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2015年5月19日(火)

今のゲーム開発会社が欲しい人材は? 4人の社長が語る就職活動のヒント

文:イトヤン

 5月16日に東京・渋谷ヒカリエのDeNAオフィスでゲーム業界一大就活イベント“HEAT渋谷 ~ゲーム会社合同説明会”が行われました。

“HEAT渋谷 ~ゲーム会社合同説明会”

 “HEAT渋谷”ゲームデベロッパー10社と大学・専門学校が合同で行う就職活動イベント。各社・各学校がブースを設けて出展や個別説明会を行った他、各社のデザイナーによるポートフォリオ講評会などが行われました。

●参加した企業
・アールフォース・エンターテインメント
・アクセスゲームズ
・ヴァンガード
・ヘキサドライブ
・マトリックス
・モノビット
・ランド・ホー
・リズ
・ワンダープラネット
・DeNA

●参加した大学・専門学校
・アミューズメントメディア総合学院
・太田情報商科専門学校
・神奈川工科大学 情報メディア学科 白井研究室
・総合学園ヒューマンアカデミー
・東京工科大学
・東京コミュニケーションアート専門学校
・トライデントコンピュータ専門学校
・名古屋工学院専門学校

 参加資格は大学生、院生、専門学校生(学年は不問)、ゲーム業界や企業関係者となり、基本的には事前のエントリー制でしたが、当日には飛び入りでのゲーム関係者も多数訪れたようで、会場はかなりにぎわっていました。

 ここでは会場で行われた、ゲームデベロッパーの社長4名によるパネルトーク“社長トーク!”の模様をお届けします。

■ゲームクリエイターは“生涯勉強”が当たり前

 就活イベント“HEAT渋谷”の1コーナーである“社長トーク!”は、参加したゲームデベロッパーのうち4社の社長が、ゲーム業界に必要とされる人材や育成方法、そしてゲーム業界の今後について、就活中の学生に向けて熱く語りあうというものです。

 パネルトークに登壇したのは、アールフォース・エンターテインメントの横山裕一社長、ヴァンガードの杉山智則社長、ランド・ホーの塚本昌信社長、リズの磯野貴志社長です。また、DeNAの馬場保仁プロデューサー兼採用担当が、司会進行を務めました。

“HEAT渋谷 ~ゲーム会社合同説明会”
▲左からリズの磯野貴志社長、ランド・ホーの塚本昌信社長、ヴァンガードの杉山智則社長、アールフォース・エンターテインメントの横山裕一社長、DeNAの馬場保仁プロデューサー。

 最初の話題は、“ゲーム業界に必要とされる人材とは?”というもの。これに対して社長のみなさんからは、“メンタルの強さ”や“健康”といった、ゲーム業界に限らず社会人として不可欠となる要素が挙げられていました。

 それに加えて塚本社長からは、「ゲームに対して情熱を持っていること」という意見も。ゲーム制作にはツラいことも多いけれど、それを乗り越えようとする時に力になるのは、ゲームが好きだという気持ちが重要とのことで、この言葉には他の社長のみなさんも頷いていました。

 また杉山社長は、ゲーム業界は他の業界に比べて技術の変化するスピードが速いので、それに対応できるよう“生涯勉強が当たり前”だと思ってほしいと語っていました。

 続いての話題は、登壇した社長のみなさん自身の就職活動に移りました。ところが、“大手のゲーム会社でアルバイトをしていて、会社の内線電話で正式入社の内定を通知された”という磯野社長や、“高校生の時にゲームプログラムのコンテストに入賞して、大学に入学した直後からゲーム業界での活動を開始した”という杉山社長のように、通常の就職活動をしていない人のほうが多いという事実が明らかに。

“HEAT渋谷 ~ゲーム会社合同説明会”
▲『PSYCHO-PASS 公式アプリ』などを手掛けたリズの公式サイト。(画像は公式サイトをキャプチャしたもの)

 ここで杉山社長からは、「ゲーム会社に入ることを目的にするのではなく、最高のゲームクリエイターになるためには何をやればいいかを考えて、それを実行してほしい」というメッセージが、会場の学生に向けて語られました。

■企業に就職した瞬間から、お金をもらうプロになる

 次の話題は、“採用と育成”について。各社が新人を採用する基準については、“同じ目標に向かって一緒に走っていけるかどうか”が重要だということで、いずれの社長も意見が一致していました。

 なかでも「どれだけ優秀な人でも、会社とミスマッチになるとお互いに不幸になる」という横山社長は、「あなたの大切な時間を切り売りしてもいい会社かどうかを見極めてください」と、逆に自身の会社を面談してもらって、それでも入社したいという人を採用していると語っていました。

“HEAT渋谷 ~ゲーム会社合同説明会”

