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2015年6月1日(月)

『クロノ・トリガー』20周年。今なお新作が望まれる傑作RPGのストーリーを振り返る【周年連載】

文:まさん

 あの名作の発売から、5年、10年、20年……。そんな名作への感謝を込めた電撃オンライン独自のお祝い企画として、“周年連載”を展開中。

 第22回は、1995年3月11日にスクウェア(現スクウェア・エニックス)から発売されたスーパーファミコン用RPG『クロノ・トリガー』の20周年を記念する思い出コラムをお届けします。

『クロノ・トリガー』
『クロノ・トリガー』

 SFCを代表する名作RPGを語るうえで、絶対に欠かせない作品。それが『クロノ・トリガー』です。リアルタイム世代ではなくとも、なんとなく名前を聞いたことがある人も多いのではないでしょうか?

 SFCの円熟期に発売された作品なのですが、発表された当時の衝撃たるや……もう、言葉では言い表せないほどでした。なぜなら、本作は当時爆発的人気を誇っていた3人のクリエイターが、初めてコラボレーションしたRPGだったのです。

■スクウェア・エニックスのオールスターで作られた名作は期待を裏切らなかった!

 『ファイナルファンタジー』シリーズの坂口博信さん、『ドラゴンクエスト』シリーズの堀井雄二さん。そして、国民的有名漫画の鳥山明さん。今でも現役の超有名クリエイター3人による“ドリームプロジェクト”として、まったく新しいRPGが誕生する。そう聞いて、興奮しない子どもがいないわけがありません!

 もちろん、自分も発表を見てから発売日を指折り数え、今か今かと待ち続けたものです。発売前にハードルを上げすぎると往々にしてガッカリしてしまうものですが、本作に関してはそんな心配は皆無。むしろ、発売されてから実際に遊んでみた時、期待を遥かに上回るおもしろさで、夢中になって遊んだことを覚えています。

『クロノ・トリガー』
『クロノ・トリガー』

 思い返してみると、当時はネームバリューのある有名クリエイターたちの作品ということで期待していたのですが、後から調べてみると名前が大々的に出ていないスタッフもスクウェア・エニックスオールスターなんですよね。

 『ゼノギアス』などの音楽でもおなじみの光田康典さん。『ライブ・ア・ライブ』などのディレクターを務めた時田貴司さん。のちに『FFVII』の演出などを担当した加藤正人さん……。

 他にも、スタッフロールを後から見返してみると、本当に“ドリームプロジェクト”としか言えない状態。今から見ても、総力をあげて作られた感じがします。

 個人的にも、遊び始めると止まらなくなってしまうほどの傑作。夢中になって遊び直してしまったあまり、この原稿がかなり遅れてしまったほど……という言い訳はともかくとして、誰もが納得できる名作なのは疑いようがありません。

 そんなわけで、今回は20周年を迎えた奇跡の傑作『クロノトリガー』に対する思い入れを語りつつ、そのストーリーやゲームシステムの完成度の高さを振り返っていきましょう!

『クロノ・トリガー』
『クロノトリガー』
▲1周目は適度な手ごたえの難易度で遊べて、2周目以降はサクサク進められるバランスのよさ。何度もやり込めるので、ゲームの購入本数が決まっていた子ども時代にはとても助かるゲームでした。

■旅立ち! 夢見る千年祭……胸おどるお祭り騒ぎから始まる時空を越えた大冒険!

 『クロノ・トリガー』の魅力といえば、なんといっても時空を超える壮大なストーリー! A.D1000年・現代のガルディア王国千年祭から始まり、中世(A.D.600)、未来(A.D.2300)、原始(B.C.65000000)、世界崩壊の時……と、さまざまな時代を飛び回って歴史を変えていく。もう、これだけでワクワクしないわけがありません!

 物語自体も時代を利用したギミックや伏線がたくみに張られており、鳥山漫画のような王道展開が楽しめるのが印象的でした。鳥山漫画を思わせるような小ネタ(コンフュージョン)もところどころに見られ、ニヤニヤしながら遊んだものです。

 王道なメインストーリーはもちろん、サブ的なイベントまで本当によくできているんですよ。ルッカの母親を救うためのパスワードや中世に置いてきたロボを現代で迎えに行く時のキャンプイベントなど、グッとくる話が多くて、もう、本当に素晴らしいとしか言えません!

