。あ、今回はちゃんとハッピーエンドで終わります! あと初回特典のドラマCDは、本編クリア後まで封印しておいてください!(笑)
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