 また、その人に向いているのであれば他社でも紹介するという磯野社長からは、「ウチの会社に入るというのではなく、ゲーム業界に入ってほしい」との思いが語られました。

 採用後の新人育成に関しては、塚本社長の率いるランド・ホーにおいて、興味深い試みが行われていることが明かされました。ランド・ホーとイニス、ヘキサドライブというゲームデベロッパー3社で、合同の新人研修が行われているのだそうです。

“HEAT渋谷 ~ゲーム会社合同説明会”
▲『サカつくシュート!』や『ポケモンカードゲームガチャ』などを手掛けたランド・ホーの公式サイト。(画像は公式サイトをキャプチャしたもの)

 これによって新卒入社の少ない中規模の会社でも、大企業と同様に“同期”と呼びあえるような人間関係を築くことができるとのこと。また、新人とはいえ互いの会社を背負って集まるライバルでもあることから、周りの会社を見て切磋琢磨できるようになってほしいという思いも込められているそうです。

 ここで司会の馬場プロデューサーは、学生は教えてもらうのが当たり前だが、企業に入った瞬間にお金をもらうプロになる、と語った上で「自分自身で前に進もうというプロ意識を持ってほしい」との熱い言葉を、会場の学生に向けて伝えていました。

■ゲームデベロッパーの社長が考える、ゲーム開発の今後とは?

 その後は、“ゲーム開発の今後”に関するトークが展開しました。杉山社長の率いるヴァンガードは現在、スマートフォン向けのゲームにフォーカスしているとのことですが、これはワールドワイドでの広がりが非常に大きいからだそうです。

 そのため今後は、日本だけをマーケットとして考えていると発想が小さくなってしまうので、ワールドワイドをつねに意識してほしいと語っていました。

 リズの磯野社長は、ゲーム作りにおいてプロとアマチュアとの壁がどんどんと低くなっている現状に触れて、近い将来、中学生や高校生まで誰もがゲームを作っているような、ゲーム制作人口が爆発的に増える状況になってほしいと望んでいるそうです。そうなるためには、制作したゲームを発表する場といった、インフラの整備が必要になるだろうと語っていました。

 ランド・ホーの塚本社長は、「数年前まではコンソール、携帯ゲーム機、スマホといった具合にゲームの棲み分けができていたが、今は全ての競争相手がスマホになってしまった」と語った上で、いずれは教育や老後といった社会問題をはじめ、あらゆるものがスマートフォンの上で業界を超えた競争になると予測しているそうです。

 そうした状況の中でゲームデベロッパーとして、ゲームの特性を活かしたものをどう作ることができるかを考えていきたいと語っていました。

 1999年からiモードの携帯電話ゲームを作ってきたアールフォース・エンターテインメントの横山社長としては、常時接続を前提としたゲーム作りや、携帯電話の表面が全て画面になった際のインターフェースなど、その当時に予測していたゲームの状況と、現在の状況はほとんど変わっていないとのこと。

 そんな横山社長が今考えているのは、マイクロソフトの HoloLensのように、視界の隅に常に情報が見られるデバイスで、ゲームがどう発展できるかということなのだそうです。

“HEAT渋谷 ~ゲーム会社合同説明会”
▲『ミクフリック』シリーズ、『三国志パズル大戦』などを手掛けたアールフォース・エンターテインメントの公式サイト。(画像は公式サイトをキャプチャしたもの)

 こうした今後への予測を踏まえた上で、杉山社長からは学生たちに向けて、「次に何が来るのか、未来を考えて行動することを考えたほうがいい」とのアドバイスが伝えられました。

 今から2、3年前には、Unityの技術を身につけている人はそれだけで注目されたし、現在でも人材は不足していて第一線の開発者が今になって学んでいる状況なので、Unityを扱える人はそうしたベテランと互角に働けるとのこと。

 そういったふうに、次の時代にはどんな技術が求められるのかを意識して、それを身につけておいたほうがいいと語られました。

“HEAT渋谷 ~ゲーム会社合同説明会”
▲『戦国やらいでか -乱舞伝』や『JKヴァンパイア~運命のフェスタ~』などを手掛けたヴァンガードの公式サイト。(画像は公式サイトをキャプチャしたもの)

 これを受けて司会の馬場プロデューサーからは、「大事なのは、自分は何ができるのかを把握すること。そのためには何かを一生懸命やりきらなければいけない」との意見が出されました。

 横山社長は学生たちに向かって「この中に、寝る間も惜しんでゲームを作っているという人間はたぶんいない」と厳しいコメントをした上で、「でもそういう人間には、その気にさえなればいつでもなれる」と、熱いエールを送っていました。

 「学校の課題ではなく、自発的にゲームを作って就活に持っていけば、必ず注目される」という磯野社長に対して、塚本社長はそうしたゲームへの情熱を認めつつも「映画を観るとか本を読むとか、学生の間にしかできないことをめいっぱい楽しんでほしい」と語っていました。