『クロノ・トリガー』
『クロノ・トリガー』
▲平和な千年祭から始まる“現代”。千年祭では、出店されているミニゲームを遊ぶことができます。ここで取った行動によって、王国裁判の結果が変わるというちょっとしたお遊びもありました。僕は、もちろん満場一致で有罪でしたよ!
『クロノ・トリガー』
▲どこか懐かしさを感じさせる中世の風景。王道RPGのような魔王との決戦直後から、大きく動き出す壮大な物語にワクワクした人も多いのでは? 余談ですが、この時代はBGMの『風の憧憬』が素敵なんですよね。古代で流れる『時の回廊』と双璧を成すBGMだと思います。
『クロノ・トリガー』
▲ラヴォスによって崩壊した“未来”。悲惨な生活を強いられている人々と、コテコテな荒廃した未来感がたまりません。

 アニキこと、ジョニーとのレースゲームにハマったのもいい思い出。ハイスコアを出すともらえる景品は別にすごくないのですが(主にポーションやエーテル系)、延々とハイスコアを出そうと遊んでました。

 今だと、大作RPGの中にミニゲームが多いのは当たり前かもしれませんが、ここまで完成度が高いミニゲームが入っているRPGは当時だと貴重だったんですよ。

『クロノ・トリガー』

 さらに、各時代で加入する仲間たちも個性的でした。主人公のクロノ、おてんばなマール、発明家のルッカという現代の3人組に加えて、中世に生きる剣士のカエル、原始人のエイラ、未来の機械・ロボと、それぞれの年代からまんべんなく仲間が登場し、キャラクターもバラエティに富んでいます。

 また、ライバルの魔王も忘れてはいけません。選択次第で仲間にできるのですが、彼も中世というより……からの仲間ですからね(ネタバレのため割愛)。

 余談ですが、魔王ってデフォルトネームが1人だけ漢字なんですよ。しかも、SFC版は“魔”という漢字が名前入力で使えない(移植版では修正されてます)。だから、名前を変えてしまうと二度と“魔王”に戻せなくて、泣く泣く2周目から“マ王”で遊んだ思い出がよみがえりました。

 今日からマ王……この罠にハマった人は、自分以外にも絶対いますよね!? それとも、もうそこにいるのかしら、ジャキ?

『クロノ・トリガー』
▲パーティは3人編成ですが、残りの仲間は戦闘中以外なら呼び出して切り替えることができます。自分の場合は1周目だとクロノ、マール、カエルがだいたい固定のパーティ編成。最終的にはクロノ、魔王、エイラという完全趣味&火力重視パーティでした。
『クロノ・トリガー』
▲魔王戦に流れるBGM『魔王決戦』も名曲です。ゲーム内のそこかしこで聴ける名曲たちにも耳をかたむけてみてください!

 のちに発売された『ゼノギアス』や『クロノ・クロス』でもそうなのですが、このスタッフのRPGは、パーティが3人である理由やセーブポイントの存在意義など、ゲーム的なシステムを物語としっかり紐づけているんですよね。そこがたまらなく好き。

 あまり語っちゃうとネタバレになってビネガーピーンチになっちゃうので、言いたくても言えないのがもどかしい!

『クロノ・トリガー』
▲ビネガーも思い入れがある敵の1人です。こいつには困らせられました……。

■戦え! グランドリオン! SFC円熟期の技術をフルに生かしたシームレスバトル

 『クロノ・トリガー』のシナリオがおもしろいのは当たり前(断言)なのですが、ゲームシステムも当然ながら最高峰。今、遊んでも色あせていません。特に、当時SFCでRPGを遊んでいた少年たちを驚愕させたのが、画面の切り替えなしで行われるシームレスバトルでした。

 「えっ?」と思ったそこのアナタ。確かに、今だとよくあるシステムかもしれません。ですが、当時はものすごく画期的なシステムだったんですよ。

 敵シンボルにぶつかっても戦闘画面に切り替わらずに戦闘に突入するシームレスバトルは、PCのような大容量を使えるゲームならともかく、容量が限られていたSFCでは、信じられないようなシステムでした。

『クロノ・トリガー』
▲シンボルエンカウントどころか、画面切り替えがないなんて「スゴイ!」と、当時は思ったものです。

 と言っても、実は最近のゲームで採用されているシームレスバトルとは違うんですけどね。敵が出現する場所や数は決まっていますし、スイッチとなる地点に移動すると必ず戦うことになるので、実質的には固定バトルと変わりません。

 ある意味、容量が限られていたSFCならではの発想と言えますが、こうした斬新な試みがいろいろ採用されていたのも『クロノ・トリガー』のおもしろさを演出する1つの要素だと思います。

 敵にぶつかって、そのままシームレスにバトル! ザコ戦もそうなのですが、直前の会話を読んだテンションを持続したまま、流れるように戦闘が始まるので、ボス戦がものすごく盛り上がります。

『クロノ・トリガー』
▲会話が終わった後にデレレレレデレレレレレレ~という『ボス・バトル1』のイントロが流れると、なんというか「やるぞ!」という高揚感が高まってくるんですよ。デッデデデデーデ デッデデーデー。

■星の夢の終わりにいつでも挑める! ラスボスに挑むタイミングで変わるマルチエンディングと周回プレイが熱い!

 本作が、それまでのRPGと一線を画していたもっとも大きなポイント。それは“ラスボスへいつでも挑める”ということでした。

 ゲーム序盤で“時の最果て”に訪れた時点で、そこにあるバケツからラスボスである“ラヴォス”(この鳥山漫画リスペクトなネーミングセンス! ラスボスだからラヴォスですよ!?)がいる時代へ行けるのです。

『クロノ・トリガー』

 まあ、当然ながら相手はラスボスなので、ゲーム後半の強化したパーティじゃないと返り討ちにあいますが……。では、ただ挑めるだけのやり込み要素なのかと言えば、そうじゃありません。

 ちゃんと倒したタイミングによってエンディングが変わります。1周目では不可能でも、本作ではゲームクリア時のデータを引き継いだ状態から遊べる“強くてニューゲーム“があるので、2周目以降の周回プレイで挑めばいいのです。

 実は、この“強くてニューゲーム”。いわゆるクリアデータの引き継ぎも『クロノトリガー』の斬新な部分でした。そもそも、RPGを周回プレイする場合は最初から遊び直すのが当たり前。

 ゲーム自体も、2周目以降のオマケは特に考えられていない……そんな時代だったので、鍛えたキャラクターで2周目を遊べるという引き継ぎ要素は、すごく珍しかったんですよ。

 ちなみに、ラヴォスへ挑む方法はバケツ以外にもあります。タイムマシンのシルバードで乗り込む方法と、2周目限定ですがゲーム開始直後に転送装置でラヴォスのもとへワープする方法があり、挑み方でエンディングが変わったりもしました。凝ってますよね。

■バーチャルコンソールにゲームアーカイブスにDS版、今なら手軽に“遥かなる時の彼方へ”旅立てます!

 ここまで、本作についてダラダラと語ってきましたが、本作のすべての魅力を語りきることなんて、とてもできません!

 最高に強化したスペッキオのバトルが燃えたとか、ヌゥって結局なんだったのとか、真ん中じゃなくて右側がコアだったとか、言いたいことはいっぱいあるんですけど、未プレイの人に絶対遊んで欲しいので、あえて詳しくは語りません。

『クロノ・トリガー』

 とにかく、遊ばないと損ですし、遊んだら間違いなくハマりますから! もちろん、すでにプレイ済みの人たちは、ボクの意見に首を全力で縦に振ってもらえると思っています。

 え? 今の時代にどうやって遊ぶのかって? ご安心を。2015年の現在、SFC本体を用意しなくても遊ぶ方法はいくらでもあります。

 まずは、Wiiのバーチャルコンソール。これは原点のSFC版がそのまま移植されています。WiiUがあれば“Wiiメニュー”で遊べるので、一番オススメですね。

 それから、ムービーなどの追加要素が加わった移植がPS版。こちらは今だとゲームアーカイブスでプレイ可能です。PSP、PS Vita(Vita TV)、PS3のどれかがあれば遊べるので、入りやすさで言えば、PS版が一番なのではないでしょうか。

 そして、隠しダンジョンと追加エンディングが増えたDS版。今なら3DSで遊べますね。ちなみに、スマートフォンでも出ていますが、こちらはDS版がベースになっています。これだけ遊ぶ選択肢があるなんて、いい時代です。

『クロノ・トリガー』

 20周年を迎えた今でも、国内や海外を問わず、人気が高い『クロノトリガー』。この記事で再ブームを起こせるとは思いませんが、それでも好きな人たちの思い出を呼び覚ますきっかけになれれば幸いです。

 欲を言えば、再び『クロノ』シリーズが盛り上がって、ファンの予想を“クロノブレイク”するような新作が出ることを願ってやみません。

『クロノ・トリガー』
『クロノ・トリガー』

【周年連載 バックナンバー】

→第22回:『クロノ・トリガー』20周年。今なお新作が望まれる傑作RPGのストーリーを振り返る【本記事】

→第21回:アニメ『アイマス シンデレラガールズ』1stシーズンを振り返る。フィルムに隠された伏線と緻密な設定とは

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