 その対象は異なっても、学生時代に何かを突き詰めてやっておいてほしいというのは、社長のみなさんにとって共通する思いのようです。

■“人と人とがゲームを通じてつながって楽しむ”ことは、今後も拡大を続けていく

 最後の質疑応答では、「“ソーシャルゲームはそろそろ終わりでは?”と言われることに対してはどう思う?」という、かなり大胆な質問が寄せられました。

 これに対して磯野社長は、「同じゲームを作り続けるのであれば、それは当然飽きられてしまう。だから違うゲームシステムを常に作り続けていく」と回答。塚本社長は「今後は今の形態のままではなく、ゲーム以外のいろんなものを巻き込んで変化していくはずだから、終わることはない」とのこと。

 杉山社長は「“ソーシャルゲーム”という言葉の定義にもよるが、“人と人とがゲームを通じてつながって楽しむ”という意味においては、終わるどころか今後も拡大していく」と回答。

 横山社長は「僕らの作っているものが、今はたまたま“ソーシャルゲーム”と呼ばれているだけで、僕ら自身は最初から“ゲーム”しか作っていない」と明解に答えていました。

“HEAT渋谷 ~ゲーム会社合同説明会”

 上の質疑応答でわかる通り、今回のパネルトークでは、単に就職活動に対するコメントだけでなく、ゲーム開発の最前線で活躍する各社長の仕事に対する姿勢や、ゲームに対する熱い思いがダイレクトに伝わってくるイベントになっていました。

 このパネルトークは、“HEAT渋谷”の最後のプログラムであったにもかかわらず、多数の学生が詰めかけて、各社長のトークに対して熱心に聞き入っている様子が非常に印象的でした。

 このイベントに集まった学生のみなさんが近い将来、プロのゲームクリエイターとして活躍することを期待したいと思います。

“HEAT渋谷 ~ゲーム会社合同説明会”

◆“社長トーク!”に参加した会社の説明


アールフォース・エンターテインメント
・主な開発タイトル:『ミクフリック』シリーズ、『三国志パズル大戦』、『HELLO KITTY COIN』、『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』、『ポストペット』などフルパッケージ開発320タイトル以上
・会社紹介
 1999年、元喫茶店コックと元雑誌ライター兼プログラマーの2名が、ゲームの未来をネットと携帯電話に見つけ、起業した泥臭くスタイリッシュなゲーム会社。
 ゲームとテクノロジーの未来を信じ、お客様の人生を変えるゲーム制作をモットーに、私たちと世界一のゲームをともに創ろう!


ヴァンガード
・主な開発タイトル:『戦国やらいでか -乱舞伝』、『JKヴァンパイア~運命のフェスタ~』、『13人の謎 -Fake Social Network-』、『三国志乱舞』など
・会社紹介
 私たちヴァンガードは、コンシューマやオンラインゲームの開発で培った経験を元に、現在はスマートフォンアプリに注力しております。
 お客様視点やマーケティング戦略を踏まえ、ゲームの企画立案から運営まで、お客様に楽しんでもらうために必要とする関連作業をすべて完成させられるように構成されたワンストップ型でスマートフォンゲームを提供しています。


ランド・ホー
・主な開発タイトル:『サカつくシュート!』、『オーナーズリーグ』、『パズルサッカー』、『ポケモンカードゲームガチャ』、『ナレルンダー!仮面ライダードライブ』など
・会社紹介
 ゲーム業界の構造やどんな企業で成り立っているなどの話をかみ砕いて説明をし、“ゲーム業界=有名大手パブリッシャー”だけではないことや開発会社の種類や仕事内容、就職する際のゲーム会社選びのポイントについてもお話したいです。
 弊社の実績から入社したあとの新人研修のお話を挟んで、募集に際してどのへんに重きを置いて採用しているかなどのアドバイスをしたいと思います。


リズ
・主な開発タイトル:『PSYCHO-PASS 公式アプリ』など
・会社紹介
 1998年設立。コンシューマゲーム、アーケードゲームの開発を中心に、ガラケー、3Dアニメ、映画などなど、おもしろそうなコンテンツには積極的に手を出してきた会社です。
 ここ数年はスマートフォン向けゲームを中心に開発、運営を請け負って参りました。そして2015年。今年パブリッシング予定のゲームが2~3本あります。乞うご期待!


DeNA
・主な開発タイトル:『ファイナルファンタジー レコードキーパー』、『戦魂-SENTAMA-』、『パズ億』、『パズル戦隊デナレンジャー』、『ONE PIECE グランドコレクション』、『三国志ロワイヤル』など
・会社紹介
 DeNAはスマートフォン向けのゲーム開発、マンガボックスや、SHOWROOMといったアプリ開発、横浜DeNAベイスターズとDeNA Running Clubの2つのプロスポーツチームの運営などをしてます。
 今年から、本気で、熱く、おもしろいゲーム開発に携わるゲームクリエイター人材を募集しています! ブース出展、ポートフォリオ講評会、社長トークに参加します! ぜひお越しください!


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